私がビール屋さんになるまで Column 【新連載スタート】私がビール屋さんになるまで。地元でブルワリーを立ち上げた理由

2023/08/16

sponsored by エフシースタンダードロジックス株式会社

日本全土に広がるクラフトビールブルワリー(醸造所)。小規模でもはじめられるため、個性を発揮したりその土地のものを使用したりと、さまざまなビールが日々造られています。

WEBマガジン「ビール女子」でもこれまでたくさんのブルワリーを取材させていただきましたが、じつはこれまで詳しく聞いたことがない内容があったんです。それは、どうやったらブルワリーを立ち上げられるのか。つまり、醸造免許の取得から、醸造タンクなどの機材の輸入などの実務的なことって、詳しく聞いたことがなかったんです。

しかし、大小多くの個性溢れるブルワリーが日本国内でオープンしている今、「ブルワリーをはじめたい、でも何から手をつけていいのやら」と思っている人も少なくないはず。


そこで今回は、2023年に舵を切ったばかりのブルワリー「Maruko Brewing」にお伺いし、『私がビール屋さんになるまで』という連載をお届け!ビール造りへの想いから醸造免許取得の道のりタンクの輸入についてなど、0からビール屋さんになるまでのストーリーをご紹介します。

連載1回目は、「Maruko Brewingを立ち上げた経緯」に焦点を当て、親子二代でMaruko Brewingを立ち上げたブルワーの筒野広康さん、ビアコーディネーターの筒野隆広さんにお話を伺いました。

「Maruko Brewing(マルコブルーイング)」は、2023年10月より「AKANUMA ROMAN BREWING(赤沼ロマンブルーイング)」に店名変更します。詳しくは、ホームページよりご確認ください。
ホームページ:AKANUMA ROMAN BREWING

この連載は エフシースタンダードロジックス株式会社 のご提供でお届けします。


大阪府大阪市中央区に本社を置く総合物流会社「エフシースタンダードロジックス株式会社(以下、エフシースタンダードロジックス)」。中国や東南アジアをベースに、ヨーロッパ、北米など広範囲にわたり物流サービス事業を展開。デジタルフォワーダーとして、情報をデジタル化しサービスを提供することで、迅速かつ効率的な物流を実現しています。最近では、新しくブルワリーを立ち上げたい方への設備導入のお手伝いをしています。


公式HP・お問い合わせはこちら


埼玉県・春日部市にクラフトビール醸造所がオープン


2023年5月5日、埼玉県・春日部にオープンしたブルワリー「Maruko Brewing」。


Maruko Brewingのビールの最大のこだわりは、すべてのビールに古代赤米で造った麹を使用していること。赤米の麹にすることでポリフェノールをより引き出し、すっきりとした味わいと赤みを帯びた液色になるのも特徴です。


定番ビールは4種類。赤米の特長を存分に押し出した『あかマルコ』、コーヒーを使用して造られる『くろマルコ』、小麦由来の柔らかい味わいが特長の『しろマルコ』、そしてIPAスタイルの『きんマルコ』。それに加えて、期間限定のビールも造っています。


醸造所には、タップルームも併設。グラスでの提供に加え、ビンやグラウラー・ペットボトルなどにビールを詰めて販売する量り売りも積極的に行っています。その理由は、土地柄もあって車で来店する人が多いためだそうですが、電車に乗ってはるばるやってくるお客さんもいるそうです。

しかし、どうして春日部という町にオープンしたのか。なぜ赤米を使用したビール造りを行うことになったのか。それには、深いワケがありました。


きっかけは町おこし。たまご屋さんがビール屋さんになるまで


そんなMaruko Brewing、実はもともと野菜や米、卵、味噌などを生産・販売していた株式会社 筒屋「たまごくらぶ」が業態変更してオープンしたブルワリーなのです。先述した通り、お父さんの広康さん、息子さんの隆広さんの親子二代で営んでいます。
左から筒野広康さん、筒野隆広さん
開業は2023年ですが、ビール造りへの思いを抱いたのは2000年代にまで遡り、「赤米」を植えたことからはじまります


広康さん

100年の区切りとなる21世紀がはじまるに当たり、町づくり、町おこしというくくりでこれからどうしようかと地域のみんなで話していたんです。そのなかで、「色々大きいこと言ってもはじまらないから、まずは田植えをしよう」という所に落ち着いて。赤沼という地名にちなんで、日本の米のルーツである赤米にしよう。それなら伊勢神宮の近くの種をいただこうということで赤米の田植えをしたんです。



赤米は、300年以上も歴史のある春日部市の指定無形民俗文化財「赤沼獅子舞」に奉納される古代米です。赤米の田植えにはご年配の方から小学生まで、幅広い層の人が参加しているそう。

