私がビール屋さんになるまで Column 【私がビール屋さんになるまで】醸造所の立ち上げって何をすればいいの?

2023/09/14

sponsored by エフシースタンダードロジックス株式会社
ブルワリー立ち上げを紹介する連載「私がビール屋さんになるまで」。

2023年に舵を切ったばかりのブルワリー「Maruko Brewing」にお伺いし、ビール造りへの想いから醸造免許取得の道のり、タンクの輸入についてなど、0からビール屋さんになるまでのストーリーをご紹介します。


連載1回目のテーマは「地元でブルワリーを立ち上げた理由」。

そして2回目となる今回のテーマは、「醸造所の立ち上げって何をすればいいの?」。親子二代でMaruko Brewingを立ち上げたブルワーの筒野広康さん、ビアコーディネーターの筒野隆広さん、さらに醸造施設に関わる輸入をサポートしたエフシースタンダードロジックス株式会社の山田俊哉さんにお話を伺いました。

右も左も分からない0からの醸造所オープンまでの道のり。インターネットで調べ、醸造体験をしたり事業計画作成、免許取得などなどやることは盛りだくさん!ブルワリーを立ち上げたいあなたは、先輩たちの道筋を学ぶ教科書として。飲み手の皆さんは、ちょっと裏側を覗く読み物として。その道のりを一緒になぞっていきましょう。

「Maruko Brewing(マルコブルーイング)」は、2023年10月より「AKANUMA ROMAN BREWING(赤沼ロマンブルーイング)」に店名変更します。詳しくは、ホームページよりご確認ください。
ホームページ:AKANUMA ROMAN BREWING


この連載は エフシースタンダードロジックス株式会社 のご提供でお届けします。

大阪府大阪市中央区に本社を置く総合物流会社「エフシースタンダードロジックス株式会社(以下、エフシースタンダードロジックス)」。中国や東南アジアをベースに、ヨーロッパ、北米など広範囲にわたり物流サービス事業を展開。デジタルフォワーダーとして、情報をデジタル化しサービスを提供することで、迅速かつ効率的な物流を実現しています。最近では、新しくブルワリーを立ち上げたい方への設備導入のお手伝いをしています。


公式HP・お問い合わせはこちら

もくじ

地元でブルワリーを立ち上げた理由

まずは何をすればいいの?事業計画書の作成から醸造免許取得、設備の輸入まで
【2020年】自分たちの醸造所をつくろうと決心する
【2020年8月〜】栃木マイクロブルワリーにて技術指導を受ける
【2020年8月】浦和税務署へブルワリー開業相談
【2022年1〜3月】栃木マイクロブルワリーにて発泡酒醸造研修
【2022年4月6日】浦和税務署へブルワリー開業申請について相談
【2022年4〜8月】埼玉 加須麦酒にて設備と技術指導
【2022年6月16日】輸入についてエフシースタンダードロジックスに相談
【2022年8月30日】酒類製造免許申請書提出
【2022年9月】設備が中国から到着
【2023年4月11日】酒類製造免許を取得
【2023年5月5日】Maruko Brewingオープン

醸造設備の輸入を助ける「エフシースタンダードロジックス」

地元でブルワリーを立ち上げた理由


1回目で紹介した、「地元でブルワリーを立ち上げた理由」について少しおさらいを。

Maruko Brewingは、2023年5月5日に埼玉・春日部の地にてオープンしました。ビール造りのこだわりは、古代赤米で造った麹を使用していること。赤米の麹にすることでポリフェノールをより引き出し、すっきりとした味わいと赤みを帯びた液色になるのも特徴です。

はじまりのきっかけは2000年代に遡り、町おこしのため、赤沼という地名にちなんで、日本の米のルーツである赤米「赤米」を植えたことからはじまります。過去に赤沼でビールが造られていたことなどの歴史から15年もの間OEMにて『赤沼ロマンビール』を造り、その後自分たちでビールを造る道を選びました。


では、決めたら具体的にどう行動を起こしたのでしょうか?


まずは何をすればいいの?事業計画書の作成から醸造免許取得、設備の輸入まで

では、どのように事業計画を立て動いていったのか。時系列を追って聞いてみました。

■2020年 自分たちの醸造所をつくろうと決心する


OEMにて『赤沼ロマン』を造っていたのが2019年春まで。一度に2,000リットルという量ができてしまうことで、販売数量や品質を保持する意味でも、「今後どうしていこうか」と考えていたところに、コロナの猛威が襲います。

イベントもなくなり、続けるのは厳しい状況だと判断。次回以降のOEM生産について中止の判断を下しました。

広康さん

十数年同じビールだけを造り続けていると、他の種類のビールも造りたくなってしまったというのも理由としてはありますね。


業務形態変更前の株式会社 筒屋「たまごくらぶ」では長きに渡り、会員制でたまごや自然食の宅配販売をしてきました。そのため、これまで続けてきた事業を辞め、長年のお客様との関係性を断ち切ってしまうことも悩みのひとつだったそう。

