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Column 「たかがビール、されどビール」。ビール歴13年のプロが大切にする、ドラフト・タップ・グラスの美学

2026/09/03

全国のブルワリーやビアバー、ボトルショップ。ビールを愛し、ビールに人生を懸ける“届け手”たちがいます。
今回ご登場いただくのは、神奈川県茅ヶ崎市のボトルショップ「Pepown(ピーポン)」でマネージャーを務める赤間希哉(あかま ともや)さん
学生時代からおよそ13年間、ひたむきにビールと向き合ってきた赤間さんが、“ビール屋”として大切にしているビール・タップ・グラスへのこだわりを語ってくれました。
ここから先は、赤間さんご自身の言葉で。どうぞ最後までお楽しみください。



はじめに ― ボトルショップ「Pepown」のこと


初めまして。赤間 希哉(あかま ともや)と申します。

学生時代からビールを扱うレストランなどでアルバイトを経験し、大学卒業を機に、クラフトビアマーケットやビールボーイを運営する株式会社ステディワークスに就職しました。

赤間 希哉さん
約6年間勤めた後、現在はご縁があり、神奈川県茅ヶ崎市にあるPassific Brewing直営店「Pepown(ピーポン)」のマネージャーを務めております。


Pepownではビールはもちろん、「いい酒の取り扱い店」として、ジンや焼酎、ワイン、ノンアルコールドリンクなどの飲み物と、もう一杯飲みたくなるおつまみをご用意しております。

その他、当店については以前ビール女子さんに取り上げていただきましたので、そちらをご参考に!

ボトルショップであるPepownですが、今回は、その中でも”ビール屋”として大切にしているビール、タップ、グラスについてお話しさせていただきます。


“ビール屋”として大切にしているビール


まず、ビールを扱う者として、ドラフトビールをとても大切にしています。

今では多くのビールが缶やボトルで流通し、どこでも気軽に楽しめるようになりましたが、ビール専門店で管理が行き届いたタップから注がれるドラフトビールはやはり格別に美味しいものです。

醸造技術の発展により、缶やボトル、ドラフトの間でクオリティの差はほとんどなくなってきていると思いますが、日本人だからでしょうか、生ビールって何だか嬉しいですもんね。

そうした体験を提供するために、衛生管理はもちろんのこと、提供するビールの種類に応じて温度やビールホースの長さ、ガス圧も細かく調整しています

この後の話にもつながりますが、タップやグラスもビールに応じて可能な限り使い分けています。感動するほどのドラフトビールを、自分の住む町で気軽に飲めたら嬉しいですよね。


そして、Pepownでは約100種類の缶ビールや瓶ビールを取り扱っています。

ヨーロッパや日本のブルワリーに出来るだけ足を運び、現地の空気や風景を感じて得た経験を基に、飲んでいただきたいビール、ブルワーの顔やブルワリーの様子が頭に浮かぶビール、Passific Brewingが影響を受けたビールなどを中心に、僕の経験を踏まえてPepownのショーケースにビールを並べています。

アルバイト先ではヨーロッパを中心に世界中のビールを、ステディワークスでは日本とアメリカのクラフトビールを、そして現在は新たに誕生し続けるビールを。

お客様がビールを選ばれる際には、今まで飲んできた13年間の思い出も合わせてご説明しています。

今の時代、冷蔵庫を購入し、ネットでビールを注文して冷蔵庫に並べれば誰でもビール屋さんになれますが、ただビールを売るのではなく、この経験とともに、クラシックなヨーロッパビール、往年のマスターピースと謳われるアメリカンビール、地ビール解禁以来、今では世界一の評価を誇る日本のクラフトビール、そして日々世界中で進化し続けるビールたちをお届けしています。

Pepownは、単にビールを飲んでいただくだけでなく、「Pepownでこんなビールを飲んだ!」という“体験”を大切にしながら、伝えたいビールをお届けしているのです。


味わいを引き出す、3種類のタップの使い分け

Pepownでは3種類のタップを使い分けています。

1つ目:ボールタップ

まず1つ目はAntoine社製のデビタップ、通称「ボールタップ」です。球体の注ぎ口を持つため、この名前が付けられています。

一般的なタップに比べて注ぎ口が長く、口径が小さいため、ビールの流れが乱れにくく、美しく注ぐことができます。また、ハンドルを途中まで倒すと泡だけが出るクリーマー機能も付いているため、最後に泡を整えたい方や、シャープ注ぎ、佐藤注ぎなど注ぎ方にこだわりたい方に最適なタップです。

僕の場合、初めてビールを注いだのがボールタップだったもので、慣れもあってお気に入りです。このボールタップなら、どのビールも美味しく、きれいに注げると思います。


2つ目:ノスタルジータップ

2つ目はLukr社製のノスタルジータップです。ピルスナーの元祖である『ピルスナー・ウルケル』を美味しく注ぎたい!!という熱意から、ウルケル社とは無関係のLukr社が開発したタップです(現在では、ウルケル社のドラフト品質プログラムにおいてLukr社のタップが標準となっています)。

ピルスナーウルケル タップスター ビアブルヴァード『ピルスナー・ウルケル』
これでビールを注げばどんなビールも美味しくなる。ということでは無く、先にも書いたように、ピルスナーウルケルを美味しく注ぐために作られたタップなので、基本的にはチェコスタイルラガー専用のタップです。

注ぎ口が太く流量が多いため、余分なガスは抜けつつ、中にメッシュがあることでガスがきめ細かく液体に溶け込み、口当たりがスムーズになります。

自分で使っていて言うのも何ですが、ビールのロスが非常に多いため、クラフトビール向けではないと思っています。日々ノスタルジータップを使う意味を探っており、好みもありますが、ラガーの中でも合うものと合わないものがあります。注ぎ方にもややテクニックが必要です。

