ハナウタアヤノのビアバーノオト News 『ハナウタアヤノのビアバーノオト』路地の奥にある小さなきっかけを探しに行きませんか?【京成小岩クラフト酒店】

2017/03/18

最近、おしゃれなビアバーが増えてるけど、ふらっと一人でも飲みに行きたい、でもなんか誰かとおしゃべりしながら飲みたい、という時ってありませんか? 私はあります。

「音楽にこだわりのあるビアバーの店主に、音楽とビールのこだわりを聞いてみたい!」という連載「ハナウタアヤノのビアバーノオト」。

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第3回目は、京成小岩駅からほど近い裏路地にひっそりたたずむ「京成小岩クラフト酒店(Keisei Koiwa Craft Bottleshop=KKCB)」。店主の池田大輔さんが、2015年6月に開いたお店です。

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ある楽器との出会いが、この場所に店を作るひとつのきっかけでもあったとか。ビール酒場を作りたいと考えている人にも、何かヒントになることがあるかもしれません。

 

かわいい看板が目印! 路地の奥にある「京成小岩クラフト酒店」


京成小岩

ー路地の入り口に目印の看板があったので助かりましたが、裏路地に迷い込んだ先にある、というようなお店ですね!(笑)

池田大輔さん(以下、敬称略):そうなんです!(笑)

 

ーその、お店に辿り着く生命線ともいえる看板に、とってもかわいい絵が描いてあったのですが、どなたが描かれたんですか?

京成小岩

池田:ビアイラストレーターの、とあさんです! 目印の看板と店内の絵は、とあさんに描いてもらいました。

 

ーそうなんですね! 実はTwitterで、「京成小岩クラフト酒店っていうところは、おもしろい音楽が流れていて、とあさんが描いた絵もあっていいところですよ」とある方に教えていただき気になって、今回お伺いさせていただきました。よろしくお願いします !

池田:よろしくお願いします! 絵を描いていただいたとあさんとは、店を始める2年くらい前にたまたまイベントで知り合ったんです。もしお店を始めるならとあさんに何か描いてもらおうとは思っていたんですけど、本当に店を始めるとなった時に、店の場所も決まってなかった段階でとあさんに「絵を描いてください」とお願いして。それから店内の絵と外の看板の絵を描いてもらいました。店は今年の6月で2周年なので、近く描きなおしてもらおうかなと思ってるんです。

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ーそれは楽しみですね! 2階に行くとどーんと目に入ってくるこの絵は、ギリシャ神話に出てくる、ビールの女神「ニンカシ」ですか?

池田:えーっとね、これは何なんだろうな?(笑) 最初、このイルカの絵を描いてもらってたんですけど、でも僕、とあさんの描く人の顔が好きなので、人も入れてくれるようお願いして描いてもらったんですよ。

 

ー人の表情が豊かで、すごく素敵な絵ですよね。お店の場所をこの場所に選んだのは、何か理由があったんですか?

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池田:近所に住んでるというのがまずひとつあるんですけど、もともと薄暗い路地とかが好きで、たまに用もないのにそういうところに行ったりしてたんですよね、気持ち悪いんですけど(笑)

 

ー薄暗い場所が好き! なぜですか?

池田:独特な雰囲気のある場所ってこう、ちょっと足踏み入れるだけでもわくわくするじゃないですか。そんなに深い理由はないんですけど、そういうの好きなんですよね。実際に入ってみたら、思ってたのと違うみたいなのがすごく楽しいなと思って。

 

ーあーそれは、わかります! 私も前に、開いてるのか開いてないのかわからないくらい真っ暗な喫茶店におそるおそる入ってみたことがあったんですけど、入ってみたら常連さんがいたり、店主のおじいさんもすごく癒し系の方でとっても居心地がよかったってことがありました。だから、見た目で判断しちゃいけないというか、そういう感じなんですかね?

池田:そうかもしれない(笑)

 

ーこちらに伺う前にも、京成小岩駅辺りでカフェに入ろうと探したんですけどなかったので、喫茶店に入りました。

池田:この辺りは喫茶店ばかりなんです。最近、近所にお茶できる店が3軒くらいオープンしましたけど、1軒はカフェで、あとの2軒は喫茶店。オーナーの趣味なのか、自宅の一軒家を改装して、1階を喫茶店にしましたみたいな感じのところで。そういうところ好きなんですよ。

 

ー昔懐かしいような場所が好きな流れで、この裏路地にお店を作ろうと思ったんですか?

