
あなたにとって2025年は、どんな一年でしたか?
ひとりで静かに飲む夜も良いですが、乾杯の音が、街にちゃんと戻り、誰かと同じグラスを掲げた瞬間にだけ生まれる熱量がある——その魅力を、私たちは改めて思い出した気がします。
各地のクラフトビールイベントは活気を取り戻し、久しぶりに再会できた顔、新しくつながった縁、まだ飲んだことのない味。ビールを介して交わる人と時間が、2025年をいっそう豊かにしてくれました。
そんな一年の締めくくりにお届けするのが、ビール業界で活躍する「7人のビール人」に聞く、2025年の振り返り。今年の活動を“漢字一字”に込めてもらい、心に残った一杯、そして新しい年を迎えるためのおすすめビールまで伺いました。
お気に入りのビールをお供に、7人のビール人の2025年、そして2026年に向けた意気込みを、ぜひご覧ください。
【7人のビール人】
※五十音順
・1人目:京都醸造 ジェームズ・フォックスさん
・2人目:GOOD HOPS 田村淳一さん
・3人目:キリンビール 田山智広さん
・4人目:West Coast Brewing バストン・デレックさん
・5人目:Teenage Brewing 森大地さん
・6人目:Far Yeast Brewing 山田司朗さん
・7人目:Craft Beer Server Land 赤坂見附 渡邊光太郎さん
※五十音順
・1人目:京都醸造 ジェームズ・フォックスさん
・2人目:GOOD HOPS 田村淳一さん
・3人目:キリンビール 田山智広さん
・4人目:West Coast Brewing バストン・デレックさん
・5人目:Teenage Brewing 森大地さん
・6人目:Far Yeast Brewing 山田司朗さん
・7人目:Craft Beer Server Land 赤坂見附 渡邊光太郎さん
「新しく築いてきた1年」
1人目:京都醸造株式会社 ヘッドブルワー ジェームズ・フォックスさん
James Fox(ジェームズ・フォックス)さん
南カリフォルニア生まれ。キャリアの出発点は航空管制官。20代前半でのホームブルーイング開始と、政府関係の仕事への違和感を機に「ビールを仕事にする」ことを決意。カリフォルニアのStone Brewingでのキャリアを積みながら、学びを深めるためサンディエゴのブリューパブで醸造を担当。Ballast Pointにおけるメイン生産設備立ち上げに携わり、120バレルのブルーハウスと500バレルのブルーハウスをコミッショニング。バージニア州では生産設備の立ち上げを担当。2017年のBallast Point退社後、より小規模で機動力のあるニュージャージー州ブルワリーへの転身。2024年に来日し、京都醸造チームへ参画。
南カリフォルニア生まれ。キャリアの出発点は航空管制官。20代前半でのホームブルーイング開始と、政府関係の仕事への違和感を機に「ビールを仕事にする」ことを決意。カリフォルニアのStone Brewingでのキャリアを積みながら、学びを深めるためサンディエゴのブリューパブで醸造を担当。Ballast Pointにおけるメイン生産設備立ち上げに携わり、120バレルのブルーハウスと500バレルのブルーハウスをコミッショニング。バージニア州では生産設備の立ち上げを担当。2017年のBallast Point退社後、より小規模で機動力のあるニュージャージー州ブルワリーへの転身。2024年に来日し、京都醸造チームへ参画。
Q. 2025年の活動を「漢字一文字」で表すなら?

