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Bar 【埼玉・新狭山】Hazy IPAの実験と研究が行われている醸造所「HAZY LABO」に行ってきた

2024/08/28

日本でも人気のビアスタイル「Hazy IPA(ヘイジー・アイピーエー)」を皆さんは飲んだことがありますか?

Hazy IPAは、IPA(インディア・ペールエール)から派生したスタイルのひとつで、濁った見た目とフルーティーかつジューシーな飲み口が特徴のビールです。


そんなHazy IPAに魅せられ、埼玉の新狭山で日々研究を行っている“実験的醸造所”「HAZY LABOがあるという噂を聞きつけ、編集部は取材に向かいました。

HAZY LABOで行われている実験と研究の全貌、醸造所のこだわりと情熱をお伝えしていきます!


謎が多いHazyを探るための実験的醸造所


埼玉県、西武新宿線の新狭山駅北口を出て徒歩1分ほど。スタイリッシュな看板と外観が特徴的な「HAZY LABO」に到着しました。


扉を開けると、外観を裏切らないモダンな雰囲気のテイスティングルームが広がっています。


席数は10席。テーブル席に加え、タンクが目の前に見えるカウンター席も配置されています。

HAZY LABOのロゴからHP、メニューや店舗内装まで統一されたデザインを手がけたのは、なんと代表でありブルワーである東里(あいざと)聡さんの、娘さんが立ち上げたデザイン会社なのだとか!


扉上部のガラスフィルムに描かれているのは、東里さんがこれまでに夢中になった趣味の数々。ギター、熱帯魚、コーヒー焙煎、音響機材などがHAZY LABOの文字になぞらえてデザインされているのだそう。


東里さん「もともとは映像業界でMAミキサー(映像の音声や効果音の調整を担う職業)として働いていたので、音の周波数ヘルツとHazyをかけて「HZ LABO」というロゴを造ってもらいました。普通研究室という意味のlaboratory(Lab)にはOがつかないのですが、私たちのロゴは横になってついているんですよね。じつはこれはOではなく、Hazy沼への落とし穴を意味しているんです



実際缶のパッケージには、落とし穴から落ちている人が描かれている遊び心も!

取材後、この落ちている人のように、私たち編集部もHazy沼にハマってしまうとはこのときは知る由もありませんでした。

Hazyに魅了され、醸造所を立ち上げるまで


HAZY LABOは2023年2月、東里さん曰く“新しくまだ謎の多いビアスタイル・Hazy”を探るためにオープンしました。

東里さんがクラフトビールを飲むようになったのは、10年ほど前の2014年頃。そして2017年頃、日本に上陸したばかりのHazy IPAを飲み、大きな衝撃を受けたといいます。

東里さん「今まで飲んだことのなかった、Hazy IPAに大きな衝撃を受けてすぐに情報収集を始めたんです。当時は日本で調べられる情報が少なかったので、インターネットで論文などが貼られているアメリカの掲示板を毎日チェックしていましたね」

60歳定年退職を機に、「自分が飲みたい、おいしいと思うビールを、使いたい素材を使って造りたい」という一心で醸造免許を取得。自身がおいしいと思うHazyを生み出すための行動が、結果的に醸造所の実験と研究に繋がっていったのだとか。

東里さん「Hazyって実は、まだわからない部分が多い複雑な液体なんです。濁りの多い液体は機械での分析が非常に困難で、どんな成分が入っているのか、人間の味覚でしか判断できないことが多いんです。そのため、何が隠れているのかがわからない面白さがあって、まだまだ実験が必要だなと思っています。定年退職してこの仕事に就いてからは毎日新しいことばかり。まるで20代に戻ったような気分です。MAミキサーとブルワーは、ひとつのことを追求して深めていく点では似ている点もありますね」

Hazyの常識を打ち破り、複雑なおいしさを追求していく


HAZY LABOでは、一体どのようなHazyの実験と研究が行われているのでしょうか。特別に醸造所の中を案内していただきながら、その秘密とこだわりをお伺いしました。


