Bar 熱意から誕生した、世界でたった1つの直営店。異彩を放つベルギービールカフェ「ウルビアマン」

2022/07/06

コンピュータや電子部品、アニメにゲームにアイドル…日本のサブカルチャーのアンテナとも言える街「秋葉原」。そんなカラフルな街の中で、他に引けを取らないほどの異彩を放つベルギービールのお店があります。


その名も「ウルビアマン」。そこは、ベルギーのとある家族が営む小さなブルワリーの物語が詰まった場所です。今回は、そんなウルビアマンの魅力をご紹介します。


酵母の妖精「ウルビアマン」


秋葉原駅電気街口から3分ほど、大きなビルに沿って歩くと、今回の目的地である「ウルビアマン」に到着。秋葉原発のアイドルとして一世風靡した「AKB48」の劇場が入るドン・キホーテの目の前です。赤と黄を基調とした外観で、丸っこくて愛らしいキャラクターの看板が出迎えてくれます。


ちなみにこのキャラクターが、店名にも由来する「ウルビアマン」!なんと、ビール造りに必須な“酵母”の妖精なんです。店内も、メニュー表やグラス、スタッフさんのTシャツなどウルビアマンづくし。テーマパークに来たようでワクワクします。


お通しの「自家製パテのシューサンド」もウルビアマンフェイス!おいしい上に可愛くて、萌え。


席数は全部で90席(店内50席・テラス40席)と、広々した空間。テラスには屋根もあるので、季節を問わず一年中ビアガーデンを楽しむことができます。

“気狂い醸造家”たちが営む醸造所


そんな可愛らしいビアカフェ「ウルビアマン」は、ベルギーのブルワリー「デ・ドレ醸造所」の世界初の直営店です。

デ・ドレ醸造所とは、ベルギー 西フランダース州のエセンという小さな村にある、ヘルトレール一家が営む小さなブルワリー。切り盛りするのは、建築家”や“絵描き”としても活動する多才なクリスさん。ビールの醸造はもちろん、キャラクター「ウルビアマン」はじめ、ブルワリーに関するデザインは全て彼が手がけています。


ウルビアマンの壁に広がるポップなアートやメニューの文字なども、全てクリスさんの描いたものです。


デ・ドレ醸造所の始まりは、1980年。三兄弟だったクリスさんが、兄弟と共に廃業した醸造所を買い取り、その歴史は動き始めました。

ベルギー 西フランダース州「デ・ドレ醸造所」
「デ・ドレ醸造所」の訳は、“気狂い醸造家たち”。実は、三兄弟全員が醸造以外に本業を持っていて、ブルワリーは週末限定で営んでいます。そのため、「ビールは本業ではなく、趣味に狂った人間の仕業なのだ」という意味を込め、命名したのだそう。

デ・ドレ醸造所を切り盛りするクリスさん
さらに、醸造開始当初は、ベルギー中の地ビール業者が大量生産ビールによって廃業を余儀なくされていた時代だったため、醸造を始めた彼らに対して周りは「気が狂っている」と大反対。それでもビールを造り続け、さらに当時デザインと建築を学んでいたクリスさんは、醸造所のデザイン、ラベルデザインまでも全て一人で手がけることに。クリスさんの鬼才が存分に発揮されたことで、個性的で唯一無二の醸造所が確立されました。


今では、クリスさんたちが醸すビールに感銘を受け、週末の醸造所見学の開催時には世界中から醸造家が集まるほどになっています。


ウルビアマンに来たら必ず味わいたいビール


そんな鬼才・クリスさんとそのご家族が手がけるビールを楽しめる「ウルビアマン」。樽生ビールは、デ・ドレ醸造所のビールを中心に最大16種類を常設。


その他にも、一人で飲みやすい330mlのボトルから、大人数で分けて楽しみたい750mlの大瓶ボトルなどもご用意しています。

この日は、ウルビアマンに来たら必ず味わいたい、デ・ドレ醸造所の樽生ビール飲み比べセットをいただきました!


