歴史と文化のまち京都。京都と聞いて、まずはじめに思いつくものは何ですか?
清水寺や金閣寺、舞妓さん、抹茶、八つ橋、お漬物、など色々ありますが、京都といえば「ビール」!といえる日はそう遠くないかも知れません。
2019年2月8日、あるプロジェクトによる、地元京都の3ブルワリーのプロトタイプ(試作)の醸造品を数量限定で発売することになり、メディア・関係者向けの先行試飲会が、BEER PUB ICHI-YA(京都市中京区)にて行われました
その名も『京都産原料100%ビールプロジェクト』!
『京都産原料100%ビールプロジェクト』とは…
原料生産者と醸造者がつながることで、京都府全域を活性化、発展させていくともに、ビールの原料生産から加工、醸造、飲食店などでの提供まで、各産業が連携したローカルビール産業の新しいモデル「畑からグラスまで・Field to Glass」を京都の地で確立することを目指した長期プロジェクトのこと。
プロジェクトのミッション「ビール原料の100%京都産化」
ホップや大麦を生産拡大してビールの醸造に地元産原料を段階的に増やし、2019年からは京都産原料の比率を徐々に高め、京都産酵母の実用化にもチャレンジし、2020年には京都産原料100%のビール(通称K100)を実現させるという計画です。
2019年2月、プロトタイプビールたちが第一歩を歩みだす!
今回のお披露目で紹介された3つのビールたち。
2019年2月現在は、K80(京都産原料25%以上)の展開を開始されており、このプロフェクトに参画しているブルワリー3社からプロトタイプ(試作)醸造品が発表されました。では、ここで3社3様のプロトタイプビールの紹介をしていきましょう。
1. 京都一乗寺ブリュワリー【K80 アンバーエール】
- ◯ブリュワー:林 晋吾、横田 林太郎
◯原料:京都亀岡産大麦、京都与謝野町産ホップ
◯アルコール度数:5.5%
◯発売日:2月8日(金)
◯提供場所:ICHI-YA、スプリングバレーブルワリー京都、BEER TO GO(東京銀座)
ブリュワー横田さん
麦芽風味が濃厚なアンバーエール。他のプロトタイプビールに比べて京都産の比率は少ないものの、まったりとした飲みやすさも、ある意味京都らしさが出ているのではないか。それぞれのブリュワーの特性、性格など、K100プロジェクトを通じてブリュワーの顏が見えるので、京都のクラフトビールの文化を一緒に盛り上げたい。
料理にも合うので、食前やまた食中のシーンに、麦芽の香りと共にゆっくりとたのしみながらいただける1杯になりそう。
2. Kyoto Beer Lab 【京都産セッションペール】
- ◯ブリュワー:Tom Ainworth
◯原料:京都亀岡産大麦、京都与謝野町産ホップ、(90%以上は京都産)
◯アルコール度数:5.3%
◯発売日:2月8日(金)
◯提供場所:Kyoto Beer Lab 、スプリングバレーブルワリー京都、BEER TO GO(東京銀座)
オーナー村岸さん
ブルワーがオーストラリア出身。もともとオーストラリアは原材料が自分の国もしくはローカルなエリアというのが一般的で日本は逆に珍しいと思った。ただし、ローカル=ビールが安くつくれる。という認識の方が強く、地元のものを使う大切さや意識を今一度考えるいい機会を得た。初めてのことばかりでまだまだ京都産がどんなものなのか勘所がわからないが、使う材料が増えていく毎にどんなビールになるのかが楽しみ。地元のビールが広がりいい文化になれるように頑張りたい。
生のホップのほかに、香りをつけるためにドライホップを使用。飲むとホップの香りがいっぱいに広がります。今後の展開がどんどんたのしみです!
