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お酒は二十歳になってから。

Column 『8:00PMのビールがないのは、寝かしつけの時間だから』ー子育てや仕事に追われる人を労るビールを、タイムペアリングで提案するブルワリー「HOURS BEER」

2026/06/29


子育てや仕事で疲れた身体に、そっと寄り添ってくれるクラフトビールがあったら

そんな想いから、北海道千歳市の地で「HOURS BEER(アワーズビア)」というブルワリーが2025年に誕生しました。

代表兼ヘッドブルワーを務めるのは、二児の母でもある後藤ひかるさん(以下、ひかるさん)

妊娠・出産や子育ての経験を通して抱いた想いを、“その時間の気持ちに寄り添うビール”というコンセプトに込め、ビールの醸造をスタート。2026年4月にはファーストバッチが完成し、3種のビールが発売されました。

完成した3種のビールは、どんな味わいなのか。HOURS BEERが目指す味わい、そしてその背景にあるストーリーを深掘りするため、今回ひかるさんにインタビューしました。


造り手の人生や想いが強く反映されたブルワリー


「HOURS BEER」のコンセプトは、“その時間の気持ちに寄り添うビール”

これには、ひかるさんの人生や想いが強く反映されています。

ご実家の酒屋
元々、実家の家業が酒屋であるひかるさん。高校を卒業して約4年間農協で働いた後、お父様が経営する酒屋に入社。日本酒やクラフトビールのバイヤーを担当していました。

農協の仕事では、日常的に地域の農家さんと接し、普段当たり前のように食べているものはたくさんの手間や想いをかけて作られていることを実感するとともに、“地のものを食べる”という地産地消の大切さに気づいたのだそう。

さらに酒屋の仕事では、全国の造り手の方々と出会う中で、お酒にも造り手の想いや地域性が詰まっていることに魅力を感じるように。

また、友人や家族と乾杯する時間や、1日の終わりにビールを飲んでほっとする時間が昔から好きで、次第に「自分自身でも、誰かの日常に寄り添えるビールを造りたい」と思うようになったと言います。


その後、妊娠・出産を経験し、約2年間ほどの禁酒期間を経てやっと迎えた“解禁日”に、自分へのご褒美としてクラフトビールを購入。久しぶりに飲むクラフトビールにワクワクしたものの、その時の自分にとっては苦みやアルコールや味わいが重く感じてしまい、最後まで飲みきることができなかったのだそう。

その瞬間に、「もっと、日々子育てや仕事、家事などたくさんのタスクに追われている人の身体に、スッと優しく入ってくるような、癒されるクラフトビールがあったらいいのに」と強く思ったひかるさん。漠然と考えていたビール造りの夢に具体的な目標が乗り、自分のブルワリーを立ち上げることを決意

「HOURS BEER」醸造所の外観
醸造の経験はなく、最初は右も左も分からない状態だったそうですが、同じ道内のニセコ町にある「LUPICIA BREWERY(羊蹄山麓ビール)」で初めての研修を行い、実際の醸造現場でビール造りの流れや考え方を勉強。

▶︎LUPICIA BREWERY(羊蹄山麓ビール)紹介記事 ※2023年の情報です


その後、ご縁のあった醸造家の高 浩一さんにコンサルに入ってもらい、原料やレシピ設計、醸造工程まで一から指導を受け、ついに2025年4月にブルワリー設立、2026年4月にファーストバッチが完成!販売まで漕ぎ着くことができました。


醸造中のひかるさん
HOURS BEERで初めて醸造を経験したひかるさん。

今まで気軽に数百円で購入していた1本のビールに、こんなにもたくさんの想いや、力仕事、大変さが詰まっている。機械や味わい、ラベルと本当にたくさん悩んで、考えて、選び続けて、やっと“1本の商品”になるんだ」と本当に驚いたと言います。

