
東京都豊島区西池袋。
“西池袋エリア”と呼ばれるこの地域には、赤塚不二夫や手塚治虫などの天才漫画家を輩出したトキワ荘がかつて存在していたり、1920〜40年頃には“池袋モンパルナス”と呼ばれる芸術家が集うアトリエ村が存在し、芸術文化の中で名もなき芸術家や詩人が世界に羽ばたいていったり…と、創造欲や個性を受け入れ、文化が育まれてきた街の歴史があります。
そんな西池袋エリアには現在も、ビール、アート、BBQ…と、様々なプロフェッショナルがそれぞれのクリエイティブや強みを発揮しながらチームになり、1つの場所でいろんな文化を醸成しているブルワリーが存在しています。
その名も、「Cycad Brewing(サイカドブリューイング)」。
どんな魅力的な空間なのか。詳しくご紹介します。
もくじ
・マーケットをリノベーションした空間
・レジェンドが醸すビール
・柔らかいブリスケットが絶品。テキサス式BBQ
・月1で開催される“アート”のポップアップ
・Cycad Brewingのはじまり
・ビールも、文化も、未来も醸成していく
・マーケットをリノベーションした空間
・レジェンドが醸すビール
・柔らかいブリスケットが絶品。テキサス式BBQ
・月1で開催される“アート”のポップアップ
・Cycad Brewingのはじまり
・ビールも、文化も、未来も醸成していく
マーケットをリノベーションした空間

Cycad Brewingの最寄駅は2つ。東京メトロ有楽町線・副都心線「要町駅」からは徒歩6分、西武池袋線「椎名町駅」からは徒歩9分の場所にあります。立教通りの端に位置し、立教大学からは徒歩3分の距離です。
ブルワリーが入る建物は、昭和生まれの木造建築。かつては八百屋や果物屋などがひしめき合い、“西池袋の台所”として街の生活を支えていたマーケット「西池袋mart」がリノベーションされ、2019年2月に「NishiikeMart」に生まれ変わりました。
「NishiikeMart」の中には印刷所が入っていたり、上の階は住宅になっていたりと複合施設にはなっていますが、敷地のほとんどを占めているのは、今回の目的地「Cycad Brewing」です。

リノベーションされた店内は、自然素材の木材がふんだんに使われていて、モダンで都会的なデザイン。

古い梁などはそのまま残されているため、リノベーション後も歴史を感じられる造りになっていてどこか安心感があります。
天井の高さや空間の余白も心地よく、開放感があり落ち着く空間です。

飲食スペースには、団体でも座れるテーブル席と、1人でしっぽり楽しめるカウンターが並びます。
「気取らずに落ち着けること」、そして「ビールにしっかり向き合えること」を大事にした空間づくりを心がけているCycad Brewing。
肩の力を抜いて過ごせる雰囲気でありながら、ビールの味わいがきちんと主役になるように、リノベーションされた店内を活かしたまま装飾は最低限にしているのだそう。

カウンターに着席すると、目の前には醸造している様子を見ることができる贅沢な小窓が。
“ここでビールが生まれている”という実感を持ってほしい。ビールづくりのリアリティが、そのまま空間の一部になるように、という想いから作られました。

さらに、お店の奥へ進むと、ギャラリースペースが出現。
「ビール醸造所を軸に、人が自然につながる場所」であることをコンセプトにしているというCycad Brewingは、定期的にギャラリースペースにアーティストを招き、個展を開催しています。
ビールとアートが自然に同じ場所に存在するよう、ギャラリースペースと飲食スペースの一体感を大切にし、日常の延長で楽しめる空気を目指した店内にしているのだそう。

