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Bar 日本初、銭湯をリノベーションしたブルワリー「上方ビール」に行ってみた

2022/04/27

昨今は「ととのう」などの言葉が流行するなどサウナブームとなっていますが、心身ともにリラックスできる温泉などのお風呂文化は古くから日本の生活に溶け込んできました。

なかでも銭湯の文化は江戸時代から始まり、入浴目的以外にも地域の大切なコミュニティの場として親しまれています。


しかし時代の変化とともに老朽化、後継者不足などで廃業が相次ぐ銭湯業界。そんな中、廃業した銭湯をクラフトビール工場にしてしまった「日本初の銭湯ブルワリー」が大阪にあるということで、早速行ってみました!


廃業した銭湯をそのまま利用したレトロな外観


阪急電車「淡路駅」から徒歩10分のところにある「上方ビール(かみがたびーる)」。地元の方に長年愛されている淡路商店街を抜けた、閑静な住宅街の中にあります。


この場所で2018年まで続いた銭湯「御幸(みゆき)温泉」をリノベーションし、2019年に銭湯ブルワリーとしてオープン。

「上方ビール」の名前の由来は、江戸時代に生まれた銭湯文化にちなみ、古くからの大阪の呼び名「上方(かみがた)」をかけ合わせて生まれました。店頭には当時の銭湯の看板が大事に残されています。


もともと「男湯」だった場所は醸造スペースに、「女湯」はお客さんがビールを飲めるタップルームのスペースとして開放されています。

「女湯」は昭和の雰囲気をそのままに残したタップルーム


こちらは「女湯」。脱衣所と浴場全体がビールを飲めるスペースになっています。一見、本当に銭湯に来てしまったのかと間違えるくらい、昔の状態をなるべくそのままに残したタップルームです。


銭湯時代に使われていた「椅子付きドライヤー」。情緒があって、懐かしい時代を感じます。もちろん、ここに座ってビールを飲むこともできます。


ロッカーや浴場入口の看板なども当時のまま。


昭和のレトロな感じが漂う店内は写真スポットがたくさん!

美しい曲線美を描く「関西風」大浴場


女湯の大浴場。どの場所でもビールや持ち込みフードを頂くことが出来ます。洗い場のベンチや浴槽の段差は、いい感じのイス代わりに。広々とした空間は、時にはアイドルのライブ会場やクリエイターの展示会にも活用されるそうで、多様性にも富んでいます。


美しい曲線美を描く浴槽。富士山などのペンキ絵が多い関東風の銭湯と比べて、関西風の銭湯は壁がタイルになっていることが多く、スペース中央に浴槽が置かれることが特徴的です。


全国から銭湯ブルワリーに訪れる人のほとんどは、もちろんビールを飲むことが目的ですが、ここは銭湯跡地を目的に来る人も多く、珍しいところでは「タイルだけ」の写真を撮る為に訪れる人もいるのだそう!

今となってはこのような浴槽を作れる職人さんも少ないそうで、貴重な建築物になっています。


サウナ&水風呂エリアもほとんど当時のまま残されています。


天井から差し込む光が、ステンドグラスやタイルなどに反射して煌めく空間。どこをとっても絵になるような、自然に醸し出されるレトロな雰囲気がたまりません。

醸造設備のある「男湯」は重厚感たっぷり


醸造スペースになっている「男湯」。この場所でビールが造られています。500Lのタンクは全部で5つあり、5種類のビールが醸造可能。先ほどの女湯とはガラリと雰囲気が変わり、重厚感が漂います。


「麦芽粉砕機」専用に使われている男湯のサウナルーム。湿度管理にも向いている空間は、まるでこのために作られたかのよう。個室をうまくフル活用されています。

「直感」を信じて誕生した銭湯ブルワリー


オーナーの志方昂司(しかたこうじ)さん。10年前に神戸や大阪で飲食店を数店舗経営されていました。

当時は選べるビールが大手のものしかなく、もっと料理に合わせたビール選びをしたくてもなかなか難しかったんです。そんな時にパンチの効いた海外のクラフトビールに出会い、感動したのがきっかけでした

第二次クラフトビール時代をけん引したヤッホーブルーイングや箕面ビールの存在を知ったのも同時期で、「思いを込めたビールが自分たちでも造れるんだ!」と一念発起。

それから8年ほど飲食店を経営後、京都のブルワリー(京都ビアラボ)で1年間ビールの修行をした後、自由な発想とビール造りの楽しみを実感して、ブルワリー設立に至りました。