ひかるさん毎日学ぶことばかりですが、『どうしたらもっと飲みやすく、気持ちに寄り添えるビールになるか』を考えながら、少しずつ理想の味に近づけています」



時間帯にあった味わいをビールで表現


そんな想いを原点に誕生したHOURS BEER。

ブルワリー名に“時間”が入っているのは、“誰かの大切な時間を、少しでも幸せなものにしたい”というひかるさんの願いから。

ひかるさん「嬉しい日もあれば疲れてしまう日もあって。ビールって、そんな時間を少し特別にしてくれる存在だと思っているんです。例えば、仕事や家事、子育てを終えて『今日も頑張ったな』と一息つく時間だったり、大切な人と乾杯して笑い合う時間だったり。HOURS BEERは、そんな日常の中にある“ひとつひとつの時間”にそっと寄り添えるビールでありたい、という想いから名付けました」



パッケージも、あえてシンプルにして、情報量が多過ぎず疲れないデザインを意識したとひかるさん。

ひかるさん「毎日、目の前やスマホから入ってくる情報などで、気づかないうちに頭も心もいっぱいになっていると思うんです。だからこそ、HOURS BEERを手に取った瞬間に、まず目から癒されてほしいという想いがありました」



また、缶蓋とラベルの間には、HOURS BEERのスローガンである“ TIME IS FOR YOU. TIME IS FOR ME. ”という言葉が。

“TIME IS FOR YOU.”には、「このビールを飲んでいる時間は、自分を労り『今日も頑張ったね』とそっと自分に言ってあげられる時間であってほしい」という想いを込めています。

そして“TIME IS FOR ME.”には、「私たち造り手は、このビールを飲んでくださる方の“大切な時間”に寄り添っているということを常に胸に留めながら、妥協せず、真摯に丁寧に造り続けていく」という決意を込めているのだとか。



また、それぞれのビールには時間帯を直接名前に採用。日々子育てや仕事に向き合っているひかるさんが考える、それぞれの時間帯に寄り添ってくれる味わいを表現したビールを展開しています。

最初にリリースされた3種類は、「7:00PM」「9:00PM」「10:00PM」。

なぜ8:00PMが抜けているのか聞いてみると、そこには幼い子供を育てる母親らしい答えが。

ひかるさん「HOURS BEERのビールは、私自身の1日の流れや、その時間に感じる気持ちをもとに考えているんです。私は現在5歳と2歳の男の子を育てていますが、20:00ってちょうど寝かしつけの時間なんです(笑)自分自身が20:00はビールを飲んでいないので自然と空いています。いつか子どもたちが大きくなって寝かしつけをしなくなった頃には「8:00PM」が登場するかもしれませんが、それはそれで少し寂しい気もしますね」


寝かしつけの経験がある人は、この話を聞くだけで目が潤んでしまいそう。


リリースされている3種のビアスタイルはそれぞれ、


7:00pm」は「SUNSET GOLD
9:00pm」は「COCO SWEET
10:00pm」は「CRYSTAL ROUGE

と、あえて「IPA」や「ラガー」といった一般的なビアスタイル名を大きく打ち出していないのも特徴。

ひかるさん「もちろんビール好きの方には伝わる言葉ではあるのですが、ビアスタイル名を聞いても味のイメージが湧かない方も多いのではないかなと思っています。だからこそ、もっと直感的に、“どんな時間“どんな色や味わいなのか”が伝わる名前にしたいと考えました」

具体的にはどんな味わいなのか、1つ1つ詳しくご紹介します。

「7:00PM」SUNSET GOLD


気心知れた友人や家族と過ごす夕飯の、最初の乾杯にふさわしい1杯をイメージした「7:00PM」。食事との相性も考え、すっきりと飲みやすく、思わず次の一口が進むような味わいを目指し醸造されました。

ビアスタイルは「SUNSET GOLD」。“SUNSET”には、夕日が沈み、これから夜が始まっていく時間という意味が込められています。実際にグラスへ注いだ時のビールの色味も透き通ったゴールド色でうっとりしてしまいます。

