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ポートランドのクラフトビール事情 Column ピンクのグリッタービールも開発!海とビールに生きるポートランドの女子ブルワー・キャットさん

2019/11/25

ビール女子のみなさま、こんにちは!ポートランド在住の東リカです。
ポートランドの女子ブルワーをリレー形式で紹介するこの企画。今回は、前回のリサさんが紹介してくれた「ペリカン・ブリューイング(Pelican Brewing)」のR&Dブルワー、キャット(Cat Wiest)さんです。

キャット 女子ブルワー ペリカン
早速、ポートランドから2時間ほどドライブし、パシフィックシティの海岸にあるペリカン・ブリューイングにキャットさんを訪ねました。

▼関連記事:【ビーチで生まれたブルワリー】アメリカ北西部唯一のビーチフロントブリューパブに行ってきた
当日は、奇しくもハロウィン当日。夏場以外は雨空の続くオレゴンコーストとは思えない青空のもと、2016年版「ゴーストバスターズ」の衣装に身を包んだキャットさんが出迎えてくれました。

多次元で体験できるビール造りを

ーキャットさん、こんにちは!ビーチ沿いのブルワリーって、気持ちがいいですね!ここに来てどれくらい経つんですか?

キャットさん

そうでしょ!今週はずっと天気が良くて最高よ。今朝はクジラの姿も見えたの。

「ペリカン・ブリューイング」は2年目。最初は、ティラムック店にいて、8ヶ月前にD&Rブルワー(Development & Research Brewer)としてこのパシフィックシティ店に移ったの。


ーD&Rブルワーは新しいレシピの開発をしたりするんですよね?どんなビールを造っているんですか?

レッドエール 女子ブルワー 

キャットさん

通常、コンセプトから遡ってプロセスを考えるんだけど、今、タップに入っているものだと、ジャスミンが香るレッドエール『Jasmine Fever』(上の写真のビール)やワインスプリッツァーのようなスパークリング・チェリー・エール『Cherryay』が私のレシピね。ニューイングランドスタイルIPAの『Dankzilla』はチームで開発したもの。D&Rチームに参加するブルワーが各支店に1人ずつ合計3人いて、ブルーマスターが監督する形で協力しあうの。

ーキャットさんはどんなビールが好きですか?

キャットさん

飲むなら、ホップの香りが強いパンチのあるビールが好きだから、この中だと「Dankzilla」かな。でも、ここの『Tsunami』みたいなリッチなスタウトやキリッとしたジャーマンピルスナーも捨てがたい…。造るなら可能性の幅が広くて挑戦しがいのあるレッドエールかな。

ーこれがキャットさんのシグニチャービールというものはありますか?

キャットさん

カリフォルニアにいた時に造ったピンクでキッラキラのグリッタービールはすごく評判になった。これぞ女子!って感じのビールで名前も『マーメイド・テール・エール(Mermaid Tail Ale)』!
ハフポスト」に一番奇妙なビールの1つとして取り上げられたけど、褒め言葉として受け止めてる(笑)

ー女性ブルワーとして、いかにも女子!というステレオタイプ的なビールを造ることに抵抗や批判はありませんでしたか?

キャットさん

手で皮むきしたビーツを100パウンド(約45kg)以上も使って色とフレイバーを引き出し、ブラッドオレンジのピューレを合せたゴールデンエールなんだけど、味も素晴らしいし、会話の糸口にもなるし、批判される理由はないと思う。そういう批判は、楽しくない。世界はもっとキラキラする価値があるでしょう?もちろん、私がこれだけじゃなくて他のビールも造れるってことは知ってほしいけど。

ーこれから造りたいビールも楽しさが大切な要素ですか?

キャットさん

そうね。味や香りが良いことは最優先事項なんだけど、そこから更に多次元体験(multi-dementional experience)ができるビールを造りたいかな。例えば、花を使う鮮やかなインディゴブルーのビールのレシピを最近研究中。

無数のビールがある中でも見た目が強烈だと「それ何?」って興味が湧くし、グリッターだとキラキラ舞う様子をビデオに撮ったりするお客さんもたくさんいたしね。単にいつものビールを飲むより話も盛り上がるじゃない?

