
高温で焙煎・乾燥した濃色麦芽を使用して醸造する、黒ビール。
ひとえに“黒ビール”と言っても、見た目の色に反してとても飲みやすい爽やかなものから、時間をかけてチビチビと飲みたいボリューミーなものまであり、知っていくと奥深くておもしろいビールです。
ですが、見た目から伝わる重厚感によって「飲みにくそう」と判断されてしまい、選ばれづらいのも事実。
そんな黒ビールに魅了され、「クラフトビールの裾野を広げる鍵になる」とその可能性を信じた1人の青年が、2025年9月、黒ビールをフックにしたビアバーを立ち上げました。
その名も「KARAFA(カラファ)」。自社オリジナルの黒ビールをはじめ、国内外の黒ビールを主役としてビールを提供しているビアバーです。
自社オリジナルの黒ビールは、朝から夜までいつでも黒ビールが飲める楽しみ方を訴求できるよう、時間とのペアリングを設定しています。
具体的にどんなビールや食事を楽しめるのか、そしてなぜ黒ビールに着目したのか。「KARAFA」の魅力を徹底的にご紹介します。
・せんべろの聖地にやってきた、ビール界の黒船
・タップリストの半分が“黒ビール”
・ペアリングが楽しいフードメニュー
・黒ビールに魅了された1人の青年
・黒ビールは、クラフトビールの裾野を広げる鍵
・野望を抱き、黒ビールと歩む未来
せんべろの聖地にやってきた、ビール界の黒船

KARAFAの最寄駅は、京成電鉄押上線「京成立石駅」。
元々「呑んべ横丁」があった(2023年8月に閉鎖)ことから、1,000円で酔える「せんべろの聖地」として知られている、下町情緒あふれる大衆酒場の街です。
ハイボールやサワー、日本酒などを中心とした酒盛りに勤しむ呑兵衛たちが集まるなか、満を辞して、黒ビールを主役とした個性的なビアバー「KARAFA」が2025年9月にオープンしました。

お店の場所は、北口から徒歩4分。区役所通り商店街の一角にあります。

目印は、黒ビールの看板。

建物の外階段をのぼり、右手に出てくる2階の黒い扉が「KARAFA」の入り口です。2階以上の飲食店としては珍しく、ペットの来店もOK!

席は、背の高いカウンターがタップの前に8席。

そして壁際にもカウンターが4席あります。
白い壁、木のテーブルを基調に、空間が締まる差し色の黒もところどころ見られる温かい店内。清潔感があり空間にもゆとりがあるので、とても心地よく過ごすことができます。

また、オーナーの趣味であるボードゲームやカードゲームも店内の棚に並んでいます。店内では貸し出ししているそうなので、ビールを飲みながらゲームをして遊ぶこともできます。
タップリストの半分が“黒ビール”

ビールの提供数は、タップで6種類、瓶・缶は約30種類と、合計35種類ほど。
タップは、6種類のうち半分は必ず黒ビールが繋がっています。残り2〜3種類は、黒ビールが苦手な方も楽しめるようにと別のビアスタイルを提供。タップリストは、以下の通り番号ごとにビアスタイルの配置を決めているそうなので、好みに合わせて選びやすくなっています。
【タップリスト】
1.インペリアルスタウト
2.スタウト
3.ダークラガー、ポーター
4.IPA
5.フルーツを使ったビール
6.ライトなビール(ラガーなど)

さらに瓶・缶では、黒ビールや黒ビール以外のビアスタイルも豊富に揃っています。

黒ビールは、オーナーである前田薫さんがおすすめする国内外のビールを提供。さらに、タイミングによってはKARAFAオリジナルのファントムブルワリー(※)「Chrono Brewing(クロノブルーイング)」を飲むことができます。
※「ファントムブルワリー」とは:自分の醸造所を持たずに他の醸造所へ委託醸造する形で、自分の造りたいレシピでビールを醸造するブルワリーのこと。「ジプシーブルワリー」や「クライアントブルワリー」と呼ばれることもある。
オリジナルである「クロノブルーイング」のコンセプトは、「黒ビール限定」「時間」の2つ。ブルワリー名も、ギリシャ語の「時間(Chronos)」と日本語の「黒の」のダブルミーニングとなっていて、全てのビールに「どの時間帯に飲みたいビールなのか」という“ペアリングタイム”が設定されています。ロゴデザインも、砂時計をイメージ。
ちなみに、外国には黒ビールに特化したブルワリーがありますが、国内だとファントムブルワリーを含めてもなかなか珍しく、とても貴重な存在。
今回は、取材時にリリースされていた、第一弾の『KARAFA』、第二弾の『ほうじ茶ポーター』の2種類をご紹介します。

