人工知能(Artificial Intelligence。以下、AI)とビール職人がタッグを組み、これまでにない新しいコンセプトのクラフトビールが開発されました。
世代の特徴をクラフトビールで表現したというその商品は『人生醸造craft』と名付けられ、7月15日(水)に数量限定で発売。『20’s PINK』『30’s BLUE』『40’s YELLOW』『50’s RED』の4本セットで販売され、20代、30代、40代、50代の人たちが歩んできた人生を味わうことができるそう。
「世代の特徴を表すビールってどういうこと?」と思った方も多いのではないでしょうか。どんな方法で各世代の人生を表したのか。そして、どのような味わいのビールになっているのか、ご紹介します!(好評につき、発売後1日足らずで完売。現在、再販売・再醸造を検討しているそうです。※記事公開時点)
開発のきっかけはある新入社員のつぶやきから
今回、ダッグを組んだのは日本電気株式会社(以下、NEC)のAIと、株式会社協同商事 コエドブルワリー(以下、コエドブルワリー)のビール職人。
「人生醸造craft」の開発は、「上司や先輩とのコミュニケーションをどうやってとればよいのかな?」と悩む新入社員のつぶやきから始まりました。
調査を重ねると、新入社員だけでなく、上司や先輩社員もどのようにコミュニケーションを取ればよいのか悩んでいることが分かり、互いを知ることがコミュニケーションのきっかけになるのではないか?と考え、「世代を超えたコミュニケーションをアシストしたい」と企画されました。
それぞれが歩んできた人生、それぞれの世代が持つ“自分らしさ”を表そうと、ファッション雑誌や趣味の雑誌を分析することに。NECの最先端AI技術群「NEC the WISE」で分析しました。
過去約40年分、約4,000冊のデータを元にレシピを作成
「人生醸造craft」では、世代を振り返ることを、ビールを楽しむ順番「色・香り・味」の3ステップと重ね合わせました。
クラフトビールの楽しみ方の一つとして、豊かな色合いを目で楽しみ、口元に近づけたときの香りを感じ、ようやく口に含んだときに存分に味わう。この3ステップをしっかりと体験してほしいとの、コエドブルワリーの想いが込められています。
人生を表すデータとして、『CanCam』、『Oggi』、『Domani』、『DIME』、『BE-PAL』などの雑誌記事を使用。データ提供は小学館で、全15誌、約4,000冊、過去約40年分のデータをAIが分析し、色、香り、味のパラメーターを0~5段階で決定。
それぞれの世代の特徴が数値化され、それを元にコエドブルワリーのビール職人がビールのレシピを作成しました。各数値をレシピに落とし込むことは難しかったそうで、何度もディスカッションを重ねたそうです。大事にしたことは、奇をてらうのではなく、飲んでみておいしいビールを造ること。特に味わいのバランスを重視したそう。
具体的には、『40’s YELLOW』では、20代の頃のトレンドカラーを『CanCan』から画像分析し、ビールの色に反映。30代の頃のトレンドワードを『DIME』や『Oggi』からテキスト分析し、そこから得られた単語をビールの香りに変換。そして、現在のファッションテイストを『Domani』を使って画像分析し、ファッションテイストを味の指標に変換しています。
AIにより分析されたビール・パラメーターは、缶のラベルに表示されています。香りのパラメーターはFRUITY, CARAMEL, PHENOL, MALTY, ALCOHOLの5つで、丸で表されています。味のパラメーターはSWEET, BITTER, SOUR, DRYの4つで、こちらは四角で表されています。
このような手順で開発された「人生醸造craft」のビールは4種類あります。今回、ビール女子編集部が実際に飲んでみました!それぞれの特徴を順番にご紹介します。
最先端の感性は、甘酸っぱい?『20’s PINK』
AIのデータから分かった20代の特徴はこちら。
■色:ピンク(パステルカラーが愛される)
■香り:フルーティー(KAWAIIが流行、「華やか」「フレッシュ」など)
■味:サワー(スタイルの選択肢が増えて、個性の酸味を感じるスタイル)
これらのデータを反映したビールがこちらです。
SNSに囲まれて育ったデジタルネイティブ世代。
20代の方々のために醸造したこのハーブエールは、アメリカ産ホップの柑橘系のアロマ、ハイビスカスによる酸味と淡いピンク色が特徴です。苦みとアルコール度数は控えめで、どなたでもカジュアルに味わいいただけます。
最先端の感性は、ちょっと甘酸っぱいかも。
キンキンに冷やした4℃位がおすすめ。ロゼのシャンパンのように前菜との相性がいいです。
きれいなピンク色はハイビスカスによるもの。フラワリーで華やかな香りですが、すっぱさも感じるため甘ったるくはありません。飲んでみると、炭酸がシュワシュワと心地よく、ほどよい酸味で、苦みはほとんど感じません。するすると飲めるビールです。
クールな見た目に隠された強さを持つ『30’s BLUE』
AIのデータから分かった30代の特徴はこちら。
■色:ブルー(デニムなどブルーを着こなす)
■香り:フルーティー(森ガール/裏原系、個性豊か、「ゴージャス」など)
■味:ドライ&ビター(パンツもシャープに着こなし、シックな装い)
これらのデータを反映したビールがこちらです。
昭和から平成へ。これまでと異なる価値観を持つミレニアル世代。