店内の柱に無造作に貼られたステッカーもアートの一部のようで、いい味になっています。

さらに、DJブースも設置されていて、音楽イベントが開催されることも。

そんなCycad Brewingを構成する要素は、大きく分けて「ビール」「BBQ」「アート」の3つ。
それぞれ詳しくご紹介していきます。
レジェンドが醸すビール

まずは、主軸となる「ビール」。
Cycad Brewingのビールは、飲み終わった後に「もう一杯飲みたい」と自然に思えるビールを造りたいという想いから、“スムース&クリーン”を基本的なテーマとしています。
過度に甘みや苦みが口に残るスタイルは自分たちの理想ではないものの、飲み応えを削ぎ落とすわけではなく、液体としての輪郭がはっきりしていて、雑味がなく、飲み口が美しい──そんな“洗練されたビール”を目指しているのだそう。
Cycad Brewing代表・藤浦一理さん藤浦さんはホームブリューから醸造を始め、1998年にはアメリカにおけるホームブルーイング賞「American Homebrewer of the year」を受賞するなど、ホームブリューを極めたブルワーです。さらに2012年には、代々木にあるクラフトビール専門店「Watering Hole(ウォータリングホール)」を開店。
その後、ブリューパブを開くため2017年にWatering Holeを離れ、現在の場所に前身である「Snark Liquidworks(スナークリキッドワークス)」をオープン。さらにリニューアルを経て、2023年にはCycad Brewingをオープンし、今に至ります。
他にもビールに関する執筆活動を行なった過去もあったりと、醸造に限らず様々な角度からビールに携わるビール界のレジェンドです。

店内では、タップで10種類を常設。全て店舗併設の醸造所でつくるオリジナルビールです。
定番ビールはありませんが、何度か醸造しているものは『ロワーライン3』『ホリダス5』などとビール名の末尾に何度目に醸造したビールなのか数字が書かれています。それらも同じレシピで醸造はせず、ちょっとずつホップが違ったり、レシピを変えたりと、バージョンアップしているのだそう。
この日繋がっていたビールを一部ご紹介します。
『Horridus 5(ホリダス5)』

Cycad BrewingのフラッグシップとなるNew England Style IPA「ホリダス」のバージョン5。
2種のホップ「モザイク」「シトラ」を中心に、マンゴー・グアバ・パッションフルーツが弾けるトロピカルなアロマを楽しめるNew England Style IPAですが、バージョン5の改良では、これまで使用していたホップ「エルドラド」を「スティリアン・フォックス」に変更。キャンディを思わせる甘やかなニュアンスが後味に重なる1杯になりました。
グラスを傾けた瞬間、まるで南国の果樹園に一歩足を踏み入れたように香りが広がり、最後にそっと添えられる甘みが余韻を優しく包み込みます。New England Style IPAにありがちな甘ったるさや重たい苦みを覆す、滑らかな口当たりと絶妙なバランス。フラッグシップとしてこれからも造り続けていくとのことなので、バージョン6以降にも注目です。
2種のホップ「モザイク」「シトラ」を中心に、マンゴー・グアバ・パッションフルーツが弾けるトロピカルなアロマを楽しめるNew England Style IPAですが、バージョン5の改良では、これまで使用していたホップ「エルドラド」を「スティリアン・フォックス」に変更。キャンディを思わせる甘やかなニュアンスが後味に重なる1杯になりました。
グラスを傾けた瞬間、まるで南国の果樹園に一歩足を踏み入れたように香りが広がり、最後にそっと添えられる甘みが余韻を優しく包み込みます。New England Style IPAにありがちな甘ったるさや重たい苦みを覆す、滑らかな口当たりと絶妙なバランス。フラッグシップとしてこれからも造り続けていくとのことなので、バージョン6以降にも注目です。
『Lower Rhine 5(ロワーライン5)』

2021年から始まり2025年で開催5年目となる、北東京のブルワリー&ビアバーによるケルシュのサーキットイベント「Köln/Cologne 2025」(11/14〜11/24)にて、Cycad Brewingが提供したビール。
年に一度醸造されるCycad Brewingのケルシュは、ドイツ伝統のホップを使い、5回目となる2025年バージョンはモルトとホップのバランスを少し整えながら、より爽やかに楽しめるような仕上がりになりました。
苦みは控えめで、スッキリしたボディに上品に香るフルーティーなアロマを楽しめる1杯です。
年に一度醸造されるCycad Brewingのケルシュは、ドイツ伝統のホップを使い、5回目となる2025年バージョンはモルトとホップのバランスを少し整えながら、より爽やかに楽しめるような仕上がりになりました。
苦みは控えめで、スッキリしたボディに上品に香るフルーティーなアロマを楽しめる1杯です。

