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Column ビール好きのための究極の入門書。人気ブルワリー・ミッケラーの「ビールのほん」を読んでみた!

2021/08/13

ビールを飲みながら、ビールの本を読む。なんて贅沢な過ごし方なのでしょう。その本が、大好きなビールを造るブルワーさんが書いた本ならなおさら!先日、とても楽しみにしていた本が発売されました。ワクワクしながら荷をほどき手にしたのは『ミッケラーの「ビールのほん」』(以下、ビールのほん)。


ミッケラーは、デンマークのコペンハーゲンでミッケル・ボルグさんとクリスチャン・ケラーさんが設立した、特定の醸造所を持たないファントム(幻影)ブルワリー

そんなミッケラーの創業者であるミッケル・ボルグさんと、その奥さんでありライターであるペニール・パンさんが書いたのが、こちらの「ビールのほん」!読み進める時間があまりにも至福のときでした。


ミッケラーってどんなブルワリー?


本の紹介の前に、まずはミッケラーについて少しお話を。

ミッケラーは2006年にデンマークで誕生した小規模ブルワリーです。自社醸造所を持たず、ミッケラーが醸造したいレシピに合う醸造所を世界中より探し、そのレシピに最も合う場所(醸造所)で独自のビールをつくり出すことで知られています。

ビールの品質を第一とする実験的なビールづくり、難解なレシピの考案、他社とのコラボレーション、そして芸術的なラベルのアートワークなど…個性的なそのスタイルは、世界中のビールファンから絶大な評価を得ています。

また、常に実験的で革命的な、様々なスタイルのビールづくりに挑戦し続け、世界的なビールファンサイト「ratebeer.com」にて、年間最優秀醸造所に輝き人々を驚かせたことでも知られています。
 

日本においてもミッケラーの人気は高く、直営レストランを渋谷と神田に構えていたり、2018,19年には、世界中からトップブルワーが集うビールフェス「MIKKELLER BEER CELEBRATION TOKYO(MBCT)」を開催したりと、日本のビールファンにワクワクを届けてくれています!(MBCTは2020年も開催が予定されていましたが、残念ながら中止となりました)

さらに、2021年3月には岩手県盛岡市にあるクラフトブルワリー・ベアレン醸造所とコラボレーションした『ミッケラー×ベアレン クールシップ ウィーンラガー』が発売され注目されましたよね。

▼参考記事はこちら
次世代のビールが勢揃い!ビール好きが集った「MBCT2019」は、最高のビールフェスでした
【ミッケラー×ベアレン】日本で唯一の醸造設備で造られたコラボビールが数量限定で登場


このように、日本にも縁が深いミッケラー創業者が執筆した「ビールのほん」が日本語訳で販売されることは、ミッケラーファンの私にとっても楽しみなことだったのです。

失敗を重ね小規模でも世界から注目されるブルワーになるまで

本の目次はこちら。

 ミッケラーの「ビールのほん」目次

第1章 バケツ醸造からスターブルワーへの道「ミッケルの生い立ちとミッケラーの成り立ち」
第2章 副葬品、未開人たち、そして僧侶たち「ビールの略史」
第3章 「小規模醸造とクラフトビール革命」
第4章 ビールの様式「淡色、苦め、濃色、サワー」
第5章 見て、かいで、味わって、感じる「ビールの味わい方」
第6章 「自分のビールを自分でつくろう」
第7章 「ビールのレシピ集」
第8章 「ビールと料理を一緒に楽しむ」


第1章は「ミッケルの生い立ちとミッケラーの成り立ち」

世界中で大人気のブランドに成長したミッケラーですが、その始まりは趣味で始めた自家醸造(ホームブルーイング)だったそう。ミッケルさんの住んでいた建物の地下室で造ってみた最初の手作りビールは、ひどい味わいだったとか。

その教訓があるからなのか、第6章「自分のビールを自分でつくろう」では、初心者向けの道具よりは、より高額な器具を導入したほうがよいとアドバイスされています。

※日本では、酒造免許を受けず酒類(アルコール分1度以上の飲料)を製造することはできません。ご注意ください。

そんな散々なスタートでしたが、その後、どのようにして自分たちが満足できるビールを造れるようになったのか。そして、国際的な小規模ブルワーの先駆者へと進化していったのか。また、一緒にミッケラーをスタートさせ、ブランド名にも含まれているクリスチャン・ケラーさんが、ミッケラーを去ることになった経緯などが紹介されています。