池田:はい。この辺りを散策していた時に、この空き家も見つけて知ってはいたんです。もともとは床屋さんだったのが閉店して、そのままになってたんですけど、入り口の青い日よけのところに「バーバーキムラ」って書いてあって、ガラスのところには薄汚れた黄色いカーテンがかかってて、なんかこう、すごくいいなと思ってたんですよ。その時には店やる気なんかなかったんですけど、やるんだったらこういうところだろうなぁと思って、勝手に頭の中で妄想したお店を作って、Twitterで「今日の樽リスト」とか言って、書いて遊んでたんですよね。

 

ーえ! まだお店を始めるって考えていない時にですか?

池田:そうです(笑) そのあと店を始めることになって、物件をいくつか探してたんですよ。京成小岩でしかやる気がなかったから、この辺りで探しては、ここはだめ、ここはだめっていう感じで。それで、すごい薄暗いスナックの建物の2階みたいなところも紹介してもらったんだけど「やっぱりだめでした」って不動産屋に言いに行ったら「こんなところ興味ないよね?」って言われて出てきた物件がここで。

 

ーすごい! 運命!

池田:「ここ興味あります!」って言ってからは結構トントン拍子で。だから、僕としては思い入れがある場所なんです。

 

ー始める前から目を付けて、妄想までしていた場所で、本当にお店ができることになるとは…! 京成小岩でお店を開いた理由は、やっぱり家の近くだからですか?

池田:引っ越してきたのが8~9年前なんですけど、この町に住んだのは、すごく歴史があるわけでもないし、新しいものがいろいろあるわけでもないけど、昭和後半くらいの微妙な感じが残ってるのが好きなのもあって。飲み屋さんも少しはあるし、生活するのも意外と過不足ないし、日本橋とかだったら電車一本で行けちゃうし、自分ではすごく気に入ってるんです。だけど、飲み屋さんだとカラオケあり、喫煙可みたいなお店ばかりなので、そうじゃない店があったら自分がいいなぁ~みたいな。

 

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ー「京成小岩クラフト酒店」は、禁煙なんですね。

池田:そうです。

 

ー隣の隣はスペインバルでしたけど、このお店の通りはそれ以外ほぼスナックですもんね。

池田:スペインバルは4年前にできて、もともと僕はその店の常連だったんですけど、なんやかんやでここでやることになりました。

 

「ただ、クラフトビールが好き」から始まった


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ーお店を始める前は、何の仕事をされていたんですか?

池田:一番最初は、地ビールメーカーの営業をしてたんです。新潟大学出身だったのもあってご縁があって、「新潟麦酒」っていうメーカーで2年半くらい働いていました。そのあと、ドイツビールやリキュールを輸入する会社に転職して、そこでいろいろあって、1年弱で辞めた時に、一回酒の仕事から離れようと思って。そのあと「電話安くなります」って電話をかけまくる営業の会社に転職したんですけど本当に合わなくて、これはダメだと。そのあと、ワインやアパレルなどを扱う会社で10年くらい勤めたあと、今に至るという感じです。だから、まったくビールに縁がないというわけではないんですけど、酒屋さんや飲食店をやりましたってことはまったくなくて。店を始める前には、知り合いの方のお店で少しバイトさせてもらいました。

 

ーじゃあ、お店を始める直前までは、普通に会社員をされていたんですね。でも、店を始めようと思った大きなきっかけってあったんですか?

池田:30歳の時、具体的には何も決めてなかったんですけど「40歳になったら何かやろう」とは思ったんですよ。それで、刻一刻と近づいていく中で、どうしようかなと思ったんですけど、ちょうど働いてた会社が業態を変えるようなタイミングでもあったし、自分としても自分で何かを始めたい気持ちが強まっていたタイミングで。その一方、僕が40歳になった年の5月くらいに妻が妊娠して、子供が生まれるタイミングで店を始めるのも心配かなと思って妻とも話し合ったんですけど、意外と妻は「You、やっちゃいなよ」みたいな感じだったんですよね。

 

ー奥様、かっこいい!(笑)

池田:じゃあやるかと、8月くらいにおおまかに意思は固めて、10月頃に会社に辞めると伝えました。酒屋をやると決めてからは、週末だけバイトをさせてもらったりして、少しずつ準備していきました。酒屋だけで成立するかというのは自分の中でもぼやっとしてるところがあったんですけど、酒屋で飲める角打ちみたいなものも好きだったのと、クラフトビール好きだったことで、「じゃあ、それをやろう」と少しずつ固めていったんですね。

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ーお酒は昔から好きだったんですか?