ジェームズ・フォックスさん:今年の漢字は「築(Build)」です。
昨年は、日本で初めて丸一年過ごした年でした。毎日が何か新しいものに向かって積み上がっていく、「築いていく」ような感覚の一年だったと思います。京都醸造(KBC)は昨年、これまでの強固な歩みの上に10周年を迎えましたが、その節目の年にチームの一員として関われたこと、そしてこれからに向けての素晴らしい土台の上にさらに何かを“築く”お手伝いができたことを光栄に感じています。
日本のブルワー仲間やクラフトビールコミュニティともたくさんの関係を築くことができました。新しい原料や新しいプロセス、そしてさまざまな実験やコラボレーションを通じて、ビールの醸造経験もさらに積み重ねることもできました。
昨年は多くの新しいビールを造り、ブルワリーを拡張するための新しい設備を次々と導入しました。そして今も、日本での人生の新しい章に向けて、日々その「築き上げ」を続けているところです。
Q. 2026年はどのような1年にしたいですか?
ジェームズ・フォックスさん:私たちは誰も現状に甘んじるタイプではないので、ここで仕事が止まることはありません。急速に変化しているこの市場の中で、2026年は存在感をさらに高めていくためのチャレンジが待っていると思います。
ただ、それらのチャレンジを真正面から受け止めることで、会社としても、そして自分自身も成長できる機会になると考えています。2026年は、日本やローカルコミュニティのなかで、自分の立ち位置をしっかりと確立していく大事な一年になりそうです。
アメリカでの生活の「最後の大事なピース」を日本に持ってくる予定でもあり、日本で腰を据えて、より地域社会に深く関わっていけることを楽しみにしています。
Q. 年末年始におすすめのビールを教えてください!
ジェームズ・フォックスさん:年末年始におすすめしたいビールは、やはり京都醸造のベルジャン・ストロング・ホリデーエール「満面喜色」です。長年かけてブラッシュアップしてきたスパイスのブレンドが、ストロングエール特有のキャラメルやトフィーのような甘いフレーバーと完璧なバランスで調和しています。
グラスから立ち上る香りは「クリスマスそのもの」といった印象で、一杯の中にホリデーシーズンがぎゅっと詰まっているように感じられます。飲むとほんのり体が温まるので、冬の寒い夜にぴったりな一本です。
Q. この一年で思い出に残ったビールと、この一年で思い出に残ったビールのあるシチュエーションを教えてください。
ジェームズ・フォックスさん:数か月前、パートナーと一緒に東京を訪れた際、立ち寄った場所のひとつが Inkhorn Brewing でした。その数週間前にビアフェスでShunさんとお会いし、Simcoeホップがどれだけ好きかという話で盛り上がったばかりでした。
お店では、彼が新しく仕込んでいたNZ IPAの一つと、ほかにもホップを前面に出したビールをいくつかいただきました。残念ながらそれぞれの名前までは覚えていないのですが、あの小さな規模のブルワリーとは思えないほど、どのビールもクオリティが非常に高く、とても感銘を受けました。限られたスペースの中で、あれほど素晴らしい仕事をしているのは本当に印象的でした。
新年に予定している彼とのコラボレーションも、今からとても楽しみにしています。
「GOOD HOPSを開業し新しい動きが生まれた」
2人目:株式会社BrewGood 代表取締役 田村淳一さん

田村淳一さん
和歌山県田辺市出身。大学卒業後、株式会社リクルートに入社し、住宅関連の新規事業の立ち上げや法人営業に携わる。2016年に退職して岩手県遠野市に移住。翌2017年、クラフトビールの製造・販売を行う株式会社遠野醸造を共同創業。2018年には、ホップ栽培現場の課題解決や、ホップとビールを軸にした新たな産業の創出を目指して株式会社BrewGoodを設立。2025年春、日本産ホップの可能性を広げるための新しい醸造所「GOOD HOPS」を遠野駅前に開業。
和歌山県田辺市出身。大学卒業後、株式会社リクルートに入社し、住宅関連の新規事業の立ち上げや法人営業に携わる。2016年に退職して岩手県遠野市に移住。翌2017年、クラフトビールの製造・販売を行う株式会社遠野醸造を共同創業。2018年には、ホップ栽培現場の課題解決や、ホップとビールを軸にした新たな産業の創出を目指して株式会社BrewGoodを設立。2025年春、日本産ホップの可能性を広げるための新しい醸造所「GOOD HOPS」を遠野駅前に開業。
Q. 2025年の活動を「漢字一文字」で表すなら?

田村さん:今年の漢字は「新」です。
2025年の一番のトピックスは、醸造所「GOOD HOPS」を遠野駅前に開業したことです。GOOD HOPSでは、自社で開発した新品種ホップや、新技術で加工した「非加熱ルプリンパウダー」を使用し、日本産ホップにこだわったクラフトビールを世に送り出すことができました。また、醸造の開始にあわせて会社には新しいメンバーが加わり、遠野全体ではホップ農家の研修生も新たに増えるなど、地域としても新しい動きが生まれた一年でした。
誰も使ったことのないホップを中心に醸造・販売を行う難しさもありましたが、それぞれのホップの個性を捉え、日本産ホップの可能性を少しずつ広げることができたと感じています。さらに、醸造所の誕生をきっかけに新たな挑戦や連携も生まれ始めており、GOOD HOPSを立ち上げて本当に良かったと感じる場面が多い一年でした。
Q. 2026年はどのような1年にしたいですか?
田村さん:2026年は、私が遠野市に移住して10年を迎える年になります。移住後に掲げた夢は、新規就農者の増加や新しい醸造所の開業など、少しずつ形になってきました。もちろん、GOOD HOPSはまだ立ち上がったばかりで、これからさらに進化させていく必要がありますし、日本のホップ農業には依然として多くの課題があります。
引き続き、目の前のことに仲間と共に取り組み、挑戦を重ねながらも、2026年は次の10年に向けた新たな青写真を描く一年にしたいと思っています。ホップ畑の近くにある研究所(醸造所)や博物館の構想、ホップの農業生産法人の立ち上げなど、すでに考えていることもありますが、これらを含めて新しい計画を具体化していく年にしたいです。
Q. 年末年始におすすめのビールを教えてください!