そして、ランビックスタイルのビールづくりに挑戦したエピソードも面白いんです。

ランビックはベルギーの限られた地域でしか造ることのできないビール。というのも、その地域特有の微生物がビールを自然発酵させるのに適しているからです。ですがミッケルさんたちは、ベルギーから遠く離れたデンマークの地で、麦汁を入れたバケツのフタを開けた状態で一晩窓際に放置し、自然酵母による発酵を試みます。

翌日、そのバケツにフタをして屋根裏部屋に移し1年間の発酵を行います。主発酵を終えたビールを入れるため、わざわざベルギーのランビック醸造所として有名なカンティヨンから200Lの木樽を入手し、その木樽に移します。すると…木樽の継ぎ目からビールが漏れるという大惨事に!なんとかしようとあわてて買ってきたのは、真っ赤なイチゴのチューインガム!この本で唯一「どうして!!」と手に汗を握ったシーンです。

その後無事にビールの漏れは収まったのか、ランビックスタイルの出来はよかったのか気になりますよね。ぜひご自身の目で確認してください。


この章を読むことで、これまで知らなかったミッケラーのことをより深く知ることができました。この章だけでビール1本は飲めますね!

ちなみに、渋谷の直営店舗「ミッケラートウキョウ」では定期的に、ランニングをした後にビールが楽しめる「ミッケラーランニングクラブ」が開催されているんですが、そのルーツはミッケルさんがランナーだったからなのかと、この第1章を読んで納得しました!

重要なビール様式やビール秘話も


続いて紹介したいのは、第4章の「ビールの様式」。100を超えるビール様式の中からミッケルさんが重要と考えるビアスタイルを、“淡色または甘め”、“苦め”、“濃色”、“サワー”、“高アルコール”、“木樽長期熟成”にグループ分けして紹介。ミッケルさんがビールづくりを始めるきっかけとなったIPAをはじめ、ヴァイスビア(ヴァイツェン)、スタウトなどのビアスタイルが紹介されています。

各スタイルについて詳しく解説されているだけでなく、ミッケルさんのおすすめ銘柄が掲載されているのがポイント!取り寄せて飲んでみようと思っちゃいます。


読み進めていくと幕間として、ミッケラーのビールの裏側についての紹介ページが現れます。これはもうビール誕生秘話というべき貴重な内容で、飲んだことがあるビールであれば飲んだ当時の味を思い出し、まだ飲んだことがないビールであれば飲んでみたいと思わせるもの。突如現れる黒いページをお楽しみに!

貴重なビールのレシピまで公開


さらに、第6章の「自分のビールを自分でつくろう」では、麦芽やホップなどの原材料、醸造器具、準備方法、麦汁作り、発酵、貯酒、瓶詰めまで、一つひとつが細かく解説されています。

残念ながら、日本では酒造免許を受けずに酒類(アルコール分1度以上の飲料)を製造することはできません。ですが、この章を読むと海外ではこのような器具を使ってホームブルーイングがされているのかと知ることができ、またビールづくりは細部にこだわる必要があることがよく分かります。いつか日本でホームブルーイングが認められる日がきたら、この章を参考にしてチャレンジしてみたいですね。

続く第7章「ビールのレシピ集」では、ビールのレシピが紹介されています。こちらはミッケラーだけでなく、ファイアストーンウォーカー(米国カリフォルニア州)、ザ・カーネル(英国ロンドン)、スリーフロイズ(米国インディアナ州)、トゥオール(デンマーク・コペンハーゲン)、デモーレン醸造所(オランダ・ボーデフラーヴェン)の醸造所を含めて合計30のレシピを掲載。

このように、使用した麦芽やホップの種類、酵母や発酵温度まで紹介されています。

ビールの飲み手である私達はこのようなビールのレシピを目にすることはほとんどありません。知っているホップの種類が書かれていると、ちょっと嬉しくなるのは私だけでしょうか?「このビールにはセンテニアルが使われているのね…」なんて、こっそり通ぶることもできちゃうかも。

ビールと料理を一緒に楽しむことのおもしろさも紹介


ワインが大好きだというミッケルさん。食事をするときは、家でも外食でも、ビールと同じくらいの量のワインを料理と一緒に楽しむのだそう。

さまざまな料理人や飲食店と提携し始めたとき、ミッケルさんの野望はワインを打ち負かすことではなく、ビールがワインのように美食といえる料理を強力に支える存在であり、逆に味わいの幅広さから、ワインにはできない要素を加えることができると、証明したかったのだと書かれています。

ビールと料理を合わせることにあまり興味がないソムリエや料理人にアプローチしたエピソードでは、ワイン優位と考えられている状況の中、ビールの持つ多様性を料理人たちに披露することで彼らの考え方が変わっていったことが紹介されています。

おいしいものを提供したいという料理人やソムリエ、ブルワー各々のプロ意識が垣間見えて感動してしまいました。


この章では、ミッケラーのビールのために考案された料理のレシピが5つ登場します。

家庭用に再現できるようにと掲載されていますが、難易度は少し高めとのこと。ちょっと自信がない私は写真を眺めるだけで我慢しますが、料理の腕に自信がある方はぜひチャレンジしてみてくださいね!