もともとは神戸麦酒(こうべばくしゅ)という名前で兵庫県神戸市内でブルワリーを立ち上げる予定だった志方さん。兵庫が出身地でもあり、また経営してきた飲食店とのつながりも深い為でもありましたが、なかなか良い物件に巡り合えず。

また、すでに醸造設備も決まっていたため、スペースに合致する物件を探すことが難しい日々が続く中、京都でビール修行をした時に培った自由な発想を元に、もっと柔軟な姿勢に変えてみようと、ブルワリー予定地を関西圏に拡大しました。


貸倉庫や工場跡地などユニークな物件などが見つかる中、内覧した最初の1件目がこの銭湯跡地でした。

ここがビール工場になればきっと面白いことが起こる!」と第一印象の直感で即決!

初めはインスピレーションで決めた銭湯ブルワリーでしたが、水はけもよく、床の耐荷重量だったり、搬入しやすい広い間口など、銭湯跡地はブルワリーとしても使いやすいことが後にわかり、ラッキーだったと話す志方さん。ここにオーナーの天性の才能と引きの強さを感じました。

銭湯ブルワリーならではのエピソードも


リノベーション工事の際、浴槽のへりを真っ平にして、その上にコンクリートをひいてタンクを設置しましたが、とても頑丈すぎてなかなか壊せず、解体が大変でした

しっかりした造りだからこそ大変だったと語る志方さん。そして「年に2〜3人は本当に銭湯と思ってお客さんが来られます(笑)」とユニークなエピソードも銭湯ならでは。

本日のビールラインナップ


平日は仕込みや発送業務の為に銭湯内を使用するため、タップルームは土日のみのオープン。常に5種類の樽生が1杯500円(税込)で楽しめます。

この日の樽生メニュー
・アプリコットブラン
・湯上がりセゾン
・フレーズノワール
・栗マロンかぼちゃエール
・ゲイシャエール


栗マロンかぼちゃエール

サウナルームの壁と同じ色合いのアンバーエール。浴場をバックに写真を撮ってみたら、なにげにレトロでエモい一枚に。甘みのある濃厚な「栗マロンかぼちゃ」は、じんわりと深い味わい。見た目もキュートなオリジナルの牛乳瓶グラスは、プラス200円でお持ち帰りすることもできます。


本日の樽生から選べる3種の飲み比べセット(1,200円/税込)

迷ったら飲み比べセットがおすすめです(左から、湯上がりセゾン、フレーズノワール、アプリコットブラン)。銭湯の中で頂く出来立てのクラフトビールはここだけの特別な時間。ゆっくりと味わいながらも、湯上がり気分でビールがぐいぐい進みます。


ゲイシャエール

稀少価値の高い「ゲイシャ」というコーヒー豆を使用したゴールデンエール。スッキリとした色からは想像できない、芳醇なコーヒーの香りが楽しめます。樽生とボトルとどちらも購入可能。


新作グラス、「上方ジョッキビール」も登場!取材時にちょうどブルワリーに届いたジョッキグラス。縦文字の屋号のレトロ感がどこか懐かしい。


裏側はビールにぷかぷか浮かぶポップなイラストが。どちらを向けても楽しめます。ボリュームたっぷりのジョッキサイズでの提供も始まるそうで、こちらも要チェック!


『お風呂エール』や『湯気ヴァイツェン』など、銭湯にちなんだユニークなネーミングの8種類のボトルビールは1本800円(税込)。


様々なスタイルのビールは、一度なくなったら二度と同じレシピでは造らないのが上方ビールのこだわり。一期一会を大切に、その時間だけ味わえる、どれも特別なビールです。(ボトルは平日もブルワリーが開いている時間に購入可能)


ブルワリー内はフードの提供がないため、持ち込みが可能。近くには地元でにぎわう淡路商店街があり、そちらでフードを購入してから来るのがおすすめです。この日は商店街で購入した餃子(一人前180円!)を合わせてみました。


同じく商店街のケーキ屋さんで購入したモンブラン。色んなスタイルのビールが揃っているので、スイーツとの組み合わせもばっちり。持ち込んだフードにどんなビールを合わせたら良いのか、アドバイスもしてくれるのが嬉しい。


