「湯上がりビール
冷えてます。」
冷えてます。」
ビール好きには見逃せない13文字が街なかでふと目に飛び込んでくるのは、愛媛県松山市・道後。
国内最古の温泉として「日本書紀」にも登場する、日本を代表する温泉街です。
この街のシンボルとも言える「道後温泉本館」から徒歩5分のところに、温泉街ならではのクラフトビール「道後ビール」を醸す「水口酒造(みなくちしゅぞう)」があります。
道後のお湯と一緒に、そして自宅でも楽しめるという噂を聞きつけ、現地に行ってきました。
「暖簾を守るな、暖簾を破れ」家訓を胸に始めたビール造り
水口酒造の創業は1895年(明治28年)。
酒蔵・ブルワリーへわざわざ水を汲みに来る地元民の方々もいるという「熟田津(にきたつ)の良水」という良質な仕込み水を使用し、120年以上もの間、清酒や焼酎などのお酒をつくり続けています。
水口酒造がつくる多種多様なお酒と、これまでに受賞した数々の賞が並ぶ「お帳場台(※)」のある「店舗兼主屋」は、国の登録有形文化財にも選ばれています。
※お帳場台…かつてお酒の補充やお勘定をしていた場所のこと。
▽店舗兼主屋
そんな水口酒造がビール事業を始め、道後ビールが生まれたのは1996年。阪神・淡路大震災により関西を中心とした取引先にも大きな被害が出て、日本酒事業に大きな影響が出たことがきっかけでした。
ほかにも歴史ある酒蔵が数多存在する愛媛県において、ビール造りという全く新しい挑戦を始めることには、少なからずの逆風もあったんだそう。
そんな状況でもビール造りを始めることに舵を切ったのは、創業から守り続けてきた「暖簾を守るな、暖簾を破れ」という水口家の家訓があったから。この家訓は『古い習わしに固執するのではなく、時代や社会に合わせて変化し続ける』ことを意味するんだそう。
「味へのこだわりや、道後という街への想いなど、守るべきものは守った上で、形にとらわれず変わっていくことが大切だと思っています」と話すのは、6代目蔵元の水口皓介(こうすけ)さん。
水口酒造のビール事業立ち上げ当時はまだ学生だった6代目のこの言葉からも、家訓が脈々と受け継がれていることが伝わってきます。
随所に感じるコンセプト。目指すは「湯上がりに美味しいビール」
そんな道後ビールが通年で販売している定番スタイルは、ケルシュ、アルト、スタウト、ヴァイツェンの4種。
4種のビールには、商品名(ビアスタイル)の他に別名があるのだそう。由来となっているのは、道後温泉をこよなく愛したことでも知られ、愛媛県が誇る作家「夏目漱石」です。
「ケルシュ」(別名:坊っちゃん)
「ケルシュ」の別名は、夏目漱石の小説の名前でもある「坊っちゃん」。
フルーティーな香りを持ちながらも、すっきりとした味わいで、道後ビールの定番4種の中でも特に湯上がり1杯目におすすめです。
夏目漱石の作品の中でもとりわけ世代を超えて多くの人から愛されている「坊っちゃん」と同じく、「道後を訪れるたくさんの方々から愛されるビールになってほしい」との願いが込められています。
「アルト」(別名:マドンナ)
カラメル麦芽が使用され赤茶色に輝くアルトは、「坊っちゃん」の中に出てきたヒロインを指す「マドンナ」という別名が付けられています。
マドンナの名から感じられるような、カラメル麦芽由来のほのかな甘みとコクが感じられる1杯です。
「スタウト」(別名:漱石)
チョコレート麦芽由来の深みと香ばしい香り、苦みが特徴の「スタウト」には、なんと「漱石」という本人の名前が別名になっています。
ひげを蓄えどっしりとしたイメージの漱石と、独特の香りとしっかりとした苦みのスタウト。両者から共通して感じられる深みや重厚感を楽しむことができます。
「ヴァイツェン」(別名:のぼさん)
4つ目の「ヴァイツェン」の別名は「のぼさん」。
夏目漱石が師として仰いだ「正岡子規」の愛称から取られています。
ヴァイツェンの特徴は、苦みの少なさと口当たりの良さ、そしてフルーティーなバナナの香り。多くの人に慕われたのぼさんの「物腰の柔らかさ」とヴァイツェンの特徴に類似性を感じたことから、この名が付けられました。
道後にゆかりのある夏目漱石から着想を得て別名をつけたのは、「ビールに詳しくない方が少しでも頼みやすくなれば」「道後という街に少しでも愛着を持ってほしい」という思いから。多種多様な人が訪れる道後という地でビールを造る、作り手ならではの願いが込められていました。
そんなスタイルの異なるこれら4つのビールを飲んでみて、共通して感じられる特徴がいくつかありました。
それは、アロマとフレーバーのバランスの良さ、ドリンカビリティ(飽きずに飲み続けられること)の高さ。そして、しっかりとしたキレ。
訊くと、どれも「お風呂上がりのためのビール造りをしている」からなのだそう。
湯上がりにグイっと美味しく飲んでもらえることを追求した結果、特定のアロマやフレーバーが強すぎない、調和の取れたビールに行き着いたんだとか。
しっかりめのカーボネーション(炭酸ガスの発泡量)もお風呂上がりの乾いた喉に心地よい刺激になります。
火照った体にしっかり冷えたビールで乾杯!
