ビール女子のみなさま、こんにちは!ポートランド在住の東リカです。
ポートランドの女子ブルワーをリレー形式で紹介するこの企画。5人目は、自宅の裏庭でブルワリー「Leikam Brewing」を経営するソニア・マリー(Sonia Marie Leikam)さんです。
裏庭のブルワリー
待ち合わせ場所は閑静な住宅街にあるご自宅。玄関のベルを押そうとしたのですが、裏の方から機械音が聞こえてきます。気になって、そっと覗いてみると…
何と、裏庭でビールの缶詰作業が行う方を発見…! その横で作業中のソニア・マリーさんも発見。さっそく色々聞いてみましょう!
ソニア・マリーさん、こんにちは!勝手に入ってすみません。それにしても、聞いてはいましたが、裏庭でブルワリーってすごいですね!
Sonia Marie
私たちのブルワリーへようこそ。今日はちょうど缶詰機が入る日なの。トラックで機械を搬入して、ここに設置して作業していたところ。
なるほど。普段は「普通の」裏庭なんですね。菜園もいい感じです。もしやホップも育てていたり?
Sonia Marie
もちろん! 今はもう枯れてるけどね。うちのホップでフレッシュホップのビールを作るのよ。私たちのブルワリーはここの奥。
本当に自宅と職場が近いですね(笑)。ブルワリー名の「Leikam Brewing」もストレートにご家族の名字ですし、ロゴも近所の橋がモチーフですよね。
Sonia Marie
そう、「ホーソン橋」よ。橋につけた3つの星は息子たちを表しているの。
子供と過ごしたくて始めたファミリービジネス
ご夫婦でブルワリーを仕事にするきっかけは何だったのですか?
Sonia Marie
息子が3人いるんだけど、3人目を妊娠した時に、自分たちで時間をコントロールできるファミリービジネスをしたいって思ったの。
家族を養うためのお金はもちろん必要なんだけど、それ以上に家族で過ごせる時間が大切だって二人とも感じてたから。それで、夫のセオ(Theo)が趣味にしていたホームブリューイングをビジネスにしようって決めたの。
小さい子供が3人いる中、仕事を辞めて新事業に乗り出すなんて、すごく勇気がありますね!ご希望通り、子供たちと時間を過ごせていますか?
Sonia Marie
会計士だった夫は前に比べて断然子供たちと一緒に過ごす時間が増えた。私はまだ外でもパートで働いているの。だから今は仕事を掛け持ちしている分、前より忙しいかも。
でも、将来への投資だと思ってる。それに、たとえ交代でも両親のどちらかが必ず子供の側にいられるってことが何より大事だから。
ブルワリーを始めたことへの子供たちの反応はどうですか?
Sonia Marie
家がブルワリーって結構自慢みたい。3人ともビールの原料や作り方を知っているし、手伝ってもくれる。将来、長男はうちのブルワリーのシェフに、次男はウエイターに、三男はブルワーになりたいって(笑)。
ホームブリューイングはセオさんの趣味だったとおっしゃいましたが、ソニア・マリーさんもビール好きだったのですか?
Sonia Marie
うん。私は、パンやチーズ、ヨーグルトとか食べるものを手作りすること全般が好きだから、ビール作りも楽しいわ。
飲むならダークビールが一番。妊娠中もダークビールばっかり飲みたくて、三男の名前はポーターっていうほどよ(笑)。
ポートランド初のコーシャ(ユダヤ教で定める食べ物に関する規定)認定ブルワリーなんですよね?
Sonia Marie
ええ。うちの家族がユダヤ系だから、それを反映して。ユダヤ系コミュニティのみんなにも安心して飲んで欲しいから。
ビールはここで販売していますか?
Sonia Marie
CSB(Community Supported Brewery:ビールシェアを予め購入し、年間を通して生産されるビールを受け取る仕組み)の顧客はそうね。夏場は、いくつかのファーマーズ・マーケットにもブースを置いて販売しているから、そこでもピックアップできる。CSBとファーマーズマーケットは、「ビールでコミュニティ作りをする」という私たちのブルワリー哲学にマッチしているから始めたの。
あとは、レストランとかパブでも飲めるところがあるし、この秋から缶ビールの6パックを作るようになって、地元の高級スーパーでも販売してる。
夢について語らせてくれるブルワリー
ブルワリーの経営は、どのような感じですか?