池田:好きでしたけど、あんまり自分の中でマニアックなところってなくて、「ただ好きでずっと飲んでる」だけだったんです。地ビールメーカーに入ってお酒自体に興味をもってからも、いろいろ買って飲んでみたくらいだったんです。そんな中で3~4年前に、日本ビアジャーナリスト協会の主催する、アカデミー2期生として入って、同期の30人と出会ったんですよね。その人たちと出会った時「なんか、こんな変な人いっぱいいるんだ」って思って、そこでまた興味に火がついて。

 

ー変な人(笑) 個性的な方が多かったということですね。ビール女子編集部の福岡さんも同期なんですよね?

池田:そうそう、結構濃い人がいっぱいいたんです(笑) 店始める前にバイトさせてもらったのも、その時に同期だった加治さんが横浜で経営しておられる「Una casa de G.b.G.b. El Nubichinom(ウナ カサ デ グビグビ エル ヌビチノ)」というお店でした。本当に何も知らなかったので、樽ビールの注ぎ方とか、基本中の基本を教えてもらって、ずいぶん叱っていただきながら、本当に最初はビクビクしながらやってました。見てるお客さんもすごい怖かっただろうなって、今となっては思います(笑)

 

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ー「京成小岩クラフト酒店」は、瓶ビールと、樽もあるんですか?

池田:樽が4タップ、瓶ビールはざっくり100種類くらいと、日本のワインが十数種類くらいあります。あと、日本酒も基本一種類は置いてます。2階は主にイベントの時に使ってるんですけど、月に一回飲みながら英会話やったり、ポテサラの会を開催したりします。

 

ーポテサラの会、良いですね!(笑)

池田:ポテサラくらいのものってみんな作れるので、みんなでオリジナルのポテサラを持ち寄って。

 

ー持ち寄るんですね!

池田:下町の酒場を飲み歩いてる謎の料理人みたいな人がいて、その人に基調講演的にポテサラ3種類作ってきてもらって、プラス参加者にもポテサラを持ってきてもらうんです。昨年末に一回やったら、17~8種類くらいポテサラが集まりました。だいたい2階は12~3人くらい入るので、そんな時にワイワイ使ったりします。

 

アコーディオンに引き寄せられて


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ー音楽の話をお伺いしたいんですけど、昭和歌謡とか、植木等の音楽が流れていておもしろいですよと耳にしたんです。

池田:基本昭和歌謡的なものを多めに、というかほとんどそうかな、流していて。ちょっとこの場所って場末感があるじゃないですか。この場末感のある場所に敬意を表してじゃないですけど、昔っぽい曲を流そうと思って。和田アキ子とかを中心に。

 

ー和田アキ子ですか!

池田:70年代の和田アキ子って、めちゃくちゃかっこいいんですよ!

 

ー化粧バッチリしてる時ですか?

池田:そうそう、もうぴっちりしたパンタロンとか履いて歌ってる時、すごいかっこいいんです。そういう音楽を流していると、だんだんと興味が出てくるもので、さらに周りの昭和のロックが好きな人が「こんなのあるよ」とか教えてくれて、だんだんとバリエーションが広がってはいます。この間、新宿にあるディスクユニオンの昭和歌謡館に行ってきて、すげーって思いました。

 

ーこの前、NHKの「72時間」っていう番組に、新宿のディスクユニオンの昭和歌謡館が出てました。

池田:え、出てましたか? 観たかったなぁ。実際行ってみてもすっごい面白かったです。鈴木ヒロミツがやってた「ザ・モップス」っていうバンドのCDを買って聴いてみたらすごいかっこよくて、全部集めようかなって思ってるんです。

 

ー気になる! お店にレコードとかはあるんですか?

池田:いや、さすがにそこまでは。狭いところにぎゅうぎゅうでやってるのでCDが精一杯です。

 

ー手もかけないといけないですしね。池田さんはもともと、バンドとか音楽をやっていたとかはありますか?