第一弾『KARAFA』
└ビアスタイル:インペリアルスタウト
└ペアリングタイム:20時

第二弾『午後のぽーじ茶』
└ビアスタイル:ほうじ茶ポーター
└ペアリングタイム:14時

そして、国内外から前田さんが厳選した他社の黒ビール。タップ・瓶とそれぞれ提供していますが、中でも目玉は大瓶。海外のバレルエイジ(樽熟成)の黒ビールが冷蔵庫で眠っています。
遠くからKARAFAをめがけて来店する黒ビールファンもいるため、そういったファンの方々を満足させられるような、ちょっとギーク的な黒ビールも常時置くようにしているとのこと。
この日提供されていた大瓶の一部を紹介します。

『Barrel Aged Banana Rocket』

『The Great Northern BarrelAgedSeries 46』

そして、黒ビールが“主役”ではありますが、黒ビール“しか”置いてないわけではありません。他のビアスタイルも豊富に提供しています。
黒ビール以外のビールとしては、IPA、フルーツビールを中心に、各地のブルワリーから様々なビールをセレクト。種類豊富なので、黒ビール好き以外も十分楽しむことができます。

ちなみに、店内のテレビには、現在提供されているビールの説明がわかりやすく書かれた前田さん手作りのスライドが流れています。初めての人にもわかりやすく、とても親切です。
ペアリングが楽しいフードメニュー

KARAFAは、フードメニューも魅力的。しっかり黒ビールとのペアリングが考えられたもので構成されています。
中でも、メイン料理はどんなビアスタイルにも合うようなものですが、特に軽めのおつまみは、黒ビールに合うようにレシピを設計しているとのこと。
おすすめ料理をピックアップしてご紹介します。

『自家製タコス』

『ソーセージ盛り合わせ』

『ガトーショコラ』

また、黒ビールを使った料理もいくつか提供しています。「本日のカレー」のルーや、日替わりで中身が変わる「本日のビアフリット」の衣には、その日タップで提供中の黒ビールを隠し味で入れているのだそう。
料理酒としても万能な黒ビールですが、使う黒ビールが日替わりなのもKARAFAの魅力。ぜひ召し上がってみてください!
黒ビールに魅了された1人の青年

そんな黒ビールが主役のビアバー「KARAFA」のオーナーである前田薫さんは、1999年生まれ。二十歳でビールに出会ってから実直にクラフトビールに向き合い、未来地図を描き、弱冠26歳で自らビアバーとブルワリーを立ち上げた敏腕家です。
立ち上げに至るまでにどんな背景があったのか。お話を伺ってきました。

前田さんがクラフトビールと出会ったのは、19歳の終わり頃。
「よなよなビアワークス 吉祥寺店」にてアルバイトをスタートしたことで、その世界に足を踏み入れました。
当時は飲めない年齢だったため、味もわからぬまま香りだけ嗅いでビールを提供していたものの、20歳を迎えた瞬間にヤッホーブルーイングのビールを嗜んだ前田さん。初めて飲むお酒がクラフトビールだったため、最初から“ビールは多様性のある飲み物である”と認識でき、何の抵抗もなくビール好きに。その後もクラフトビールに関するアルバイトを続け、大学3年生の頃にはすでに「将来はビアバーを開こう」という夢を持ち始めました。
「ビアバーをやるなら、醸造も経験しておきたい」と思い立ち、醸造所への就職を決意。また、アルバイトとして動けるうちに将来の道を決めたなら、就職まで待たずに醸造できる店でアルバイトをした方が早いと考え、学生の時点でブリューパブの職場を探すことになったのだそう。
そこでご縁があった、新宿のブリューパブ「Y.Y.G. Brewery」に入社。醸造の修行を開始します。
前田さん「Y.Y.G. Breweryでの学生アルバイトを経て、いざ就活というタイミングで他の会社も回っていたんですけど、なかなか自分の条件に合うところが見つけられなくて。そうしているうちに、千葉にあるY.Y.G. Breweryの系列店『Y.Y.G. Favtory』で退職者が出るという話が出て、そちらにお誘いを頂いたので、社会人としての就職先もそのままY.Y.G. Breweryになりました」

