最近、大手以外の缶ビールを酒屋やスーパー、コンビニで見かける機会が増えていませんか?クラフトビールの取り扱いを始める量販店が増えた背景には、コロナ禍の宅飲み需要が影響していると言われています。
そんななか、先駆けとして2019年から缶ビールの販売を開始した、静岡県沼津市にあるRepubrew(リパブリュー)。缶ビールの販売以外にも、個性的な取り組みにどんどんチャレンジするRepubrewの魅力をご紹介すべく、代表の畑翔麻さんにお話を伺いました。
Repubrewってどんなブルワリー?
※ブリューパブとは…店内にビール醸造所を併設したバー・レストランのこと
富士山麓の清らかな湧水でつくられるビールは年間60種類以上。そんな多種多様なクラフトビールを、店内ではシェフ特製の料理とペアリングして楽しめます。
代表を務める畑さんは、醸造発酵を専門に学んだ後、ビール工場で4年の修行を経て、25歳でRePuBrewを立ち上げました。
当時のビール醸造所は、地ビールとして市街地から離れた場所にあることが多かったなか、アメリカンクラフトビールの影響を受けて、アクセスの良い街中にあるブルワリーをつくりたいと考えた畑さん。これまでにない、気軽に立ち寄れて、出来立てのビールが飲める場所づくりを計画しました。
20代で企業し、駅前で40席の店舗を含む醸造設備を作ることはハードルの高いチャレンジだったそうで、初期投資額はなんと4,300万円以上。ですが、Repubrewの個性的でおいしいビールや、新進気鋭なチャレンジが話題となり、沼津市に限らず静岡県、さらには全国のビール好きに注目されるようになります。
そうして盛り上がりを見せたRepubrewは、5基からスタートした醸造窯は現在13基に増加。それでもタンクの製造キャパはフル稼働の大盛況です。
缶ビール販売の広がり
「ないものをつくる」がポリシーのRepubrew。沼津の駅前に今までなかったクラフトビールのブリューパブを立ち上げた次なるミッションは、県内では見かけることの無かったIPAの缶ビールを発売することでした。首都圏とは異なりクルマでの移動が中心の静岡県で、より多くの方にビールを楽しんで貰えるようにという想いのもとスタート。
ちょうど、コロナウィルスが猛威を振るい『宅飲み』『オンライン飲み会』など、自宅でのビール需要が高まった頃から缶の販売がスタートされましたが、
「缶ビールの販売に舵をきったことは、世間的にはコロナ禍での足早な取り組みとして捉えられたりもしましたが、実は、コロナ前からビジョンを持って動いていた事と世間の流れが合致した結果、初動が早いように思われたのかもしれません。」
と、畑さんは語ってくれました。
現在は隣り町の三島市に、40坪の冷蔵設備を備えた出荷センターを立ち上げ、自社製造とOEMを並走させて需要にこたえています。
さらに、缶の販売を機に行ったユニークな取り組みがあります。それは、リパブリューの三島店に併設された“ビール自動販売機”。
子どものころ見かけたジュース自販機の『?』マークにインスパイアされたという、『なにが出てくるかわからないビール』のボタンを遊び心で設置したところ、SNSで話題になりすぐに売り切れてしまったそう。
Repubrewが造る、ビールの紹介
年間60種類ものビールを造る、Repubrewの個性的なビールを一部ご紹介します。『69IPA』
Repubrewの代表作であり、缶ビールとして発売され全国流通を果たした『69IPA』。強烈なホップのインパクト、クリアな味わいのドリンカブルなIPAです。ピンクグレープフルーツやオレンジを思わせる柑橘のアロマやマンゴーを思わせるアロマが中心にあり、モルトの少しの芳ばしさとホップの力強い香りを感じます。苦みはスムーズでしっかりとしているので、ビールが苦手な方でも飲みやすい味わい。
『微アルIPA』
流行りの超低アルコールIPAにチャレンジ!通常のIPAよりアルコール度数を抑えてドリンカビリティを重視した「セッションIPA」よりも更に低アルコールの1.3%。もう実質ノンアルコールビール!?でも飲めば確かに、West Coast IPA王道のフレーバー&アロマが感じられます。モルト感はかなり抑えめで非常にライトな飲み口。少ない糖でカロリーの少ないビールに仕上がりました。
『ALL NIGHT』
東京都の浅草にある日本酒バー「ALL WRIGHT sake place」とのコラボビール。コーヒー豆を使用しており、アルコールは19.5%と衝撃的な度数ですが、ボディを強めに残してバランスを取っているので意外にもスムースな飲み口。一口含むと、最初はアルコールのアタックがありますが、その後コーヒー・チョコレート・レーズンの様な香ばしく熟成された香りが広がります。超ハイ・インペリアルスタウトらしい貫禄のあるどっしりとした味わいです。
南アフリカ産ホップの取り扱いをスタート
「ないものをつくる」のポリシーは、ビールの原料にも及びます。それは、まだ日本では馴染みのない『南アフリカ産』ホップを使ったビールづくりをすること。
これは、RePuBrew一社ではなく『静岡クラフトビール協同組合』としての新たな取り組みで、県内の他ブルワリーと協力して、ホップ新興国・南アフリカのホップを試験的に5種類購入し醸造に活用しています。年内には仕上がる予定だそう。
これまでは、一部の国産ホップを除き、ヨーロッパやアメリカからの輸入が中心でしたが、来年以降、日本で南アフリカ産ホップのクラフトビールを見かける機会が出始めそうです。
RePuBrew「私たち」のこれから
畑さんにインタビューをする中、お話の主語が常に『WE:私たち』と複数人称なことが印象的でした。店名に『Republic:共和』が入っているように、個人の想いだけでなく、様々な人の関わりから成り立つブルワリーを目指されているそうです。
「皆の意見やアイデアを仕上げるのが役割です」と話す畑さん。「ないものをつくる」というアクションが次々と生み出される背景には、自分のアイディアだけにとどまらず、周りを巻き込み、皆でつくり上げるRePuBrewイズムが在りました。
最後に、これから新たにつくりたいものをたずねると、「醸造家としては、発酵学の知識を駆使してサワー系ビールを広めたいです。ニンゲンの味覚の中でも『酸』は実に多彩な味わいで、一大ジャンルになるのでは」と話してくれました。
更に、「ビールの大半を占める水資源や自然環境への取組みも考えています」とのこと。その取り組みとして、ソーラーパネル太陽光発電と三島の湧き水を仕込み水にするビール工場「Natural Roots Studio」の実現に向けてクラウドファンディングにも挑戦中なのだそう(2021年11月現在)。
今後も、これまでにない取り組みで新たなクラフトビールの世界を提案してくれるであろうRePuBrewに、乞うご期待です。
Repubrew(リパブリュー)
〇静岡県沼津市大手町2-1-1ポルト沼津B1
〇TEL:055-939-8877
〇公式ホームページ:https://www.repubrew.com/
〇オンラインショップ:https://repubrew.shop/
〇Instagram:https://www.instagram.com/repubrew/
・RePuBrew:会社名
・Repubrew:ビール工場の名称
・リパブリュー:店舗の登録名称 としております。