皆さんは「クラフトビール」と聞いて、最初にどのビアスタイルを思い浮かべますか?代表的なビアスタイルとして、芳醇かつ、アロマが長く香る「ペールエール」や「IPA」を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。
そんな「ペールエール」「IPA」の発祥の地はイギリスであることをご存知ですか?筆者は、日本にいた頃からそれらのビアスタイルをこよなく愛し、「発祥のイギリスでビールを飲みたい!」という気持ちが募りすぎて、うっかり海を渡ってしまいました。
そんなイギリス在住の筆者が考える、イギリスでビールを楽しむ上での基本となる「パブ」について、そしておすすめのビールスポット「パブ」「ブリュワリー」についてご紹介します。
居酒屋だけじゃない!カフェやランチも楽しめる「パブ」
イギリスと言えば、「ハリーポッター」「アフタヌーンティー」「王室」「サッカー」など思い浮かぶなか、ビール好きの皆さんは「パブ」が真っ先に思い浮かぶのではないでしょうか。その数なんと、イギリス全土に27,650軒、ロンドンだけでも3500軒以上と点在しています。
日本でも、ビールを楽しむ場所の1つとして「アイリッシュパブ」が普及していますよね。
「パブ」の正式名称は「Public House(パブリックハウス)」。中世時代より地域コミュニティには欠かせない存在となり、政治、スポーツ、噂話など様々な情報交換が行われる集会所として急速に発展しました。また宿泊所の飲食の場所としてもパブが併設されており、今でも一部のパブには宿泊機能が残っています。
「パブ」はビールやお酒を飲む場所のイメージが強く、時折“イギリススタイルの居酒屋”と例えられます。しかし「パブ」の居酒屋としての顔は個性の1つに過ぎません。
居酒屋以外には、「スティッキープディング」と呼ばれるパブスイーツが昼から楽しめるカフェ的側面があったり、仕事終わりや女子会などが行われる社交場になったり。はたまた、休日の土曜日のランチ過ぎには子供からお年寄りがパブに集まって地元のサッカーチームを応援する場所になったり、家族で団欒するファミレスとして日曜のランチに「サンデーロースト」を楽しんだりと、幅広く活用ができます。
日本人の思う居酒屋は夕方17:00~23:00の夜間営業、アルコールと食事を楽しむ大人の憩いの場だとすれば、パブは11:00〜23:00までのロングラン。そして、子どもだけでなくペット(犬)も歓迎される。犬の散歩のついでに1杯、家族でランチ、週末はデート・パーティなど、広い用途で活用できて、「サクッと1杯」もウェルカムです。
ちなみに、シェークスピアが執筆のために訪れたパブや、切り裂きジャックの事件現場となったパブなど、歴史好きにはたまらない場所も多数存在します。
パブで飲めるビアスタイル
パブには、少なくてもタップは5種類、多ければ20種類ほどあります。
日本では、国民的ビールとして「ラガー」がよく飲まれていますが、イギリスといえば「エール」。当たり前に複数の「エールビール」が並び、歴史あるイギリスの大手メーカーと、市内のブリュワリーから仕入れられたクラフトビールの両方が楽しめます。また、イギリスならではのハンドポンプで注がれる「カスクビール」を気軽に飲むことができます。
エールだけでなく、ラガーも多く提供していて、日本ではあまり見かけないイタリア『Peroni』や『Morettie』、スペイン『Madrid』、オランダ『Amstel』、オーストラリア『foster's』など、ヨーロッパで人気の大手メーカーの顔が並びます。日本の『アサヒビール』を見かけることも。
そして、日本の居酒屋と違って、イギリスのパブには淡色のビールから濃色のビールまでがデフォルトで揃っています。そのため、お寿司のように「淡→濃」の順番でビールを嗜むもよし、最初からイギリスを代表する濃色ビール『ギネス』一本で攻めるもよし。日本では少数派の黒ビールオンリー派も多くいるので、あなたの好きなスタイルを注文しましょう。
パブにはない面白さ「ブリュワリー」
フレッシュで個性的なビールに出会える場所としておすすめしたいのは、やっぱり「ブリュワリー」。街ブラついでに寄れるパブとは違い、ロンドン中心から電車で20~30分の場所にあり、住宅街にひっそり佇んでいたり、高架下、工場の跡地などに連なるところも。
イギリス全土で1800軒以上、ロンドン市内だけでも100件以上点在しています。ちなみに筆者は、8ヶ月でロンドン市内のブリュワー&タップルーム、70軒を制覇しました!