田村さん:おすすめは『遠野の息吹』です。遠野産ホップを100%使用したラガー(IPL)で、4種類の遠野産ホップをバランスよくブレンドし、トロピカルな香りとグラッシーな香りの両方を楽しんでいただけるように仕上げました。香りの中心となるのは「IBUKI」と、自社で開発した新品種ホップ「アンカウンタブル」です。遠野で長く栽培されてきたホップと、近年新たに誕生したホップの香りを調和させ、遠野の“新しい息吹”を表現しています。
「IBUKI」と「アンカウンタブル」という、遠野で受け継がれてきたホップと新しい挑戦の組み合わせが、今の私たちの姿と重なっているように感じます。GOOD HOPSでは、ホップの香りを楽しんでいただけるクラフトビールを製造していますので、ぜひいろいろと飲み比べていただけると嬉しいです。
Q. この一年で思い出に残ったビールと、この一年で思い出に残ったビールのあるシチュエーションを教えてください。

田村さん:近年、遠野に移住した若手のホップ農家研修生や、GOOD HOPSに関わる会社のメンバーとの飲み会ですね。栽培者、醸造者、そして企画やプロデュースを担うメンバーが近い距離にいることは、私たちの大きな強みです。
ここ約2年半の間に、移住してきた仲間が15人以上加わりました。GOOD HOPSのクラフトビールや、遠野で栽培された「IBUKI」を使用した一番搾りとれたてホップを片手に、今の課題や未来の展望について語り合うその光景を見ると、遠野で生まれている良い変化を実感できて本当に幸せです。「まだやれることがある」「もっと日本産ホップで面白いことを仕掛けていこう」と心から思える瞬間です。
■関連記事:遠野から世界へ。日本産ホップの未来を照らすブルワリー&タップルーム「GOOD HOPS」誕生
「ビールが人と人の縁をつくる」
3人目:キリンビール マスターブリュワー 田山智広さん

田山智広さん
1962年生まれ。1987年キリンビールに入社。工場、R&D、ドイツ留学等を経て、2001年よりマーケティング部商品開発研究所にてビール類の中味開発に携わる。その後、健康食品会社出向等を経て、2012年より再びマーケティング部に。2013年から商品開発研究所所長、2016年4月からキリンビールのマスターブリュワーに。”SPRING VALLEY BREWERY”は企画立案より携わり、現在もマスターブリュワーとしてビールの企画開発を監修する。
1962年生まれ。1987年キリンビールに入社。工場、R&D、ドイツ留学等を経て、2001年よりマーケティング部商品開発研究所にてビール類の中味開発に携わる。その後、健康食品会社出向等を経て、2012年より再びマーケティング部に。2013年から商品開発研究所所長、2016年4月からキリンビールのマスターブリュワーに。”SPRING VALLEY BREWERY”は企画立案より携わり、現在もマスターブリュワーとしてビールの企画開発を監修する。
Q. 2025年の活動を「漢字一文字」で表すなら?

田山さん:今年の漢字は「縁」です。
まず4月に国内最大のビールイベント「ビアEXPO」が開催され、日本のクラフトビール30年の歴史で培われた幾多の縁が一つになりました。直営店のスプリングバレーブルワリーは今年創業10周年を迎え、復活した寿司フェスなど様々なイベントや店舗施策を通じて、これまで築いてきたご縁に感謝すると共に、新たなご縁が広がる一年でした。
一方、ビールが人と人の縁をつくり、日本を明るくする力を持つことを実感する年でもありました。昨年スタートした花見や花火を支援する「晴れ風アクション」が実を結び、加えて今年新たに、地域コミュニティを元気にする活動にエールを送る「グッドエールJAPAN」が始まりました。ビールの力で日本全国に新しい縁を育む活動に、多くのお客様の応援を頂きました。
Q. 2026年はどのような1年にしたいですか?
田山さん:来年は、秋にビール業界を揺るがす酒税一本化という大きな環境変化を迎え、新たな価値創造の時代が始まります。そして冬季オリンピックやサッカーワールドカップなど、日本を応援する気分が高まる年でもあります。ビールも引き続き、日本を盛り上げていきたいですね。
個人的には、ここ数年力を入れている「日本ならではのビール」にこだわっていきたいです。日本人の繊細な味覚に適うビール、和食に合うビール、日本オリジナルのビアスタイルを追求し、日本人が誇りに思える唯一無二のビールを創っていきたいです。日本産ホップにもこだわり、業界全体で「日本人がつくるビール」の意義を高めるようなムーブメントを作っていきたいと思います。
Q. 年末年始におすすめのビールを教えてください!

