キリンビールの新しいクラフトビールブランド「SPRING VALLEY BREWERY TOKYO」。昨日4月17日にオープンしたブルワリー併設店舗「スプリングバレーブルワリー東京」(代官山)で、同社でマーケティングマネージャーを務める吉野桜子さん×ビール女子編集長の瀬尾裕樹子のスペシャル対談をお送りしています。中編はスプリングバレーブルワリー立ち上げ、二人の考えるクラフトビールついてなどトークセッションも熱くなってきました。後編は、ライフスタイルの変化とビールについてから、ぶっちゃけビール女子トークまで、話しは大盛り上がり。世の中の男性にもぜひ参考にしていただければと思います。
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ライフスタイルの変化に伴うビールシーンの多様化
瀬尾:ビールに対して自由なイメージってまだまだないですよね。ビールと言ったらこの味で、ビールと言ったらこういったシーンで楽しむものみたいな先入観があるのを、私自身、取材していても様々なところで感じています。
吉野:それが往々にしてちょっと女性が嫌いなシチュエーションだったりするんですよね。おじさんにお酌しなきゃいけないとか(笑)。唐揚げや焼き魚など、つまみが集まるとテーブルが茶色っぽいみたいなね。
瀬尾:取材をしていると、 2014 年くらいからシーンの多様化をすごく感じていて、カフェでビールが飲める店が増えてきました。提供されるシーンがいわゆる居酒屋、ビアバーだけではなくなってきています。
吉野:カフェビールですね。ライフスタイルが変わってきたのかなと思っています。終身雇用の会社に入って、背広を着て仕事帰りに上司と飲みに行くというような、そういう神話がだんだん崩れていて、いろいろな働き方している人が増えました。仕事関係ではなく、プライベートでビールの友達と飲みに出かけるとか。飲むシーンも自然と変化してきているのでしょうね。
瀬尾:シリコンバレーでスターバックスがIT系の起業家を中心に支持された土壌があるように、ビールを飲みながらビジネスの話が自然と生まれたりとか。アメリカのコーヒー文化のように、日本のビール文化もそういう時期にあるかもしれないですね。働き方のスタイル変化とともに飲み方も変化する、みたいな。冬の朝、カフェでビールを飲みながらパソコン開いて、「いったいこのひとは何の仕事をしているのだろうと」と、カフェの店員さんが言っていたのをきいたことがあります。
吉野:ここも実はモーニングの営業もしますよ!
瀬尾:え!!そうなんですか?
吉野:外で朝ごはん食べるひとも増えてきていますからね。
瀬尾:朝ビール!
吉野:はい。飲もうと思えば飲めますね。当然ランチもビールがあります。
(編集長瀬尾、この辺りから一気にテンション上がる)
ぶっちゃけビール女子トークへ突入
瀬尾:ここ数年ビール女子の活動をしてきて、実はものすごくビールを好きだという女性がいっぱいいるということに気付きました。いわゆる(ジョッキを)ガチンとやって乾杯! とやってガーッと騒ぐみたいなビールがもちろん好きなひともいますし、これまでになかったシチュエーションを提案することで面白いと感じて飛びつく方もいます。それこそキリンビールさんでいうと「オフホワイト*」みたいな商品が生まれることによって、これまでサワーや低アルコール飲料を休日に楽しんでいたひとたちが、ビール類に手を伸ばし始めています。だからビール女子として、これが好きなんでしょって一方的に“女子が好きそうなもの”を提案しても、読者には受け入れがたいのかもと感じているんですよね。
*オフホワイト:キリンビールが昨年 8 月に発売した商品で、3.5%というアルコール度数の低さと柑橘系の香り、デザイン性の高いパッケージで新たなビアスタイル飲用シーンの提案を行なっている。
吉野:そうなんですよね。男性が商品開発していると、「女性はもっと甘いものが好きそうだよね」とか言い出しますから。そうではない!と。ちょっとカクテルっぽくとか、優しげなものが女性が喜びそうだと男性は言うんです。それは、女性から本音を聞き出せていないというか、あなたの知っている女性はぶりっ子をしていますと言いたい(笑)。
瀬尾:そうそうそう(笑)! 絶対恋愛でダマされているタイプですよ!(爆笑)
吉野:そういうことをいう後輩(男性)がいると、「あなたダマされないようにね」と言っています。「女の子だからこのくらいがいいんじゃないでしょうかね」とか言ってると。。。「気をつけろ」と。
瀬尾:それ大事!