厳選して3~5種類のみを醸造するマイクロブリュワリーや、20以上のオリジナルビールを抱える大型ブリュワリーなど、各社それぞれの個性のある新鮮なビールを提供しています。
イギリスのブリュワリーのビールは、「ペールエール」「IPA」は絶対的ポジションを築き、さらに「ヘイジーIPA」「ウエストコーストIPA」」「ポーター」「スタウト」が基本のラインナップ。エールの国だけど、もちろんラガービールもあるのでご安心を。
けれど、筆者の肌感ではウィートビールの遭遇率は低めです。フルーツの甘味と酸味が特徴的なサワービールを提供しているブリュワリーもあります。
ちなみに、水曜日〜日曜日営業をメインにするブリュワリーが多く、月・火はほとんど空いていません。旅行で訪問する際は注意が必要です。
イギリスに行くならここ!おすすめパブとタップルーム5選
パブとブリュワリーについてお伝えしたところで、筆者おすすめのパブ・タップルームを5カ所ご紹介します!【おすすめパブ1】プリンセスルイーズ(The princess louise pub)
ロンドン中心部に現存するビクトリア様式の建物の中にある「プリンセスルイーズThe princess louise pub」。
鏡、モザイク、タイル、真鍮など、建築的および歴史的に価値の高いパブです。
ここには、パーテーションで仕切られたアイルランド式の「スナグルーム」と呼ばれる個室があるので、少人数で落ち着いて飲みたい時におすすめ。
自社オリジナルのビールのみを取り揃えているので、歴史とユニークなビールを同時に味わえる貴重な場所です。
以前訪れた時に飲んだペールエール『 Samuel Smith Organic Pale Ale(サミエルスミスオーガニックペールエール)』は、ペールエールよりもアンバーエールに近く、大麦の深みと後味にほんのり醤油のような酸味が効いた1杯。これ以外にフルーツビール派も嬉しい、チェリー、ストロベリー、ラズベリー、アプリコットなどのビールも、ボトルで揃っていました。
【おすすめパブ2】ザ ジョージイン(The George Inn)
1676年に建設された「ザ ジョージイン The George Inn」は、ロンドンに唯一残る伝統的な馬車宿です。現在はパブ兼ギャラリーとして運営され、多くのビジネスマンが集います。
ロンドン市民に愛される大手ロンドンのクラフトビール「ビーバータウンブリュワリー(Beavertown brewery)」「カムデンタウンブリュワリー(Camden Town Brewery)」のビールを楽しみながら、16世紀の趣ある空間やインテリアに浸ることができます。
さらに、人気のフードマーケット「バラマーケット」にも近く、観光ついでにフラっと寄れるのも魅力の一つです。
【おすすめブリュワリー1】クラウドウオーター(Clowdwater)
ロンドン観光地から最も近く、多くのブリュワリーがつらなるエリア・バーモンジーに構える「Cloudwater」。本拠地は北西に位置するマンチェスターにあります。
日本でも飲める機会が増えていたり、山梨県のブルワリー「うちゅうブルーイング」との協業を行っていたりと、日本人として注目したいブリュワリーでもあります。
常時12~15種類ほどの様々なスタイルのビールを提供しているだけではなく、お土産ビールも手に入る一石二鳥な場所。女性1人でも入りやすいほど柔らかでポップな雰囲気なので、ロンドンに訪れた際必ず行って欲しい場所です。
【おすすめブリュワリー2】ロンドンビアファクトリー(London Beer factory)
24種類のタップで、自家樽熟成ビールとゲストビールを提供する「ロンドンビアファクトリー London Beer factory」。
壁一面にオーク樽がずらりと並び、圧倒されること間違いなしの空間です。思わずあちこちで写真を撮りたくなってしまいます。
こちらもバーモンジーというエリアにあり、「クラウドウオーター」から歩いて5分(酔っ払ってたら10分くらい)の位置にあるので、はしご酒がしやすく、筆者もお気に入りの場所です。店内も中二階があるため、一見混んでいそうでも入れば席が見つかるはず。
【おすすめブリュワリー3】ロンドンビアラボ(London Beer Lab)
ステンレスのタワーが連なるブリュワリーは数多くありますが、ここは一風変わっていて、さまざまな麦芽を陳列したブリュワリー。ここでは大規模の製造を行うものを「London Beer Lab」、ビール作り体験ができるワークショップで作られたビールや実験的な組み合わせを少量で製造するものを「Nano」と呼び、2つのコンセプトのビールを軸においています。また、数社のゲストビールを交えています。
ロンドン市内からは少し距離がある「ブリックストン」に位置しますが、駅から歩いて3分の好ロケーション。
ビールのラインナップは、白ビールから黒ビールまであり、変わり種のroast IPAやKeves IPAなども揃うことがあります。
ビール作り体験も行える貴重な場所なので、興味がある方はぜひ足を運んでください!
ペールエールやIPAの発祥地で、ビール旅を
今回は、イギリスのビール文化の多様性と魅力についてお伝えしました。日本でもさまざまなスタイルのクラフトビールが楽しめるようになりましたが、「ペールエール」「IPA」の発祥地であるイギリスの地を、一度訪れてみてくださいね。