田山さん:年末年始は、食卓に色々な料理が並ぶ時期でもあり、是非様々な種類のクラフトビールとのフードペアリング=食べ合わせを楽しんでいただきたいです。中でも、手軽にコンビニでも買えるクラフトビール、「SPRING VALLEY BREWERY」の3種類がおすすめです。
一押しの「豊潤ラガー 496」は万能型ですが、ローストした麦芽と複数のホップを配合しているため、加熱した料理や濃い目の味付けのものとの相性が抜群です。「シルクエール 白」は、白ワインのような香りが特徴の小麦ビールで、刺身などの繊細な味わいの食事も引き立てます。「JAPANエール 香」は、上質な日本産ホップの特徴を生かした香り豊かなエールで、ハーブやスパイスの利いた料理と相性がいいです。クリスマスやお正月は、普段あまり食べない料理との組み合わせが試せるので、とても楽しみです。
Q. この一年で思い出に残ったビールと、この一年で思い出に残ったビールのあるシチュエーションを教えてください。

田山さん:ここ数年、毎年夏にドイツ方面に行き、大好きなビールを飲むことを無上の楽しみにしています。目指すはただ一つ、「アウグスティナー」です。ミュンヘン市民で知らない人はいないポピュラーなビールで、地元のスーパーには山積みにされていますが、日本では飲めないので、現地に飲みに行くしかないのです。
ミュンヘン市内のあちこちにある直営店では新鮮な生ビールが飲めますが、私のお気に入りは中心部と反対側にある「ケラー」で、そこの広大なビアガーデンで飲むマースが最高なんです。今年は、マーラーの3番目の作曲小屋を訪ねて、現在はイタリア領土となっている南チロルの都市を旅しましたが、主要な都市では決まってアウグスティナーのヘレスが飲めるのが驚きでした。ビールを通じて、かつてハプスブルク家の所領だったチロルの複雑な歴史を感じる旅となりました。
■関連記事:【潜入レポート】キリン×クラフトブルワリーが取り組む、ビールの品質向上とは?――キリン横浜工場から
〇公式HP:https://www.springvalleybrewery.jp/
〇Instagram:https://www.instagram.com/springvalleybrewery_brand/
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「交流によって人と繋がり腕が磨かれる」
4人目:株式会社WEST COAST 代表取締役社長
West Coast Brewing オーナー&マネージングディレクター バストン・デレックさん

バストン・デレックさん
アメリカ・シアトル生まれ。大学時代の日本留学を経て、静岡県に本社を置く商社へ入社し、その後に静岡市へ移住。2003年に設計事務所へと転職し、2013年には建築設計事務所として「株式会社WEST COAST(West Coast Design)」を設立。建築家としてのキャリアを本格的に歩み始める。
2017年にはビアバー「12 – twelve」を開業し、2019年に「West Coast Brewing(WCB)」を創業。現在も建築家として活動を続けながら、WCBのブランドディレクションを担っている。
アメリカ・シアトル生まれ。大学時代の日本留学を経て、静岡県に本社を置く商社へ入社し、その後に静岡市へ移住。2003年に設計事務所へと転職し、2013年には建築設計事務所として「株式会社WEST COAST(West Coast Design)」を設立。建築家としてのキャリアを本格的に歩み始める。
2017年にはビアバー「12 – twelve」を開業し、2019年に「West Coast Brewing(WCB)」を創業。現在も建築家として活動を続けながら、WCBのブランドディレクションを担っている。
Q. 2025年の活動を「漢字一文字」で表すなら?