ビールは缶でも販売しています。ラインナップには、Cycad Brewingのビールに限らず、他のブルワリーのビールも並んでいます。
また、Cycad Brewingの缶ビールはこれまで他社で詰めてもらい製造していましたが、2026年からは缶を自社製造できるようにしていく予定です。

また、ビールの他にも、ミードやサイダーなどのお酒を提供しています。
▶︎ミード関連記事:クラフトビアバーで密かに話題の『ミード』って?味わいやビールとの違いなど、ミードのあれこれをご紹介

ちなみに、実はCycad Brewingというブルワリー名にもビールに対する信念が込められています。
“Cycad”とは、植物の“ソテツ”の意味。名付け親であり、Cycad Brewingのメンバーの1人である戸原寛允さんは、元々ソテツが好きで、自宅でも育てているほど身近な存在だったのだそう。

ソテツは、学校や公園に普通に植えられているような身近なものもあれば、何百万円もするような希少なコレクター品もある。同じ“ソテツ”という括りの中に、手に取りやすいものから一点物まで、幅広い世界が共存する面白い植物。
その姿が、クラフトビールの多様な世界とよく似ていると感じた戸原さん。日常に溶け込む軽やかなビールもあれば、強烈にこだわった一本もある──そしてどちらも、同じクラフトビールの中に自然と存在している。
そうした幅の広さや懐の深さに惹かれ、自分たちのビールも、気軽に手に取れるものから時間をかけてじっくり楽しむものまで、いろいろな表情を持たせたいという想いから、Cycad Brewingと名付けられました。

店先にも、由来となったソテツが、小さなものから大きなものまで置かれています。
大きなものは、Cycad Brewingのかわいいロゴからは想像できないほど凄まじい存在感!下から上まで生い茂っていて圧倒されるので、ぜひ入店前に見てみてください。
柔らかいブリスケットが絶品。テキサス式BBQ

2つ目の魅力は「BBQ」。同施設内には、本格アメリカンBBQを提供する「PHAT Q」が併設されていて、ビールと一緒に本格的なBBQ料理を楽しむことができます。
肉を塊のまま調理してジューシーに仕上げるアメリカンBBQは、味付けは地域で異なり多種多様。カンザスシティ式やノースカロライナ式、メンフィス式などがありますが、PHAT Qはビーフブリスケットとリブを使用するのが伝統的な“テキサス式”。
ブリスケットとは、牛の胸部のお肉。コラーゲンとその筋繊維の結合組織を多く含むため、牛肉の中でも硬い部位です。
硬いため、当時は市場価値の低いお肉でしたが、19世紀半ば以降でテキサス牧畜業が発展したこと、そしてドイツ・チェコ系移民の肉屋(ブッチャー)が、売れ残った「硬い部位(ブリスケットなど)」を廃棄せず、ヨーロッパ伝統の燻製技術で保存・調理して柔らかく美味しく仕上げたのが始まりで、保存食としても重宝された歴史的なメニューなのです。

また“テキサスBBQ”は、ピットマスターと呼ばれる料理人がスモーカーで調理したものをお客さんに提供するスタイルが基本。PHAT Qでも、オーダーメイドで鉄工所に作ってもらったオリジナルのスモーカーで、お肉を12時間ほどスモークしています。
外にあるお手洗いに向かうまでの道にスモーカーが置いていあるので、その様子も少し伺うことができます。