毎月75ドルで知ったビールのおもしろさ

女子ブルワー ペリカンブリューイング オレゴン
ービール造りをはじめてどれくらい経つんですか?きっかけも教えて下さい。

キャットさん

2020年の4月でもう8年になるわ!州外からサンフランシスコに引っ越して、前職同様のパン職人の仕事を探したんだけど、空きがなくて。条件のいい人気ベイカリーは誰も辞めないから…。それでも夫が学生ってこともあって、何か仕事を見つけなきゃいけない。それでクレイグリスト(クラシファイドコミュニティサイト)の募集に片っ端から応募したら、ピラミッド・ブリューイング(Pyramid Brewing Co.)に採用されたの。そこでブルワリーでの働き方を学んだことがきっかけ。

ーブルワーの道を進み始めたのは、ある意味偶然なんですね。

キャットさん

ブルワリーで働き始める半年前くらいからホームブリューイングはしてたの。まあ家計節約って意味もあったけど、たまたま読んだ雑誌の「We’re Here, We’re Beer, Get Used to It」という女性ブルワーが活躍を取り上げた記事に影響されて。だから興味はあった。

でも、その頃はまだビールがそれほど好きじゃなかったの。飲むなら正直、ビールよりもマルガリータだって思ってた。だから、もっと勉強しようと思って2人の女性が著した「Naked Pint」という本を参考に、毎月75ドルって予算を決めてできるだけたくさん世界中のクラフトビールを買って飲むようにしたの。1年ほど続けたかな。それでビールの奥深さを知って、美味しさにも目覚めたってわけ。

私が働いていたピラミッドの支店が閉鎖してからは、いくつかの冒険的なクラフトブルワリーで経験を積んで、今に至る感じよ。

クラフトビール フライト 女子ブルワー
ーご自身が女子ブルワーとしての道を進んでいるんですね。女性であることで苦労したことはありますか?

キャットさん

よく聞かれるけれど、どうかな。女性ブルワーは少ないけれど、例えば、私の経験したバウンサー(ナイトクラブの警備員)や、アラスカの商業漁船はもっと少ない。バウンサーの女性なんて、本当に敬意を払ってもらえないのよ!比べれば、ビール業界は楽勝よ(笑)。

ビールに限らず女性にもできるのに、女性だからって歓迎されない「男の世界」的文化が根強く残ってる業界はまだまだ多い。どの業界においても、性別と関係なく仕事で評価されるべきだと思うけどね。

ー自身が女性だってことにとらわれず、色々な仕事をされているんですね!中でもビール造りをキャリアとして選んだ理由は何ですか?

キャットさん

フルタイムの安定した仕事だってことと、毎日が変化に富んでいて、新たなチャレンジがあることかな。

実は、漁業にも通じるところがあると思うの。どっちも自然が相手だから環境をコントロールするんじゃなくて、自分たちが適応しなきゃいけないところ。

後は、生の食材をビールに変化させるってところもマジックのようで面白いと思う。

大好きな海とビールはずっとそばに

オレゴンコースト ヘイスタックロック 女子ブルワー
ーキャットさんの将来の夢は何ですか?

キャットさん

ずっと先のことは分からないけれど、ビール造りには関わっていたい。来年の2月からは奨学金をもらってシカゴとドイツのSiebel Institute of Technology World Academyの国際学位コースで、3ヶ月間みっちり科学や技術を勉強してくるの。

ーすごいですね!実際にプロブルワーとして働いていても、学位を取ることは必要だと感じますか?

キャットさん

そうね。より高度な科学や化学、生物の知識は確実にビール造りに活かせるはず。それに私、短大も中退して高卒なのね。だからここを出ましたって言えるものがあれば、私が有名店でブルワーをしてることに対して不満げな人の気も収まると期待してる。

ーなるほど。

キャットさん

あと、これまでもそうだったけど、将来も海の近くに暮らすことだけは決まっているかな。

ー海が好きなんですね。サーフィンとかされるんですか?

キャットさん

オフィスにボードを置いてはあるんだけど、なかなかね。でも、海岸を歩いたり、仕事が終わったら、飛び込んで泳いだりするの。いずれあのヘイスタックロックの周りを一周泳ごうと思ってる。仕事仲間に話したら狂ってるって止められたけど、一緒にオープンウォータースイミングの試合に出てた友達も、ここに遊びに来た途端、まず「あの周り、もう泳いだの?」って聞いてきたわ(笑)

ー本当にいろんなことをしてますねー。最後に日本のビール女子に一言お願いします。

キャットさん

ビールは、バイキングの時代から、楽しくリラックスした時間を一緒に過ごす、人を繋げるツールとして使われてきたの。地元のタップバーのハッピーアワーとか、ボトルショップとか、クラフトビールのコミュニティに飛び込んで、色々飲んで、色々話してみてほしい。たくさん飲むことで、自分の好みもビールの魅力も発見できると思うから。

性別や業種にとらわれず、自分のやってみたいことに邁進するキャットさんは、とても素敵だと思いました。彼女が働く海沿いのペリカンブリューイングも気持ちの良い場所でした。ポートランドに来た際には、こちらにも出かけてみてくださいね。



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東リカ ライター

「ビール天国」と呼ばれるポートランド在住のフリーライター。美味しいクラフトビールが大好きです。

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