ビール女子のみなさま、こんにちは!ポートランド在住の東リカです。
地球上で一番ブルワリーが多いというポートランド。ここで活躍しているブルワーというと、メガネ、ひげ、キャップの男子を思い浮かべるかもしれません。けれども、実は女子だって、美味しいビールを作っているのです!
実際、女性ブルワーの数は増加していて、彼女たちに焦点を当てたポートランドのビールイベント「SheBrew」は、来年度5年目を迎え、集まるビール女子の数もどんどん増加しています。
このイベントが開催される3月に向けて、ポートランドで活躍する女性ブルワーにリレー形式でいろんな質問をぶつけていきたいと思います!
食べ物をなんでもビールに!?
さて初回は、ポートランドのビール案内人、レッドさんに「とってもクール」だとご紹介いただいたリー(Lee Hedgmon)さん。彼女が働くグルテンフリービールのブルワリー「グラウンド・ブレーカー(Ground Breaker Brewing)」でお話を伺いました。
リーさん、初めまして!今日はよろしくお願いします。早速ですが、まず、リーさんがビールに目覚めたきっかけから教えていただけますか?
Lee
ミネソタの大学院に行っていた時、博士論文から逃げる言い訳に(笑)アパートでお酒を作り始めたこと。最初はワインとかミードとか作っていたんだけど、完成までにかなり時間がかかるでしょ。で、ワインとかミードができるのを待つ間に飲もうと思って、早く完成するビールを作り始めたの。
Lee
そう。ビールの型にはまらないところがすごく好き。思い付きでいろんな味を作れるし、小さなアパートでも、スモールバッチでいろいろ試せたから。
どんなビールを作っていたんですか?
Lee
食べれる物ならなーんでもビールにした(笑)。例えば、ベーコンとかチキンとか、お茶とか。友人たちの間では、私の家の食べ物はみんなビールにされるから、テイクアウトしてこないと食べるものがないってジョークになってたくらい。昔のクレージーなレシピを引っ張り出してきて、うまくできるか試してみたり。
9年間ミネソタにいたんだけど、後半の2年くらいは、いろんなスタイルのビール作りを学びたくてスケジュールを組んで、真剣にビール作りをしてたかな。
SheBrewフェスティバルに参加した時の写真
なんだか研究所みたいですね(笑)。販売はしなかったんですか?
Lee
それより、ビール作りを学ぶことと自分たちが楽しく飲むために作ってたの。あと、ホームブリューイング(自家醸造)のコンペに出すようになった。プロのフィードバックがもらえるから。
最近のホームブリューイングもほとんどコンペ用だけなんだけど、勝つの大好き!もう15、6年やってるから、いい賞が取れるように、かーなーり戦略的に作るのよ(笑)。
それで、ビール作りを仕事にしようって思ったんですか?
Lee
うーん、大学院とかでも教えていたし、論文書き上げて教授を目指す気でいたかな。ポートランドに戻ってきてもこっちの大学で教えてたし。でも、1年くらい経って、なんか違うかもって気がしてきて。好きは好きなんだけど、自分の情熱は別のとこにあるなって。
ビールが情熱だったと。
Lee
そう。ビール作りの面白いアイディアがあったし、これで行けるんじゃないかって。
でも、プロとしての経験はなかったから、簡単に仕事は見つけられない。とはいえ、もう30半ばだったし、ビール作りを学びに学校には戻りたくなかった。
でね、ホームブリューワー・クラブに参加して、他のブリューワーとアイディアをシェアしたり、プロに会ったりしてインターンの口を探したの。初めてお客さんに販売するビールを作らせてもらったのが、Coalition Brewingってところなんだけど、結構、評判がよくて!すっごい嬉しかった。それで、しばらくそこで働かせてもらうことになったの。
まあ、プロになったとはいえ、15ガロンのスモールバッチだけだったんだけど、現場でいろいろ勉強させてもらったな。
今は「グラウンド・ブレーカー」で働いているんですよね?
Lee
ビールじゃないんですね?でも、この経験もビールに活かせるとか思ってたり?