PHAT Qの料理人は、代表である浅賀俊介さん。
アメリカ・テキサス州で食べたブリスケットの美味しさに衝撃を受け、アメリカンBBQの虜になったという浅賀さんは、その時の味わいを完全再現するために研究を重ね、アメリカ産の肉だけを使用したブリスケットを作っています。
実際にいただいてみましたが、元々硬い部位だと思えないほど、柔らかい…!口の中に入れた瞬間ホロホロとほどけ、一瞬にして心を奪われます。
写真は、1人前の「SET B -ブリスケット&ソーセージ」(税込3,200円)。ビールとの相性抜群で、ペロッと食べられてしまいます。

他にも、アメリカンBBQの付け合わせとして定番である「マカロニチーズ」「コールスロー」「フライドポテト」や、ハンバーガーなども提供しています。PHAT Qの本格アメリカン料理を、ビールとともにぜひ味わってみてください。
月1で開催される“アート”のポップアップ

最後は、「アート」。店の奥に佇むギャラリースペースでは、月1回〜2回のペースで展示やポップアップが行われています。
オファーを担当しているのは、Cycad Brewingの名付け親である戸原さん。実は、戸原さんは渋谷区幡ヶ谷にあるビアバー「グレムリン」のオーナー。基本的にはグレムリンにいてCycad Brewingに立つことはないそうですが、Cycad Brewingの共同オーナーとして、ブルワリーのコンセプトやクリエイティブまわりを初期の頃から担当しています。
「ビールの醸造所ということもあって、ビールを飲みながらふらっと立ち寄れて、日常の中で少し“いい時間”が生まれればいい」と考えているという戸原さん。無理に話題性を追いかけるのではなく、作品そのものの空気感や、人柄も含めてCycad Brewingにフィットするアーティストにオファーするようにしているのだそう。そこには、「アートが特別なものではなく、日常の延長で自然に楽しめる場でありたい」という想いがベースにあります。

ポップアップは、1回につき2〜3週間と開催期間が長いので、ゆとりを持ってお伺いできるのが嬉しい。
次回のポップアップは都度Instagramで案内しているので、ぜひチェックしてみてください。

また、オリジナルグッズでもアートのセンスが光るCycad Brewing。一番最初にポップアップスペースで展示をしてくれたというご縁のあるアーティスト・サイダジュンヤさんが、グッズのデザインを担当しています。
「サイダさんのイラストは、可愛らしさと温度感がありながら、どこか少し不思議な余白もあるところが魅力で、Cycad Brewingの世界観ととても相性が良いと感じています」と、戸原さん。
サイダさんは、2026年から展開していくCycad Brewingの缶ビールのラベルデザインも担当する予定とのこと。Cycad Brewingのビールの世界観をどのように表現されるのか、大注目です。

こうして、1つの場所の中でいろんなコンテンツが楽しめるCycad Brewing。
ビールを中心にしながらも、アート、BBQなど、さまざまな目的を持った人たちが気軽に集まり、どんな入口から入ってきても最終的にはCycad Brewingのビールを飲みながらみんなが気軽に交流できるような空気を目指して。そして特別なテーマを押しつけるというより、「ビールをきっかけに、知らない者同士が自然と友達のようになっていく場所」として働くように。
そんな想いのもとで運営されています。
Cycad Brewingのはじまり
こうして、様々なテーマや人々が交じり合い、構成されているCycad Brewingは、どのようにして生まれたのか。その歴史を辿ってみると、そこには代表の藤浦さん、「グレムリン」オーナーの戸原さん、そしてブルワーの植松康佑さんの3人がいました。

Cycad Brewingの前身は、「Snark Liquidworks(スナークリキッドワークス)」。
藤浦さんがWatering Holeを離れた後、2019年4月21日にオープンしましたが、オープン直後にコロナ禍に突入してしまい、打撃を受けてしまったのだそう。

