Bar 【妙蓮寺】ビール愛溢れる元バスガイド姉妹と母が営む“旅する食べ飲み屋“『SIBLINGS by Toyama sisters』

東急東横線・妙蓮寺駅。

横浜駅から電車で7分。渋谷駅からは30分ほどの場所にあり、改札を出るとすぐに駅名の由来にもなっている「妙蓮寺」への大きな門が出迎える、落ち着いた穏やかな空気が流れる町。

いくつかの昔ながらの商店街が今も健在で、この町で暮らす人たちの会話が心地よく聞こえてきます。歴史が感じられる個人店に混じり、おしゃれなカフェなども点在しています。

今回は、そんな妙蓮寺に住む人たちの暮らしの一部になっているお店「SIBLINGS by Toyama sisters」（以下、SIBLINGS／シブリングス）を取材してきました。

ここは、“元バスガイドの姉妹と、その母で営む「旅する食べ飲み屋」”なのだとか。どんなお店が待っているのか、ワクワクしながら伺ってきました！

駅から徒歩2分。歴史ある商店街の一角にあるお店

駅から徒歩2分ほど。懐かしい雰囲気の漂う「池ノ畔（いけのはた）商店街」のアーケードを抜け、少し歩いて行くと…。


お店の看板が見えてきました。ここが今回の目的地「SIBLINGS」です！


入り口にあるポスターからも、ビール好き姉妹の仲の良さが垣間見えます。
入店すると東山姉妹の姉・玲奈（れな）さんと、妹・生来（みらい）さん、そしてお母様がとびきりの笑顔で迎えてくれました！

一人でも、家族と来ても居心地が良い店内

お店は2階建てになっていて、1階はL字型の立ち飲みスペース。カウンターにはサクッと一人飲みの方やスタッフとの会話を楽しみに来ているお客さんが集まります。

姉妹どちらもプライベートで飲みに行くときに、カウンターで生まれる周りの方との会話を楽しんでいるそうで、お店を開くときにはカウンターメインのお店にしたいと自然と構想していたとか。


2階はテーブル席になっているので、グループやお子様連れの家族の来店ももちろんウェルカムです。


一際目立つネオンサインや壁のアートは、姉妹がずっと好きだったアーティストさんにお願いして仕上げてもらったそう。

お店のハツラツとした雰囲気をよく表しているアートになっていて、店内の雰囲気をパッと明るく照らしてくれます。


ポップな店内を見渡してみると、なんだか黄色の配色多めな気が…。どうやらこの黄色は姉妹のルーツに繋がる色でもあるようです。

はとバスのガイドから「旅する食べ飲み屋」になるまで

数年前まで、都内を周遊する黄色い車体が目印の観光バス「はとバス」のガイドをされていたというお二人。先に姉の玲奈さんが入社し、妹の生来さんを誘う形で姉妹でガイドとして活躍されていたそう。

“バスガイド”と“ビール屋”は全く別の業界ですが、なぜ姉妹でお店をオープンすることになったのでしょうか。


バスガイド時代から「地ビール」を紹介する機会があり、ガイドの仕事を通してビールと関わることが多かったというお二人。さらに、生来さんは「はとバス」卒業後、キリンビールの工場ガイドを務めた経歴もあるそうで、ビールに関わることが多かったそうです。

お客様に説明するためビールの知識を深めていくうちに、お二人ともビールの魅力にのめり込んでいきました。


玲奈さん「『ガイドを卒業したら自然と姉妹二人でなんかしたいね！』という漠然とした思いだけがあって、それが飲食業なのか、これまでの経歴を活かした旅行関係の仕事なのか、迷っていたんです」

そんななか、二人でニューヨークに旅行へ行った際に立ち寄った「Brooklyn Brewery（ブルックリン・ブルワリー）」が、二人に大きな衝撃を与えたといいます。

生来さん「ブルックリン・ブルワリーはただビール好きの人が集まってビールを飲むだけではなく、子供がボードゲームで遊んでいたり、様々な場所からきた人が自由に好きなようにビールを楽しんでいる姿があって。『こういう場所いいな、つくりたいな』って思ったんです」


そこからビール屋を軸として、ガイドの経歴も活かせるような「何か」を二人で始めたいと模索していく中で、横浜の「ビアバイク」運営の方から連絡をもらい、立ち上げから関わる機会を得たそう。