Lee
その通り(笑)。いっつもビールのこと、考えてる。
実は、「グラウンド・ブレーカー」でもフルタイムでやらない?って誘ってもらったんだけど、このタイミングじゃないと思って。今は、ホームブリューイングはもちろん、クレイジーなアイディアを出してくるここの仲間と一緒に、本当に作りたいビールを作ってる。あと、ビールコンペの審査員もできるだけやるようにしてる。
デザートや唐辛子の「食べ物」ビールの作り方
リーさんは、デザートビールで知られているという記事を読んだのですが・・・
Lee
うん。食べ物の味のビールを作るのが大好きなの!中でも、伝統的なデザートを「分解」して、それを構成する要素を取り出して、ビールへと「翻訳」する作業が面白いと思う。
例えば、3色アイス「ナポリタン・アイスクリーム」のビールは、いちご、チョコ、バニラの風味が全部入ってて、飲んだ人がナポリタンアイスだって分かる。「ストロベリーレモネード」なら、いちごとレモンのフルーティーな酸味が鍵よね。デザートビールっていっても、デザートじゃないから、決して甘くはないんだけどね!
今までにないビールを作る時、どうやってレシピを考えるのですか?これまでの経験?
Lee
まず、ビールのスタイルを選ぶところから始めるんだけど、伝統的なビールのスタイルについては、ハンズオンでものすごく研究したから、その経験が役に立ってると思う。
レシピを作るときは、まず、ベースになるビールのスタイルを選んで、それをどうやって思いの味に近づけるか、例えば、酸味を出すにしても、レモン風味のホップを使うとか、サワービールのように発酵の過程で酸味を出したり。それも自然発酵なのか、酵母入れるのか…素材はもちろん、そのプロセスの良い点と悪い点は何か、どこで問題が起きそうか、とか、そういうことをじ〜っくり考えていくの。
またこれも随分アカデミックなアプローチなんですね!
Lee
そう。新しい味だけじゃなくて、誰かが作ったレシピを自分で改良する時も、問題の発見と解決というアプローチで取り組むの。私は、ワインとかミードとかビール以外の発酵飲料も作っているから、そういう知識が役に立っていると思う。意外とビール業界内では話し合っても、他の業界とは繋がっていなかったりするからね。
これまで作ったビールで一番気に入っているものは何ですか?グリッター入りビールとか作っているんですよね?
Lee
そう。あれは苦労したー。でも、一番気に入ってるのは、唐辛子シュバルツ!
唐辛子!なんか斬新ですね。スパイシーなんですか?
Lee
唐辛子のキックもあるけど、それより旨味が凝縮していると思う。まだ商業用には作っていないんだけど、一番の自信作!このブルワリーから「She Brew」に出そうかなとも思っているの。
女子ならではのビール
ところで、女性と男性の作るビールって違うと思いますか?
Lee
うーん、違うといえば違う。表面化するのは些細なことかもしれないけど。
例えば、SheBrewのホームブリューイングコンペには、100以上のビールのエントリーがあるんだけど、プロの審査員たちが驚くほどレベルが高い。女性は、9割以上自分が適任だって思えて初めて求人に応募するっていう研究結果があるんだけど、ビール作りでもやっぱり何度もやり直して、「これがベスト」ってものだけをコンペに出すみたい。そういった意味では、クラフトに対するアプローチが違うかな。
日本のビール女子へのメッセージ
では、最後に日本のビール女子にメッセージをお願いできますか。日本でも最近はクラフトビールも色々増えて、ビールが好きな女子もたくさんいるんです。
Lee
そうねー、まあ女子だけじゃなくて、みんなに当てはまるんだけど、誰にも「君はこれが好きだろ」とか「これが君に合う」なんて言わせないこと!自分の口で決めなきゃ!
それから、いろいろ冒険してほしい。例えば、1つのスタイルのビールを飲んで、あんまり好きじゃないと思っても、別の人が作ったそのスタイルのビールは美味しいかも知れない。同じスタイルのビールでも、作り方や素材の割合で味は変わるから。とにかくいろいろ飲んで欲しい!
お話を聞いて、ますますビールは奥が深いと思いました。今日はどうもありがとうございました!