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Column 新米ビール職人の1週間

2021/05/17


こんにちは。
新米ブルワー(ビール職人)の髙羽 開(たかば かい)です。

ゴールデンウィークが終わりましたね。期間中、おいしいビールは飲めましたでしょうか?

僕はというと、高知県ではまん延防止等重点措置や緊急事態宣言が出されていなかったこともあり、勤務先の『Mukai Craft Brewing』がGW期間中休まず営業をしていたので、いつもどおりの勤務状況でした。

今日は、そんなGW中のブルワリー(醸造所)での様子をかいつまんで「新米ブルワーの1週間」をテーマに書いていきます。「ビールをつくる仕事ってそんな感じなんだ〜」というイメージがお伝えできればと思います。(業務内容や働き方については各ブルワリーごとに千差万別ですが!)


それでは、週イチ連載「拝啓、ビール職人になりました。」、第5回です!

5/3(月)ホップが何者かに食べられる


先週の記事にも書きましたが、朝イチにブルワリー前で育てているホップ(ビールの原料のひとつ)の成長を観察することがここ最近の習慣になっています。

■関連記事:うちのホップがカワイイのでご紹介します。

この日もいつものように草抜きをしつつホップたちに目をやると...


ある1つの株のツルの先端が無くなっていることに気が付きました。

ちなみに正常なツルの先端はこんな感じ↓


すかさず醸造長のKenさんに報告すると、「鳥か虫かに食べられたんかねぇ。この先っちょの部分でしか新しい細胞は生まれんから、このツルはしばらくは成長しないかもしれんねぇ」とKenさん。


「植物は茎やツルの先端で新しい細胞を作って成長する」という、中学時代か高校時代の生物の授業で習ったような習ってないような知識を改めて、今度は確実に習得しました。

さらにこの日はイベントに出るときなどに使うビールサーバーの修理をしました。


(簡易的な)ビールサーバーの作り方・仕組み、直す場所を教えてもらって「あとは開が考えて直してみて」とKenさんからの指示。

自分の頭で考える余白を残してくれる指示は、ありがたいし、楽しいです。
(結局、わからないことがありすぎて、10回くらい質問しにいきました)


ビールサーバーを作る」という新しいスキルを身に着けた月曜日でした。



5/4(火)火起こしを学ぶ



火曜日は、発酵と熟成が終わったビールを樽と瓶に詰めるところからスタートしました。

できたてのビールの香りが充満する空間での作業は、「ビール飲みたい!」という煩悩との闘いです。



午後からはタップルーム(ブルワリーに併設された飲食スペース)が忙しくなったので、そちらをメインに働きました。


夕方には、普段Kenさんがやっているタップルーム前での焚き火の火起こしを「やらせてください!」と申し出て...


酸素がつたわりやすく、温度が上がりやすい木の組み方などを教えてもらい...


無事に着火。


夜はお客さんも落ち着いたので、焚き火で焼いたマシュマロを食べて帰りました。


5/5(水)仕込みその1


この週は2回ビールの仕込みをおこないました。ビールの仕込みには丸1日かかります。そのうちの1回目だったこの日はKenさんがアメリカから持ってきたホームブリューイング(※)の設備で、20Lというごくごく少量のビールの仕込みを行いました。(普段は600Lの設備で仕込みます)

※ホームブリューイング:自家醸造。自宅でビールをつくること。現在の日本では、アルコール度数が1%を超える飲料を無資格者がつくることは禁止されています。海外では「自家醸造」を認めている国も多く、Kenさんが生まれ育ったアメリカでも、ホームブルワー(自家醸造家)たちがつくったビールの審査会があるほど自家醸造が日常にあります。


ホームブリューイング歴15年のKenさんが醸造責任者を務めるうちのブルワリーでは、新しい種類(ビアスタイル)のビールをつくるときは、このようにまずは小さい規模で実験的に醸造をおこなってから、大きな設備で仕込みを行うことがよくあります。

5/6(木)pHと仕込みその2


祝日明けの木曜日は、この週2度目の醸造日でした。この日仕込んだのは、スタウト

■関連記事:スタウトとは?ビールの種類をイラストで解説!



ビールの仕込み作業は、いろいろな工程の合間にある程度まとまった"空き時間"がいくつかあります。『Mukai Craft Brewing』では元高校の物理と化学の教師でもあるKenさんが、その空き時間を使って「ビール講座」を開いてくれます。ビールづくりに深く関係している物理や化学、生物学といった自然化学について勉強することができるのは仕込み日の大きな楽しみのひとつです。

このビール講座は毎回テーマが決められていて、これまで「温度の正体」「光の種類」「排水処理の必要性とその仕組」「カーボネーション(炭酸ガス飽和)」などの回がありました。直近の講座は「コンクリートが固まる仕組み」についてでした(ビール講座とは)。




この日のテーマは、イメージしているビールをつくるために仕込みの間に計測する「pH(ペーハー)」について。液体の酸性・アルカリ性の程度を表す単位のことです。pHを表す数値がどうして0から14なのか、その数値はどう導き出されて、各数値のときに溶液の中は何の物質がどうなっているのか、を学びました。


「なにごとも基礎が大事ぃぃ!」と自分に言い聞かせつつ、根っからの文系男子、ひーひー言いながら日々勉強しています。

5/7(金)大工屋さんと左官屋さんになる


金曜日は、ほぼ1日外作業でした。


ブルワリーの屋根を掃除したり、ブルワリー横の塀を整備したり、雨どいの位置を調整したり...


冷蔵庫の底上げ用の台を作ったり、Kenさんの棚作りを手伝ったり...まるで大工屋さんか左官屋さんです。


また、この日の夕方、作業の合間に何となしにホップ畑を眺めていると、週の頭に先端が食べられたホップから新しい先っちょが目を出していることに気が付きました。(写真の右上の部分です。伝わりますでしょうか...?)


ホップの生きるチカラに感動しつつ、これは『ビール女子』のコラムをすてきな最後で締めくくれるぞ...という下心でにやにやした、週の最終出勤日でした。






冒頭でも書きましたが、ブルワーの仕事内容はブルワリーによって多種多様です。会社の規模、スタッフ体制、醸造設備の大きさ、販売形態、こだわりなどなど、現在国内に500くらいあるブルワリーで働いているブルワーさんの働き方も500通りあると思います。ただ、(ブルワーがどこまでの実務を担当しているかどうかは別として)「おいしいビールをつくるため、そのビールをできるだけおいしく飲んでもらうためにやらなければいけないこと・できること」は本当に山のようにあります


実際に「ビールをつくる」業務は、ブルワリーでのお仕事のごくごく一部なんです。

ブルワーというお仕事の「実は!」でした。








(結局、お休みをもらっていた週末もブルワリーに遊びに行きました)


それでは、また来週です。





Cheers(乾杯)!!



【合わせて読みたい】
うちのホップがカワイイのでご紹介します。


ビールのつくり手になって見える景色が変わった話


どこにでもいるビール好きが、ビール職人になったわけ


拝啓、ビール職人になりました。

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kai takaba ライター

新米ビール職人。高知県の『Mukai Craft Brewing』での修行を経て、現在、自身の醸造所とブランドを立ち上げ中。ビールづくりを通して「調和を生み出す補助線を引くこと」を目指しています。

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