「ビアバイク」とはオランダ発祥の「移動式ビアカウンター」で、運転手、乗客数人が乗り込み、ビールを飲みながら移動できる大型の自転車のこと。

ハンドルとブレーキを操作する運転手が飲酒していなければ乗客は自由にビールを楽しめます。ビアバイクは横浜で定期的に開催されており、現在も横浜近辺のブルワリーをめぐるツアーなどを行っています。


飲食店で勉強しながら、ビアバイクに乗ってガイドの仕事も掛け持ちするという生活が数年続きました。

そして、旅行先で訪れたお店との出会いや、ガイド経験を活かしたビアバイクの仕事を通じて、「ビール」と「旅行」の要素を掛け合わせた誰もが楽しめる「旅する食べ飲み屋」を姉妹で作ろうと方向性が決まっていき、2023年12月に「SIBLINGS」がオープンしました。

店名「SIBLINGS」に込められた思い

「SIBLINGS」は英語で「きょうだい」という意味で、BrotherやSisterとは違い、性別の区別はなく使われる言葉だそう。


玲奈さん・生来さん「私たちがSIBLINGSであるということはもちろん由来のひとつなんですけど、『お店に来たお客さん達が兄弟みたいになって仲良くなって帰って欲しい』という意味も込めて店名を「SIBLINGS」＝「きょうだい」にしたんです。趣味、思考、世代、ジェンダー関係なく、ここに来た人は誰でも居心地の良さを感じてもらいたいし、来てよかったと思ってもらえる場所にすることが私たちの願いです。そんな思いを店名に込めています」


実際に、1杯だけ仕事終わりにカウンターで飲んで行かれる方、お子様連れでお酒なしで食事を楽しむ方、家庭的なご飯を楽しみにして来る上京してきた大学生、週に何度も来ていて挨拶が「おかえり」になっている方…。様々なお客さんがSIBLINGSに足を運びます。


SIBLINGSがただのビアバーに止まらず、多くの人にとって「毎日でも行きたい」と思わせる魅力が詰まっている場所になっていることは、まさにお二人の思いが形になっていると感じさせられます。

「母の味」ベースのホッとする家庭料理

「毎日でも行きたい」と思わせる理由のもう一つが、料理のラインナップ。

定番メニューと日替わりメニューがあり、ラインナップも豊富ですが、それでも毎日来ても飽きないようにと、メニューのうち3〜4品は毎日入れ替えていると聞き驚き。

手書きのメニューは、子育てもあり夜にお店に立つことのできない姉の玲奈さんが毎日書いてアップデートしているそうです。


基本的に夜お店に立たれているのは、妹の生来さんとお母様のお二人。メニューは東山姉妹が小さい頃から食べて育ってきた「母の味」をルーツにアレンジされています。


ホッとする家庭料理のようなラインナップは、お客さんからとても好評だそう。そんなルーツを作られた東山姉妹のお母様は、SIBLINGSに来るお客さん「みんなのママ」のような存在になっているみたいです。

今回は選りすぐりのメニューの中から定番で人気のある4品をいただきました！


SIBLINGSの唐揚げ（2個ハーフ：税込450円）

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こだわりの国産鶏を使用したサクサクジューシーな唐揚げ。東山家の母の味をベースに、ビールによく合うようにややパンチを効かせたアレンジにしています。下味しっかりでにんにくも効いていて、これはビールが進む進む！


ニラ胡麻鶏ハム（税込650円）

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横浜名産の「岩井の胡麻油」を使用しているこだわりの一皿。低温調理のヘルシーな鶏ハムに風味豊かなニラダレ、仕上げの胡麻油が絶妙にマッチ。あっさりしていて止まらない味。


明太子とらっきょのポテサラ（税込650円）

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姉妹が今のところ1番お気に入りだという、ぜひ食べてもらいたい一品。明太子風味のポテサラにアクセントのらっきょうが良い味出してます。上にちょこんと乗っているとびっこもプチプチとしていて、様々な風味と食感が楽しめてテンション上がるおつまみ！


ママのモツ煮（税込650円）

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小さい頃から東山家の定番メニューとして愛されてきたママの味。臭みが出ないように手間をかけて仕込んだモツを使用していて、ご飯によくあう優しい味のモツ煮になってます。お酒のおつまみの印象が強いですが、ご飯にも合うのでお子様も食べられる人気の一品です。