飲んでみると、軽やかな飲み口で、苦みも少なく柑橘系の爽やかで優しい香りが感じられる味わい。軽やかながらも物足りなさはなく、程よい満足感があるのが心地よい。

そして、この軽やかな味わいを支えている要素のひとつが、HOURS BEERがビール造りに使用している北海道千歳市にある「ナイベツ川湧水。ナイベツ川湧水は、環境省の「名水100選」にも選ばれている湧水で、千歳の自然が育んだ柔らかく綺麗な水です。その水のやわらかさが、「7:00pm」のすっきりとした飲みやすさにも繋がっているのだとひかるさんは話してくれました。千歳市のブルワリーだからこそ原材料に使える、宝の水です。

 『7:00PM』

  • ◯ビアスタイル:SUNSET GOLD
    ◯アルコール度数:4.5%
    ◯原材料:麦芽・ホップ/カラギナン、北海道千歳市のナイベツ川湧水

「9:00PM」COCO SWEET


家事や仕事がひと段落して、ソファに座ってほっとしたり、好きな音楽や映画を楽しんだり。そんな“自分を少し甘やかす時間”に寄り添えるような一本を目指し醸造された「9:00PM」。

ビアスタイルは「COCO SWEET」。“COCO”は、副原料として使用しているココナッツの「ココ」。一般的なビアスタイルの名称で言うと「クリスタルヴァイツェン」にあたるため、原材料には小麦麦芽を使用しています。

実際に飲んでみると、華やかなココナッツがスッと香り、ビールの優しいアクセントに。ヴァイツェンらしい甘みと少しの酸味も感じられてとても心地いい1杯です。

また、ぬるくなっても美味しく感じたことが、個人的にとても嬉しくなりました。元気な子供を就寝時間にパタッと眠らせるのは至難の業。寝たことを確認してビールを開けたものの、すぐに泣き声が聞こえ寝室に戻され、そうしているうちにビールがぬるくなり……美味しいと思えない状態になったビールを泣く泣く身体に流し込む経験をした方もいるのではないでしょうか。

でも「9:00PM」は、おいしさを保ったまま泣き止むのを待っててくれる。“寝かしつけの後の1杯”というコンセプトにぴったりなビールであるように感じました。

 『9:00PM』

  • ◯ビアスタイルCOCO SWEET
    ◯アルコール度数:5.0%
    ◯原材料:小麦麦芽・ココナッツ・ホップ/カラギナン


「10:00PM」CRYSTAL ROUGE


大切な人と過ごす夜や自分だけの静かな時間に、ワイングラスでゆっくり乾杯できる一本を目指し醸造された「10:00PM」。

ビアスタイルは「CRYSTAL ROUGE」。副原料として使用している「ぶどう」に由来する美しく上品な赤色(ROUGE)のビールの液体が、ろ過によって透き通った(CRYSTAL)美しさになっていることを表現しています。

さらに、ブドウだけでなく、北海道のワイナリーでワインを造る際に出たぶどうの皮も副原料として活用。皮による少しの渋みが大人の時間を演出しています。

プシュッと開けた瞬間に、深みのある香りが漂います。飲んでみると、ぶどう由来の華やかながらもしつこくない、柔らかい甘さを感じます。他の2種類に比べ、体がゆっくり布団に沈み込んでいくような、深みのある味わい。どこかワインのような感覚でも楽しめるので、「普段あまりビールを飲まない」という方にも楽しんでもらえる1杯です。

 『10:00PM』

  • ◯ビアスタイル:CRYSTAL ROUGE
    ◯アルコール度数:6.5%
    ◯原材料:麦芽・葡萄、ホップ/カラギナン

これらはひかるさんの経験が活かされた味わいの表現になっていますが、皆それぞれ癒しが欲しい時間は違うもの。ラベルに書かれた時間通りでなくても、「今の自分の気分に合いそうだな」と直感的に選んでもらえたら嬉しいとひかるさんは話してくれました。

