Column 秋に味わう、コラム三篇。 「マリーの赤い誘い」、「レコードと瓶ビール」、「毎秋、毎秋。」

2024/10/10


長く暑い夏が終わり、夜が訪れるのも早くなります。

そんな、秋の夜長にビールをたのしむビール女子編集部のライターによるコラム三篇。

お好きなビールを味わいながら、ぜひご一読ください。





マリーの赤い誘い

ライター:中林麻依

一日中閉じ込められたビルから脱出すると、外は薄闇だった。
平日の夕焼けとは半年間のお別れだ。
闇で赤く光る彼岸花は、凛と妖艶に儚く佇む。
寒暖の無い色なき風が吹いた。
世界から温度がなくなったかのようだ。
私に体温はあるのだろうか。
私は生きているのだろうか。

生の実感を探しに酒屋に入る。
凛と妖艶に儚く佇む女性に目を奪われた。
ベルギーのレッドエール『ドゥシャス・デ・ブルゴーニュ』。
ラベルに描かれたマリー・ド・ブルゴーニュは「美しき姫君」と領民に慕われ、ブルゴーニュ公国最後の君主となり、25年の短い生涯を終える。

秋の夜の入口で、深い赤をグラスに注ぐと複雑な酸味が漂った。
上品な甘みと酸味、オーク樽熟成の深い味は、私をもっと深い闇へ誘う。

秋は短いのに、秋の夜はとても長い。
それなら長い夜を楽しんでやろう。
私はマリーに背中を押され、分厚いあの本に手を伸ばす。
秋の1ページが始まった。





レコードと瓶ビール

ライター:mei

日が沈むのが早くなり、肌をかすめる空気が軽くなり、人々が足早に帰宅する姿を目にすると、夏の終わりと秋の到来を実感する。

そうなると、暑いうちはなんだか気が重くて手のつかなかったレコードで音楽が聴きたくなって、部屋の隅で眠っているレコードプレーヤーに手を伸ばす。

円盤をセットして針を落とした瞬間、ざらざらとしたノイズが乾いた空気に触れて、まるで瓶ビールの液体をグラスに注いだ瞬間のような重厚感に包まれる。

夏は青空の下でプシュッと軽快に缶ビールを開けたくなるけれど、秋は家で静かにビールを楽しみたい。

黄金色のジャケットがビールを思わせるTom Mischのアルバム「Geography」をレコードにかけ、TOKYO BLUESのセッションエールをグラスに注いだら、なんてことない自分の部屋だってあっという間にライブハウスだ。





毎秋、毎秋。

ライター:山吹彩野

毎秋、心待ちにしてしまう『秋味』。
私が唯一箱買いしてしまうビールでもある。

体で感じる季節よりも先取りで発売される秋のビールだけれど、私の場合は早めに買っておいて、体感も季節に追いついてきたころに飲みはじめる。

蝉のなき声も聞こえなくなってきて、秋の虫が夜を彩るころからが、「秋味」の登場だ。

きのこの炊き込みご飯やビーフシチュー、鮭のホイル焼き、カボチャの煮付けなど、秋に登場することが他の季節より多い料理と一緒に「秋味」を飲むのも最高。
本を読みながら、友人や家族と一緒にたのしむときにも。

寝る前の一杯にも良い。

毎年心待ちにしているビールがあることのよろこびを、秋味を味わいながら感じている。








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