HAZY LABOのビールの大きな特徴は、今までHazyビールではあまり使用されていなかったホップや酵母などの新しい材料を使い、常温熟成している点です。

またHazyはフルーティーでジューシーな飲み口が魅力のビールですが、なんとHAZY LABOでは基本的にフルーツやスパイスなどの副原料は使用せず、モルト、ホップ、酵母だけを使った「低アルコールトロピカルHazy」に挑戦しているといいます。

東里さん「フルーツを使っていないのにとてもフルーティーなビールを飲んだ時に、人は驚きと感動、そして知的好奇心が刺激されるんです。低アルコールにこだわるのは、無駄に酔わずにおいしいビールをたくさん飲んでいただきたいからですね」

ビールやHazyは大好きだけれど、多く飲めないとお悩みの方にも嬉しい情報ですね!



中国のZyBrew社から個人輸入した、HAZY LABOの醸造設備。400Lの発酵タンクが4基、250Lの発酵タンクが2基設置されています。

ZyBrew社はそれまで日本での導入実績は二件しかなかったそうですが、中国在住のブルワー兼醸造コンサルの方とのご縁で輸入できたのだとか。

これらの醸造設備のもと、HAZY LABOでは1つの要素だけを変える“スプリットパッチ”という製法でビールが造られることもあります。

通常、400Lの麦汁はそのまま400Lの発酵タンクで発酵させますが、HAZY LABOの“スプリットパッチ”の製法では、250Lの発酵タンク2基に分けて発酵。2基のタンクでは1つの要素だけを変えて醸すのだそう。

たとえば酵母だけを変えたら2つのビールの味のどこがどう違ってくるのかなど、スプリットパッチの製法で造ることで、今まで分かりにくかった味の違いを明確に体感できるようにしているのだそうです。



東里さん「毎回同じようには造れないのですが、そのブレが面白いですね。醸造の過程や常温熟成させていく中で、どんなアロマが出てくるのかわからないところ、新しいアロマが出てきたときの感動やワクワクのために造っています」

細やかな味の違いが体験でき、ビールとHazyの奥深さを楽しめる“スプリットパッチ”の製法。まさにビールの実験と研究をされていて、お話を聞いているだけでもワクワクしてしまいました。

HAZY LABOのビールの秘密は常温熟成にあり


Hazyはフルーティーでジューシーなフレーバーのため、新鮮なうちに飲むのが定番。しかしHAZY LABOで造っているHazyは、常温熟成しておいしくなるビールになったのだと東里さんは語ります。

東里さん「テイスティングルームでお出ししているビールも、通常は発酵タンクから樽に移してすぐ冷蔵庫に入れるのですが、HAZY LABOではあえて常温で置いて熟成させ、タップにつなぐ直前に冷蔵庫に入れて味の変化を楽しんでもらっています。Hazyを常温熟成して出てくるアロマの魅力は、まだ広まっていないように思いますね。ただ、HAZY LABOのビールは常温熟成ができるように製造しています。他社のHazyがすべて常温熟成できるのかと言われるとそうではありません。しかし新鮮なうちに飲んだほうかいいHazyがとても美味しいのは私も同じです。HAZY LABOの常温熟成のビールには別の面白さがあると考えています」

常温熟成で起きる酸化もポジティブな味の変化と捉え、ビールの新たな風味の可能性を探求しているのだそう!革新的なアプローチで生まれたアロマは、Hazyの未知の扉を開いてくれますよ。


実験的醸造されたビールを実際に飲み比べてみた


Hazy愛あふれる東里さんの実験によって生まれたビールがどのような味の違いを持ち、驚きを与えてくれるのか、気になってきたのではないでしょうか。

今回はスプリットパッチによる独自の製法で造られたHazyから、自分で味をブレンドできるHazyまで、HAZY LABO醸造のオリジナルビール7種を飲み比べさせていただきました!