そんな「スナックリキッドワークス」へ再出発の話を持ちかけたのは、渋谷区幡ヶ谷のビアバー「グレムリン」のオーナーである戸原さん、そしてファントムブルワリー「STYLE BREW WORKS」として活動していた植松さん(2025年にご退職)でした。
元々定期的に会ってはビールの話をする関係だったという御三方。店舗運営の状況や、池袋という街でこれからどんなクラフトビール文化を作っていけるかを話す中で、「どうせなら、もっと腰を据えてしっかりビールを造れる場所をつくろう」という方向に自然と流れていったのだそう。
“池袋に根を張り、日常的に飲める本当にいいビールをつくるブルワリーをつくりたい” という三人の共通した思いが重なった結果、スナークリキッドワークスを一度区切り、新しく「Cycad Brewing」を立ち上げることに。同じ地域でビールに向き合ってきた者同士が、話すほどに同じ方向を向いていた。その積み重ねがリニューアルにつながったと言います。

こうして「グレムリン」も共同オーナーとして携わることになり、合同会社スナークリキッドワークスとして再出発したCycad Brewing。3人から始まり、PHAT Qの浅賀さんやセカンドブルワーの福田さん、そしてパブマネージャーの高橋さんなど、個性豊かな仲間が次第に集まっていきました。
そんなCycad Brewingは、代表1人がお店のことをトータルでプロデュースしているというよりも、それぞれが得意な分野のことに集中し、それぞれのクリエイティブや強みを持ち寄り、チームで1つのブルワリーを作り上げているように感じます。

特にヘッドブルワーの藤浦さんは、とにかくビールのことをひたむきに考えている、ビールマニア。
藤浦さんのブルワー人生は、“東急ストアの醸造キット”からスタートしました。
藤浦さん「僕がビール造りを始めた頃はまだ小規模醸造を解禁されてなかったので、キリン、アサヒ、サッポロ、サントリー、オリオンの5社しか日本になかったんですよ。あと輸入ビールはなんかベルジャンは異常に入ってましたけど。なので、当時はいろんな種類のビールが世の中にあることを知らなかったんですよ。そんななか、東急ハンズでビールの醸造キットが売ってるのを見つけたんですね。サラリーマンを辞めてフリーランスになった頃、基本的に在宅勤務で、昼間なんか暇な時間いっぱいできちゃって。だからビール造ってみようかなと」

藤浦さん「それを買ってきてやってみたら、まあろくでもないものしかできないんですけど。当時はパソコン通信の時代だったので色々調べたら、ビール造りの先輩たちが集まっているところがあって。そこで上手くなるにはどうしたらいいかコツを聞いてみると、ダメ出しやアドバイスをたくさんもらいました。今でこそ普通にインターネットでビールの材料が買えるようになってますけど、そこでホップもモルトもイーストも全部個人で購入してビールを造っている人たちを知ったり、本を買ってみたりしていたら、世の中にはビールの種類がいっぱいあるんだって分かって。で、こういろいろ作ってみると、楽しいなと」
当時、ビール醸造キットを買う人はたくさんいたそうですが、ほとんどの人は買って満足するか、造ってみて満足して終わってしまうなか、時間に余裕があり尚且つ好奇心がはたらき、ホームブリューの賞までとるまで突き詰め、さらにそこから30年以上ビールを醸し続けている藤浦さん。脱帽です。

そんな藤浦さんは、「飲んで美味しいと思った他のブルワリーのビールを、自分の手で造ってみたい」という気持ちで、他のブルワリーのレシピを参考に醸造することもあるのだそう。
例えば、Cycad Brewingの「Tragas(トラガス)」(New England IPA)は、北アメリカのブルワリー「Tree House Brewing Company」がYouTubeで発信していたレシピを参考に醸造してみたり、テキサス州オースティンのブルワリー「Pinthouse」のオースティンスタイルIPAのレシピを参考にしてみたり。

