sponsored by REVO BREWING
皆さんは、ビールがどのように造られるかご存じでしょうか?まず麦汁を作って……という「ビールの造り方」の話だけではありません。1つの「商品」ができる過程そのものを見たことはありますか?
今回は、商品企画から、実際のクラフトビールが完成するまでの工程を皆さんに知ってもらうべく、神奈川県横浜市にあるREVO BREWINGのコミュニティマネージャー・佐藤 翔平さんに、その裏側を綴っていただきます!
「商品の企画会議」「醸造」「デザイン」と3つのテーマがお話の軸。そして本記事は、2回目のテーマ「商品の醸造編」です。どんなふうに商品が完成していくのか、見ていきましょう!
記事の語り手
コミュニティマネージャー 佐藤 翔平
1989年、宮城県出身。岩手大学卒業。「酸っぱいビール」に衝撃を受け、5,000種以上のビールをティスティング。10以上の酒類関連資格と調理経験を活かし、フードペアリングに関する執筆や「ビアジャーナリストアカデミー」「アカデミー・デュ・ヴァン」等のセミナー講師を務める。日本地ビール協会公認「シニア・ビアジャッジ」として国際ビアコンペでの審査も行う。さらに「クラフトビールの魅力をもっと多くの方に知っていただくためにも、醸造の現場を経験したい!」との想いで、現在はREVO BREWINGでも活動中。さらに、3月より自書本「うまいビールが飲みたい!最高の一杯を見つけるためのメソッド」も発売するなど、活動の幅を広げている。
ヘッドブルワー 水沼 泰樹
ビール女子読者の皆さま、こんにちは。REVO BREWINGのコミュニティマネージャー「佐藤 翔平」です。
今回は、2022年3月1日(火)に発売されてから人気を博している、REVO BREWING初の缶ビール『ONE』が出来上がる過程について一緒に覗いていきます。
まずは前回のおさらい。REVO BREWING の缶ビール「ONE」が完成するには、まずプランドコンセプトの構築からスタートしました。
コンセプトの次は「中身」。同ビールは「ウェストコースト IPA」がベースと決まりましたが…水沼さん曰く、「ONE」はこんなビールに仕上げたのだそう。
水沼さん
初期工程からの多段的なホップの投入、煮沸後半におけるホップバースティング技術の採用、ドライホ ッピング時の綿密な温度設定により、タンジェリン、トロピカルフルーツにライムのような強烈かつ気品あるアロマ、シャープな苦味とキレのある味わいを実現しました。
ん?どういうこと?ということで、ここからはビアジャーナリストでもある私「佐藤 翔平」の出番。 実際のビール醸造をご説明しながら、商品のアイデンティティが完成していくまでを覗いていきましょう!
REVO BREWINGの公式サイトを見る!
完成まで約1ヶ月!?ビールが皆さんに届くまで
まずはビールの造り方を簡単にご説明します。基本材料は「麦芽」「ホップ」「水」「酵母」。麦と水から麦汁をつくり、ホップで香りや苦みをつけて、酵母を入れてアルコール発酵させていくのがビールです。
ここまでは「知っているよ!」という方も多いと思います。では、ビールを造り始めてから完成まで1か月かかること、皆様はご存じでしょうか?なんでそこまで時間がかかるのか…?細かいビール造りの工程をご紹介します!
※これより登場する各工程の写真は、醸造に関する一般的な一連の流れをご紹介するためのものですので、異なる種類のビール醸造のものを組み合わせて掲載しております。
1.レシピ作成&麦芽の計量
各種文献や醸造経験をもとに、レシピを作成していきます。ブルワーの想像力の見せ所! レシピをもとに麦芽(モルト)を用意していきます。ビール造りの基本は「大麦」ですが、焙煎度合いや品種で様々な種類があります。他にも「小麦」や「オーツ麦」「ライ麦」など、目的に合わせてブレンドしていきます。
2.麦芽粉砕
日本酒造りの場合はお米を削って使いますよね?ビールの場合は殻付きのまま砕いていきます。酵母のエサになる「糖」を効率よく抽出できるように、計量したモルトを粉砕機に投入してから使います。
3.糖化
麦芽に含まれる酵素を利用して、でんぷんを糖に変換していきます。ワインの場合は「ぶどう糖」がすでに存在しますが、麦芽やお米の場合は一度この工程を踏まないといけないんです。60℃くらいの(温)水と合わせてしばらくまぜまぜすることで、「麦芽糖」などが生成され甘い麦汁に変わっていきます。
4.麦汁分離・麦芽層形成
まだ混濁している状態の麦汁
甘い麦汁は出来ましたが、まだ殻などが混ざったままなので分離していきます。それでは初めから殻なしの方がいいのでは?いえいえ、実はこの殻が麦汁をクリアにする「ろ紙」のような役割を果たすんです!麦芽層を通過して透明になった麦汁
釜底に沈んだ麦殻が層となり、「麦汁を窯下から抜く→上に戻す」の循環を繰り返すことで、麦汁が透明になってきます。5.麦汁移送
1番麦汁(左)と2番麦汁(右)
澄んだ麦汁を、次の窯へ移動していきます(1番麦汁)。先ほどの窯には麦芽カスが残るのですが、まだエキス分が残っているので再度お湯のシャワーをかけて濾し取ります(2番麦汁)。6.麦汁煮沸・ホップ投入
煮沸中は麦汁の香りと熱気で醸造所内が満たされます!