バストン・デレックさん:今年の漢字は「交」です。

今年は、とにかく“人との繋がり”を強く感じた一年でした。東京(丸の内・虎ノ門)に直営店をオープンしたことで、実際に飲んでくださるファンの方々と話す機会が一気に増えて、改めて日々応援してくれる存在のありがたさを実感しました。

さらに、春と秋にアメリカとニュージーランドへ日本の仲間たちと足を運び、自分たちの目でホップを選ぶ買い付けに行っているのですが、ビール造りはもちろん、あらゆる面で少しずつ実になってきてるというか。現地のブルワリーや農家の方々との出会いも大きな収穫。その交流から刺激をもらう場面も多くて、この経験が確実に自分たちの糧になっているなと感じる瞬間がいくつもありました。今年は、技術交流や海外へ積極的に出向いてきたからこそ、腕が磨かれブランドとして学びの濃い一年になりました。
Q. 2026年はどのような1年にしたいですか?
バストン・デレックさん:引き続き進化をし続けることに尽きます。造り手として、ビールの味わいで心を掴む感動体験は絶対に必要不可欠。最近、WCBではUltimate Brew Tankや遠心分離機を導入しました。ビールのクオリティ維持も大事ですが、我々はそのさらに上を磨いていきたい気持ちが強くあります。なので、品質をしっかり守りながら、さらに表現の幅を広げられるようになれたら。
でも、設備導入はゴールではなくて、“もっと良いものを造るための助走”みたいなもの。来年も海外の仲間との繋がりを深めつつ、学んだことを自分たちのスタイルに落とし込んで、WCBらしさを伸ばしていけたらと思っています。
Q. 年末年始におすすめのビールを教えてください!

バストン・デレックさん:『TDHSSR 2026 First Sunrise Edition』(Triple Dry-Hopped Hazy Triple IPA / 9.0% ABV)です。
毎年恒例のお正月ビール「TDHSSR」の午年バージョンを今年もリリースしました。3度も重ねるドライホップで使うホップ品種自体は昨年と同じですが、WCBが保有する中から、その年の仕上がりイメージに最も近いロットを改めて選び抜いて使用しています。
鮮やかなトロピカルフルーツを思わせる濃厚なアロマや、果実を思わせる甘さとなめらかな口当たりが重なり、一度飲んだら忘れられない味わいに。フルボディでハイアルながら、気付けばスルスル飲めてしまう、ちょっと危険で特別な一杯です(笑)。毎年このビールを楽しみにしてくれるファンの存在も大きくて。同じタイミングで同じビールを味わう、WCBならではの“お正月のムーブ“を、みんなと一緒につくれていることが何より嬉しいですね。
Q. この一年で思い出に残ったビールと、この一年で思い出に残ったビールのあるシチュエーションを教えてください。

バストン・デレックさん:今年飲んだ中で特に印象深かったのは、オーストラリアの「Onedrop Brewing」がアメリカの「Green Cheek Beer」とコラボしたビール『CHECKMATE』(Cali IPA / 7.2% ABV)です。
仕込みの際、数日前にペレット化したばかりのKrush(ホップ)を使ったそうで、とにかく鮮烈なアロマや味わいにビックリ。やっぱりホップは鮮度が命だな……と、これを飲んで改めて感じました。
我々も海外まで足を運んでホップを買い付けに行っていますが、自分たちで求めて動いていかないと出会えないモノってあるんですよね。この一杯を飲んで、その姿勢をこれからも大事にしようと思えたし、理想の味に近づくためには、まだまだ探求を続けることが一番大切だと背中を押された気がしています。
■関連記事:
・【東京駅直結】WCB初の東京直営店「Hopbeat Records」に行ってきた!
・【東京・虎ノ門】WCBの東京2号店「WCB The Room」が8/15にオープン!オープンを祝した限定ビールも
「2つの願いが叶う」
5人目:株式会社キルク 代表取締役 森大地さん