Y.Y.G. Breweryではアルバイト含め3年間醸造の勉強をしたそうですが、醸造を学び始めてからすぐ、黒ビールを造ることが好きになったといいます。
前田さん「たとえばピルスナーだと、極端に言えばモルトが1種類でも完成します。でも、黒ビールだと5種類以上のモルトを配合することもザラですし、何を組み合わせたらおいしくなるか、そしてその配合のバランスなど、とにかく幅が広い。尚且つ、黒ビールの味わいに合う副原料も多いので、いろんな黒ビールの醸造を試してみたくなったんです」

飲むだけでなく、醸造という点においても黒ビールに魅了され、入社した時から「黒ビールをフックにしたブルワリーを開きたい」という構想を描いていたのだそう。
前田さん「ビアバーのために始めた醸造の仕事ですが、黒ビールに特化した醸造所を作りたくなりました。ただ、黒ビールの需要や最低醸造量の問題で設備を構えるのは現状難しいと考え、ファントムブルワリー&黒ビール特化店舗という体制を思いつきました」
修業先には『3年後を目処に辞めます』と先に伝え、その間貯金や技術を蓄えていった前田さん。計画通りお世話になったY.Y.G. Breweryは3年後に退職し、2025年9月に「KARAFA」をオープン。見事夢を実現しました。

店名は、黒ビールを醸造するときに使用される、ドイツが製造する麦芽の1種「CARAFA」が由来。頭文字だけ、ご自身の名前「薫」のイニシャルに変えて、「KARAFA」と名付けました。
こうして、自分の看板と黒ビールを引っ提げた前田さんの挑戦が始まりました。
黒ビールは、クラフトビールの裾野を広げる鍵

さらに、前田さんが黒ビールを主役にしようと思った背景には、「クラフトビールの裾野を広げるために、もっと黒ビールが好きな人を増やしたい」という想いが。
前田さん「黒ビールに着目したのは僕が単純に好きだったからなんですけど、それと同時に、好きなものが若干毛嫌いされてる風潮を感じていて。こんなに美味しいのに、黒だからという理由であまり飲まなかったり、ビアバーもお客さんのそんな反応を受けてあんまり繋がなくなったりして。それが勿体無いと感じていて、少しでも黒ビールの飲用率を上げられたらと思ったのですが、その役目は、黒ビールが好きな僕がやらなきゃなという思いでした」

確かに、ビールもコース料理と同じように軽いものから飲んでいくことが多いため、黒ビールが最初の1杯に選ばれることは少ないかもしれません。そして、『終盤になったら飲もう』と決めていても、その“終盤”を迎える前にお腹いっぱいになってしまい、結局黒ビールには辿り着かなかった…という経験は、皆さんもあるのではないでしょうか。
前田さん「ビアバーからお客さんに提案するオーソドックスな飲み方は、ラガーから入って、その後IPAを飲んで、最後に黒ビールで締めだと思うんですけど。うちは、メニューの1番上からいきなり黒ビールを書いてまして。軽めの黒ビールを1杯目にお勧めしてます」
メニューに限らず、クロノブルーイングでは時間のペアリングをテーマに設定し、朝のシチュエーションに合う黒ビールも計画していることからも、黒ビールに対して親しみやすさを感じてほしいという想いがひしひしと伝わってきます。
前田さん「本当いろんな黒ビールがあるということが、ブルワリーのコンセプトを説明するだけでも伝わると思うので。まずそこで『黒ビールだけで24種類もあるの?』という驚きが生まれて。それをきっかけに僕自身が黒ビールの魅力を説明できるようにという仕組みを考えています」
中には、コーヒーのようにホッと一息つけるビールがあるのも黒ビールの強み。24時間いつだって寄り添ってくれる魅力的な飲み物なのです。

