Column 【2020年最新】老舗バーテンダーに聞く!クリスマスとお正月におうちで試したいビアカクテル4種

2020/12/24

銀座で30年営業したバーを改装し、5年前からビールの醸造を行う「ブリューインバー主水(モンド)」のバーテンダー・武蔵昌一さん。今年も「クリスマスとお正月におうちで試したいビアカクテル4種」を教えていただきました。

【関連記事】老舗バーテンダーに聞く!おうちで試したい、簡単ビアカクテルの作り方<4種類>



作り方はもちろん、長年バーテンダーを務める武蔵さんに、ビアカクテルをつくるときのコツや、ビールについてのお話を聞いてきました!


武蔵昌一さん

大学在学中にバーテンダーの道に入り、もう40年になろうかというベテラン。若い頃、TVチャンピオンのバーテンダー選手権で優勝したという噂。


1. 意外な組み合わせ『ミルクビール』


クリスマスにおすすめしたい1品目は「ミルクビール」。牛乳とビールという異色の組み合わせですが、合わせてみるととっても合う!冬を感じさせるシナモンなどのスパイスを効かせたら、寒い季節にぴったりなビアカクテルになるんです。


【材料】
・牛乳
・『ドラフトギネス』(黒いビールなら何でも可。エールタイプの方がおすすめ)
・シナモンパウダー(お好みのスパイス。例:ジュニパーベリー、五香粉、プロヴァンスハーブなど)
・『カリブシロップ』(お好みのシロップで)
・『ディサローノアマレット リキュール』(お好みのリキュール。例:トスキ ノチェロ、ルクサルド エスプレッソ リキュールなど)

【作り方】
1.牛乳をグラスに半分ほど入れ、アマレットリキュールを適量入れる。



2.シナモンを入れる。



3.混ぜる。



4.甘さを調整するためシロップを入れ、また混ぜる。



5.ドラフトギネスを注ぐ。



6.完成!


ふわふわっとした泡がたのしく、杏のリキュールの香りやスパイスも効いていてとても飲みやすいカクテル。お茶でいうチャイのような感じです。黒いビールならお好きなもので良いそうですが、ギネスの缶は泡がそれほどたたないのでおすすめ。さらに、華やかな香りのエールタイプの方がミルクビールには合うのだそう。

今回使用した「ディサローノアマレット リキュール」は杏の核を原料にしてつくられたリキュール。そのため、杏仁豆腐のような風味になります。杏は消化を助ける働きがあるそうで、食後に杏仁豆腐を食べるのはそのためだとか。

 武蔵さん

クリスマスなのでリキュールやスパイスなどがいいんじゃないでしょうか。熱をとおしていないのでなかなか混ざらないですが、はちみつは冷たいと溶けないので今回はシロップを足しました。でも、温めてみてもおいしいと思います。牛乳と黒ビールって結構いけます。エールはそもそも華やかだから合う。飲んでみるととっても飲みやすく、風邪のときとかにも体が温まっておすすめです。


2. カクテル界の美女と野獣『ブラックベルベット』


クリスマスにおすすめしたい2品目は、「ブラックベルベット」。黒いビールとスパークリングワインを1:1で合わせるだけの簡単レシピですが、見た目に反した味わいに驚くはず!


【材料】
・『ドラフトギネス』(黒いビールなら何でも可)
・『ラマルカ プロセッコ』(スパークリングワインなら何でも可)

【作り方】
1.黒いビールとスパークリングワインを同時にグラスに注ぐ。



2.泡の状態を見ながら注いでいく。



3.完成!


見た目は真っ黒!そのため味わいも黒いビールが強く出ているのかと思いきや、鼻を近づけるとスパークリングワインの華やかな香りがふっと鼻を抜け、口当たりは軽くすっと飲みやすい!黒いビールのコクも感じつつ、どちらかというとスパークリングワインの特徴の方がよく感じられます。面白すぎるカクテル!