(画像左から順に)
スティルナハト(stille nacht)/12%
オランダ語で「サイレントナイト」を意味する、クリスマスビール。デ・ドレ醸造所の近所に位置する町「ポペリンゲ」で育ったホップと、ホワイトキャンディーシュガーを加えて、じっくりと醸造・発酵させています。クリスマスの寒い時期に身体が温まるハイアルコールな仕上がりで、干しぶどうのような甘みを感じます。

アラビア(arabier)/9%
ビアスタイルは「ブロンドエール」。スティルナハトと同じく、ポペリンゲ産のホップを使用しています。飲み比べた5種の中で一番ホップ由来の苦みを感じられるため、苦みを欲している方に特におすすめ。ですが、アルコールの厚みもしっかりしているため、他のビールに負けないほどボリュームのある味わいです。

ウルビア(oerbier)/9%
デ・ドレ醸造所が最初に醸造したビールで、ウルビアは「私たちの」「オリジナルな」という意味を持ちます。酸味のあるビアスタイル「フランダースレッドビール」の酵母を使用しているので、酸味やロースト感と、他にない個性を感じられます。

ボスクン(boskeun)/8%
キリスト教の復活祭「イースター」のために造られた春のシーズナルビール。ビアスタイルは「セゾン」。ボスクンは、木のウサギを意味する造語。クリスさんの兄弟・ジョーさんが、耳が大きいことからついたあだ名で、そこに“イースターラビット”を引っ掛けているのだそう。 

ドゥル・ティーブ(dulle teve)/10%
英語で Mad Bitch(イカれた女)を意味する「ドゥル・ティーブ」。リンゴや蜂蜜のような甘みを感じます。酸味もあってスパイシーな印象なので、10%とハイアルコールにもかかわらずスルスルと飲めてしまう…!


飲み比べセットは、各種150mlで提供。セットの内容は3種〜5種と数も選択できるので、気軽に試すことができておすすめです。※3種:1,620円/4種:2,160円/5種:2,700円(全て税込価格)


ちなみに、ご覧の通りデ・ドレ醸造所のビールは、8〜12%と全体的にハイアルコールです。それだけ聞くと、私にも飲めるかな!?と不安になる方もいらっしゃるかもしれませんが、ご安心ください。

これらのビールは、冷えた状態と、ぬるくなった状態とで違う印象を見せてくれて、時間の経過によって異なるおいしさ・楽しさを感じることができます。アルコールに弱い方でも、「冷えた状態で早く飲み切らなきゃ!」と焦らず、ゆったり飲みながら、その違いを楽しんでみてください。


さらにこの日は、貴重なデ・ドレ醸造所40周年記念ビールもいただくことができました。


XLペールエール(XL Pale Ale)/6.5%
2020年11月に迎えた、醸造所開設40周年の記念に造られたビール。「XL」とは、ローマ数字で「40」を意味します。なんとこのビールは、クリスさんたちが醸造所を買い取る以前の持ち主が1921年の第一次世界大戦後の醸造再開時に使っていた、銅製の釜で醸造されました。リンゴのような酸味・オレンジピールの香りを感じられて爽やかな味わい。他のラインナップと比較してアルコール度数も低く、軽い飲み口です。

デ・ドレ醸造所以外にも、タップ・ボトルともに様々なベルギービールが集うウルビアマン。タップリストは、アルコール度数やビアスタイルなどを考慮したバランス良いラインナップになっています。その時々のビールを色々試して、お気に入りを見つけてみてください!