オリジナルおつまみ「大麦グリッシーニ」は、ビールを造る時に出る、麦芽の搾りかすで出来た大麦グリッシーニ。ザクザクとした食感で、一度食べたら止まらない人気商品。


タップルームがオープンすると早速お客さんたちがご来店し、大浴場がにぎやかなムードに。


脱衣所、浴場、どの場所でもビールとフードが頂けるので、アテをシェアしたり、写真を撮ったりしながらそれぞれの時間を過ごせます。


よく来られる常連のご夫婦にもお話を聞いてみました。

ここのオーナーはいつもユニークなビールを造るので、それが楽しみなんですよ」とビール片手に話して下さったご主人。

変わり種では荏胡麻(えごま)や万願寺とうがらしのビールも造られたそうで、志方さんの造る独創的なビールのファンも多い。最近ではTVや新聞などのメディアに出演する機会も増え、幅広い層のお客さんが来店されるそう。

また、長年この銭湯に通っていた人たちが懐かしんで訪れることも。想い出を振り返りながら、初めて飲むクラフトビールに感動されたこともあるそうで、これも銭湯ブルワリーならでは。

手作り弁当を持参して、遠足気分でグループで来られる敬老会の方も増えているんですよ」と志方さん。

古くからコミュニティの中心場所であった銭湯。ブルワリーとして生まれ変わってもなお、その役割が受け継がれています。

小ロットから気軽に造ることができるオリジナルビール


上方ビールでは、オリジナルのビールが15Lから注文できます。レシピが決まっていれば約1か月半で納品。レシピの相談も可能です。

例えば「地元のフルーツや野菜を使いたい」という依頼があれば、どういうスタイルにして造っていくかなどを、ブルワーと考えながら造ることが出来、瓶詰めまでを手掛けてもらえます。

料金は15L(33,000円)、500L(550,000円)の2種類。造りやすい量、リーズナブルな金額なのは、気軽にビールを造ることができるということを知ってほしいオーナーからの想いで実現しました。


15Lでの注文は、ブルワリーの立ち上げ用のテストバッチや、個人での誕生日や記念のお祝い用が多く、500Lは飲食店がオリジナルビールを造るためのオーダーが最近はとても増えているとのこと。現在は7月末まで予約が一杯なんだそう。


形が不揃いな規格外のフルーツや野菜もビールの副原料にしています。

ジャムの加工屋さんから、ホテルに納品するはずだったジャムになる前の冷凍の果物がコロナで行き先を失ってしまって困っているとの相談を受け、原料としてビールにして、価値のあるものに生まれ変えさせることができました」と志方さん。

2021年は規格外の杏やイチゴ、プルーンがビールに。2022年ではトマト、キウイ、文旦などのビールにもチャレンジするそう。また、今後はラベル貼りなどの作業を支援学校に外注するなど、SDGsや社会貢献活動にも取り組まれています。

飲食店の看板メニューに合うビール造りを


今後は、銭湯という場所の魅力さをフルに活用して、大阪の新しい観光スポットにしたい」と話す志方さん。そしてゆくゆくは企業向けのオリジナルビールだけを造っていくブルワリーにしたいとのこと。

志方さん自身がもともとは、飲食店の看板メニューにピッタリ合うビールがあればと立ち上げた思いもあり、それをお手伝いする会社にしていきたいのだそう。

二度と同じビールを造らないのは、いろんなおいしいビールが、どんなタイプでも造れるよと証明したいから

その人、その料理に合った十人十色で特別なビールを造るため、毎回タイプの異なるビールにチャレンジしています。


銭湯跡地という意外な場所で、柔軟さと発想の転換から生まれた銭湯ブルワリー。ここは「美味しいビールを飲む」だけではなく、銭湯のノリを受け継ぐ素晴らしいコミュニティがどんどん生まれる場所でもありました。

ワクワクがたくさん詰まった上方ビールで、湯上がりビール気分をぜひ味わいに行ってみてください。

 上方ビール(かみがたびーる)

〇住所:大阪府大阪市東淀川区西淡路3-15-6
〇交通:阪急淡路駅から徒歩10分
〇電話:06-6829-6550
〇営業時間:11~17時
〇定休日:なし
※店内飲食は土・日曜の14~19時のみ
〇ホームページ:https://kamigatabeer.co.jp/
〇facebook:https://www.facebook.com/kamigata.beer/
〇Instagram:https://www.instagram.com/kamigatabeer/



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みへん ライター

京都生まれの京都育ち、ときどきジャズシンガー。ライブ前には必ずビールを体に流し入れてから歌い始めるのがマイスタイル。最近はクラフトビールにはまり、京都をクラフトビールの街に変身させるべく活動中。京都検定2級所持。

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