Interview 「ビールは最高のコミュニケーションツール!」〜野田幾子さん〜後編

2015/04/09

女性にとってビールを”もっと身近に感じてもらう”をテーマに、ビールに関わる女性、ビールが大好きな女性にお話を伺う「ビール女子インタビュー」。日本ビアジャーナリスト協会の副会長、野田幾子さんにインタビューしている第 8 回目。後編は編集者として見て来たクラフトビール業界の移り変わりや、野田さんが今後取組みたいテーマ、普段のビアなライフスタイルなどについて伺います。

▼前編はこちら

「ビールは最高のコミュニケーションツール!」〜野田幾子さん〜前編 

 

野田幾子

 

クラフトビール、最前線の取材を通して


 

_ _ビアジャーナリストとして、野田さんのビールの歴史が本格的に始まるわけですね。クラフトビールの取材をしていく中で、まだまだ今ほど注目されていない時期もあったかと思うのですが、読者の変化や時代の流れが変わってきたなと感じたのはいつ頃ですか?

 

野田さん:私がビールの取材を始めた頃は、ベルギービール店、ドイツビールの店、または外国産ビールを100本集めました!的な、いわゆる専門店が多かったです。

大きな転機は、2011年にオープンした「クラフトビアマーケット」だったと思います。クラフトビールに初めて触れる人の視点から見ると、コストパフォーマンスがいい、料理は美味しい、今まで飲んだことのないビールが飲めるという魅力。業界に激震が走りました。賛否両論もあって。でも新風を吹き込んだのは事実です。この店がオープンしたことによって、新たにビールを飲む人は、ものすごく増えましたよね。

 

野田幾子

 

業界側の人間にとっては、何より「価格が均一」だというこうことが驚きでした。コストを考えるとクラフトビールは利幅が多いとは言えず、さらに海外のビールはインポーター経由です。提供価格は仕入れ価格に合わせお高めにならざるを得ないのですが、均一で2タイプの、比較的廉価な価格帯を打ち出した。

そこから一気にそういった店が増えて行きました。ビアパブ業界を変えた一種の革命ともいえるでしょう。

 

 

_ _提供側や消費者も変わってきましたね。

 

野田さん:自分の作りたい空間を演出して、店全体をフルパッケージで提案するお店が目立ち始めたのが、ここ数年の大きな流れかなと。ビールや料理の味わい、おもてなしの仕方、季節ごとの新しい提案、そういったストーリーに哲学を感じますし、店主とのやりとりも面白いです。消費者側も楽しみ、味わうようになり、双方充実してきましたね。

 

 

_ _野田さんのビールのお仕事、どういったところにやりがいを感じますか?

野田さん:ビールそのものも好きですが、私は、ビールはビールだけで完結するものではないと思っています。誰と一緒で、どんな場所で、どんな文脈で飲むのかなど、様々なシチュエーションの中で、どのようにしてビールを選ぶか。そう考えることが、楽しいし面白いと思っているんですよ。

だからお店が大好きなんですよね。どんなコンセプトで、どんなサービスで、どんな空間で、どんなレコメンドをしてくれるのか。そうこうして、素晴らしい店に出会えるのは、発見があり面白いです。

 

_ _知的好奇心のドアが開くのですね。

野田さん:なぜこういう店にしたのか、なぜなぜ?っていつも考えますからね。批判という意味ではなく。とても楽しいです。

 

_ _となると、お店をやりたいと思ったりしませんか?

野田さん:お店はねぇ。。(一瞬考えこみ)お客様を待っていないといけないじゃない(笑)

私は自由気ままに訪ねて行きたい方なので、それはちょっと難しいかも。もう、耐えられないかもしれない。待っていることとか。お客様が来なくても店を継続しないといけないしなあ。

 

_ _あ、そこは別なのですね(笑)失礼しました。

野田さん:店舗経営をされている方、心の底から尊敬しています!

 

_ _今後やりたいテーマや企画はありますか?

野田さん:「おもてなし×ビール」についてだったり、「旅×ビール」であったり。

違う事象と組み合せてビールを多角的にとらえ、ライフスタイルに密着したビールの楽しみ方を提案・紹介していきたいですね。今までもこれからもずっとテーマとして持っています。シチュエーションによって、ビールの持つ味わいや意味合いは変わってくるものなので。

 

 

野田さんのビアなライフスタイル


 

_ _プライベートもやはりビールでしょうか。

野田さん:シャンパーニュも大好きです。特別なことがあった時やお祝いの時に飲みますけど、やっぱりほとんどビールですね。最近(お酒が)弱くなってきたこともあって、アルコール度数が低いのがとてもいい(笑)。また、シャンパーニュやワインは、美味しいうちに飲みきりたいたいから750mlを一本空けたいと考えると、ちょっとそれは無理で。そういった意味でもビールかな。

 

_ _野田さんのある日の日常が知りたいです。

野田さん:これ、あんまり書いて欲しくないんだけどなあ。

日常ねぇ。私、「今日は一日オフ!」と決めたら、朝から飲んでますよ、ビール。

 

_ _え!?朝から?