まだ浸透していない黒ビールの魅力を伝えていき、需要を上げていけば、もっと日本のブルワリーも黒ビールを醸造するようになるはず。そして黒ビールに触れる人がさらに増えれば、必然的に「ビールの味わいって幅が広い」という認知にも繋がり、結果クラフトビール全体がより日本で盛り上がるはず。
黒ビールは、クラフトビールの裾野を広げる鍵となるアイテムなのかもしれません。
そして、国内ではほぼ前例のない“黒ビール専門のブルワリー”を若くして独立して立ち上げ、まだまだ需要が高くないと感じているものを商品として扱っていくというのは、本来とても勇気のいることだと思います。前田さんのその行動力に心から感服します。
こうして旋風を巻き起こそうとしている時代の風雲児である「KARAFA」、そして「クロノブルーイング」。今後の動向に目が離せません。
野望を抱き、黒ビールと歩む未来

最後に今後の展望を伺ってみると、希望に満ちた想いがわんさか溢れてきました。
1つ目の野望は、「KARAFAを京成立石に根付かせつつ、全国各地から黒ビール好きをかき集める」こと。
前田さん「ここはせんべろの街なので、最初僕は、京成立石の方々よりも別の地域から足を運んでくださるビール好きの方の来店が多くなるのかなと想定していたんですけど、実際は思ったより立石の方が多いです。せんべろの後の2軒目に選んでいただくことも。なので、全国各地を意識しつつも、“地元の店”としてもしっかり根を張っていきたいです」

2つ目の野望は、「自分が大好きな味わいの黒ビールをたくさん醸造する」こと。
前田さん「僕は、甘ったるくて重くて、アルコールも10〜15%あるような北欧の黒ビールが大好きなんですが、現在は黒ビールの需要が少ないからか、そういったタイプのものは日本ではあまり醸造されていないんですね。日本にないなら自分で造っちゃえって」
ちなみに、前田さんの人生におけるナンバーワンの黒ビールは、ノルウェーのブルワリー「LERVIG」が手がけたインペリアルスタウト『Times 8(タイムズエイト)』なのだそう。それと同じくらい自分が納得のいく黒ビールを造ることが目標だと教えてくれました。

3つ目の野望は、「2店舗目以降の店舗展開をしていく」こと。
2店舗目以降も黒ビールをテーマにするのかと思いきや、そうとは限らないのだそう。
前田さん「ワンオペを基本としたお店を増やしていきたいのですが、その店を一任する方に店の趣向もお任せしたいなと思っていて。というのも、やっぱり僕がIPAのお店をやろうとか思っても、たぶん熱量的にできないんですよね。逆にKARAFAも黒ビール大好きな人じゃないとできないし」
情熱を注ぐことができるビールのコンセプトであれば、黒ビールでなくても良い。最終的な目的はクラフトビールの裾野を広げることだという前田さんの芯のある考えに、心を揺さぶられます。

最後の野望は、「現在ファントムとして活動しているクロノブルーイングを、しっかり場所を構えた醸造所にする」こと。
前田さん「クロノブルーイングを、場所をしっかり構えた醸造所にするのは理想的な夢の1つです。現在の需要では、黒ビールしか造らない醸造所の運営は難しいだろうなと思うんですけど、採算が合うぐらいブランドが大きくなれば嬉しいです」
黒ビール、そしてクラフトビールの未来は明るい。次世代となる前田さんの言葉を聞いていると、そんなふうに思えてきます。
黒ビールが好きな方も、まだ魅力を知らない方も、ぜひ一度KARAFAで黒ビールの沼に足を踏み入れてみてください。また1つ、新たな世界が広がるかもしれません。
KARAFA
〇住所:〒124-0012 東京都葛飾区立石4丁目27−9 水谷ビル 2F(Googleマップ)〇アクセス:京成押上線「京成立石駅」から徒歩4分
〇営業時間:
[月〜水、金]17:00〜23:30
[土日]12:00〜23:30
〇Instagram:https://www.instagram.com/karafa_beer/

お酒は二十歳になってから。