森大地(Daichi Mori)さん
2010年、音楽レーベル「kilk records」と株式会社キルクを設立。バンド「Aureole」のメンバーとしても活動。CM・映画・ゲームなど、ジャンルを問わず幅広い音楽制作に関わる。2013年、埼玉県さいたま市北区宮原町にライブハウス「ヒソミネ」をオープン。2016年には同エリアにカフェダイニング「bekkan」を開業(のちにクラフトビール醸造所「Teenage Brewing」のタップルームとして移転)。2017年には東京・神楽坂にライブハウス「神楽音」を開業し、その後事業を譲渡。2019年には東京都三鷹市にライブハウス「NEPO」、2020年には同地にサンドイッチ店「MOCMO sandwiches」を開業(現在は事業譲渡)するなど、音楽と食、空間づくりを通じて、人々の心を動かす体験の創出をテーマに多彩な事業を展開。2023年6月には、埼玉県比企郡ときがわ町にクラフトビール醸造所「Teenage Brewing」を設立。“10代の頃にあった恐れを知らない飽くなき探究心”と“既成概念にとらわれない自由な創造性”を原点に、驚きと感動を届けるクラフトビールづくりに取り組む。IPAを中心に、サワーエール、スタウト、ラガーなど多様なスタイルを展開し、音楽や映画といったカルチャーとの融合も大切にしている。
2025年より、バンド「downy」のサポートメンバーとしても参加。FUJI ROCK FESTIVAL ’25への出演も果たしている。
2010年、音楽レーベル「kilk records」と株式会社キルクを設立。バンド「Aureole」のメンバーとしても活動。CM・映画・ゲームなど、ジャンルを問わず幅広い音楽制作に関わる。2013年、埼玉県さいたま市北区宮原町にライブハウス「ヒソミネ」をオープン。2016年には同エリアにカフェダイニング「bekkan」を開業(のちにクラフトビール醸造所「Teenage Brewing」のタップルームとして移転)。2017年には東京・神楽坂にライブハウス「神楽音」を開業し、その後事業を譲渡。2019年には東京都三鷹市にライブハウス「NEPO」、2020年には同地にサンドイッチ店「MOCMO sandwiches」を開業(現在は事業譲渡)するなど、音楽と食、空間づくりを通じて、人々の心を動かす体験の創出をテーマに多彩な事業を展開。2023年6月には、埼玉県比企郡ときがわ町にクラフトビール醸造所「Teenage Brewing」を設立。“10代の頃にあった恐れを知らない飽くなき探究心”と“既成概念にとらわれない自由な創造性”を原点に、驚きと感動を届けるクラフトビールづくりに取り組む。IPAを中心に、サワーエール、スタウト、ラガーなど多様なスタイルを展開し、音楽や映画といったカルチャーとの融合も大切にしている。
2025年より、バンド「downy」のサポートメンバーとしても参加。FUJI ROCK FESTIVAL ’25への出演も果たしている。
Q. 2025年の活動を「漢字一文字」で表すなら?

森さん:今年の漢字は「叶」です。
まずハイライトとして、FUJI ROCK FESTIVALの公式ビールの醸造と、アーティストとしての出演という2つが叶いました。
そもそもフジロックに出演するきっかけとなったのは、今年2月に尊敬するバンド downy にサポートメンバーとして加入したことです。20代の頃からずっとリスナーとしても大好きだったバンドで、メンバーとはプライベートで親交があったものの、まさか加入という形で一緒に演奏できるとは思っていませんでした。
また、フジロック公式ビールにつながったのは、BREWDOGとのコラボレーションがきっかけです。クラフトビールにハマる原点となったPUNK IPA。そのオマージュとして「TEENAGE PUNK IPA」というビールを醸造できたことも、まさに夢のような出来事でした。
夢が叶うことが多かったですが、当然、平坦な道ではありません。順調に見える人でも裏側には苦労があります。自分も同じですが、「叶う」という瞬間の尊さがたまらなくて、そのためにがんばり続けられています。
Q. 2026年はどのような1年にしたいですか?
森さん:2025年は「叶いつつも激動」の一年でした。今自分たちに足りないのは、調和と安定だと思っています。採算度外視で突っ走ってきた部分も多く、売上は大きく伸ばすことができましたが、それに対してさほど利益が出ていないのも事実です(笑)。
従業員も常にバタバタで、会社として未熟な部分が多いので、ここからは徹底した管理体制の構築に力を入れていきたいです。調子に乗ることなく、謙虚に、しっかりと基盤を整える1年にしたい。そして2026年の終わりには、常温流通を実現することを目標にしています。
Q. 年末年始におすすめのビールを教えてください!

森さん:年内に閉店してしまう大好きなBREWDOG六本木との最後のコラボビール「Avant-Dog 4ever」は絶対に飲んでほしいです。
マンゴー、バナナ、ハバネロ、カルダモンなどを使ったスムージーサワーエールで、賛否両論間違い無しの狂ったビールかと(笑)。
さらにTeenageのサブブランド「Nobody Brewing」から、柚子胡椒ゴーゼ「The Free Jazz」もおすすめです。柚子胡椒がしっかり効いていて、フードペアリングもいろいろできそうな逸品です。Q. この一年で思い出に残ったビールと、この一年で思い出に残ったビールのあるシチュエーションを教えてください。

森さん:Ballast Point『Indra Kunindra』、Seoul Brewery『Gold Rush California Common』、Totopia Brewery『3phobia』、パッと思い浮かんだ3つです。
思い出に残ったのはやっぱり、フジロックの会場で飲んだ自分等のビールは感慨深かったです!
■関連記事:クラフトビールをもっと身近に!Teenage Brewingのセカンドブランド・Nobody Brewing始動!3種を飲んでみた
「地方・地域との取り組み、地に足のついた地道で地味な取り組みを」
6人目:Far Yeast Brewing株式会社 代表取締役社長・創業者 山田司朗さん