30代の方々のために醸造したこのフルーツエールは、碧く、甘く香るココナッツとホップのトロピカルなアロマが特徴です。レモンピール由来の心地よい酸味とホップの苦味が奏でるハーモニーをお楽しみいただけます。
その色彩は、新たな世代への誘い。
目を引く青色は、ただ色を付ける目的で使用したのではなく、味わいにも寄与するようにクチナシを使ったそうです。キンキンに冷やした3~5℃位がおすすめ。レモンピールを使っているので、魚料理と相性がいいです。
缶を開けた瞬間から広がるトロピカルな香り、レモンの爽やかさも感じます。その香りから、甘いビールなのかなと思いましたが、飲んでみるとレモンの風味でさわやか、皮をかじったような苦みがあります。飲み込んだ後にふわりと残るココナッツの風味が心地いいです。
元気なビタミンカラーで複雑な風味が奥深い『40’s YELLOW』
AIのデータから分かった40代の特徴はこちら。
■色:アースカラー(茶系やグリーンが流行に)
■香り:フェノール&アルコール(美白など美容系ワードが頻出。「カロリーゼロ」の健康免罪符も)
■味:スイート(スカートなど柔らかい印象、エレガントな甘めスタイル)
これらのデータを反映したビールがこちらです。
団塊ジュニア世代、そして、後に失われた10年と評された就職氷河期世代。
40代の方々のために醸造したこのクリスタルヴァイツェンは、酵母由来のバナナを思わせるエステルとフェノールが織りなす複雑なアロマのバランスの良い纏まりが特徴です。無ろ過のまま飲まれることが多いヴァイツェンから、酵母を取り除くことによって味わうことができる軽いボディとクリーンな味わいをお楽しみください。
この奥深さは、激動の時代を生き抜いたからこそ生まれた。
きれいな黄色ですが、副原料は使っておらず麦芽だけで造られています。冷蔵庫から出して少し時間をおいた8℃位で飲むのがおすすめ。バナナのような香りやクローブのスパイシーな香りがあるので、白身の魚や肉料理との相性がいいです。
豊かな泡立ちで、甘いバナナのような香りが印象的。飲んでみると、香りから想像する甘さはなく、苦みはほとんど感じません。喉の奥にバナナのような余韻にスパイシーな風味が混ざり、すっきりと飲めるビール。
見た目も味わいもリッチな『50’s RED』
AIのデータから分かった50代の特徴はこちら。
■色:レッド(鮮やかな赤が目に)
■香り:モルティ&アルコール(「ビタミン」「カロリー」などヘルシー注目)
■味:スイート&ビター(やわらかい甘めな色合いだけど、落ち着いたオトナなスタイル)
これらのデータを反映したビールがこちらです。
日本中が活気に溢れたバブル世代。
50代の方々のために醸造したこのオリジナルエールは、スペシャリティモルトの配合と高めのアルコール分のバランスをとることで、適度なボディ感とすっきりとした飲み口、芳醇な後味を同時に楽しんでいただける仕上がりとなりました。
やはり、この世代には艶やかな色と薫りがよく似合う。
おすすめの温度は8~12℃。冷蔵庫から出してグラスに注ぎ、温度の変化と共に香りや味わいの変化を楽しんでほしいビール。麦芽の風味が豊かで、高アルコールなので、肉料理との相性がいいです。
グラスに注ぐと、甘いカラメルのような香りが広がり、ふわっとさつまいもの香りもします。口に含むと、香ばしく、麦の風味が豊かで、焼いたパンのような味わい。アルコール度数が7%あるので温かみも感じます。リッチな味わいはゆっくりと飲むのがよさそうです。ビールだけでも充分に楽しめる一杯。
自分と違う世代を味わってみて
20代~50代までの世代の特徴を掴むため、約40年分の雑誌データをAIで分析し開発された「人生醸造craft」。その色、香り、味わいから、いろいろな思い出や感情が湧き上がりそうなビールです。
自分の世代のビールを飲んで振り返ることもおもしろそうですが、会社の上司・先輩・後輩と、親子や親戚と、お互いの世代のビールを飲んでみるのはいかがでしょうか。「あの頃は、〇〇が流行っていてね。」なんて会話で、大切な思い出を共有できそう。
『人生醸造craft』
- 『20’s PINK』
- 〇ビアスタイル:ハーブエール
- 〇アルコール度数:3.5%
- 〇IBU:10
- 〇原料:モルト、ホップ、ラクトース、ハイビスカス
- ※製法上発泡酒区分になります。
『30’s BLUE』 - 〇ビアスタイル:フルーツビール
- 〇アルコール度数:4.0%
- 〇IBU:20.5
- 〇原料:モルト、ホップ、ココナッツ、レモン果皮、青色色素(クチナシ)
- ※製法上発泡酒区分になります。
『40’s YELLOW』 - 〇ビアスタイル:クリスタルヴァイツェン
- 〇アルコール度数:5.5%
- 〇IBU:12
- 〇原料:モルト、ホップ
『50’s RED』- 〇ビアスタイル:オリジナルエール
- 〇アルコール度数:7.0%
- 〇IBU:25.8
- 〇原料:麦芽、ホップ、さつまいも
- ※製法上発泡酒区分になります。
- 〇発売日:2020年7月15日(水)
- 〇金額:1,400円(税別)
- 〇取扱:コエドビールオンラインショップ
- 〇URL:https://coedobrewery.com/
- 〇醸造所:株式会社協同商事 コエドブルワリー
- <お知らせ>
反響が大きく、発売から1日足らずで完売したとのこと。現在、再販売・再醸造について検討しているそうです。今後の予定については、公式HPでお知らせがありますのでご確認ください。(2020年7月16日(木)15時時点)