今さら聞けない、ビールのはなし。 Column 「ビール」と「発泡酒」って何が違うの?今さら聞けない、ビールのはなし。

2021/09/22

※記事の最終更新日:2021年9月22日


こんばんは!「いつでもビール、どこでもビール、いつまでもビール」のライターきのこです。

突然ですが、皆さんは「ビール」と「発泡酒」の違いが分かりますか?



実は2018年4月1日、日本における「ビール」の定義が変わりました。これによって、中身は同じなのに「発泡酒」が「ビール」表記に変わったものや、“新定義”とラベルに書かれたビールが発売され、話題となりました。

ますます「ビール」と「発泡酒」の違いが分かりにくくなった今、「ビール」と「発泡酒」の違いについてご紹介します。2020年10月1日に変更された酒税税率についてもお伝えします!


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ビールは値上げ・値下げ?2023年10月の酒税法改正でどう変わる?


海外のビールが日本では「発泡酒」?

「ビール」と「発泡酒」の区別は、日本の法律で決められた定義に基づいています。海外では「ビール」であっても、日本の法律上「発泡酒」となってしまう銘柄があります。ややこしいですよね。

世界的に「ビール」とは、麦芽・ホップ・水に酵母を加えて発酵させたものです。さらに、ビールの味を調整したり、香味に特徴を出すために、副原料が使用されることもあります。この原料こそ、ビールの定義が決まる重要なポイントとなります。


「ビール」と「発泡酒」の違い

さあ、いよいよ本題です。

「ビール」と「発泡酒」の違いは、麦芽比率と副原料の内容・使用量にあります。

麦芽比率とは、ホップと水を除いた原料の質量中、麦芽が占める割合のこと。例えば、麦芽比率100%のビールは、副原料が一切使われていないということを表します。

「ビール」と「発泡酒」の定義を、それぞれ確認しましょう!

「ビール」の定義(2018年4月変更内容より)

・麦芽比率50%以上であること。

・副原料の重量の合計は、
 使用麦芽の重量の5%の範囲内であること。


「ビール」は使用できる副原料が決まっています。

使用できる副原料

(1) 麦、米、とうもろこし、こうりゃん、ばれいしょ、デンプン、糖類、または苦味料もしくは着色料
(2) 果実・果汁や香味料(新定義で追加)
次のような物品です。
①果実
②コリアンダー・コリアンダーシード
③香辛料(胡椒、山椒、シナモンなど)
④ハーブ(カモミール、バジル、レモングラスなど)
⑤野菜(かんしょ、かぼちゃなど)
⑥そば、ごま
⑦含糖質物(はちみつ、黒蜜など)、食塩、みそ
⑧花
⑨茶、コーヒー、ココア(これらの調整品を含む)
⑩牡蠣、こんぶ、わかめ、かつお節


「発泡酒」の定義(2018年4月時点)

ビールと同じ原材料を発酵させたもので、

・麦芽比率50%未満のもの

・麦芽比率50%以上であっても、
 ビールに使える原料以外の原料を使用したもの

・麦芽比率50%以上であっても、
 規定量を超えて副原料を使用したもの

これらが「発泡酒」です。但し、蒸留酒等を原料に含むものを除きます。



「ビール」は制限が細かく設けられています。麦芽比率50%以上で、副原料は使用できるものが限られている上、使用できる量までも制限されています。

それに対し、「発泡酒」はなんだか自由ですね。麦芽を使用していれば、副原料はどんなものでも、どれだけでも使用できます。


注目されたビールの“新定義”

2018年4月の酒税法の改正により、「ビール」の定義が変わりました。その内容は、麦芽比率を約67%から50%に引き下げられ、副原料として使える物品が増える、というものでした。

諸条件が緩和されたことで、味わいのバリエーションを増やすことができる、新しいビールをつくることができる、今後のビール市場を変えるのではないかと言われ、とても話題となりました。



実際に、これまでは「発泡酒」として扱われていた商品が「ビール」として販売されるようになったり、これまではビールに使用できなかった原料を使用した『新定義ビール』が相次いで発売されています。

例えば…
『SORRY UMAMI IPA』(ヤッホーブルーイング株式会社)



「発泡酒」から「ビール」に表記が変わった銘柄の一例です。日本独自の素材「かつおぶし」を使ったビールとして話題になりましたね。(関連記事:酒税改正でビール市場をさらに盛り上げる!『SORRY UMAMI IPA』発売

グランマイルド(アサヒビール株式会社)


"新定義ビール" の一例です。副原料にレモングラスを使用したビールです。(関連記事:https://beergirl.net/asahi-gran-mild_p/


ここで注目です!


「発泡酒」は「ビール」より安いの?