吉野:本当にビールが好きといっても多様で、いわゆる大手のビールが好きな人もいれば、すごくこだわりが強く、産地はどこだとか、従来のワインファンに似たビールファンもいれば、カクテルや酎ハイの延長線上で少し甘めの飲みやすいビールから入ってくる人もいて、様々な入口がありますからね。
瀬尾:最近特に増えてきましたが、ビールマニアの女性もいますしね。多様性をうまくつかんでいきたいです。間違いなく言えるのは一方向からでは、開拓されません。女性だからこれが好きではなく、男性でもこれは好きなひとがいるのではないかと想像することも大事ですね。
吉野:そうなんですよね。甘党の比率を調べてみると、30代〜50代の男性はあまりいないのですが、20代がポコンと上がるんですよ。でもそれは本当に甘いモノが好きなのではなくて、“僕は甘いモノが好きです”ということに対して恥ずかしがらない世代なのです。男だから甘いモノが好きとは言えない潜在層もいるはずです。
瀬尾:そのスイーツ男子論を受けて、ビール女子について考えてみると、ビール好きな女性が若い世代で増えてきたかっていうと意外とそうでもないんですよね。 20 代で 4 割位が、「好きだけどちょっとためらう瞬間がある」と答えています。浮かび上がってきた理由として、20 代女性は「女子力が低い」と思われることが一番の理由に上がってくるんですね*。 30 代 40 代 になると女子力より、「その時に相手や周りが頼まないから」などの理由が目立つんです*。
吉野:若いうちは、女子力が低いと感じるのは、要は「ビールを飲んでいるとモテない」と思っているんですよね。確かに周りの男性もまだ経験がないから、女の子ってかわいいもんだと思っているから、そこにちょっと彼女たちが合わせに行くのではないかと思いますよ。 20 代は特に。
瀬尾:(苦笑)
吉野:でも 30 代になって女性側も「そんなことをしてもモテない」ことに気づく、みたいな。
瀬尾:!!!(爆笑)
吉野:完全に異性の目線を気にしすぎちゃってますね。お互いに枠にとらわれちゃうのかなあ。男性側も、飲み会などでは女性もビールを飲んでくれたほうがみんなで乾杯できるし、嬉しいって言う人もいますけどね。
瀬尾: 30 代 40 代になり、周りや相手が頼まないからというのは、例えば上司と飲みに行った時やリッチな会食が増えてきた時に、実際その場で違和感なく頼めるビールがあったとしたら、もしかしたら好んでいるのかもしれないですけどね。でも実際はどこにでもこれだ!というビールがあるわけじゃなくて、相手が頼まなかったから、じゃあワインにしよう、みたいな空気。
吉野:ビールを飲む女性がモテるようになるといいですよね、本当に(笑)。
瀬尾:新しいビール文化の創造とともに、ビールに対する新しい恋愛論の創造もしていきたいとビール女子は考えます!(キッパリ)
吉野:ビールは一緒に飲むと仲良くなれるお酒です。パイントグラスの乾杯なんて距離が一気に近くなりますからね。
瀬尾:さて、私たち自身が“ビール女子”なので、女子的ビール論についてはもう、話せば切りがないのですが、最後に、お料理も美味しいらしいと噂のSVB店舗で、ビール女子的におすすめのメニューやペアリングはありますか?
吉野:横浜店、代官山店ともにお野菜にこだわっていて、横浜店舗は地産地消で神奈川野菜を手に入れたり、代官山店でも近郊の契約した農家から直接野菜を仕入れています。テーブルに並べると色鮮やかで綺麗です。我々がお出しするビールの中に、ハーブのような香りがするネルソンソービンホップを使ったビールがあるのですが、クレソンや青汁のなかに入っているケール入りの新鮮なサラダなんかに、そういう香りの強いビールとうまく合うかと。違う香りを合わせることで、また違った味が生まれるマリアージュを、肉だけではなくお野菜とかチーズでもやっていこうと思っています。それはビール女子の皆さんにもぜひ召し上がっていただきたいですね。
瀬尾:とても楽しみです。ありがとうございました。(ごちそうさまでした!)
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【今回の登場人物】
吉野桜子(よしの・さくらこ)
スプリングバレーブルワリー株式会社
マーケティングマネージャー
1982年生まれ。東京大学文学部卒。2006年にキリンビールに入社し、「キリン アイスプラスビール」「グランドキリン」「キリン ハードシードル」などの新商品開発に携わる。2011年秋よりSPRING VALLEY BREWERYの開発をスタート。3年半かけて、いよいよ横浜・東京の2店舗がオープンに。
瀬尾裕樹子(せのお・ゆきこ)
株式会社京橋ファクトリー ビール女子編集長
1986 年生まれ。農学・生物学を学んで大学を卒業後、新卒で(有)浅間高原麦酒というクラフトビールの会社に入社。ビール造りだけではなく伝票事務から軽トラックでの配達、畑作業、併設レストランでのサービス・厨房など、小さな会社でビールにまつわるほとんどのセクションに携わった後、WEBマガジン「ビール女子」編集長という、異色のキャリアを持つ。
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【撮影協力】
SPRING VALLEY BREWERY TOKYO(スプリングバレーブルワリー東京)
4 月 17 日(金)OPEN!!
撮影:前田裕司