澄んだ冷たい空気が張り詰める冬。
慌ただしい日常の中でも、どこかわくわくとした気持ちが沸き起こるクリスマスがやってきました。
ビールをたのしむビール女子編集部ライターによる、クリスマスのコラム三篇。
お好きなビールを味わいながら、ぜひご一読ください。
プレゼントと赤いビール
ライター:mei
子どものころ、家のクリスマスパーティーでビールが出てきたのをよく覚えている。ビールといってもアルコールが入っているものではなく、まるで本当のビールのような見た目をした“子どものための”飲みものだ。
私は幼いながらに大人の仲間入りをした気持ちで、シュワシュワとはじける黄色くて甘い液体を上機嫌で飲み干した。
大人になってから、ビールの色は黄色だけでないことを知る。
サンクトガレーンの『アップルシナモンエール』はほんのり赤茶に色付いていて、ふわりと香るりんごとシナモンがクリスマスにぴったりのビール。
あのころのように黄色くて甘い飲みものではないけれど、クリスマスに飲む一杯のワクワクは変わらない。
もちろん、プレゼントの用意も忘れずに!
妖精の谷で待ちわびて
ライター:Mayu
光輝くその一本道に導かれ、私の足取りはリズムを奏でながら自然と口ずさむ。
「ハイホー ハイホー」
It’s home from work we go.
目の前に繰り広げられるネオンの彩りは、まるで宝石箱のよう。
いつもの見慣れたその光景は「聖夜」というスパイスによって、鮮やかながらもどこか静かな情熱を繰り広げる。
私はその彩りを心のフィルターに焼き付けながら、少しだけ足早に駆け抜けた。
そしてそっと瞼を閉じる。
こんなハレな日の心の中は、あの一本一色で染まっている。
どこか儚げな懐かしさとクラシックが入り混じったその褐色瓶を手に取り、そしてユックリと流し込む。
小さな妖精によって手掛けられた、きめ細やかな泡とキャンディーシュガーが奏でるハーモニーは、口に清々しいながらも鼻から抜けるほのかなスパイシーさと手を繋ぎ、極上の一口に変化する。
「今年も会えたね」
この日だけのスペシャルな味わいを感じて、心でガッツポーズ。
今宵、小さな妖精によって紡ぎ出されたこの彩りが、きっと大切なあの人にも届いていることを願って…。
May your days be merry and bright.
・ビール:アシュフ醸造所『シュフ・ナイス』
約束のNoël
ライター:中林麻依
ノエルノエル 羊飼いらはノエルノエル 群を離れて
み子を訪ね
馬小屋でまみえた
おお ノエル ノエル
喜びが世に満ちた
ー讃美歌「ノエルノエル」ー
眠たそうな枯れ木に青白い光を纏わせる12月。
眩しいイルミネーションから逃れるように酒屋に入ると、ビール売り場でベルギーのデュブイソン醸造所の『Bush Noël』のラベルが青く光っていた。
ふと中1のクリスマスを思い出す。
独り夜の公園で、学校で配られた板チョコを齧り讃美歌の「ノエルノエル」を歌った。
あの日に重ねるように、輝きから離れたベンチでBush Noëlを飲み板チョコを齧る。
甘みと苦味と酸味が調和するハイアルなビールで体を温めていると、おばあちゃんと小さな女の子が通り過ぎた。
「きれいだったね、らいねんもばあばとみる」
女の子がそう言うと、おばあちゃんは嬉しそうに女の子の手を温めた。
1769年に創業し世界が混乱状態でも決して醸造をやめなかったデュブイソン醸造所。
1991年の発売以来Bush Noëlはクリスマスに向けて特別醸造され、毎年人々を喜ばせ続けている。
「来年も待ってる人がいる」
枯れ木にそっと伝えよう。
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