同じ発泡酒の中で「麦芽比率50%」が境目になっているのをお気付きでしょうか? この境目は、私達ビールファンにとって気になる「ビールの値段」に関わります。


ビールや発泡酒を買う時、値段って気になりますよね。発泡酒の方がビールより安い、というイメージがあるのではないでしょうか?


酒税法では麦芽比率によって酒税が設定され、それが価格に影響します。ここで「麦芽比率50%」の境目を思い出してみましょう。

実は「ビール」より安くなるのは「麦芽比率50%未満の発泡酒」です。

この「麦芽比率50%未満」の発泡酒は、酒税が安いので『節税型』発泡酒と呼ばれます。このことを知らない私の父は、発泡酒表記のクラフトビールの値段を見て、「発泡酒なのに安くない!」と言います。



気になる酒税はいくら?

では、ビール類の酒税を確認しましょう!2020年10月に酒税税率が変更され、350mlの缶1本あたりの酒税が次のようになりました。


※小数点以下の数字は切り捨て


このように、麦芽比率が50%以上の発泡酒は、ビールと同じ酒税が掛かっているので、ビールと同じ価格設定になるんですね。

それに対し、主に大手ビールメーカーから販売されている麦芽比率25%の発泡酒は、ビールよりも酒税が低く設定されています。


ところで「新ジャンル」ってなに?

ビール系飲料と呼ばれるお酒の中で、最も酒税が低い『新ジャンル』は、「第3のビール」や「第4のビール」と呼ばれることがありますが、造り方に注目すると「ビール」とは言えません。(第3の~、第4の〜という言葉はマスコミによる造語です。)

新ジャンルは、2つに分類されます。

1. その他の醸造酒(発泡性)
  麦芽を使わず、大豆やえんどうなどを発酵させたもの

2. リキュール(発泡性)
  麦芽比率50%未満の発泡酒にスピリッツを加えたもの

缶には「新ジャンル」とは書いてありませんので注意してくださいね。


ビール系飲料の値段が統一!

今後、ビール系飲料の税率を段階的に変えることが決まっています。最終的に2026年10月1日には、ビール・発泡酒・新ジャンルの税率が一本化され、すべて350ml缶1本あたり約54円になる予定です。

簡単にまとめると、このようになります。

・ビールの値段は下がる(70円→約54円)
・発泡酒の値段は上がる(約47円→約54円)
・新ジャンルが新定義の「発泡酒」に取り込まれ、結果的に値段は上がる(28円→約54円)

さらに楽しみなのは、2023年10月1日に「発泡酒」の定義が変更される予定となっていることです!これはビール系飲料の税率一本化に向けた取り組みで、新ジャンルのほか、将来的に開発されうる類似商品も含めてその対象に取り込めるようにするとのこと。


これにより、飲み手はどんな新しいビールに巡り会えるのでしょうか…ビール醸造家の絶え間ない探究心と努力により、日々、新しいビールが誕生しています。税率の違いによる販売価格を気にすることなく「ビール」や「発泡酒」を手にすることができるのはありがたいことだなと感じます。


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ビールは値上げ・値下げ?2023年10月の酒税法改正でどう変わる?


これからどうなっていく?

「ビール」と「発泡酒」の違いは、麦芽比率と副原料の内容とその使用量にあることをご紹介しました。

2018年4月に実施された「ビール」の定義変更により、味わいの幅が広がった「ビール」と、決められた原料以外のものも使い、味わいを広げている「発泡酒」。どちらも、メーカーや醸造家が工夫して造っています。

私はビールファンとして、「ビール」の定義変更により選択肢の幅が増えたということが一番のメリットだと感じています。今後も新定義ビールが発売され、いろいろな味わいのビールを試すことができそうです!

また、2023年10月1日の「発泡酒」の定義変更、2026年10月1日のビール系飲料の税率一本化にも注目です。大手ビールメーカーやクラフトブルワリーから新しい動きが起こりそうな予感が詰まってますよね。



「ビール」や「発泡酒」のことを知れば知るほど、より美味しく、楽しくなります。ビールファンの皆様がよりよいビールライフを過ごせますように。乾杯! 


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ライターの紹介

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数年前に突然ビールの奥深さに目覚めて以来、寝ても覚めてもビールのことばかり考えています。全国の大手ビール工場や醸造所に通い、ビール関連の本を読み漁り、さまざまな勉強会やイベントに参加。日本地ビール協会公認「シニア・ビアジャッジ」として、IBC(インターナショナル・ビアカップ)の審査員を経験(2018年、2019年、2020年)。日本ビール検定2級。日本ビアジャーナリストアカデミー10期生。紙面協力:ライフスタイル情報『CHANTO』。

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