扱いが難しいタップではありますが、このタップで注いで飲んだ時に信じられないほど美味しいビールが存在するのも事実で、その体験をぜひPepownでしていただきたいです。

余談ですが、ノスタルジータップのことを「スイングカラン」と呼ぶ方がいますが、全く別のものですのでご注意ください。


3つ目:ハンドポンプ

3つ目はAngram社製のハンドポンプです。冷蔵庫やガスでビールを押し上げる技術がまだ普及していなかった時代、イギリスでは地下のセラーからビールを汲み上げるために使用されていたタップです。

日本でも昔ながらのブルワリーがリアルエールを造っているため、ビアバーにハンドポンプが設置されていることが多いですね。ガス圧が弱く、少しぬるめの温度で提供されます。

イギリス発祥のビターやブリティッシュエールに使われることがほとんどで、ホップの華やかさよりもモルトの旨みを楽しむためのタップです。

本当の意味でのリアルエールを日本で提供するのは難しいため、ハンドポンプの設置は最後まで悩みました。

しかし、大切なのはこうしたビール文化があることを知ってもらうことだと思い、Pepownでもハンドポンプで提供したいな!と思うビールを見つけ次第、使用しています(本当はハンドポンプで出すビールが大好きなので購入しました)。

以上がPepownのタップについてです。冒頭で述べたように、ボールタップがあれば十分だと思いますし、ご自身にとって使いやすいタップが一番です。

やや同業者向けの内容になってしまいましたが、ビール好きの方もビアバーに行った際には、ぜひタップに注目してみてはいかがでしょうか?


グラス一つで、ビールは別の飲み物になる


Pepownではまるでグラス専門店かと思うほど、グラスの種類が豊富で、ざっと数えても10種類はあります。先に述べたように、僕はヨーロッパのビールから飲み始めています。


特にベルギーでは、それぞれのビールに専用のグラスが用意されていることが多いです。

これはガラス産業が盛んなことやマーケティングの側面もありますが、ベルギービールは香りを楽しむ文化が根付いていること、そしてグラスを単なる容器とせず、グラスに注ぐことでビールが完成すると考えられていることも理由の一つです。

そんな経験もあり、ビールには無数のスタイルがあるにもかかわらず、2、3種類のグラスで使い分けるという発想がなく、結果としてこれだけ多様なグラスの種類が揃いました。

面白いことに、グラスによってビールの雰囲気はまったく変わります

最も衝撃的だったのは、IPAをブルゴーニュグラスでいただいたときで、「まるでIPAじゃないみたい!」と感じたことです(ぜひ皆さんもお試しください)。

グラスが変わると、ビールが変わる


ポジティブな変化もあれば、その逆もあります。

ドイツ西部の伝統的なスタイルである「ケルシュ」や「アルト」は、大きなグラスで一度にたくさん飲むのではなく、小さなグラスで何度も飲むからこそ美味しいのだと、現地に行って改めて実感しました。

ピルスナーはストレートで薄手のグラスでシャキッと飲み、苦味と爽快感を。ベルジャンエールはチューリップグラスのように膨らんだグラスで香りを堪能したい。

アメリカンIPAは口が厚く大きめで、少し重みがあるグラスがIPAのボディを包んでくれている感覚があって良い。

また、サイズについてですが、多くのビアバーではアメリカのクラフトビール文化が誕生したアメリカの規格であるUSパイント(473ml)とその半分の約250mlで提供するのが一般的です。

しかし、日本人が飲むにはパイントはやや大きすぎるのではないかと感じる一方で、250mlでは少し物足りないのではないかとも考えた末に、300mlくらいがちょうど良い!という結論に至りました。

そのため、Pepownではケルシュとアルト以外は1杯300mlで提供しています。


このサイズなら、もう少し飲みたい方はもう1杯注文してくださいますし、多くは飲めない方にとっても飲みきりやすいサイズだと思っています。

ちなみに、Pepownではケルシュをよく繋いでいますが、伝統に倣い「シュタンゲ」という小さなグラスで1杯500円で提供しております。ぜひたくさんおかわりしてください!

グラスについていろいろお話ししましたが、ビールというものは「美味しい!」や「香りがいい!」という前に、ビールは美しいのです

一点の曇りもないグラスにビールを注ぐと、それはまるで宝石のように輝き、飲むのがもったいないほど息をのむ美しさを放ちます。ぜひ、きれいなグラスにビールを注いであげてください。


おわりに ― 記憶に残る一杯のために

以上、Pepownが大切にしているビール、タップ、グラスについてご紹介しました。本来、ビールは冷たく、適切に炭酸が効いていて、苦味がしっかりしていれば美味しいものです。

これだけでビールは美味しいのです。しかし、それよりもほんの少しだけ記憶に残る一杯にするためには、こんなことが大切なのではないかと思い、書き留めました。たかがビール、されどビール。

ビールをただ出して終わりにするのではなく、どのようにこのビールを味わっていただきたいかを考えています。あなたの人生を変える一杯を出せるよう、これからもたくさんビールを飲み続けます。

 Pepown

〇住所:〒253-0056 神奈川県茅ヶ崎市共恵1丁目6-9(Googleマップ
〇アクセス:東海道本線、相模線「茅ヶ崎駅」から徒歩5分
〇営業時間:
[平日]15:00〜24:00(ラストオーダー 23:00)
[土日祝]12:00〜24:00(ラストオーダー 23:00)
〇Instagram:https://www.instagram.com/pepown.chigasaki/

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