ビール女子のみなさま、こんにちは!ポートランド在住の東リカです。こちらでは、3月17日(火)から新コロナウィルスの感染拡大防止のため、オレゴン州のブルワリーやタップルーム内での飲食は、禁止されています(涙)。
ポートランドでは「樽生は死んだ(Draft is Dead)」、「クラフトビールブームの終焉」など不吉なワードが飛び交っています。そんななか、コミュニティとつながる新たなビジネスモデルを構築し、クラフトビール文化に詳しいレッド・ギレン(Red Gillen)さんにお話を伺いました。
樽生がダメなら缶詰や瓶詰めで
ブルワリーにとってタップルームで樽生を提供できない今、ビールを販売する方法は基本、缶もしくは瓶に詰めるかたちとなりました。既に缶詰めや瓶詰めの機械を導入しているブルワリーは問題ありませんが、ラインを持たない小さなブルワリーは困ってしまいますよね。レッドさんによると、ポートランドにはこのようなマイクロブルワリーがたくさんあるため、既に移動式で瓶詰めや缶詰めを行う業者が複数存在し、ここ最近は特に需要が高まっているのだそう。そういえば、以前取材させていただいた「Leikam Brewing」でも、裏庭に業者のトラックがやってきて缶詰めを行なっていたことがありました。
また、缶ビールや瓶ビールとして販売するためには、ラベルのデザインや印刷なども必要な作業。これらの缶・瓶の手配から、ラベル製作などもふくめたクラフトビール関連業界の需要は高まっているそうです。
商品のピックアップが何よりのたのしみに
完成した缶・瓶ビールの販売方法は、スーパーやコンビニよりも利益率の高い直販がベスト。そのため、現在もビールをテイクアウトで販売しているブルワリーがたくさんあります。サイトで注文・支払いを済ませ、準備ができたというお知らせをもらってから店頭でピックアップをするのが一般的。駐車場や道路脇まで店員さんがビールを持って来てくれる仕組みのブルワリーもあります。
先日開催されたオンラインのビールフェスティバル「ステイホーム・ドリンクビア」にて、ポートランドから車で1.5時間ほど南の都市・コーバリスのブルワリー「ブロック15 (Block15)」のNick Arzner氏は、「ビールを買いに来てくれるお客さんに本当に感謝している。でも、お客さんから逆に『ブルワリーを開け続けてくれてありがとう』という言葉をもらうことも多いんだ。外出しない日が続く中、土曜にうちに来て『ビールをピックアップするのが、今日のハイライトだよ』って笑ってくれる」とコメントしていました。
私も近所の「レベルビール(Level Beer)」の店頭へビールのピックアップへ行って来ましたが、このお出かけ自体が楽しみでした。スーパーでビールを買うのとは違い、ブルワリーでのほんの少しのコミュニケーションでもいかに自分がブルワリーへ行きたかったかを実感したのです。
商品を自宅までデリバリー
また、缶・瓶ビールを直販するもう1つの方法として、最近増えているのが宅配です。ピックアップ同様、オンラインで注文・支払いを済ませると、当日から数日の間にスタッフがビールを届けてくれます。宅配をよく利用するというレッドさんは、対面でブルワーと会話ができることを喜んでいます。
また、ブルワリーはSNSを利用して、例えばお客さんからマスクをプレゼントされたというエピソードや道中の街の様子を発信することで、宅配自体にストーリーが生まれ、顧客との結びつきが強くなると指摘していました。
私も「Leikam Brewing」の宅配をお願いしてみましたが、ビールの中に手書きのカードを発見し、ますますファンになりました。
また、宅配のためにブルワリー同士が助け合いお互いの商品を運ぶという、「Reverend Nat’s Hard Cider」と「Old Town Brewing」のような形態もあるそうです。こんな時こそライバルだと蹴落とすのではなく、助け合おうという姿勢はさすがポートランドだと嬉しくなります。
専用アプリを開発するブルワリーまで
また、直営のみのブルワリー「Great Notion Brewing(グレート・ノーション・ブルーイング)」は、何と業界初の専用アプリを開発。このアプリは2019年から既に「顧客と直接つながるライフスタイルブランド」というビジネスモデルを目指して開発していたんだとか。
グレート・ノーションのアプリは、同ブルワリーのPaul Reiter氏が「シュプリームやナイキのようなデザイン性の高さでグレート・ノーションの世界観を具現化したかった」というだけあって、完成度はかなりのもの。現行システムと同期したスムーズなビールの購入はもちろん、ビールラベルに使われてきたキャラクターのストーリーや「ポケモンGO」に着想を得たというARゲームまで備えています。
レッドさんは、「大変な時期だからこそ、味はもちろん、それ以上にみんな応援したい気持ちでクラフトビールを買っている。以前からコミュニティが築けていたブルワリーはやっぱり強い。ソフトの重要性が見える」と話していましたが、いかに顧客に身近に感じてもらえるかは、人としてのブルワーだったり、ブランドのイメージだったりするようです。
これまでコミュニティを大切にしてきたポートランドブルワリーなら、きっとコロナ禍を乗り越えてくれると思います。私も出来るだけブルワリーから直接ビールを買って、応援していきたいと思います。