姉妹セレクトのビールたち

クラフトビールのビアタップは4つ。定番で『キリン ハートランド』の樽生も飲むことができます。

どんなビールを仕入れるかは姉妹で相談しつつ、お客さんからの声も取り入れて決めています。

1番大切にしているのは、実際に自分たちが足を運んだブルワリーのビールを提供すること。


玲奈さん・生来さん「今はどこにいてもネットでクラフトビールを気軽に注文できるサイトもあって便利な時代ですが、ビールを造っている方に『私たちのお店でぜひ提供させてください』ということを伝えて直接コミュニケーションを取ることを大切にしています」


この日のタップリストの中から2杯ご紹介。


『NZ IPA』FARCRY BREWING 265ml/1,100円、384ml/1,300円（全て税込）

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SIBLINGSがバスツアーで醸造所見学にも行った、群馬県にあるブルワリー「FARCRY BREWING」のビール。ニュージーランド産のホップをふんだんに使用したホップの華やかさを楽しめるIPA。飲んでみるとホップの苦みはほとんど感じず、華やかなグレープフルーツ、白葡萄などのホップ由来のフルーティーさだけを抽出したような明るい味わい。食事にも合いそうなするする飲めるIPAです。


『ベイピルスナー』横浜ベイブルーイング 265ml/1,000円、385ml/1,200円（全て税込）

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長く付き合いのあるという、神奈川県の「横浜ベイブルーイング」が定番で仕込んでいるピルスナーです。チェコの伝統的な製法でつくられており、オールドクラシックな味わいが特徴。モルトのしっかりとした風味が感じられ、クリアで雑味のない味わい。何杯でも飲みたくなるビールです。


缶ビールも30種類以上が揃っています。缶ビールは見ているだけでも楽しくなる、パッケージが可愛いものを中心に揃えています。さすがおしゃれ姉妹のセレクト！冷蔵庫を眺めているだけでときめきが止まらない。

缶ビールは抜栓料込みの値段なので、店内で気になるものをすぐ飲めます。お持ち帰りも可能です！


その他、ビール以外のアルコールやソフトドリンクも豊富に取り揃えています。

また、姉の玲奈さんが昼営業に立つ際に不定期でジューススタンドも開いているそうで、自身が妊娠中に気に入って飲んでいたジュースなどを紹介しながら提供しているそうです。開催日はぜひInstagramアカウントをチェックしてください！

姉妹の夢を詰め込んだバスツアー

お二人にはお店をオープンしたら実現したかった夢がありました。それは、「ブルワリーを訪ねるバスツアーを主催したい！」ということ。

ちょうど取材日の数日前にツアーが開催された直後だったので、バスツアーについてもお話しを伺いました。


テーマはズバリ「大人の社会見学」。

2025年8月23日に開催したイベントの工程としては、群馬県にある「FARCRY BREWING」の醸造所見学＆ビール飲み放題をメインイベントとして、周辺の歴史的な史跡を訪ねたり、その土地の名産のお菓子工場の見学。大人が存分に楽しめる内容のツアーをお二人で考えたそう。


目的地までは、元はとバスガイドの東山姉妹の案内付き。実際にはとバスを貸し切ったそうで、現役ガイドだった頃の血が燃えたのではないでしょうか…！旅のしおりも作成し、本格的なツアー内容にお客さんからも大好評だったと言います。


お二人の思いと培われてきたガイドの経験も活かされた、“SIBLINGSだからこそできる”イベントであるところが魅力的です。

これからもツアーは定期的に開催していく予定とのことで楽しみです。ぜひ参加したい！

旅行業とビール屋の二本柱でお客さんをもっと笑顔に

「旅行業とビール屋という自分たちならではの強みをこれからもっと押し出して、さらに楽しんでもらえるようなお店作りやイベントの企画などに力を入れていきたい」と語る玲奈さんと生来さん。


性格が全く違うというお二人は、お店のことで意見が割れて喧嘩になることも少なくないとか。しかし、性格も得意なことも違うお二人だからこそ、お互いの足りないところを補いながら支え合っているように感じられました。

実際、インタビュー中も二人でピッタリ息を揃えて真っ直ぐな気持ちをお話ししてくれたり、ときには「こう伝えた方が良いんじゃない？」とアドバイスし合う姿を見て、「このお二人は最強のパートナーだ」と感じる瞬間が何度もありました。

また、そんな姉妹の傍でいつも笑顔で支える優しいお母様も、SIBLINGSに欠かせない存在なのだと感じます。


そんなあたたかい東山一家の一員に迎え入れてくれるような、「おかえり」が聞こえるお店SIBLINGS。

笑顔と元気が弾ける空間は、居るだけで元気をもらえる気がします。

ぜひ皆さんも足を運んでみてくださいね！