野田さん:朝のビールって、正直一番美味い!と思うんですよ。

 

_ _朝ビールですか!?

野田さん:ビールを飲む順番というのは決まっていて、味わいの薄いものから飲んでいく、みたいな暗黙のルールはあります。でもアルコール度数6を超えると眠くなりますね(笑)。 だから、仕事を何もしないと決めた完全なオフの日にでないとダメ。確実に夕方までのどこかで寝てしまうので。ビールをキッチンで飲みながらブランチを作るのが最高に!!! 楽しい!! ……改めて言葉にすると、「ダメ人間」ですね。

 

_ _(爆笑)そんなことないですよ!その時のお好きなビアスタイルはありますか?

野田さん:朝飲むケルシュ。これがまたすごく美味しいんです。

「ビールって本当に美味しいなぁ……」と、しみじみ思います。オラホのケルシュが好きですね。

インスタグラム

 

_ _ビール女子におすすめしたい楽しい過ごし方のプランはありますか?

野田さん:現在は、ビールとフリーダイビングの2つの柱をメインに取材や執筆活動をしているのですが、両方合わせたプランを構想しています。

 

_ _それはどんなプランでしょうか。きかせてください!

野田さん:ベアードビールさんが昨年の2014年修善寺に工場を作りましたよね。

修善寺といえば伊豆半島の温泉地。伊豆といえば、ダイビングのメッカ。なので、スキン/スクーバダイビング・温泉・美味しいクラフトビールのフルパッケージツアーです! ツアーを組んで午前中にスキン/スクーバダイビングを楽しみ、夕方は修善寺で温泉に入って温まり、夜はベアードビールで美味しいビール乾杯するというゴールデンな企画(笑)。

 

幸い周りにビール好きなスキン/スクーバダイビングインストラクターが多数いらして、「ぜひ実現しよう」という話になりました。スクーバの方は9月にツアーが組めそう。

 

こういった企画は伊豆に限らず全国で展開しようと相談しているので、ブルワリーの皆様方にはぜひぜひご相談に乗っていただきたいです。

 

_ _うわ!楽しそうです!

 

野田さん:私も下見が楽しみです(笑)。

 

_ _最後に、ビール女子にひとことコメントをよろしくお願いします。

野田さん:まず自分の好みのビールを知るといいですね。見つけるとどんどん楽しくなりますよ。また、なぜ自分はこのビールが好きなのか考えて、言語化していくことでしょうか。人に伝えることの第一歩になります。好きだというのは、主観じゃないですか。その好きを客観的に伝えることが全ての基本。なぜ好きなのか説明し、伝えること。コミュニケーションの第一歩になります。

野田幾子

今度はなぜあの人はこのビールが好きなのかなあと考える。

その人のバックグラウンド(出身地とか)、好みの味やスタイルを知ると、おもてなしにつながるわけでしょ。パーティーがあれば、こういうメンツが揃った場合、どんなビールにしようか考えて持っていくのも醍醐味ですし、飲んでいるところを見たりするのも楽しいですね。これはなに?という反応を示すひとや、明らかにビールの量が減っている人気のビールが分かることも楽しいです。ビールはコミュニケーションツールですから。

 

自分を知り、相手を知り、いろいろなひとと一緒にビールを楽しんでください。

そんなことを大事にして欲しいですね。

野田幾子

 

【編集後記】

野田さんの言葉から、一貫してあたたかなビール愛が感じられました。ご本人は、飾らず自然体でフラット。ビールにもひとに対しても「友愛」というコトバがぴったりハマる女性です。おかげでインタビューは終始和やかなムードに包まれました。同世代ということもあり、昭和世代の父親がビールを飲む姿や、多感な時期に読んだ本やマンガ、雑誌の影響力についてなど、思わず共感したり気が付くと爆笑していたり。(インタビューなので)私情を交えないようにしても、可笑しくて膝を打つこともしばしば。

野田さんは、ビールとの運命的な出会いによって世界が変わり、人生が動き出します。後にビールの魅力を世に伝えていくお仕事をするなんて、誰が予想したでしょう。多くのひととビールを楽しみ、ビールを通じてひととの理解を深めてきた野田さんならではのコミュニケーション術も見え隠れする、素敵なひとときでした。

 

【野田さんの直近の動き】

4月9日

夜、「孤独のグルメ」の原作者の久住昌之さんをお迎えしてトークショー

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ライターの紹介

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平田亜矢子 ライター

日本ビアジャーナリスト協会事務局、ビアジャーナリストアカデミー教務課として、ビールの広く深い愉しさを伝えていく組織の運営に従事。「出張おかみ」として、和をとり入れたイベントを出張先でもてなすという個人活動を不定期で行う。過去には、料亭や庭園のある茶室で”ビア茶会“、”神楽坂フランスビールの会“、”朝落語“などを開催。

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