池田:ないですね~。やってたのはアコーディオンくらいですかね。

 

ーアコーディオンですか?

池田:はい。

 

ー気になる。

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池田:30歳くらいの時から店を始める前までやってました。今はお休みしてるんですけど。この前久しぶりにちょっとやってみたら、びっくりするくらい弾けなくなってて、これはまずいと思いました。

 

ーアコーディオンを始めるきっかけってあったんですか?

池田:単純にかっこいいなと思ってて。

 

ーでも実際、難しそうですよね。

池田:難しいですね。学生の時に、安い中古のを買って遊んだりはしてたんですけど、全然まともには弾けなかったので、いつか習おうと思っていたんです。そんな時、たまたまネット検索したら船橋に教室があって、電話をかけたら「一回見にいらっしゃる?」って言われてのこのこ行ったら入ることになりました。その当時は僕は石神井に住んでて、教室に通うのも1時間半とかかかってて。それで引越しのタイミングで、東京の東側に一回住んでみたかったし、ここから船橋までだと京成電車一本で行けるので、京成小岩に住むことになりました。それからここも好きになっていったみたいな感じですね。だから、アコーディオンをやってなかったら、ここには住んでなかったと思います。

 

ーえー! なんだかいろいろと運命が重なっていいですね。でも、そんな運命の楽器を弾かないなんてもったいないです。何かのイベントでアコーディオンを演奏とかどうですか? 楽器を持ち寄ってオーケストラとか。

池田:アコーディオンを始めた頃は、いつかビアホールで弾きたいとか思ってて。まあビアホール、じゃないですけど、こんな場所を自分でこさえたし、いずれ店で何かやりたいですね。一昨年のハロウィンの時に、この路地の奥でイベントをやって、アコーディオンを習ってた先生とか、一緒に習ってた仲間に演奏してもらったんですよ。すごい楽しかったんです。

 

ー楽しそう! ハロウィンとか楽しそう!

池田:近所の英会話学校の子供達がわーっと来て、一緒に演奏聞いたりして楽しかったです! 本当、ちゃんと練習し直さないと。

 

ーアコーディオンって、どのタイミングで音が鳴るんですか?

池田:まぁ、ふいごみたいになってて、弾いても押しても基本同じ音が出るんですが、切れ目なく弾くのが意外と難しいんですよ。あとは、若干タイムラグがあったりするので、うまい人はそこも調節しながら演奏するんですよね。

 

ーへぇ~。

池田:全然うまくならなかったな~。

 

ー(笑) お子さんとかは池田さんのアコーディオンを聞いたりするんですか?

池田:いや、家でやってると妻がうるさいって言うので。

 

ーえ~残念!(笑) じゃあ、お店で練習されてるんですか?

池田:今は、ここにアコーディオン置いていて、でも仕事にかまけて全然やってなくて。だから、教本の初級編を、やっとやり始めたところです。

 

ー何か目標があるといいですよね。私はウクレレを習ってたんですけど、目標がなくて続けられなかったんですよね。だからそういうのがあれば。イベントをやるって決めちゃうのはどうですか?

池田:結局そうですよね。いずれまた、アコーディオン教室に復帰したいとは思ってるんです。毎年8月に発表会があるので、それが目標ですかね。

 

何かを決める時、人は強い意思をもってその決断をすると思います。でも、そのきっかけは「ビールが好き」「暗い路地が好き」「アコーディオンが好き」など、本当にささいなことから始まるのかもしれません。暗い路地の先にある温かい憩いの酒場を探しに行ってみては?(編集員:山吹)


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イラスト:ISOGAI(Twitter/@HitohisaI、instagram/@isogaihitohisa

写真:酒井由実

 

 ▼これまでの「ハナウタアヤノのビアバーノオト」はこちら。


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▼ビールと音楽のコラム「ハナウタアヤノのビールノオト」はこちら


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ライターの紹介

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山吹彩野 ライター

いつも無意識に鼻歌を口ずさむ鼻歌女子。音楽ライターとして「音小屋」に参加し音楽雑誌「MUSICA」元編集長の鹿野淳氏に師事。音小屋生たちと一緒に音楽メディア「MUSIUM」を主宰。子供のころの鼻歌に始まりピアノやリコーダー、トランペットにゴスペル、ウクレレなど、様々な楽器と友達。今はビールを飲みながら聞く音楽を日々考えるのが趣味。

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