東京と大阪間のほぼ真ん中に位置し、徳川家康が青年期を過ごした「出世の街」としても知られる静岡県・浜松市。浜松餃子や鰻といった食事もさることながら、近年ビールの街としても発展しはじめていることをご存じでしょうか?
その発展を担うブルワリーの1つである、浜松駅からほど近い「Octagon Brewing」(オクタゴンブリューイング)。おしゃれなボトルデザインや商品のラインナップ、そしてブルワリーを越えた活動に注目が集まっています。
今回、そんなオクタゴンブリューイングについて紹介いたします。
不動産会社の新たなチャレンジ
オクタゴンブリューイングの始まりは、2018年。丸八不動産株式会社のビール事業部として誕生しました。
不動産業としては、浜松の街づくりに取り組み、50年代建築をリノベーションした『KAGIYAビル』や、地元の人気カレー店も出店するシェア屋台スペース『肴町Little』を手掛けている同社。
海外の町で、小さなビール屋のパブに人が集って、そこに活発なコミュニティが生まれているのを実際に見た代表が、「街を変えるほどの魅力がビールにはある」と、醸造設備を駅からも近い街なかにつくることを決めました。
屋号のオクタゴンは八角形を意味し、ひと味違ったエッジ(角)のきいたクラフトビールが楽しめるオクタゴンブリューイング。
開業当時は、東京に比べて地方でのクラフトビール認知度はまだ低く、知っていても飲んだことがないという人も多かったそう。ですが、そんな地方都市のほうが「ビール文化の裾野を広めていきたい」というブルワリーとしての想いに適した場所だと考え、地元の副原料をつかったビールづくりに取り組みます。
ビールを造っているのは、醸造責任者・千葉恭広さん。
ルーツの1つは「ベルギービール」。自由でクリエイティブなベルギービールに魅了され、ビールについてより深く学ぶため、ドイツに渡り『ディプロム・ブラウマイスター』の資格を取得するという、行動力と実力を兼ね備えた方です。
そして、「世界の豊かなビール文化を知ってもらうきっかけにしたい」と、多様性に富んだビールの奥深さを表現すべく、醸造スタートを機に浜松に移住しました。
実際に浜松に住んでみると、公共交通機関よりも自動車で移動する人が多く、「ビールをつくったその場で飲んで貰うことへのハードルが思っていた以上に高い」と感じたそうですが、徐々にサラリーマンや若い女性など、街の様々な方が興味を持って飲みに訪れるようになり、今では雑誌にも取り上げられるほど注目されるようになりました。
クラフトビールと街のにぎわい
そんなオクタゴンブリューイングは、醸造したビールがその場で飲めるブリューパブとして営業しています。
イタリアの自転車「ビアンキ」のアイコンとしても知られる独特な青緑色、チェレステカラーが目をひき、外からカウンターや鈍く光る醸造タンクが覗けて、ワクワクする店内。ブルワーたちが実際に海外で見たような、にぎわいの中心にビアパブがある風景を思い描きながら運営をされています。
ノーチャージで気軽に立ち寄れるスタイルで、オリジナルビール以外にも、国内外のクラフトビールをセレクトしてタップにつないでいます。はじめて来店される方は、数種類のビールを少量ずつ飲み比べできる「ビアフライト」で、好みのビールを探してみるのがオススメです。
ブルワーおすすめ「まずはこの1杯」
「まずはこれを飲んで欲しい」とブルワーがすすめるのは、『ブレイクアウェイIPA』。華やかに香るシトラスやパインのホップアロマと、控えめな苦みでゴクゴク飲みたくなる一杯です。
味わいは豊かでも、何杯も飲むと少し疲れてしまうIPAではなく、比較的ライトなボディで口当たりも軽やかな、おかわりがしたくなるビールを目指してつくられました。
目指す味を体現するために、原材料のセレクトや配合、管理にも気を配って、雑味に阻害されないクリアなビールに仕上げています。
ビールと一緒に合わせる料理についても伺うと、「どんな料理にも合わせやすいですが、個人的にはハンバーガーやソーセージとよく合うと思います」とのこと。店内で提供している食事メニューもその相性の良さが伺えるラインナップで、オリジナルソーセージがメニューに並びます。訪問した際には、ぜひペアリングを楽しんでいただきたいです。
他にも、地元のみかんを使った『ジューシーフルーツ』や、香り豊かな『ジャスミンエール』などの定番ビールや期間限定のコラボビールが楽しめます。
店を超えた、ビール文化発信の取り組み
オクタゴンブリューイングは、ビール文化を発信するため、店を飛び出した活動にも意欲的に参加しています。
コロナ前は、「浜松クラフトビールフェス」で全国のブルワリーと共に屋外イベント出店をしてきました。しかし、浜松駅前に大勢が集まるビアフェスの開催が難しい今年は、密を避けつつクラフトビールを楽しめる方法を模索し、「浜松クラフトビールアドベンチャー」と銘打ったオンライン醸造所見学ツアーやクラフトビールのネット販売、ブルワーのトークライブを開催予定です。
イベントでは、色々なブルワリーのクラフトビールを飲み比べするのが醍醐味の一つ。オクタゴンブリューイングのビールだけでなく、同じ静岡県のビールセットや全国各地の銘柄を取り寄せ可能で、オンラインでできる範囲での楽しみを私たちに提供できるように考えてくれています。
ビールが身近にある暮らしを
千葉さんが海外で体感した、当たり前のようにそれぞれの街にビール醸造所があり、人々に愛されている風景。
そんなビール文化を浜松でも感じてもらえるように、醸造を行いながら、店舗外での発信も行っている様子に、街の住人だけでなく市外・県外から興味をもって訪れる人が増えています。
実は、オクタゴンブリューイングの隣にもう一つ、独自の醸造設備を持ったブリューパブが出店する計画も進んでいるそうで、「更に、ボトルショップも店の並びに出来て、浜松に全国有数のビールストリートが出来たら面白いね!自分が仕事帰りに他の店で飲み過ぎてしまわないか心配だけど」と話してくれました。
「自分たちのビールを知ってほしい」だけではなく、「ビールそのものがみんなにとって、広く身近になるように」。手を取り合って盛り上げていきたい。そんなビールに対する熱い想いをたっぷり感じさせてくれるのが、オクタゴンブリューイングなのです。
ぜひその想いを感じながら、オクタゴンブリューイングのビールを味わってみてくださいね。
オクタゴンブリューイング(Octagon Brewing)
〇住所
静岡県浜松市中区田町315-25
〇TEL
053-401-2007
〇営業時間
[月・水・木]18:00~23:00
[金]18:00~24:00
[土]17:00~24:00
[日]15:00~21:00
〇定休日
毎週火曜日
※現在、新型コロナウイルス感染予防対策のため営業日・時間に変動があります(記事掲載時点)。今後状況により変更となることもあります。
〇Facebook
https://www.facebook.com/octagonbrewing/
〇Instagram