HOURS BEERのこれから


現在は「7:00PM」「9:00PM」「10:00PM」の3種類を展開していますが、今後も色々な時間帯のビールを造っていきたいと、今後の展望について話してくれました。

ひかるさん「例えば、夕飯を作りながらキッチンで気軽に飲めるような「5:00PM」だったり、BBQやキャンプで明るい時間から楽しく飲みたい「1:00PM」だったり。まだ頭の中のアイデア段階ではありますが、この時間にはどんな味わいが合うだろう?と考えるのが、最近の私の楽しみになっています(笑)」

また、「時間帯によって、飲む場所や一緒にいる人、その時の気分って全然違うと思うんです」とひかるさん。だからこそ、これからもその時間に自然と飲みたくなるような味わいや香りを表現していき、HOURS BEERを通して「この時間が好きだな」と思ってもらえる瞬間を少しずつ増やしていけたら嬉しい、と話してくれました。


さらに、いつかは日本を飛び出し、世界中の働く人たちにも届けたいという野望を教えてくれました。

ひかるさん「毎日、仕事をしながら家事や育児をしていると、“ママスイッチ”や“仕事スイッチ”って、24時間ずっと入りっぱなしだなと感じることが多いんです。頭では休みたいと思っていても次にやることを考えてしまったり、なかなか完全にはオフになれなくて。だからこそ、そのスイッチを一度OFFにできるような存在になれたら嬉しいです。そして、日本だけではなく、世界中の働く人たちや毎日を頑張っている人たちの“癒しの時間”や“小さな幸せ”を届けられるブランドになりたいです」



そして、働く人の中でも特に女性への想いが一段と強いHOURS BEER。職場としても、女性でも安心して働ける環境づくりを大切にしているのだとか。

ひかるさん「私自身も女性ですし、5月に入社してくれたスタッフも女性。力仕事が多いイメージのあるビール造りの中でも、少しでも身体への負担を減らし、無理なく働ける環境にしたいという想いがありました。例えば、重たい麦芽をマッシュロイターまでベルトコンベアで自動搬送できる設備を導入したり、作業動線もできるだけ安全で効率よく動けるよう工夫しています。“気合いと根性で頑張る現場”ではなく、長く安心して働き続けられる環境を最初から意識しています」

ビールもブルワリーも、丁寧に優しく。造り手の人生や人柄が映し出された、人情深いブルワリーの姿を知り、すっかりファンになってしまいました。

ブルワリーに隣接した酒屋「memos」
HOURS BEERのビールは、オンラインショップで全国発送を行なっています。
さらに道内では、ひかるさんの妹さんが営む、ブルワリーに隣接した酒屋「memos」や、酒屋ビックリッキーの一部店舗(美園店・清田店・恵み野店・静内店)、丸井今井札幌本店様などで購入することができます。
また、道外ではリカーマウンテンの一部店舗でも販売していて、HOURS BEERを楽しめる場所が徐々に広がってきているとのこと。北海道の方はもちろん、道外も方も、ひかるさんの想いが映し出されたビールを、自分を労る生活のご褒美として、ぜひ手に取ってみてくださいね。

 HOURS BEER

◯住所:〒066-0064 北海道千歳市錦町3丁目3−5
◯Instagram:https://www.instagram.com/hours_beer/
◯公式オンラインショップ:https://hoursbeer.com/

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さっこ 編集長

「ビール女子」編集長。記事の企画・執筆・編集やイベント運営を担当。幼い頃から両親が毎日ひたすらビールを楽しそうに飲む姿を見てきたため、「私もきっとビール好きなのだろう」という根拠のない自信と、「大人になったらおいしく楽しくビールを飲みたい」という夢を抱いて育つ。20歳の誕生日を迎えてすぐベルギービールの店で働きはじめたところ、案の定魅了されてビールの世界に溺れ、今に至る。

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