みなさんは、「ブルワリーキャット」という言葉を聞いたことはありますか?
その名の通り、ブルワリーにいる猫のことをそう呼びます。彼らはブルワリーのマスコット的存在としての役割ももちろんありますが、実は、ビール造りには害となってしまうネズミや鳥などの害獣駆除という重要な役割を担っているんです。
ビールの原料である大麦は、ネズミや鳥類の好物。追い払うために薬品を使うこともできますが、ビールの風味や味わいを落としたくないという理由で、猫を飼うブルワーさんも何軒かあるんだとか。
今回は、そんな重要な任務を果たす3匹の猫ちゃんたちをご紹介します!日本で飼っているブルワリーは少なく、今回はライターの私が住むアメリカのブルワリーに話を聞いてみました。
ブルワリーのマスコット的存在、Horaitoくん(Seventh Son Brewing)
最初に紹介するのは、アメリカ・オハイオ州の州都コロンバスにあるブルワリー「Seventh Son Brewing」。2013年の開業以来、地域の人々に愛され225種類ものビールづくりに挑戦してきたブルワリーです。
近隣では、ビールに限らずワインやカクテルも提供する姉妹店や、「世界を旅する」というコンセプトをもつバーも運営しており、地域のビール愛好家たちに愛されています。
現在タップルームでは、サワーエールやIPA・ペールエールなどを中心としたビールと、ハードセルツァーなど計20種類ほどのお酒を提供しています。
そんな地域に根付いたブルワリーに所属するのは、Old Horaitoくん。
社交的な彼との出会いは、醸造所がオープンした1年後。当時は、ブルワリー付近に現れた野良の子猫だったのだそう。
あまりにもよくブルワリーに訪れたため、飼うことに。小さい頃からブルワリーに訪れる人たちとコミュニケーションを取っていたため、人と接することに慣れています。
みんなが出勤してくる朝は、窓際で日光浴をしているHoraitoくん。お店がオープンすると、最初は店頭にいてお客さんの周りをウロウロしているものの、気分で奥に戻っちゃうことも。しかし、閉店間際になるとまたまた店頭に顔を出し、お客さんや従業員に挨拶してくれるんだとか。気まぐれな性格にまんまと振り回されて、メロメロになってしまう…
また、彼はブルワーたちに「アシスタントマネージャー」と呼ばれており、彼にちなんだビール『Assistant Manager』も醸造されています。彼らがつくるビールの中でもかなりクラッシャブルな味わいで、愛されている定番商品です。
さらに、彼の写真や絵が入ったグッズも販売されていたり、なんとお店の1階からルーフトップバーに続く階段の吹き抜けには彼の壁画が描かれていたりと、ブルワリーの中心的存在であるHoraitoくん。ライターである私が住むオハイオ州にあるブルワリーなので、今夏訪れてみたいと思います。
山の上のブルワリーを守る、Teddyくん(West Kill Brewing)
アメリカ・ニューヨーク州のウェスト・キルという山岳地帯にあるブルワリー「West Kill Brewing」。2016年にご夫婦で開業されたこのブルワリー兼タップルームは、東京ドーム10個分くらいもの農地の一角にたたずみます。
その土地で採れた原材料、たとえば蜂蜜やチェリー、彼らが培養した酵母などを使用してつくられるビールは、地元の魅力を余すことなく感じさせてくれること間違いなし。また自然いっぱいの土地で飲むビールはきっと格別です。
現在は10種類のビールを提供していますが、アルコール度数5%以上の個性的なビールが勢揃い。「ケトルサワー ペールエール」や「オイスタースタウト」など、幅広い味わいのビールを楽しめちゃいます。ラベルデザインも個性的で可愛い。
ぜひ一度ハイキングも兼ねて訪れてみたいこのブルワリーに所属するのは、Teddyくん。
基本的に人が好きで、ブルワリーに訪れる人たちにきちんと挨拶をする礼儀正しいTeddyくん。ですが、なぜか子供と犬を怖がる習性があるようです。
もともとネズミ駆除の目的で飼い始めたTeddyくんですが、現在はブルワリー付近にいるネズミやシマリスをたくさん退治する活躍っぷりだとか。怖いはずの犬の背中に飛び乗ったことがあるほど勇敢な一面もあります。
そんな彼にちなんだ『Fresh Coat』というビールがあります。ビアスタイルは「オートミールスタウト」。
このビールの缶には「Teddy Skiing」が描かれています。ビール名の「Fresh Coat」には、雪が降り積もったばかりの状態、そしてテディが毎年冬に毛皮を新しくすることの意味が込められています。
ネズミ捕獲ならお任せあれ!Nigelくん(3 Stars Brewing)
最後に紹介するのは、アメリカの首都であるワシントン・コロンビア特別区にあるブルワリー「3 Stars Brewing」。実は残念ながら、今年に入り閉業してしまったのですが、おいしいビールをたくさん輩出してくださったその功績に感謝し、せっかくなのでご紹介します!
“アメリカの首都”というワールドクラスの都市を、世界に誇るクラフトビールの地にするという夢を胸に創業。彼らはつねにイノベーティブなビールをつくることを大切にしており、今まで数百種類にのぼるビールをつくっていました。
そんなブルワリーに所属していたブルワリーキャットは、Nigelくん。
ちょっと不機嫌そうな顔が、猫好きの心をくすぐってきます。しかし、実際の彼はとっても愛想がよくて、ブルワーさんたちの後をついて回るのが好きなんだそう!
醸造作業をしている間も同じ場所にいて、一緒に遊びたい気分の時はブルワーさんたちの足首を撫でたりしてくるのだとか。仕事中、足元にこんな可愛い子がいたらテンションあがっちゃいますよね。
3 Stars Brewingは、もともと猫を飼う予定はなかったそうですが、2年前のある日突然醸造所に現れたNigelくんがネズミや鳥を捕まえる姿を見たことで、飼うことを決意。今まで数えきれないほどのネズミや鳥を1人で駆除している彼は、ブルワリーを支える立派なメンバーの一員だったのだとか。
そんな頼もしいNigelくんですが、ブルワーさんがランチを食べているとその食べカスをねだってきたり、誰も見ていない隙にブルワーさんのサンドイッチを盗み食いしてしまうお茶目な一面も。(笑)
今までブルワリーを守ってくれてありがとう、Nigelくん!ゆっくり休んでね。
今回紹介した以外にも、アメリカでは猫を飼っているブルワリーさんが多数存在していました。徐々に海外旅行も復活の兆しが見えてきたいま、アメリカのブルワリーめぐりもいいですが、ブルワリーキャットに会いに行く目的を持って訪問するのも楽しそうですね。
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