Elani SMaSH Voss(左)』(Regular:970円、Large:1,420円)
Elani SMaSH S-04(右)』(Regular:970円、Large:1,420円)※全て税込、写真はSmallサイズ


「Elani SMaSH Voss(左)」と「Elani SMaSH S-04(右)」は、酵母のみを変えて醸した、スプリットパッチにて製造されたHazy IPA。

「Elani SMaSH Voss」は濁りとハーブ感が少なく、ストーンフルーツ系のトロピカルな香りが広がります。

一方で「Elani SMaSH S-04」はVoss ver.よりも独特のコクと香りがあり、甘みも多いため砂糖漬けのパパイヤ、ハーブ、紅茶のニュアンスも。

酵母のみの違いでも、同時に飲むと香りと味の違いがしっかり分かるので、ついつい交互に飲みたくなってしまう組み合わせでした!HAZY LABOのビールをはじめて飲む人におすすめの2杯ですよ。


Loral』(Regular:950円、Large:1,400円)※全て税込、写真はSmallサイズ


こちらはHAZY LABOのIPA「Loral」。大量のローラルというホップを入れてHazyのレシピで造ったところ濁らなかったため、結果的にIPAカテゴリーにしたとか!ホップの種類によって濁りやすいものと濁りにくいものがあるのだそうです。後味のいいコク、苦みも少なめ、フローラルな香りと金柑のようなフレーバーで、さわやかな喉越しが楽しめます。

東里さん「Hazyの濁りは非常に繊細で、今は濁っていても、熟成させた数ヶ月後には透明な液体になることもあります。濁りが落ちたとしても、常温熟成でどんなアロマが出現するのか楽しみですね」


Turkey’s Pick(左2点)』(Regular:990円、Large:1,450円)
Simcoe+Strata(右2点)』(Regular:950円、Large:1
,400円)※全て税込、写真はSmallサイズ


「Turkey’s Pick」はグアバ、黄桃、グレフルの酸味と、柑橘皮の苦みを感じられる、コクのある飲み口。

「Simcoe+Strata」は初期にはパッションフルーツ、グレープフルーツ、グアバの香り。常温熟成の3ヶ月後からは桃のニュアンスが出たのだそうです。

どちらもフルーツを使っていないのが信じられないほど
トロピカルで、ごくごくと飲めてしまうHazyでした。

Blend Hazy×3』Beaker100ml×3:税込1,400円


「Blend Hazy×3」の文字に惹かれて伺ってみると「お好みのHazy3種類を自分でブレンドして、新しい味を作り出して飲めるメニューです」と東里さん。

「知的好奇心」を刺激できるような醸造所にしたいという思いから、ビールも実験をイメージしたビーカーで提供されるため、お客様も実験のドキドキが楽しめますよ!

今回は東里さんにおすすめを聞いて、先にご紹介した「Simcoe+Strata」と、「Galaxy」、「Nectaron」の3種類をチョイスしていただきました。


フルーティーな「Simcoe+Strata」に、ドライで甘さは控えめの「Galaxy」と「Nectaron」を1対1対1の割合で注いでいきます。果実感と苦み、コクと香りをそれぞれが補って重なり合い、飲んだことのないスペシャルなHazyの風味が楽しめるブレンドでした。


ビールのおつまみとして販売されているお菓子は、東里聡さんの奥様であるゆうこさんが営む「菓子工房ちいさな窓」の商品。サクサクとした食感のクッキーやラスクはどれも絶妙な塩加減や甘さで、ビールとの相性抜群です。


ひと口サイズの「コロコロおつまみラスク」(ガーリック・シュガー・バジル:税込330円)は、ゆうこさんがビールに合うおつまみとして考案したお菓子。

ガーリックとバジルはビールを飲み進めたくなる香ばしさとしょっぱさで、Hazyのフレーバーを引き立てるほどよい甘さのシュガーと交互に食べると、ビールが止まらなくなってしまいました…!

