Interview キリンのクラフトビールを造る醸造家に聞く、女性とビールの新しいライフスタイル

2014/12/12

キリンビールが本格的なクラフトビール事業を開始。新しいチャレンジとなったSPRING VALLEY BREWERYプロジェクトは“ビール通を唸らせ、ビールが苦手な人もはじめての出会いに感動するビール”をコンセプトに、上質な苦味と、甘味、酸味、香り、コクの究極のバランスを実現した、新次元のクラフトビールを多彩なラインアップで提案します。その第4弾商品では女性醸造家の製品が登場しました。「SPRING VALLEY BREWERY White Valley」は小麦や米を使ったホワイトビールのプロトタイプ品。今回、『White Valley』の開発を担当した醸造家の妻鳥 奈津子さんにお話を聞きました。

キリンビール スプリングバレー

 

 

女性にも受け入れられるビールを目指して


SPRING VALLEY BREWERYプロジェクト、その構想自体は2年ほど前から始まっていました。「ビールの未来をつくる」という目的のもと、多様なラインアップのひとつとしてホワイトビールを造ってはどうかという話になったのは1年程前。

キリンでは、中身を開発しているチームを醸造家と呼びます。工場の醸造家と違うのは、基本的に既存品のリニューアルだとか、新商品を立ち上げる時の中身のレシピを作ったり、原料に何を使うか、といったことを決めているのです。

醸造家になる前は、一般的に流通しているようなビールしか知らなかったという妻鳥さん。しかし入社して商品開発をするようになってから、様々なビールに出会い、いつかはホワイトビールを造りたいと思うようになっていました。苦みが苦手でビールを飲めない女性が多いことに気づき、女性や若年層に向けて飲みやすいビールができないかと考える中で、「味が濃くて男性的なビールが多い中で、ホワイトビールって優しくて飲みやすく、女性的だと思った」からです。そして最初に世に送り出したのが『オフホワイト』*でした。その時の経験が今回の『White Valley』の抜擢に繋がりました。

フルーティーで口当たりもよく、アルコール度数も低いオフホワイトは若い女性でも飲める、というイメージで作った製品でした。一方、プロジェクト当初のコンセプト構想段階からコミュニケーションをとっていた妻鳥さんは、SPRING VALLEY BREWERYプロジェクトで提供するホワイトビールは、本格志向だけどビールが苦手という女性にも受け入れられる商品を目指しました。女性は苦いビールは苦手というのはよく聞いていたものの、飲みやすくさえすれば飲んでくれるのかは未知数です。「まずは苦くて飲み辛いと思っていたビールだけども、飲んでみたら意外とフルーティーで飲みやすくて、自分に合う! と思ってもらえればいいかなと思います。ビールの第一歩というか入口になるようなビールを目指して、まずは飲んでもらえるビールにしたいと思っています。」と意気込みます。

 

キリンの新提案「キリン オフ ホワイト」の心地よさを体感してみた。

『White Valley』の抜擢されるきっかけとなった「オフホワイト」。
サンプリングキャンペーンでは実際に妻鳥さんのサインの入ったお手紙つきで配布された。


*『オフホワイト』:2014年8月にインターネット通販サイトLOHACOのみにて販売がスタートしたキリンビール社の商品(『キリン オフホワイト』)。これまでにない、柔らかい味、フルーティーな香り、日常に溶け込むデザインなどが人気。当サイトでも現在キャンペーンを実施中。詳細は記事下部をご覧ください。

 

 

 

思い描いていた原料を自由に使える、夢のような製品開発の日々


通常新製品は、コンセプトを作り、それに対して色んな原料や酵母を選抜する過程を経た後、いくつかの酵母の中からホップの相性やバランスのいいものを選んだり、お米の配合比率を工夫したりといった50回程のテストを繰り返して開発されます。「今回はコンセプトを作る段階から入り込んでいたのである程度イメージはできていた」という妻鳥さんですが、開発過程では香りや酵母については自分で思っている以上に、お客様視点になると強度は強い方がいいという意見が多かったといいます。

キリン スプリングバレー

そこで取り入れたのが、白ワイン用のソービニヨンブランというぶどうの香りのするホップ『ネルソンソーヴィン』。「女性って華やかなものだとかフルーティーな香りに対して男性より許容度が高いと思いました。そこで、いつかビールに入れたいと思っていたホップを取り入れることにしました。」と話します。実際、このホップを採り入れることで、上面発酵による白ワインのような華やかでフルーティーな香りを実現しました。

また、クラフトビールは女性でも飲みやすいと言われていますが、喉越しよりも味の滑らかさにこだわり、キャッチフレーズにも“Wheat malt, Rice, and Love”といれています。その通り、原料では更に飲みやすさを追求するためにお米を使用。ビールにコメを使うというのはキリンのオリジナルの技術で、ホワイトビールの“白い”というイメージにも合いますし、まったりとしたボディー感が生まれます。また小麦麦芽を使って、滑らかで優しい感じに仕上げました。

キリン whiteValley

妻鳥さんの名前の入った『White Vallay』


 