Sonia Marie
基本2人しかいないから全部協力するんだけど、メインの担当は、理系で几帳面な性格の夫が原料選びや購入、運搬、会計、それに力仕事で、アート系で社交的な私がマーケティングやセールス、顧客サービスかな。
ビール作りに関しては、セオがヘッドブルワーで私がアシスタントブルワー。夫の知識や経験に、私が新しいアイディアを足していくの。
ビール作りは、理系とアート系の両方が必要だと言いますもんね。いいパートナーですね。ビールを通して知り合ったとか?
Sonia Marie
まさかー。知り合ったのは、私が11歳で彼が12歳の時よ!私はフランス出身なんだけど、父の仕事の都合でカリフォルニアに引っ越した時にセオと出会ったの。ずっと友達で、付き合い始めたのは、私が16で彼が17の時。それ以来、ずっと一緒。先週、付き合って20年の記念日を祝ったばかりよ。
何と!幼馴染とは。そんな長い付き合いで、仕事もプライベートも一緒って、どんな感じですか?もう彼のことはなんでも分かっちゃうんじゃないですか?
Sonia Marie
彼はいまだに私のこと、驚かせるわ。
夫婦がビジネスのパートナーにもなると、プライベートに悪影響を与えるかもしれないってことは、二人とも最初から覚悟してた。でも、意見が食い違っても、話し合いで乗り越えられると思ったの。もちろん関係が悪化する前に、セラピーに行ったり、デートの約束をしたりって努力もしてる。
女性ブルワーはまだ少ないですが、女性であることによって、何か違いを感じますか?
Sonia Marie
女性だからというよりも、親だってことがハンデかも。
ポートランドのクラフトビール業界では、多くの女性が活躍しているし、ブルワーはいいもの作れば、性別を問わずに認められると思う。
でも、意外とこの業界に子供のいる夫婦が2人揃って参画していることって少ないの。カップルでも子供がいないか、親でも片方だけかで。業界の集まりは夜が大半なんだけど、子供がいると、なかなか二人揃っては行けなくて…。
なるほど、それは思いつきませんでした!子供がきっかけで始めたのに、なんだか皮肉ですね。後悔はありませんか?
Sonia Marie
ないわよ!もしも明日ブルワリーが閉鎖することになっても、できることはやったし、セオと一緒にすごく美しいものを作ったって思えるわ。4人目の子供を持ったようなものかも。
ブルワリーは、私たち夫婦に驚きや挑戦をもたらして、クリエイティブになることを強いる。
夫婦って、子供ができると現実的にならざるをえないところがあるでしょ。日々のルーティンだけで手いっぱいになるし、話題も子供のことばかりとか。でも、ブルワリーのおかげで、セオと夢を語れるの。夢を見続けさせてくれる。
お二人の夢はなんですか?
Sonia Marie
夢は状況に合わせて変わっていくけれど、目下のところは、このブルワリーをもっと大きくすること。実際、ビジネス拡大のための物件を探しているの。みんなが集まる場所を作りたい。
家族から始まって、コミュニティに広がるってことですか?
Sonia Marie
そう。ビールって、コミュニティのみんなが時間を共有して、関係を強固なものにするためのツールになると思う。ポートランドは特に、みんなビール好きだしね。
最後に、日本のビール女子へのメッセージをお願いします。
Sonia Marie
できるだけたくさんのビールを試してほしい。IPAとか、スタウトとか、このスタイルが好きじゃないって聞くと、美味しいやつを飲んでないだけじゃないかって思うの。同じスタイルでも作り手によって味は違うから、1つを飲んで諦めるのはもったいないわ。
ソニア・マリーさん、ありがとうございました!
■Leikam Brewing:http://leikambrewing.com/
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