デ・ドレのビールに合う、豊富なフードたち


ウルビアマンは、食事のメニューも豊富。一人でも軽くつまめるベルギー伝統料理のフリッツやムール貝から、みんなでシェアしても楽しい黒毛和牛門崎熟成肉まで、ビールに合う定番メニューが揃います。


さらに、期間限定メニューとして、デ・ドレのビールと相性抜群なペアリング料理を提供するイベントを不定期で実施しています。取材時にもちょうどイベントを実施中で、限定で提供されていた2品「羊のパートブリック」「ハーブ香るスモークサーモン」をいただきました。

ウルビアマンでしか味わえないビールと食事のペアリングを、ぜひ堪能してみてください。


熱意から誕生した、世界でたった1つの直営店


デ・ドレ醸造所の直営店は、世界でたった1つ、この秋葉原にしか存在しません(現地醸造所内のバーを除く)。

実は、直営店のオープン以前に、そもそもデ・ドレ醸造所のビールを日本で飲めるようになったのは、ベルギービール、そしてクラフトビールの文化を広げる活動をするEVERBREW株式会社の社長であり、ベルギービール名誉騎士”の名を持つ菅原亮平さんの熱意があったから。


始まりは2006年。デ・ドレのビールに惚れ込んだ菅原さんは、「日本でもこのビールを飲めるようにしたい」と願い、クリスさんへ直輸入の交渉をはじめました。しかし、最初は邪険に扱われていたのだそう。それでも菅原さんは粘り続け、4年の間、なんと3ヶ月に1回の頻度で現地に通い続けます。そんな熱い想いがクリスさんへ届き、2010年に日本への直輸入が実現しました。


その後も輸入にとどまらず、「日本にもデ・ドレ醸造所のような場所を作りたい」という夢を抱いた菅原さんは、5年かけて交渉し続け、世界初の直営店オープンまでをも遂行しました。


現地でしか飲めなかったデ・ドレ醸造所のビールを、日本において、樽生で飲めるのは奇跡のようなこと。少量生産で、あまりに希少であるため店舗で提供できない場合もあります。そんなありがたみのあるビールを、ベルギーへ想いを馳せながら味わうとより一層おいしく感じられます。


現在店長を務める田中章裕さんも、過去3回ほどデ・ドレ醸造所に訪問したことがあるんだとか。ベルギービール愛に溢れている田中さんは、デ・ドレのビールはもちろん、他のビールについても質問するとなんでも答えてくれるビール博士です。ブルワリーの小噺やうんちくも教えてくれるので、気になる方はぜひ話しかけてみてください。

ウルビアマンに会いに、秋葉原へ


ベルギーの鬼才が生み出し、日本のベルギービール名誉騎士が秋葉原へ導いた「ウルビアマン」。現地でしか飲むことのできなかったその貴重なビールを味わいに、そしてウルビアマンに会いに。ぜひ秋葉原を訪ねてみてください。

 ウルビアマン 秋葉原店(oerbierman)

〇住所:東京都千代田区外神田4-14-1 秋葉原UDXビル 1F
〇交通:R秋葉原駅電気街口から徒歩3分
〇TEL:03-3526-2321
〇営業時間:
[月~木]
11:30~23:00(食事L.O.22:30 ドリンクL.O.22:30)
[金・土]
11:30~23:30(食事L.O.22:30 ドリンクL.O23:00)
[日]
11:30~22:00(食事L.O.21:30 ドリンクL.O.21:30)
〇定休日:不定休(秋葉原UDXに準じます)
〇座席数:90席(店内50席、テラス40席)
〇支払い形式:カード、QRコード可(電子マネーは不可)
〇喫煙・禁煙:全席禁煙
〇ホームページ:http://www.everbrew.co.jp/restaurants_cat/oerbierman/
〇Instagram:https://www.instagram.com/oerbierman/
〇Facebook:https://www.facebook.com/oerbierman/
〇Twitter:https://twitter.com/oerbierman

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sakko 編集長

「ビール女子」編集長。記事の企画・編集やイベントの運営を担当。小さい頃から、両親が毎日ひたすらビールを楽しそうに飲む姿を見てきたため、「私もきっとビール好きなのだろう」という根拠のない自信と、「大人になったらおいしく楽しくビールを飲みたい」という夢を抱いて育つ。そして、20歳の誕生日を迎えてすぐベルギービールの店で働きはじめたところ、案の定魅了されてビールの世界にどっぷり浸かり、今に至る。

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