東里さんのお隣でクッキーやラスクの説明をしてくださるゆうこさんでしたが、東里さんの実験にも都度協力していて味覚も鍛えられているそうで、ビールの味見担当でもあるとか。

醸造は東里さんお一人でされているそうですが、ゆうこさんや娘さんなど、ご家族でHazyの実験を支えていらっしゃる関係性がとても素敵だと感じました。


店頭とオンラインで販売されている缶のビールも、今後安定して常温熟成による味の変化が楽しめるよう研究中だそう。

東里さん「うちの常連さんには、同じビールを6本買って、3本は冷蔵庫に、残りの3本は常温熟成して、1ヶ月毎に両方を飲み比べしている方もいらっしゃいます」

娘さんプロデュースの缶のラベルには、なんとホップや発酵温度など醸造過程の情報が表記されており、この情報を読みながら飲むのを楽しむお客様もいらっしゃるのだとか。確かになかなか見られない情報なので、ビールの味により深みを持たせてくれそうですよね。


“好き”を基準にビールを追求していく


Hazy愛あふれる東里さんに、どのようにHazy IPAを楽しんでほしいかをお伺いすると、穏やかな笑顔で語ってくださいました。

東里さん「基本的には私自身がおいしいと感じるビールを前提に造っていますが、味覚に正解はないので、お客様によってさまざまな感じ方があると思って提供しています。とはいえなるべく多くの人においしいと思ってもらえるビールでありたいので、回を重ねるごとによりおいしいビールが造ることができるように、毎回少しずつ工夫しているんです。HAZY LABOのビールは、ビールがあまり得意でない方や、逆にHazy IPAに少し飲み疲れてしまった方でも、気軽に楽しくおいしく飲んでいただけると思いますよ


実は今回、HPに掲載されている「マニアックな実験と研究をするブルワリー」の一文に少し緊張しながら取材に向かった編集部。

ところが実際にお話を聞くうちに、東里さんのHazyを追求していくこだわりは「ビール愛」がベースにあるのだと伝わってきて、帰るころにはしっかりHazy沼に浸かっていました

東里さんの実験的なアプローチで次々と新しいフレーバーが生まれていくHAZY LABOでは、きっと訪れるたびに違ったビールとの出会いがあるのでしょう。


その取り組みの一環として、2024年9月1日からは、1ヶ月後〜2ヶ月後~3ヶ月後と、飲むタイミングによって違う味わいを楽しめる「育てる常温熟成ヘイジー缶」をご自宅にお届けするクラウドファンディングも開始するのだとか。気になる方はぜひチェックしてみてください。



▽9月1日からクラウドファンディングの受付スタート
自宅で味の変化を楽しむ新体験!クラフトビール常温熟成ヘイジーIPA缶を届けたい!


「知的好奇心」をくすぐられるビール体験は、幼い頃のワクワク感を思い出させてくれますよ。ぜひ、HAZY LABOで未知のビールと出会い、その魅力を楽しんでみてください。

 HAZY LABO(ヘイジーラボ)

〇住所:埼玉県狭山市新狭山2-8-8瀬戸ビル1F
〇アクセス:西武新宿線の新狭山駅より徒歩1分
〇営業時間:
[金曜日]17:00〜21:00
[土曜日・祝日]13:00〜21:00
[日曜日]13:00〜20:00
〇定休日:月火水木
〇決済方法:カード、電子マネー、QRコード決済
〇公式HP:https://hazylabo.studio.site/
〇Instagram:https://www.instagram.com/hazy_labo/

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mei ライター

東京都在住、フリーランスのライター・インフルエンサー。WEBメディアを中心に執筆しつつ、商品やイベントのプロデュース、デザインなどSNSを通してマルチに発信中。お酒(ビールは毎日飲んでいます!)と旅と芸術をこよなく愛しています。

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