3. スプリングバレーブルワリー 【京づくり#002】
- ◯ブリュワー:三浦太浩
◯原料:京都亀岡産大麦(100%)、京都与謝野町産ホップ(100%)、京都産コシヒカリ
◯アルコール度数:6.0%
◯発売日:2月15日(金)
◯提供場所:スプリングバレーブルワリー京都、BEER TO GO (東京銀座)
ヘッドブリュワー三浦さん
醸造する前から各ブルワーとお互いどんなビールを作るのかというやりとりが面白かった。
使っている原料はみんな京都産だが、それぞれのスタイルや個性がでるのが良いところ。
今後は他のブルワーの参加も増えるに連れ、もっとバラエティ豊かな京都産原料のビールが増えていくのでは。
スプリングバレーブルワリ―京都のテーマである『日本らしい、京都らしいクラフトビールとは何か』は永遠の追求であり、今後も#003、#004とどんどん進化させていきたい。
昨年12月に#001を販売したのが好評で、今までの期間限定品の中で一番の速さで売り切れになったそう。
使用する酵母を変え、より香り豊かで穏やかで、さらに飲みやすくなったエールタイプ #002。
全て100%完成形にするために、飲んだ方々からの感想もいただき、フィードバックさせていきたいと、どんどん進化を遂げていくその過程も見どころ飲みどころのひとつ。
おたのしみの試飲タイム
筆者もいただいてみました!使っているものは同じ京都産なのに、色も風味も3社3様の味わい。まだまだプロトタイプではありますが、ここまで来るまでに一体どれだけのストーリーがあったのでしょうか。
そう思うと、どのビールも最初のひとくちの前に「いただきます」の言葉が自然とでてしまいます…。いろんな方達に感謝の気持ちを込め、手を合わせて「いただきます」。
なぜ「京都」なのか?京都にこだわる意義とは
京都学園大学の篠田吉史博士より、今回のプロジェクトについてコメントをいただきました。
「クラフトビールは今やファッショナブルなものであるが、原料はほぼほぼ輸入だと言っていい。京都は明治時代から100年以上にわたりビールの為の麦を作られているにも関わらず、農家さんからは儲からないからやめようかとの声さえも上がっている。すると一面の金色の麦畑の風景が守られなくなる。
地元に農業があり、ホップがあり、職人さんが汗を流してビールをつくる。そんな世界がいいんじゃないか。そしてそこに価値はないのか。地元の農家さんをなんとか助けたい。ビールをその土地のモルト、その土地のホップにしたい。自分たちが飲んでいるビールがどこから来たのか。グラスに入ったビールが元をたどると畑にまでつながる…そういう社会を作りたい。ただ、『ビールができた、地元のものを作ることができた、よかったね』で終わるのではなく、これを地域として産業として取り組みたい。できるだけ地元のものにしたい。地元にお金を払いたい。社会にコミットしたい。そういう社会をいち早く京都からつくりたい。そんな世界をつくることにより、ビールだけでなく、観光、ラベルなどを作る産業など、いろんな場所に波及できるのではないかと思っている。」
生産者から醸造者まで思いはひとつ
ビール評論家、日本ビアジャーナリスト協会会長、イラストレーターであり、そして今回はホップ生産者の顏としてもご参加された藤原ヒロユキさん。そんな藤原さんからもこのプロジェクトの意義をお話いただきました。
「京都のものを口にしたい。原料から京都というのはひとつのウリになるホップについては今では収穫ツアーも実施しており、たくさんの観光客も訪れている。そしてさらにクラフトビールはアジア、台湾、シンガポールなど世界的にも広がっているが、そういった場所はエリア的にホップ栽培は難しいから、将来的にはそこからの需要もあるだろう。ハードルは高いがホップ、モルトはゆくゆくは世界を視野にしていけば社会向上にもつながるのではないか」
京都産原料100%のビールがいずれは産業として社会向上として実現してゆく。そこが京都にこだわる意義であり、「究極のリスペクトローカル」なのかもしれません。
今後のプロジェクトの展開
2019年9月にはいよいよ酵母も京都産に。世界遺産の清水寺で採れた酵母を各ブリュワーで作り実用化へ。今後、ビアフェスで京都産原料を使ったビールを販売。そしてオリンピックイヤーである来年の2020年にはK100(京都産原料が100%)の完成へ!
出来上がるまでのプロセスを共にたのしむ
ビールは大麦やホップをはじめとする農作物からできる自然の恵み。
プロジェクトにかかわるすべての人から地元を盛り上げたい。楽しんでいきたいという意気込みを感じました。2020年までの完成までに、段階を踏みながら、作り手と飲み手が共に進んでいけるのも魅力のひとつ。ひとくちを口にいれた瞬間に一面の麦畑やホップ畑が目に浮かぶ感動。これから存分に堪能するときがすぐに来るでしょう。
完成がとてもたのしみですね!