これらのビールたちを湯上がりで飲めるのは、水口酒造の直営店「道後麦酒館」と「DOGO STANDING BAR 道後麦酒館 別館」の2店舗です。
どちらのお店も、道後温泉本館とブルワリーどちらからも目と鼻の先。定番4種の樽生はもちろん、水口酒造が造るビール以外のさまざまなお酒や、1〜2ヶ月のペースで入れ替わる直営店限定ビールも樽生でいただくことができます。
道後麦酒館では、愛媛県の郷土料理を肴にビールを飲むことも。
カウンターとテーブル席どちらもあるので、お一人、カップル、ご家族、どなたでもゆっくりビールを楽しめます。
一方、別館はスタンディングスタイル。
道後の温泉街では、食べ歩きや、他の飲食店も充実しているので、お風呂上がりにフラっと立ち寄って、別館で1.2杯道後ビールを飲んでから道後散策に出かけるのもよさそうです。
「より気軽に立ち寄れる場をつくりたい」「道後の街のいろんな魅力を楽しんでほしい」というお店の設計に、120年以上の歴史がある水口酒造さんの変わらない道後への想いを感じます。
ちなみに、道後温泉のお湯は結構熱めなので、直営店での樽生ビールはしっかり冷えたものを提供しているんだそう。ビールの提供温度からも「湯上がりビール」のコンセプトが伝わってきますね。
お家でも楽しめる?「道後温泉」×「道後ビール」
「道後に行って温泉上がりに道後ビールを飲んでみたいけど、旅行の予定はまだない...」という方に朗報です。
水口酒造では、道後温泉の成分をそのまま凝縮した入浴剤「道後の湯」も製造し、道後ビールとのセットもオンラインショップで販売しています。
道後ビールを冷蔵庫でしっかり冷やし、いつもよりほんの少しだけ設定温度を熱めにして、お風呂と入浴剤を入れれば準備万端。
お風呂上がりにキンキンに冷えた道後ビールをぐいっと飲めば、道後気分を“ちょっとだけ”味わうことができちゃいます。
“ちょっとだけ”と書いたのは、道後の街の魅力はやっぱり現地に行ってみないと味わえない、と取材を通して感じたからです。
水口酒造をはじめ愛媛の方々が長い長い年月をかけて守り続けてきた道後の歴史や文化を、少し熱めのお湯につかって文字通り肌で感じ、火照った体で道後の街へ繰り出す。
「湯上がりビール
冷えてます。」
冷えてます。」
拒むことなんてできない言葉に誘われお店に入れば、しっかり冷えた道後ビールがあなたのことを待っています。
世界中の人から愛され続ける日本最古の温泉郷・道後の街にしっかりと根付きながらも、変化を続ける水口酒造。
そんな酒蔵・ブルワリーが醸す道後ビールを、ご自宅で、そして道後で、ぜひ湯上がりに味わってみてください。
道後ビール(水口酒造)
〇住所
・酒蔵・ブルワリー:愛媛県松山市道後喜多町3-23
・道後麦酒館:愛媛県松山市道後湯之町20-13
・DOGO STANDING BAR 道後麦酒館 別館:愛媛県松山市道後湯之町14-16
〇営業時間
・道後麦酒館(年中無休):
11:00~22:00
・DOGO STANDING BAR 道後麦酒館 別館(年中無休):
平日:15:00~LAST
土・日・祝祭日:12:00~LAST
〇オンラインストア:https://www.dogobeer.com/
〇電話番号:089-924-6616
〇FAX番号:089-924-3707
〇メールアドレス:info@dogobeer.jp
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