女性にとってビールを”もっと身近に感じてもらう”をテーマに、ビールに関わる女性、ビールが大好きな女性にお話を伺う「ビール女子インタビュー」。 第6回目は、日本で新しいビールの価値観を提案する、ビール輸入会社 The Counter代表の杉山弥保さんに、彼女が輸入したビールを楽しめる赤坂のビアバー『sansa』にてお話しを伺いました。杉山さんがビールを通して伝えたいこととは何か、彼女の仕事に対する想いに迫ります。
○アメリカでのライフスタイルとビールとの出会い。
―― 杉山さんはThe Counter設立前,アメリカの企業に勤めていたそうですが,なぜアメリカだったのですか?
杉山さん(以下敬称略):もともとは語学留学のためにアメリカへ行きました。友達の薦めもあって,ニューヨークの大学院でフードマネジメントについて学びました。そして留学中,一時帰国した時に茨城にある木内酒造さんの手造りビール工房で醸造体験をしたんです。その造ったビールをアメリカへ送るため,たまたま利用した輸入会社が,私がその後働くことになる“B. United International” だったんです。
―― なぜそこで働くことになったんですか?
杉山:その会社が取り扱う商品と社長に惚れ込んだんです(笑)。私は,もともとビールに詳しい訳でもなく,ただ飲むのが好きな一ユーザーでした。でも,たまたま飲ませてもらったそのビールの美味しさに驚き,そして社長の人柄がとても好きで,この人の下で働きたいと思ったんです。
――ニューヨークでの生活はどのように送っていたのですか?
杉山:向こうでは在宅勤務だったので、自分のペースで働き易かったです。朝起きたら自宅でメールのチェックをし事務作業を済ませて、午後からは商品を卸している得意先を回る。家での時間はゆとりを持ってやってましたが、外回りは結構バリバリ動き回ってましたよ。そしてアフターファイブは、同業者や卸業者など多くのビール関連業者の人たちが集まる“ブラインド・タイガー”というビアバーに行ってよく飲んでいました。またね、そこに集まる人が良い人ばかりなんです。私の周りにいたビール関係者が良い人ばかりだったことも、私がビールに長く携わることになった理由の一つですね。
○ニューヨーカーの女性が持つビールのイメージ。
―― 日本ではビールは男性の飲み物というイメージが強く、その魅力や面白さをよく知る女性は多くない気がしますが、ニューヨークではどうでしたか?
杉山:ニューヨークでのビールのイメージは、ワインと同じくらいオシャレな飲み物という感覚があります。一時、フレンチアメリカンの高級レストランで働いていたこともあるのですが、そこでは多くのワインを取り揃えるように、色んな種類の良質なビールを出していましたね。ニューヨークの女の子たちは、ビールが男性だけの飲み物というイメージは持っていないかもね。
[caption id="attachment_5383" align="alignleft" width="200"] Brasserie des Franches-Montagnes (BFM)のLA SALAMANDREというビール[/caption]
―― ニューヨークではもともと女性も積極的にビールを飲んでいたんですか?
杉山:ニューヨークでも昔からという訳ではなく、2004~2006年頃にかけて変化があったように思います。パイントグラスでガンガン飲むというスタイルに加えて、ワイングラスでオシャレに飲むというスタイルが街全体で増えていったように感じましたね。それから、ビールを飲むシチュエーションもパブだけでなく、美味しいレストランやオシャレなバーへと広がっていったんです。ニューヨークの女の子たちは、オシャレなバーへ行くことや、そこで働くクールな男の子たちに会いに行くのを楽しみに、自然とビールを飲む機会が増えていったんじゃないかな?
○ビールに対する想い。
―― どうして独立し、The Counterを立ち上げようと思ったんですか?
杉山:いろいろ紆余曲折はあるんだけど、自分の知っている美味しくて、面白い魅力的なビールを自ら選んで輸入したいと思ったからです。ビールを通して 新しい味わいや香りを多くの人に楽しんでもらいたいと思っています。
―― 杉山さんが魅力的だと思うのはどんなビールですか?
杉山:私がビールを選ぶときに大切にしていることは、“伝統を大切にしている”“その土地の物を生かしている”“オリジナリティがあってユニーク”であること、そして造っている醸造主の人柄です。どんなに味が良くても、結局造り手が信頼できる人でなければ私はそのビールを選びません。私が取り扱っている商品の醸造主は良い人ばっかりですよ(笑)。後は、もともとビールは食事をしながら楽しむものだから、実際どんな食べ物と合うか考えながら選んでいますね。
[caption id="attachment_5389" align="alignright" width="200"] BFMのAbbaye de St. Bon-Chien 2013 を飲む杉山さん[/caption]
―― 今後、日本でもビールを楽しむ女子が増えると思いますか?また、ビール人口が増えた時、杉山さんがターゲットにするのはどんな客層ですか?
杉山:そうですね。ビールに限らずですが、日本にはニューヨークのブームが少し遅れて入ってくる傾向があるので、同じ様な流れの変化はあるんじゃないかな。私がターゲットにしているのはすべての人です!…というより、決めていません(笑)。私は、The Counterが選んだ商品を気に入ってくれた人たちが、それを楽しんでもらえたらと思っています。
――ターゲットは「杉山さんのビールが好きな人?!」みたいな?
杉山:そうそう!まさに(笑)。ニューヨークでは“ベンチャー志向”というのが強くて、多数の人が良いというから良しとするのではなく、自分が良いと思うものが良いと考える人が多いんです。日本はそれを言うと、真逆の“大手信仰“ですよね。私は流行に流されずに、B. United Internationalの“伝統と新しいものを大切にする”というDNAをこれからも引き継いでいきたいですね。
sansa橋本さんとThe Counter 杉山 さん
インタビューの様子の通り、杉山さんはとても明るくエネルギッシュで、それでいて心遣いが細やかなとても気さくな方。「そんな杉山さんの信念の強さと人柄の良さ、そして人としての面白みは、そのまま杉山さんが選ぶビールの味にも影響している」と『sansa』の橋本さんは仰っていました。さらに、「杉山さんを見ればどんな人がこれを造っているか想像がつくし、飲めばやっぱり杉山さんが選んだビールだなってわかりますね。造り手の性格は味に出ますから。」と橋本さんが言うと、杉山さんが「それ!すごく嬉しいね!ビールを飲んで、これはThe Counterのだってわかってもらえたら最高だね!」と思わず発したこの一言こそが、杉山さんが商品選びをする時に大切にしていることのすべてを表しているんでしょうね。ぜひ、みなさんもThe Counterのビールを飲んで,新しい魅力と楽しみ方を発見してみてはいかがでしょうか。
「ビールの本当の美味しさや、面白さを発見してもらい、楽しんでもらう」 がコンセプトのビールの輸入代理店
今回の取材で伺ったのは・・・
赤坂『sansa』