ビールには「ビアスタイル」といってビールの種類が豊富にあります。その数なんと150以上にのぼり、日々いろんなビアスタイルが生み出されています。
そして、特に人気を博しているビアスタイルに、フルーティな味わいと苦みが特徴的な「IPA」というものがあります。ビールに馴染みがない人でも耳にしたことがある人が多くいるかと思います。さらに、IPAの中にもたくさん種類があり、例えば「ヘイジーIPA」や「セッションIPA」「ブリュットIPA」など名前を挙げだすときりがなく、それぞれに異なる特徴があります。
そんななか、近年日本で密かに話題となっている「コールドIPA」というビアスタイルをご存知ですか。コールドIPAは、2018年にアメリカの醸造所ではじめて製造されたのがはじまりだと言われています。
今回は、新星「コールドIPA」の特徴や製造方法・発祥についてご紹介するとともに、編集部おすすめのコールドIPAについてご紹介します!
特徴は「ラガー酵母を使用」「副原料にお米」
コールドIPAが日本で話題になり始めたのは、2021年頃。そのため、まだまだ店頭で目にする機会が少ないのが実情。とはいえ、日本でも新たなビアスタイルとして、いくつかのブリュワリーが醸造するなど、じわじわと広がりを見せています。
そもそもコールドIPAとはどんなビアスタイルで、ほかのIPAとはどんな違いがあるのでしょうか?
コールドIPAの特徴は、次の2つ。
1.ラガー酵母を使用していること
コールドIPAの特徴として真っ先に挙げられるのはラガー酵母を使用していること。通常、IPAはエール酵母を使用して醸造するのが一般的ですが、コールドIPAはラガー酵母を使用しているため、キリっとしたドライな味わいを楽しむことができます。2.副原料に“お米”や“コーン”を使用する
副原料としてライスフレーク、つまりお米を使用したりコーンを使用したりするのも特徴のひとつ。日本では、アサヒビールなどを筆頭に副原料にお米を使用したビールはよく造られていて、実はお米を使ったビールは身近な存在です。キレのある味わいのコールドIPAをなじみ深く感じる人もいるかもしれません。
コールドIPAと、IPL(インディア・ペールラガー)の違いは?
ここまできて、ビール好きのみなさんの中には、ここで一つの疑問が浮かんだ人もいるのではないでしょうか?
それは、「ラガー酵母を使用しているコールドIPAは、IPAのラガー版であるIPL(インディア・ペールラガー)と何が違うの?」ということ。
その違いは、発酵温度にあります。
ラガービールは通常、「下面発酵酵母」という低温で長期間発酵する酵母を使用します。これに対して、エールビールは「上面発酵酵母」という常温に近い温度で短期間のうちに発酵する酵母が使用されます。その上で、コールドIPAはラガー酵母を使用しているものの、エールビールの温度で発酵させるのです。
さらに、発酵中に大量のホップを投入することで、フルーティーなホップの味わいがより強く感じられるようになります。こうすることによって、コールドIPAはドライな口当たりでありながら、フルーティーな味わいに仕上がります。
はじまりはアメリカのブルワリー
ブリュワリーはそれぞれ何かしらの信念をもって日々ビールを醸造しています。「Wayfinder Beer」オフィシャルサイト内の、コールドIPAのページには「HOW IT’S MADE(どのようにして作られているのか)」という見出しの項目がありますが、そこには「Cold IPA is the anti-thesis of NEIPA.」と記載されています。直訳すると、「コールドIPAは NEIPA(ニューイングランドIPA)に対するアンチテーゼ」。
ここ数年はニューイングランドIPA、すなわちヘイジーIPAがトレンドの中心となっていますが、コールドIPAのキレのあるドライな味わいは、まさにヘイジーIPAに対する真っ向勝負のようにも思えます。
また、同サイトの「WHAT IS A COLD IPA?(コールドIPAとは?)」という項目にはコールドIPAの歴史がつづられていますが、最後の一文は「It’s Wester than West Coast.(ウェエストコーストよりもさらに西)」と締めくくられています。このことから、ウェストコーストIPAの特徴である苦みとアロマ感をもっと追求したものがコールドIPAなのだと強調していることがわかります。
■「Wayfinder Beer」オフィシャルサイト:https://www.wayfinder.beer/
まずは飲んでみよう! 編集部おすすめコールドIPA 3選
さて、解説が長くなりましたが、やはり百聞は“一飲”にしかず。日本ではまだまだ手に入りづらいコールドIPAですが、比較的入手しやすいものをいくつかピックアップしてみました!「Wayfinder Beer」による元祖コールドIPA!
『オリジナルコールドIPA』
アメリカ・ポートランドのブリュワリー「Wayfinder Beer」が生んだ新たなスタイル、コールドIPA。コールドIPAという醸造法が世界に広がるきっかけになったビールです。飲みやすさを追求するために低温でろ過しているのがポイント。オールドスクールとニュースクールそれぞれのホップ品種を、なんとバケツ一杯使用しているそうです!その味わいは非常にドライでクリーン。
『オリジナルコールドIPA』
- 〇アルコール度数: 7.0%
〇内容量:473ml
〇URL:https://hatosbar.shop/items/624f9a646b87c37f7a5cb8cd
〇醸造所:WAYFINDER Beer.
ほのかな甘みと苦みの余韻が心地よい1本
『フリモント / レジェンド』
2009年に醸造を開始した、アメリカ・シアトルに位置する「Fremont Brewing」が手がけるコールドIPA。余韻の長い苦みとマイルドな口当たりが心地よく、少し温かみを感じるミディアムボディに仕上がっています。原料には、ストラタホップ、シトラクライオ、シトラ、センテニアルを使用。トロピカルなアロマとグレープフルーツなどの柑橘類、ベリー、フローラル、さらには草のような香りを感じることができます。
『ビール名(Beer Name)』
〇アルコール度数:7.0%
〇主原料:麦芽、ホップ、米〇内容量:355ml
〇URL:https://www.arome.jp/products/detail_2213.html
〇醸造所:Fremont Brewing
T.Y.HARBOR Breweryと伊勢角屋麦酒がコラボ!
『麗血IPA』
東京のT.Y.HARBOR Breweryと伊勢市の伊勢角屋麦酒がコラボレーション。二つの人気ブリュワリーが双方の醸造所で仕込んだというコールドIPAは、口のなかで“華麗”に舞い、ほとばしるような熱い想いと気を込めた“熱血”の文字から取った、その名も「麗血IPA」。IBU(苦みを示す指数)60というガツンとした苦みと、ソリッドなホップの香りが口いっぱいに広がります。『麗血IPA』
〇アルコール度数:7.0%
〇原材料:大麦麦芽、オーツ麦、ホップ
〇内容量:330ml
〇URL:https://www.biyagura.jp/f/2022_collabo
〇醸造所:伊勢角屋麦酒
IPAの新星を、味わってみて
ラガー系のIPLやホップを大量に使用するヘイジーIPA、苦みのあるウェストコーストIPA。それらと製法や原材料、味わいがどことなく似ていても、そのどれとも違うという、個性的な特徴をもつコールドIPA。そこには、コールドIPAを最初に醸造した「Wayfinder Beer」のフロンティアスピリットを感じます。そんな思いを馳せながら、今夜はコールドIPAを飲んでみませんか?