麦汁を勢いよく煮沸させていきます。「加熱殺菌」「不快な香気成分の除去」「濃度調整」など理由は様々ですが、ホップの苦みや香りを麦汁に付与するのもその一つ。ホップの苦みは高温ほど効率よく抽出できるんです。煮込み時間は平均 60〜90分ほど。苦みを付ける目的のホップは前半に、香りを付けるホップは煮沸が終わる間際に投入します。「ペレット状」(円盤状の固形物質にした状態)のホップ
ちなみに、ここからが「ONE」らしさの大きなポイント。「ONE」では味わいに複雑さをプラスするために煮沸中に何度も細かく分けてホップを投入し、 加えて後半にドバ!っと大量の香り付けホップを突っ込む「ホップバースティング」技術を採用しています。また、華やかな柑橘香を付ける人気の「Citra(シトラ)」ホップを中心に、ライムのような爽快な香りの「Motueka(モトゥエカ)」、トロピカルな印象の「Mosaic(モザイク)」、木々や土の雰囲気も感じるような「Simcoe(シムコー)」など、香りの方向性の異なる4種類のホップを用いることにより、非常に重層的で華やかなアロマを感じるのです!
7.麦汁冷却・酵母の添加 + 麦芽カスの清掃
ビールのもとができたので、いよいよ酵母をどぼん!…としたら酵母ちゃんが昇天してしまいます。 一度麦汁を冷却器(チラー)に通して、酵母が発酵できる温度まで冷やしてから発酵・熟成タンクに移動させます。冷やす前には「ワールプール」工程といって渦巻き状の水流を作り、余分なホップのカスや煮沸工程で発生したたんぱく質の塊などを取り除きます。
また、ビール醸造では麦芽カスが発生するので、合間をみてお掃除。なるべく環境負荷が小さくなるよう、弊社では農作物の肥料やクラフトビールペーパーの材料として循環しています。
8.発酵〜熟成まで
「糖度計」で、発酵の進行具合をチェック
実は【工程7】までは1日の流れ。ビール造りはここからが長いんです。日々サンプルを採取しながら発酵状態をチェック。だいたい7〜10 日で発酵は終わりますが、味わいを整える「熟成」の期間が必要です。活動が終わってタンク底に沈んだ酵母やホップカスを定期的に分離したり、IPA の場合は「ドライホッピング」と呼ばれる追いホップの工程を行ったりします(通常のビールの数倍、数十倍のホップを使うんです…)。
フルーツやスパイスといった「副原料」を用いたビールも、目指す味わいに合わせて煮沸工程で一緒に煮込んだり、タンクに直接投入したりします。
通常のビールの約十数倍以上のホップをどばっと!投入
さらに補足。ビールと言ったらしゅわしゅわの炭酸感!ですが……現代のほとんどのビール、炭酸ガスは後付けなんです。炭酸飲料と同じように、タンク内で加圧することで溶け込ませていきます。そうこうして仕込みから約 1ヶ月以上かけて、製品としてのビールが完成します!9.出荷・洗浄
仕込み設備、発酵タンク、KEG…「洗浄」も重要な業務
完成したビールはいよいよ!缶やボトル、ケグ(KEG:樽生用のビールを入れる容器)などに詰められ皆様のもとに届けられます。これで「ビール造り」は終わり?いえいえ、ブルワリー業務のほとんどは「洗浄」といってもいいほど、 いろんなものをきれいにしています。醸造所内はもちろん、仕込み設備やタンクや使い終わったケグを半日かけて洗っています。他にも新作のレシピを考えたり、材料の発注したり、税務帳簿を付けたり、出荷業務をしたり……ビールを造る以外にも実にいろんなことをしています。
どうでしょうか?今この瞬間から飲むビールがよりおいしく感じるのでは!?
REVO BREWINGの公式サイトを見る!
「ONE」にも通ずる私たちのこだわり
以上、ビールが皆さんの元へ届くまでの流れのご紹介でした!
しかし、1回のビール仕込みも大変そうなのに、納得のいく「ONE」の味わいが完成するまでどれくらいの時間をかけたのでしょうか?
水沼さん
麦芽の配合や使用ホップの選定には3か月ほど時間をかけました。元となるレシピを作成してからも何度も試験醸造を重ねましたね。ちなみに、「ONE」製品そのものについては、実は醸造委託という形で他社様の大きな醸造設備で造っていただいています。自身の工場で造ることも検討しましたが、最終製品に設備投資の費用を盛り込むと「クラフトビールをもっと身近に楽しんでほしい」というコンセプトから大きく外れてしまうためです。
また、今回の「ONE」のレシピ設計には、ブルワリーレストランとしての「強み」も生かされたとのこと。
水沼さん
前述の「ホップバースティング」技術をはじめ、「ドライホッピング」時の綿密な温度設定による香味の引き出し方などは、REVOでの醸造経験やレストランをご利用いただいたお客様たちとのやり取りの中で確立していきました。お手頃価格で「強い印象を残すビール造り」をONEでも表現できたのはみなさんとの試行錯誤の成果なんです。
REVO BREWINGを訪れるお客様の層は、横浜の多様性を表現するかのように実に多彩。ホテル利用や観光目的のお客様はもちろん、家族や恋人と食事を楽しむ方、パソコン片手にワークスペースとして使用するビジネスマンも訪れています。そんななか、ブルワリー併設ということもあり、直接ご意見をいただける事も。皆様のご意見を集約することで短期間で多彩なビールが生まれ、日々のブラッシュアップにつながっています。
コンセプトを形にし、ブルワリーの持てる技術を詰め込んだ「味わい」も完成!最後に必要になってくるのは「デザイン」。個性的な「ONE」のデザインはどうやって決まったのかを最後に掘り下げていきましょう!
REVO BREWINGの公式サイトを見る!