山田司朗さん
大学卒業後、インターネット業界で経営・財務に従事、2005年ケンブリッジ大学にてMBAを取得。3年間の欧州生活中に多様なビール文化に触れる。2011年にクラフトビール製造販売のFar Yeast Brewing株式会社を設立し、代表取締役就任。2020年には醸造所のある山梨県小菅村に本社を移転し、地域での取り組みを強化している。創業以来世界への発信にも力を入れ、代表銘柄である「馨和 KAGUA」「Far Yeast」は世界27カ国で販売されている。
2024年より一般社団法人全国地ビール醸造者協議会の理事を務める。
大学卒業後、インターネット業界で経営・財務に従事、2005年ケンブリッジ大学にてMBAを取得。3年間の欧州生活中に多様なビール文化に触れる。2011年にクラフトビール製造販売のFar Yeast Brewing株式会社を設立し、代表取締役就任。2020年には醸造所のある山梨県小菅村に本社を移転し、地域での取り組みを強化している。創業以来世界への発信にも力を入れ、代表銘柄である「馨和 KAGUA」「Far Yeast」は世界27カ国で販売されている。
2024年より一般社団法人全国地ビール醸造者協議会の理事を務める。
Q. 2025年の活動を「漢字一文字」で表すなら?

山田さん:今年の漢字は「地」です。
地方・地域との取り組み、地に足のついた地道で地味な取り組み、という意味の「地」です。
2017年から山梨県小菅村に醸造所を構えて8年。地道に地域との取り組みを推進して、近年では地域に密着したブルワリーとして認知されるようになりました。桃、ぶどう、すももなど山梨県産の原材料を使って、地域の生産者と一緒に創り上げるシリーズ「Brewed with Yamanashi」も定着しつつあり、桃のビールPeach Hazeは今年で6年目を迎えました。

今年は小菅村でお客様を迎え入れる施設(レストラン・タップルーム、ビール造り体験、農園などの複合施設)Beer Adventureも開業し、ますます「地」を推進できました。
Beer Adventureは、地域に根ざした活動をしていく中で、Far Yeastに興味を持って小菅村を訪問したいと思う方が少しずつ増えてきました。今までFar Yeastの工場にはビジター向けの施設がなく、一般のお客様の工場見学をやっていなかったので、お客様を迎え入れる施設はずっと作りたかったんです。
今回は「どうせやるなら」ということで、都会のタップルームではできない山奥ならではのオリジナルな体験を提供したいと思い、ビール醸造や大麦・ホップ栽培を体験できる場所として整備しています。
Q. 2026年はどのような1年にしたいですか?

山田さん:こんな時代だからこそ何事もなく無事に過ごしたいです。クラフトビール業界も激動、国際情勢や国内の政治・経済も変化が大きな時代だと思います。平穏無事で過ごすことは決して簡単なことではないですよね。
Beer Adventureの構想としては、自分でビールを造ってみたい、大麦やホップの栽培を体験してみたい、製麦工程を見てみたい、工場見学の最後にビールを堪能したい、田舎の景色を見ながらのんびり食事したい、子供連れ・ペット連れでも食事やビールを楽しみたい、ハイキング・ランニング、釣り、自転車などのアクティビティの後にビールを楽しみたい、いろんなニーズに応えられる施設にしたいと思います。
農園や製麦棟などのこれから整備する施設もありますので、これからどんどん形を変えて進化する様子も楽しんでいただければ嬉しいです。
Q. 年末年始におすすめのビールを教えてください!

山田さん:『Far Yeast TAPECUT ~14th Anniversary~』です。Far Yeast Brewing創業14周年を記念して造りました。
第2創業ともいえる小菅村の源流醸造所の記念すべきファーストバッチ『TAPECUT』のレシピをベースに、ホップ品種やホップの使い方をアップデートしています。West Coast IPA以前の古き良きAmerican IPAスタイルを意識したモルト感も特徴の一つです。いまMid West IPAとして再び注目を集めるスタイルと偶然にも一致しています。
定番ビールはじめおすすめビールはたくさんありますが、せっかくなので自分がレシピ担当した銘柄をチョイスしました。
Q. この一年で思い出に残ったビールと、この一年で思い出に残ったビールのあるシチュエーションを教えてください。
山田さん:COEDO×WAKAZE"Summer Fall" 「サケビール(Brut IPA Blend)」です。
親交のあるWAKAZEさんが渋谷にオープンさせた新店「SummerFall TAP COCKTAILS」で飲みました。弊社も日本酒酵母や麹を使ったビールを造りますが、これは衝撃的でした。この手のハイブリッドなスタイルで、ここまでホップアロマを引き出したビールは今まで飲んだことがありません。
クラフトビールの楽しみの一つは、今までに飲んだことのない斬新なビールに出会うことだと思います。このビールとの出会いはまさにそんな瞬間でした。
■関連記事:「Hazy IPA」に真正面から向き合う。Far Yeast Brewing 限定醸造ビール『IGNITION』を飲んでみた
「手間と責任」
7人目:Craft Beer Server Land 赤坂見附 マネージャー 渡邊 光太郎さん