取材をしている日も、Cycad brewingのことよりも、ビールの歴史やホームブルーイングの話が止まらない藤浦さん。“ビールを造ること”がとにかく大好きで、飲食店をやりたいわけではなく、ただただ「ビールを造りたい」という想いがブリューパブを始めた動機だったと話してくれました。
レーダーチャートで表すとしたら、藤浦さんは「醸造」の項目がずば抜けて高い状態。そしてそこにコンセプトを提案し、お客さんにとっての居心地の良さや魅力を肉付けしてくれた戸原さんや、食事を提供してくれる浅賀さんなど、他のメンバーで一丸となってCycad Brewingを作り上げ、レーダーチャートのグラフの正多角形がバランスの良い形になっているのだなと感じました。

ちなみに、1998年にはアメリカにおけるホームブルーイング賞「American Homebrewer of the year」を受賞した藤浦さんにビールの話が聞きたいと、藤浦さん目当てでくるマニアックな方も多く来店されるそう。そのため、定期的にカウンターでセミナーを開くこともあると言います。
藤浦さん「セミナーを開くとなると、そのために自分で色々と調べるんで、すごい勉強になるんですよね。 あれはもう自分の勉強時間のためにも“セミナー”っていう課題を課してるみたいなもんです」

藤浦さんの“好きなものに対する追求力”は、ビール以外にも共通しています。
冷蔵庫の隣にある棚には、藤浦さんが人生の中で愛してきたコンテンツのグッズがたくさん並んでいます。取材で伺った日も、特撮の話で大盛り上がり。マニアックなアイテムやホームブルーイング賞のトロフィーも置いてあるので、ぜひ覗いてみてくださいね。
ビールも、文化も、未来も醸成していく
パブマネージャー・高橋政道さん高橋さん「最も新しいメンバーの僕としては、昔ここの建物が市場だった頃をもう一回再構築して、いろんなジャンルの雑多な人たちがまぜこぜになってここで何かを生んでいくような場所にできたらいいなと思ってます。また、どんどん新しい人が来てくれる場所にしたいです。西池袋はアートと絡みがあるエリアでもあるので、引き続きここのギャラリーや音楽を通して、今までクラフトビールに触れることがなかった人たちが、別のコンテンツから入りビールにも触れるきっかけになる場所になり、ビールが好きになる人が1人でも増えたらいいな、と」

また、近所の立教大学の学生や教授も時々来店され、カウンター越しに話し大学での学びについても触れる機会があるという高橋さんは、アカデミックなトークイベントもいつかやってみたいと話してくれました。

そして戸原さんは、2026年から始まる缶ビールの製造、そして新しいビールへの挑戦について話してくれました。
戸原さん「当面の大きな目標は、缶ラインの本格稼働とECの整備です。タップルームだけでなく、自宅でもCycadのビールを楽しんでもらえるようにしていきたいと考えています。そしてその先では、木樽熟成やワイルドエールに挑戦するブルワリーを立ち上げたいという夢があります。 “自分たちが本当に飲みたいビールを丁寧につくる”という原点を、もっと深く探求していきたいと思っています」

ーー取材の後日。
Cycad Brewingを訪れ、オリジナルビールをお土産に購入して帰ろうとしたところ、冷蔵庫の中のオリジナルビールだけ空っぽになっていました。
聞いてみたところ「前日にCycad Brewingのメンバーで、店内で忘年会をしていて、自分たちのビールをああだこうだ言いながら全部飲んでしまった」と、ブルワーの福田さんがはにかみながら教えてくれました。
皆で集まって忘年会をするだけでなく、自分たちのビールを飲み干してしまうという、チャーミングでありながらも探究心が伺えるエピソードにほっこり。私自身も、取材を通してCycad Brewingという1つのチームがさらに大好きになりました。
皆さんもぜひ足を運んでみてください。
Cycad Brewing
〇住所:〒171-0021 東京都豊島区西池袋4丁目19−14(Googleマップ)〇アクセス:東京メトロ有楽町線・副都心線「要町駅」から徒歩6分、西武池袋線「椎名町駅」から徒歩9分
〇営業時間:
[月〜金]12:00〜15:00、16:00〜23:00
[土日]12:00〜23:00
〇Instagram:https://www.instagram.com/cycad_brewing/

お酒は二十歳になってから。