長年勤めてもらった従業員の方にも理解や協力を得て、一部事業を譲渡するなど、2019年頃後半から少しずつ事業を整理していきます。


■2020年8月〜 栃木マイクロブルワリーにて技術指導を受ける


さまざまなめぐり合わせが重なったことで、2019年から少しずつ自社醸造のクラフトビール造りの準備を行なってきた広康さんと隆広さん。

インターネットで調べてたどり着いた、醸造体験をしている「栃木マイクロブルワリー」を訪れます。

広康さん

実際に醸造体験をしてみたところ、この方向性でやってみたいという気持ちが強くなり、栃木マイクロブルワリーの横須賀さんにも相談させていただきましたね。体験醸造でも実際に赤米を入れてみて、これならいけそうだなと思いまして。ならばということで、ビール塾にも通い始めたりと勉強を本格的に始めました。


■2020年8月 浦和税務署へブルワリー開業相談
同じ頃、浦和税務署へブルワリーの開業相談に初めて訪れます。


■2022年1〜3月 栃木マイクロブルワリーにて発泡酒醸造研修
栃木マイクロブルワリー・横須賀さんと広康さん
2020年8月に初めて栃木マイクロブルワリーで研修を行なってから1年4カ月後、本格的な発泡酒醸造研修を開始します。

ビールではなく発泡酒の醸造免許を取得の理由のひとつは、1年で醸造する量によるもの。ビールは60キロリットル(60,000リットル)以上と決められていますが、発泡酒は6キロリットル(6,000リットル)造ればよいため、マイクロブルワリーでは発泡酒免許を取得することが多いのです。広康さんたちが造るのも酒税法上は発泡酒。またビール醸造では使用できない原材料も、発泡酒なら入れて造ることができます。

ただ発泡酒とは言っても、広康さんたちが造るものはビール醸造では使用できない原材料を少々入れているだけそれ以外は製造法含めてビールと同じです。Maruko Brewingでは元々味噌を作っていたこともあり、ビール醸造では使用できない原材料・赤米の麹を使って造っています。

広康さん

本格的な醸造研修は順番待ちで、最初にご相談してからは少し時間が経ってしまいましたが、2022年はじめから約3カ月の本格的な研修を行いました。すでに研修を終えて独立された私と同年代の方もこの頃に開業されて、それは励みになりましたね。近くに良い条件が揃っていたことで、比較的スムーズに準備が進められました。

研修では、50リットルタイプのタンクを使い、麦芽の投入や発酵タンクに入れること、瓶詰め方法など、製品ができるまでの一連の流れを体験。ビールを造るなかで細かい注意点や問題点を指摘してもらいながら、マンツーマンで作業を行います。

独り立ちができるまでに何回作業を行うかは決まっていなかったそうでしたが、「これくらいわかれば良いでしょう」というところまで3か月間かけて勉強しました。


■2022年4月6日 浦和税務署へブルワリー開業申請について相談


初めて税務署にブルワリーの開業を相談してから約1年8カ月後、本格的にブルワリー開業申請について相談に行きます。この日から受理されるまでの間には、何度か税務署に通ったそうです。

広康さん

税務署の担当の方が優しい方で、何もわからない私たちに手取り足取り教えていただいたんです。別の地域で醸造所を立ち上げた人に話を聞くと、担当官の対応もさまざまみたいだったので、優しい方で助かりました。基本的に落とすための指導ではなく、裾野を広げて行こうっていう感覚をお持ちだと感じましたね

税務署では、どこでどんな研修を受けてきたかなども聞かれたそうで「栃木マイクロブルワリー」と伝えたところ、「あ、横須賀さんですか」と言われたそう。栃木マイクロブルワリーで研修を受けて開業した人が多かったため、税務署のなかでも名前の知れた方だったそうです。

広康さん

栃木マイクロブルワリー出身で、後に開業した方が集まる勉強会も開いてくださっているんですが、以前伺ったときには2〜30名も集まっていました。自分のブルワリーの体験談や問題点、材料をどこで仕入れているかとか、いくらだとよく売れていくらだと売れなくなったとか。そういった他ではあまり相談できないことも情報交換できてとても安心しました。やる気さえあれば前に進めるっていう、そういう感覚があります。今でも電話をすれば色々と指導していただけるのでありがたいです。