 武蔵さん

美女と野獣的な面白さ。スパークリングワインは誰もが上品だと思うもの。赤ワインや白ワインなどを超越できるものなので特別感があるんです。上品の代表ともいえるスパークリングワインと伝統的な黒いビールを合わせるのはタブー感があると思われますが、お互いの良いところを引き立てあっているのが興味深いんですよね

3. 好きなフルーツを凍らせて『巨峰ビール』


お次は、お正月にたのしんでほしい「巨峰ビール」をご紹介。お中元などでもらった果物や買いすぎて食べきれない果物を冷凍して、クラフトビールに入れるだけの簡単カクテルです!


【材料】
・冷凍したピオーネ(凍らせたフルーツなら何でも可。ぶどうなら種無しがおすすめ)
・『ブルックリンベルエアサワー』(サワービールなら何でも可)

【作り方】
1.皮をむき凍らせたピオーネをお好みの量グラスに入れ、その上からブルックリンベルエアサワーを注ぐ。



2.フルーツを食べる用にフォークもそえて完成!


見た目もかわいいカクテル!ピオーネがビールを吸って大人のフルーツにもなっちゃいます。お中元でたくさんもらった果物や買いすぎた果物は冷凍しておいて、ビールに入れてみると新しい発見があるかもしれません。ちなみに、ぶどうは皮のまま冷凍庫に入れ、凍ったあとに皮を向く方がむきやすくなるのだとか!

 武蔵さん

エールってどっちかというと香りが華やかで味も濃いので、ビールの造り手としてはどうにかさっぱりさせたいって思ってるんです。だから、飲み手が遊んでくれたらいいなと思っています。いただいたフルーツを冷凍しておいて、お正月にこたつのなかで食べるのはどうだろうと思い考えました。冷凍みかんよりもピオーネの方が高級感もあるし贅沢な食べ物なのでお正月に良いかなと。サワービールはフルーツが入ることで、酸味がまろやかになります。安い時に買って冷凍庫に入れておくとビアカクテルをつくるときにも使えるよという提案です。ここにビールを入れてどんどん追いビールをするのもあり。ピオーネがビールを吸い込むのでデザート感覚で楽しむのもあり。ピオーネの皮の風味もうつってビールもおいしくなると思います。

4. 相性の良い組み合わせ『紅茶エール』


お正月におすすめなもうひとつが「紅茶エール」は筆者イチオシ!香りも華やかでしっかりした甘みも感じられるまさに桃ビール…「簡単すぎるのにおいしすぎて良いの…?」と思ってしまうほど。「紅茶花伝 クラフティー 贅沢しぼりピーチティー」を買いに行ってほしくなるカクテルをご紹介します!


【材料】
・「よなよなエール」(ペールエールなら何でも可。IPAでも良い)
・「紅茶花伝 クラフティー 贅沢しぼりピーチティー」(紅茶なら何でも可)

【作り方】
1.紅茶花伝 クラフティー 贅沢しぼりピーチティーをグラスの半量まで入れたら、よなよなエールを後から半量注ぐ。



2.完成!


桃の香りがふっと鼻を抜け、味わってみると紅茶とビールの苦みがほどよくマッチ。「あれ、どこかのブルワリーの桃ビール?」と思ってしまうほど本格的な味わいで今日一番の推しカクテルとなりました。

おもしろい食材がないかを探しによくコンビニへ遊びに行くという武蔵さん。「紅茶花伝 クラフティー 贅沢しぼりピーチティー」を飲んだときすぐ「これはビールに合う!」と思ったのだそう。フルーツを使ったクラフトビールを造るブルワリーは数多くありますが、果糖は酵母に分解され食べられてしまうため、ちゃんと造れば造るほど香りはあっても甘くなくなってしまうのだとか。でも、ビールを紅茶花伝のような甘い紅茶で割ると、甘味もあり、香りも華やかなカクテルになるのだそう。

