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Column ビールと詩。味わう不思議と共通点

2021/11/22

同じ “ビール”でも、そのときの環境や年齢、置かれている状況によって“味わい"が変わる

この一文を見て「わかる!」と思われたビール好きの方、多いのではないでしょうか?



実はこの一文、元はこうでした。

同じ “詩”でも、そのときの環境や年齢、置かれている状況によって“感じ方"が変わる

先日、「読書」をテーマにした雑誌を読んでいたとき、この文章を見て「...?!ビールやん!」と思いました。



新米ビール職人のコラム「拝啓、ビール職人になりました。」

今回はそんな、とある発見をきっかけに「ビールと詩の共通点」というテーマで書いていこうと思います。

  • 【ライター】kai takaba
    新米ビール職人です。自身の醸造所とブランドの立ち上げを目指し、高知県の『Mukai Craft Brewing』で修行中(21.1~)。自分に課したミッションは「ビールの概念をひろげ、ビールの価値を変えること」です。

自分の心のありようや変化を知る



僕自身、詩をたくさん読む方でもないですし、詩に対する知識も乏しい人間ですが、部屋に積まれた本の中にある数少ない詩集を読み返したとき、そのときどきで違った受け取り方をすることがあります。

たとえば、「雪舟えま」さんのこちらの詩。

「寄り弁をやさしく直す箸 きみは何でもできるのにここにいる」*
*雪舟えま「たんぽるぽる」より引用

「寄り弁」とは、弁当箱の中身が一方に片寄ってしまったお弁当のこと。片寄ってしまったご飯やおかずをほぐし戻していく「きみ」の、器用で丁寧な箸先を見つめながら「きみは何でもできる」と思う。寄り弁を直すという些細な行いにさえ、感動してしまう。そんな「きみ」が「ここにいる」という奇跡。

愛があふれるこの一篇を読んだとき、あるときは底抜けの温もりを感じ、またあるときはその温もりの中にかすかな切なさを感じました。

自分自身の「心のありよう」や、いろいろな詩を味わうという作業の反復(訓練)により、目の前の文章が違った風に見えてくる。

そんな感覚をビールでも同じように感じることがあります。




どこにいて、何を思っているのか。となりには誰がいて、どんな肴が添えてあるのか。

より糸のように絡まったビールの複雑な味わいを、ひとつひとつ解きほぐしていく作業をどれだけしてきたか。

それによって同じビールを同じヒトが飲んでも、違った味わいが感じられます。



「自分の現在地を教えてくれる」、そんな共通点が詩とビールにはあります。


不確かな時代に人が頼るもの



また、別の共通点として「不安定な状態になると人が求める傾向にある」があるように思います。

2018年、「Brexit(欧州連合離脱)で国内が揺れていたイギリスにおいて、詩集の売り上げが過去最高を記録した」というニュースがありました。

参考:
https://www.theguardian.com/books/2019/jan/21/poetry-sales-soar-as-political-millennials-search-for-clarity?CMP=twt_books_b-gdnbooks

このニュースに対して「政治的に不確かな時代に、簡潔な言葉によって世界の見方を変えてくれる詩の力を人々が求めている」という解釈がなされていました。

一方日本では昨年、「コロナウイルスの流行による失業や生活の変化が原因で、アルコール依存症の人が増加した」というニュースをたくさん目にしました。

読むことと飲むことによって得られるものは全く異なりますが、不安定な状況になった人がすがる思いで手を伸ばす先に、ビール(お酒)か詩、どちらかがあることは多いのかもしれません。


つくり手の想いや背景を知る楽しさ



もう1つは、「つくり手(詠み手)の想いや背景を知ることの楽しさ」です。

ビールの世界に入ってもうすぐ1年。

いろんなブルワー(ビール職人)さんと出会い、ビールづくりに対する想いや哲学、お人柄を知ることで、ビールというものに対して感じる“楽しさ”が格段に大きくなりました。

何を思いどんな経緯でその地にブルワリー(醸造所)を構えたのか。

さまざまな人との出会いやつながりの先に、いかにして目の前に置かれた1杯のビールができあがったのか。そのストーリーを知った上で味わうビールはそれはそれは美味しいです。(何も知らなくても美味しいですが)

これはきっと詩にも言えることです。

一見ストレートな恋の詩に見えても、その詠み手が実は病に伏した状態で詠んだ詩だと知ると、まったく違う感情が見えてきたり。

多様な解釈の余白が残された詩でも、その詩が詠まれた時代背景やシチュエーションを知って改めて読むと、また違った見え方ができたりもします。




以前書いた「花束を渡すようにビールを贈るようになった話」でも同じことを感じましたが、「ビールと何かの共通点を探し抽象化する」という作業は、ビールに対する新しい発見につながるような気がします。

まだまだ始まったばかりのブルワー人生。これからもいろんな角度からビールを捉える遊びをして、ビールという多様で重層的な液体への理解を深め、その様子をまたこのコラムで書いていければと思います。

────

ここまで読んでくださってありがとうございました。

今週もみなさんがおいしくビールが飲めることを願っています!
それでは、また次回。


Cheers(乾杯)!

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拝啓、ビール職人になりました。

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kai takaba ライター

新米ビール職人。高知県の『Mukai Craft Brewing』での修行を経て、現在、自身の醸造所とブランドを立ち上げ中。ビールづくりを通して「調和を生み出す補助線を引くこと」を目指しています。

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