酒類製造免許申請書を提出する際には、事業計画書の作成も行います。

【提出書類例】

場所の確保:醸造所を建てる場所があるか。また、年間6,000リットルの商品を造ることができ、冷蔵庫に収納できて、販売されるまでの流れも申告する。

設備がどれだけ必要か:場所を決めて設備をどう設置するか、製造工程の図を書く必要がある。また、実際に機材を探して見積もりもとる。

レシピを作成:造るビールのレシピをまとめ、一回の醸造量と年間の醸造回数を提示する。また、原価や人件費も含めた計算を立て、いくら税金を払う予定なのかという目論見書も提出。

資金:減価償却の機材を確定し、その金額を超える販売数が見込めるのか。


事業計画書では主に、継続的に売上が確保でき、しっかりと税金が収められるかが判断されるそうです。

広康さん

開業後、一度、酒屋さんにビールを卸す単価を税務署に伝えたとき、「これだと利益が少なく、継続していくうえで無理が出るので、その単価で販売するのはやめてください」と指導が入りました。「マイクロブルワリーではある一定の原価以下では売れない」っていうのは、そういうところからきているのかというのは痛感しました。安く量を売りたければ一度に1,000〜2,000リットル醸造できるような設備をもちなさいっていうことだと思います。

また、“クラフトビールブルワリーの事務処理は大変”というのはよく耳にしていたのですが、税金を毎月支払わなければならないシステムな上に、細かくて大変なのだそう…!

水を何リットル使用して、麦芽はどれくらい使うか、何リットル捨てて、タンクの底に何リットルで、最終的に製品になるのは何リットルでした”など…そういった筋道もしっかりと立てて報告できなければいけないそうです。


■2022年4〜8月 埼玉 加須麦酒にて設備と技術指導
栃木マイクロブルワリー出身で、その後独立したブルワリーのもとを訪れ、実際に開業してからの苦労や問題点などを伺いました。自分の条件と具体的に比較して、設備や場所などのイメージをスムーズに行うことができ、動ける体制を整えることができたそうです。

広康さん

設備はどこから取り寄せたらいいのかも全くわからなかったので、相談ができたのは助かりました。そのときに、コスト的にも設備の使いやすさ的にも中国のものが信用できそうということで探し始めました。

醸造設備は、中国の大手B2Bマーケットプレイス「アリババ」で調べたそう。担当者とは主にチャットでやりとりをしたそうです。

隆広さん

営業の人でもわからないことは、製造元の人がWeChatに入って教えてくれたりしました。主にやりとりは英語でしたが得意ではないので大変でしたし、たまに中国語しかわからない方もいて。google翻訳や中国の方に仲介していただいてやりとりしました。

また、醸造仲間の中で、醸造設備を海外から個人輸入した人に話を聞いたところ、「輸入する際の検疫で引っかかってしまい、設備の保管料が想像以上にかかって予定していなかった出費が出てしまった」という話を聞いたそう。そこで、輸入はプロに任せようと支援してくれる会社を探し始めます。

山田さん

港の倉庫は保管型ではなく流通させるための倉庫なので、基本的に土地代が高いんです。また、輸入したものを動かす際、必ずフォークリフトなど機材を使って専門のスタッフが移動させるので、どうしてもお金がかかってしまうんです。そのため弊社では、港に保管しておく期間はなるべく短くできるよう、予めできることは共有し対応させていただいています。

「エフシースタンダードロジックス」HP


■2022年6月16日 輸入についてエフシースタンダードロジックス株式会社に相談


インターネットで輸入会社を探し、いくつかの会社に相談してみたそう。ですが、小口で輸入をしていなかったり、たとえば2社から輸入する場合まとめられなかったりなど、断られたり希望に合わない会社も多かったそう。

そんななか見つけたのが、エフシースタンダードロジックス株式会社。情報をデジタル化し、迅速かつ効率的な物流を実現しているということで、オンラインでさっそく問い合わせてみたそうです。

隆広さん

2社からの設備をひとつにまとめて輸入することはできないかと山田さんに相談をしたところ、「できますよ」とお返事をいただいて。その他のやりとりも含めて、臨機応変に対応いただけるなと思ったのが、エフシースタンダードロジックスさんにお願いしたいと思ったひとつのきっかけですね。

その後検討を重ね、最終的には中国・青島にある1社から設備を輸入。設備を検討し、輸入するコンテナの数が1つか2つかの相談をしていたのが7月はじめ頃でした。

■2022年8月30日 酒類製造免許申請書提出
事業計画書を作成し、酒類製造免許申請書を提出しました。


■2022年9月 設備が中国から到着


中国・青島の会社から輸入した設備が日本に到着。設備はこのとき輸入される前の状態であるため、保税地域にある保税倉庫に保管されます通常の税関への輸入申告手続きの前に、検疫や書類審査など、食品衛生法に基づく厚生労働省への手続きを完了させる必要があるそうです。