最後に日本語版監修・翻訳を担当した長谷川小二郎さんからのメッセージを紹介します。

長谷川さん

ミッケラーの銘柄には、spontan(スポンタン)という言葉が付いていることがあります。これは「自発的な、ノリで、衝動的な」といった意味で、彼らの精神性を表しています。

さらにspontaneous fermentationと言えば「自然発酵」となり、ビールづくりにも関係がある言葉です。

『ミッケラーの「ビールのほん」』では、ミッケラーの生い立ち、彼らのビールそのものやつくり方の特徴、さらに有名レストラン提供のレシピにまで、このセンスがあふれています。


長谷川さんが挙げた「スポンタン」の名が付いたビールは本書内にも登場しています。ぜひ探してみてくださいね。

自分のペースで、何度も楽しんで


この「ビールのほん」は裏表紙に「ビール好きのための究極の入門書」と書かれています。

入門書とありますが、丁寧に紹介されている分、少し難しいと思われる方もいらっしゃるかもしれません。ですが、もし内容が難しいと思ったら、その部分は読み飛ばしてもOKだと思います。その時は時間を空けて、再度読んでみることをおすすめします。

何度読んでも飽きることなく楽しめる内容ですし、ミッケラーのビールを飲みながら読むうちに内容がスッと頭に入ってくる日が来るかもしれません。「ビールのほん」で究極のファン活動をお楽しみください!

 著者、日本語版監修・翻訳

○著者:ミッケル・ボルグ・ビャーウス(Mikkel Borg Bjergsø)
デンマークで最初の小規模ブルワリーの一つであるミッケラーの創業者。数学と物理の教師として働いている間に、持てる技術を生かして、自宅でさまざまなビールをつくり始めることに。その後、40カ国にビールを輸出し、デンマークで最も有名なレストランのために特注のビールをつくり、スリーフロイズやアンカレジなどの世界中の革新的な小規模ブルワリーとの協働醸造をする、世界的に有名な企業に発展した。ブルワリーのビジネスを十分に理解した後に事業を拡大し、ミッケラーのバーやビール販売店を立ち上げた。そうした店は今では、バンコクから彼の故郷のコペンハーゲンまで、世界中の大都市に展開している。

○ペニール・パン(Pernille Pang)
デンマークの新聞「ポリチクン」をはじめとするジャーナリズムの世界で5年間働いた後、2010 年にフリーランスのライターに。それ以来、ミッケラーやステラマガジンなどさまざまな企業で、中国や地域文化に関するニュースなど、さまざまな話題について執筆している。

○日本語版監修・翻訳:長谷川 小二郎(はせがわ しょうじろう)
編集、執筆、英日翻訳。2008 年から、米ワールドビアカップ(WBC)、グレートアメリカンビアフェスティバル(GABF)など、上位の国際的ビール審査会で審査員。「ビアコーディネイターセミナー」「ベルギービールKAISEKI(会席)アドバイザー認定講座」「ベルギービール・プロフェッショナル ベーシック講座」の講師、テキスト執筆。共著・訳に『今飲むべき最高のクラフトビール100』(シンコーミュージック・エンタテイメント)。他に日本語版監修・翻訳に『クラフトビールフォアザピープル』、監修に『世界のビール図鑑』(共にガイアブックス)など。

『ミッケラーの「ビールのほん」』

著者:ミッケル・ボルグ・ビャーウス/ペニール・パン
訳者:長谷川小二郎(日本語版監修、翻訳)
出版社:株式会社ガイアブックス
価格:3,520円(税込)
発売日:2021年7月28日
ISBN-10:4866540532
ISBN-13:978-4866540535
商品紹介ページ:http://www.gaiajapan.co.jp/books/food/otherdrinks/5829/
言語:日本語
判型:A5変型(224×175mm)
単行本:256ページ

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数年前に突然ビールの奥深さに目覚めて以来、寝ても覚めてもビールのことばかり考えています。全国の大手ビール工場や醸造所に通い、ビール関連の本を読み漁り、さまざまな勉強会やイベントに参加。日本地ビール協会公認「シニア・ビアジャッジ」として、IBC(インターナショナル・ビアカップ)の審査員を経験(2018年、2019年、2020年)。日本ビール検定2級。日本ビアジャーナリストアカデミー10期生。紙面協力:ライフスタイル情報『CHANTO』。

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