渡邊 光太郎さん
1986年秋田生まれ2児の父。2016年に働いていた恵比寿の飲食店でのクラフトビールの取り扱いがきっかけで魅力に惚れ込みビアソムリエの資格を取得。もっと専門店で働きたいと思い、長年働いた会社を退社し現職の「Craft Beer Server Land」へ2018年入社。寿司・イタリアン・デリカテッセン・鉄板焼き・創作料理と今まで経験させて頂いたスキルを活かし、料理人目線でのクラフトビール文化発展に注力する。
1986年秋田生まれ2児の父。2016年に働いていた恵比寿の飲食店でのクラフトビールの取り扱いがきっかけで魅力に惚れ込みビアソムリエの資格を取得。もっと専門店で働きたいと思い、長年働いた会社を退社し現職の「Craft Beer Server Land」へ2018年入社。寿司・イタリアン・デリカテッセン・鉄板焼き・創作料理と今まで経験させて頂いたスキルを活かし、料理人目線でのクラフトビール文化発展に注力する。
Q. 2025年の活動を「漢字一文字」で表すなら?

渡邊さん:今年の漢字は「拘」です。
私は「拘り=手間と責任」だと思います。

クラフトビールは楽しい飲み物ですし、外食は美味しくて当たり前のことです。赤坂見附店では如何に”お客様に世界観を楽しんでいただくか”をテーマにビールクオリティ・サービス・フード・イベント力の向上を日々目指し、ブラッシュアップを繰り返してきました。
コロナ明けから昨今は都内ビアバー・ブルワリーの数は国内トップレベルまで増え、クラフトビール文化は目まぐるしい発展をしてきました。飽和状態もしくは戦国時代と言ってもおかしくない状況下です。
そんな現代において、”如何に自店の拘りをお客様にお届けすることが出来るか”を常に強く持ち運営してきました。有難いことに、名物イベントや拘りのフードを目当てで遠方からご来店して下さる方も増えてきました。
Q. 2026年はどのような1年にしたいですか?
渡邊さん:Craft Beer Server Landは神楽坂本店、赤坂見附店に続く3店舗目の出店を目指しています。

一緒に働く仲間が増えて他分野や社外のビアバー様とも何か合同で企画が出来たらと思っております。
今後もお客様やブルワー様に選び続けてもらえるような店舗創りに精進していきたいです。
Q. 年末年始におすすめのビールを教えてください!
渡邊さん:年末年始におすすめしたいビールはベルギービールですが「セゾンデュポン」です。フルーティーでコクがありしっかりと飲みごたえを感じれます。こたつに入りながらみかんやチーズと一緒に楽しみたいですね。Q. この一年で思い出に残ったビールと、この一年で思い出に残ったビールのあるシチュエーションを教えてください。
渡邊さん:FETISH CLUB「アノマリー」(IMPERIAL PASTRY STOUT Alc.12)は、まるで、とろけるチョコレートブラウニーのように濃厚でリッチ。チェリーとバニラの香りにマロンのコクが溶け合う、ゴージャスなスタウト。今年で一番衝撃を受けたブルワリー様の1つです。山口県にブルワリー、浜松町(東京)にビアバー併設のマイクロブルワリーがありますので是非行ってみてください。
思い出に残ったビールのあるシチュエーションは、息子の誕生日で実家に帰省した際、5L樽のハイネケン(オランダ産)を父親と開栓したことです。いつもより味わい深い感じがしました。
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〇Instagram:https://www.instagram.com/craft_beer_server_land.akasaka/
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以上、ビール業界で活躍する7名の“ビール人”に、今年の一年を漢字一文字で振り返っていただきました。
2025年には「さまざまなことにチャレンジしていく!」という気概を感じるコメントに、ビール女子編集部一同パワーをもらいました。
みなさんも、ビール片手に自分の一年をゆっくり振り返りつつ、来年の抱負も語り合って過ごしてみましょう!
\過去の「7人のビール人」インタビュー/




お酒は二十歳になってから。