山田さん

輸入したはいいものの、検疫があるとか、そこでどんなことを言われるのかってご存知ではない方も多いと思います。そういったこともすべて予め想定してお伝えし準備するお手伝いしております。

具体的には、「ここではこういうに回答をして」「これは証拠を残して」などの対応の仕方や情報をリアルタイムですべて共有し、お客様には、関係省庁や検査機関へ提出する資料や書類を準備していただいたり、申請に必要な図案や情報も製造元に問い合わせていただきます。


検疫の期間、港にある保税倉庫で保管され細かい部品まで検査。結果は一週間ほどで届きます。


ビールが通る管などを輸入した場合も、すべて分析の対象になるそう。今回はなるべく検査が必要な設備の輸入は外し金属の設備を中心に輸入したそうですが、ケグのゴム部品だけはどうしても外すことができず、分析に回したそうです。

できる限り港に保管する時間を短くするべく、予め想定できることはすべてシートにまとめ共有し準備することができた結果、初めての貿易にも関わらず、税関申告のあとはスムーズに進み、無事輸入することができたそうです。

■2023年4月11日 酒類製造免許を取得

■2023年5月5日 Maruko Brewingオープン
酒類製造免許取得から約1ヶ月後、Maruko Brewingがオープンしました。

資金面を気にしてということもあったそうですが、“自分たちでできることは自分たちでやろう”と考えていたそう。外注するとコストがかかってしまう内装のデザインやロゴは、隆広さんが担当したそうです。


隆広さん

仕事でやっていたわけではないんですが、デジタルでのデザイン制作は経験したことがあって、内装やロゴの作成は自分で行いました。妻もセンスが良くて助けてもらいながら制作しました。



醸造のこと、免許取得、海外からの輸入…それまでどれも未経験だった広康さんと隆広さんですが、プロの助けを借りながら一歩一歩醸造所設立までの道を歩まれてきました

筆者も初めて聞く話ばかりでしたが、クラフトビール醸造所を設立するまで安心して進める道筋が今の日本には存在することを知り、「優しい世界だ…」と心があたたかくなるのを感じました。


輸入に関しては、特に海外との輸入のやりとりや細かい検疫を突破する方法などわからないことだらけ。さらに、港で足止めされると、「これから醸造所を始めるぞ」と意気込んでいるところに余計な出費を余儀なくされてしまい辛いものがあります。しかし、エフシースタンダードロジックスに相談すればこれまでの経験を元に助言をしてもらうことができ、臨機応変に対応していただけます。

筆者は「なんでも自分でやってしまいがち」な性格ではありますが、もし私が醸造所をつくりたいと思ったら絶対に輸入はエフシースタンダードロジックスさんにお願いしよう…!


醸造設備の輸入を助ける「エフシースタンダードロジックス



今回の連載コラムは、エフシースタンダードロジックスの提供でお送りしております。

エフシースタンダードロジックスは、大阪府大阪市中央区に本社を置く総合物流会社。中国や東南アジアをベースに、ヨーロッパ、北米など広範囲にわたり物流サービス事業を展開しています。情報をデジタル化しサービスを提供することで、迅速かつ効率的な物流を実現しています。


なかでも、海外の製造メーカーとのやりとりから、製品・部品や原材料の出荷、コンテナ積みにおける梱包方法の手引き、輸入コスト計算、貿易書類の確認や作成方法のサポート、関連公官庁への問い合わせ方法の伝授などにも長けています。最近では、クラフトビールを造る醸造設備の初めての輸入をお手伝いしています。


「私もブルワリーを立ち上げたくて、ビールの勉強は色々してきたけれど、設備の輸入はどうしよう。そしてコストは?何から動けばいいのかわからない…」と悩んでいるブルワリーの卵の方々を助けてくれる会社なのです。

今回の主人公「Maruko Brewing」も、エフシースタンダードロジックスの協力のもと、設備を整えることができたのだとか。その際の様子も、次回以降深堀りしていきます。

次回の「私がビール屋さんになるまで」も、お楽しみに!


「エフシースタンダードロジックス」HP
エフシースタンダードロジックスへのお問い合わせは、「ビール女子を見た」と一言お伝えください。

 Maruko Brewing

〇住所:〒344-0015 埼玉県春日部市赤沼704-2
〇営業時間:毎週金曜・土曜・日曜 13:00〜17:30販売所営業
(月曜・火曜・水曜は仕込み作業日)
〇公式ホームページ:https://marukobrewing.com/
〇Instagram:https://www.instagram.com/marukobrewing/

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山吹彩野 編集・ライター

星の準ソムリエの資格を持つ星空エディターで、星や宇宙を編集して伝えるWEB SPACE「星とくらす」を運営。最近では星を眺めながら、ビールと宇宙をつなげたいと日々考えている。好きなビアスタイルはIPA。音楽、カメラが好き。

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