特にキリンらしさを意識して造っているわけではないという妻鳥さんですが、お米を使うという発想はキリンの技術に裏打ちされてのこと。キリンがクラフトビールを造るというのは想像もしていなかったらしいのですが、今回の挑戦を経て、「この会社でこんな経験ができて良かった」と心から思えたそうです。ビールとして出すか、発泡酒として出すか、という細かいせめぎ合いはあったものの、このプロジェクトを取りまとめている人たちがこよなくビールを好きで、非常に盛り上がっていたため、そんなに制約を感じることはなかったそう。「これまでのリニューアルと比べても、ホップをはじめ自分の使いたい様々な原料を使え、目指していたビールが作れました。だから普段の制約から考えても夢のような製品開発でした。でもその反面自分本位になっていないかと心配ではあります。」と話してくれました。

 

 

 

“共創”から生まれる新しいビール体験


 

“共創”をひとつのテーマにしているSPRING VALLEY BREWERYプロジェクトでは、ブランドコミュニティの構築を目指します。同社のオンラインショップ『DRINX』で来春より販売する商品のプロトタイプ品(試作品)を展開し、消費者からの商品に関するフィードバックを反映させながら、ビールを完成させていくのです。その過程では、開発担当からのそれぞれの商品のプロトタイプ品の仕込み状況をメールで共有したり、商品開発にかけた想いを同梱物に挿入したりしていますが、その甲斐あって、商品予約状況者の仕込み状況のメールの開封率はHTMLで約50%! ユーザーズボイスは開始してから3日間で約300件の意見が寄せられるなど、つくる段階からの消費者の関心の高さがうかがえるそう。

12月中旬にはいよいよ『White Valley』のプロトタイプの第1弾が出荷。「今まで色々なリニューアルを手掛けてきましたが、コンセプト作りから参加するというのはなかったことなので達成感はありました。先日完成したのも第一案ということでまだまだ改良する部分はありますし、今後はお客様の声を聞いてもっと良くしていきたいと思います。」と妻鳥さんも期待と不安がいっぱいの様子。「スッキリと飲みやすいのが特徴ですが、個人的にはもうちょっと飲みごたえがあってもいいのかなとも思います。女性でも結構濃いものが好きという人も多いので実際どんな方が手に取ってくれるかなとちょっと楽しみにしているところです。どんな声が返ってくるのかは不安ですけどね。」今後寄せられる意見を基に商品の味覚だけでなく、どんな場面で誰とどのように楽しんだのか、楽しみたいのか、といったライフスタイルを完成品にむけた商品設計の参考にしていきます。

 

キリン ホワイトバレー

ブランドコミュニティもまだ”プロトタイプ”の段階で、色々と試行錯誤中とのこと。購入者をイベントに招待して消費者と開発担当で商品の意見交換を行ったり、開発担当者とオンラインで意見交換(=カンパイ会議)の実施も予定しています。来年春に代官山に新たに開設するブルワリー『SPRING VALLEY BREWERY TOKYO(仮称)』では、White Valley をはじめ6種類が登場予定。「その中でビールの世界ってこんなにバラエティに富んでいるということを知ってもらえたらなと。ピルスナーは合わないと思う人も、代官山のPUBでは自分に合った商品を見つけられるかもしれません。」ビール醸造の様子を見ながらビールを楽しめ、ビールが苦手な人でも、女性の方でも、気軽に手にとってみんなでワイワイ飲める店舗を目指します。

店舗という接点を使い、その場でお客様と醸造家が交流して新しいビールが生まれていく店舗(=オフライン)とWEB、『DRINX』(=オンライン)をうまく還流させながら生まれる飲み手とつくり手の関係。それはビールだけではなく生産者までをも巻き込んだコミュニティの誕生にも繋がり、つくり手との交流や、食事とのペアリングなど、新しいビール体験に繋がってゆくでしょう。

 

キリン White Valley

『オフホワイト』を経て今回の『White Valley』を出せたことで、一番作りたいと思っていた思いや商品は実現されたと話す妻鳥さん。「お店で是非飲んでください。そしてビールの世界ってもっと広いって感じてもらえたらうれしいです。」とニッコリ。しかしながら、「結構満足はしているのですが、特に『White Valley』ではクラフトビールを知っている方に試されている感じがしています。完成化に向けてまだまだ一仕事、二仕事ですね」とまだまだ立ち止まれない様子。『White Valley』が完成したら、ベルジャンホワイトタイプの無濾過商品にも挑戦してみたいと意欲をのぞかせます。

こうした女性醸造家の活躍で、女性とビールの新しい関係、新たなライフスタイルが生み出されているキリンビール。「ビールの世界って実はこんなに面白い!」という声が高まる日も近そうです。

 

 

 

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ビール女子編集部では12月10日(水)まで、このインタビューにお応えいただいた妻鳥 奈津子さんが開発した『キリン オフホワイト』が当たる、インスタグラムキャンペーン「#ていねいなくらし」を実施中です。


詳しくは以下から☟


ビール女子的『ていねいなくらし』を考える


 

 

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岡 美千瑠 編集ライター

春夏秋冬、ビールをこよなく愛する大和撫子。 夢は世界中のビールを味わい尽くすこと☆ 時にはふらりとバックパッカーに扮して旅に出ますが、高くそびえるビール・マスターへの頂は遥か彼方。。。 今日も美味しいビールに出逢うため奮闘中です!

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