 武蔵さん

タンニンやポリフェノールが含まれている紅茶とビールはとても相性が良い。その中でも、華やかなエールは特に紅茶との相性が良いと思います。自分で入れたハーブティーでも飲みかけの紅茶でも、あとはほうじ茶などでも良いので、自分が好きなものを合わせて色々遊んでみたらたのしいんじゃないでしょうか。ビールはホワイト系と紅茶も合うかもしれません。あと、飲み物を合わせるコツは、味が濃いものを先に入れること。料理と違って量が多くないので、濃いものを先に入れて薄めていく方が調整しやすいんです。

クリスマスとお正月。1年の最後の大切なイベントだからこそ、ビールもたのしんでもらうべく、今年も武蔵さんにすてきなビアカクテルをご考案いただきました。それぞれの特徴を味わって探して、ぜひ自分好みのビアカクテルを探してみてほしいとおっしゃっていました。

最後に、「ビール醸造家の方が丹精込めて造られたビールを飲み手がアレンジすることは申し訳ない気がする」という気持ちをお伝えすると、とてもすてきな返答をいただきました。

 武蔵さん

日本人ってそういう風に考える人が多いんですが、そんな風には造り手は思っていませんよ。小さいクラフトビール屋はどちらかというと新しいものを造りたいと思ってるから、むしろビールのカテゴリにおさまらないものをって考えている人が多い。フルーツを使ったビールも、ビールなのかって言われたらビールだし、発泡酒かと言われたら発泡酒だし。でもそういうことではなくて、おいしいって何だろうっていうのを造りたいだけだから。

クラフトビールってまだ完成してないんです。特に日本のクラフトビールはある意味始まったばかりで、日本のクラフトビールはまだ見つかってないと僕は思う。これから何十年も先、どんなクラフトビールを私たちが飲んでいるのかはわからない。でも、わからないからおもしろいし、天才的なブルワーがこれから生まれるかもしれないし、そうなってほしいなって思ってるから、カテゴリにとらわれないことって大切だと思っています。

ドイツビールがどうとか、ベルギービールがどうとかって関係ない。日本の味噌煮込みうどんに合うビールってこういうものじゃないっていうのとかって勝手に生まれてくるはずなんですよ、いつか。だから飲み手側も敬って、尊んでくれるのは非常に嬉しいことだけど、「そんなのもっとあとでいいよ」って僕は思ってる。どこそこのなんとかっていうブランドとか、これがおいしいとかってまだ決めつけなくていいんじゃないですかっていう気はしてますけどね。みんながいろんなことを考えて、いろんなものを造ろうとしているから、「うまいときはうまい、まずいときはまずい」って言ってくれれば、それでいいんじゃないかなって思うんです。

的確なアドバイスや材料や組み合わせのコツなどの知識もたくさん教えていただきましたが、その中でも終始おっしゃっていたのが「何でも良いんです」ということ。それは、誰かの知識やアドバイスではなく、“自分”がおいしいビールを探して、たのしんでほしいという思いがあるからなのかもしれません。

「BREWIN`BAR 主水-monde-」では、おいしくてたのしいビールやカクテルだけではなく、武蔵さんのお話もたくさん聞くことができるかもしれません。ぜひ、お店にも足を運んでみてください。

BREWIN`BAR 主水-monde-

〇住所:東京都中央区銀座8-11-12正金ビルB1
〇アクセス:メトロ銀座線新橋駅1番出口 3分、JR新橋駅 銀座口 6分
〇営業時間:[月〜木]16:00-23:30、[金]16:00-25:00、[土]14:00-23:30
〇定休日:日・祝
〇席数:カウンター8席、テーブル30席
〇HP:http://www.brewinbar.com/

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山吹彩野 編集・ライター

星の準ソムリエの資格を持つ星空エディターで、星や宇宙を編集して伝えるWEB SPACE「星とくらす」を運営。最近では星を眺めながら、ビールと宇宙をつなげたいと日々考えている。好きなビアスタイルはIPA。音楽、カメラが好き。

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