広康さん

私たちが暮らす土地は、生活のなかにお米があるという地域です。赤米を植えた田んぼで獅子舞が舞ったのを見たとき、獅子舞の意味が初めて完結したと感じましたね。


さて、赤米は植えた。ではこの赤米をどうしようと、さまざまな意見が飛び交ったそう。まずは赤米を原料にして造る日本酒を試作。その後、餃子、カステラ、柏餅などさまざまな商品が考案され実際に発売されています。春日部の銘菓として知られる「赤米焼きドーナツ」も、ヒット作のひとつだそう。

さらに議論を交わすなかで、かつて埼玉県にはビール会社が3か所ほどあり、その1つが春日部市赤沼村の「マルコ麦酒醸造所」だったこと。さらに、この地で育った麦はかつてビールに使用されていたことに加え、春日部の特産品である麦わら帽子にも使われていたことにたどり着きます。

広康さん

調べてみると、ビールにお米を使うとすっきりとした味になると知りました。それなら、赤米を使って「甘くてすっきり」とした飲みやすい味わいのビールを造ろうと、2004年の春日部市政50周年に合わせて委託醸造をお願いし、『赤沼ロマンビール』を造りました。

赤沼ロマンビールは、昔ながらのビールを想像して無濾過・非加熱で発酵タンクからそのまま瓶詰め。そして原料の赤米も、昔ながらの無農薬・天日干しにして造りました。


甘いけれどもすっきりとした味わいの「赤沼ロマンビール」は、それから15年の間に20回ほど醸造され、春日部ブランドの推奨品に認定されたり、伊勢神宮外宮奉納品として献上されるのです。

順調に見えた赤沼ロマンビールでの町おこしですが、2020年にコロナの猛威が襲い、需要予測が難しくなり醸造中止に陥ります。

それでも筒野さんたちの「ビールを造りたい」という想いは消えることがなく、自分たちでブルワリーを造ろうと思い立ちます。それは、「赤沼ロマン」というビールを立ち上げ販売したこと。味噌などを作る発酵の知識があったこと。そして、昨今の日本のクラフトビールの盛り上がりなどを鑑みたことが大きかったのだそう


ビールのこだわりは「赤米」と「体験を売る」こと


こうした背景をもつMaruko Brewingのビール造りのこだわりはもちろん、古代赤米で造った麹をすべてのビールに使用していること。そのなかでも「あかマルコ」は赤米の特徴が前面に出ているビールで、「赤沼ロマンビール」をイメージして造られています。


ビアスタイルはペールエールで、すっきりとした飲みやすさとほどよい苦みがあり、ドライホップされた華やかな柑橘香のするホップを使用して造られています。

また、Maruko Brewingのもうひとつのこだわりは、“みんなで造る”ことだそう。

隆広さん

ブルワリーを立ち上げてすぐに、お客さんにどんなビールが飲みたいかのアンケートを取ったんです。どんな味が好みかを聞いてシールを貼ってもらって。一番得票率が高かった味わいのビールを「特マルコ」として造り、つい先日完成しました。


また、ブルワリー&タップルームでもあまり見かけない、麦芽やホップなどの原材料が販売所に展示されているのもMaruko Brewingの特徴のひとつ。

隆広さん

製品を売るんじゃなくて、“体験を売る”ブルワリーにしたいと思っているんです。

アメリカってホームブルーイング(家庭でビールをつくること)ができるじゃないですか。そうすると、多くの人がいろんなビールの造り方を自分で研究して造ることができますが、日本では法律上できない。だから、せっかくMaruko Brewingに来るならビールをもっと知ってもらいたいっていう想いがあります。


隆広さん

麦芽やホップとはどんなモノなのか、どんな味がしてどんな香りがするのかということを知らない人ってほとんどだと思うんです。でもMaruko Brewingに来たら実際に原材料を手に取ってもらってにおいを嗅いだり、実際に食べてもらったりして、ビールの元となるものについて知ってもらいたいんです。

そうすると次はお客さんから「こんなビール飲みたい」って直接声をもらうことができて、その意見を取り入れて造ってみるとか。そういったやり取りができるようになったら面白いよなと思っているんです。


お客さんとの距離が近いことで、「例えば『あかマルコ』と『くろマルコ』のブレンドを提案してみたり、醸造を体験してもらったりということもできる」と隆広さん。実際、ビールの仕込み釜はオートマチックな機械にせず、自分たちで麦芽を混ぜることができる寸胴型を採用したことも、“自分たちで造る体験”ができるようにするためだそうです。


地に足が着いたビール造りを


自分たちの住む土地で育つ赤米を使ったビール造り。いずれはビールの主な原材料である麦芽も、この地で作ったものを使いたいと考えているそう。さらには、麦芽粕を堆肥にして田畑に入れることで食や農業の一連のサイクルが赤沼のなかで成り立っていくと考えているそう。

現在、ビールに使用する麦を育ててくれる人が現れたり、日本でも数少ない麦わら帽子の工場が赤沼にあったりと、地に足の着いたビール造りを後押ししてくれる要素がたくさんこの地に揃っているのだそう。


広康さん

原料から作り、ビールができて、麦わら帽子ができる。その一連の流れができ上がってくると、特産品の麦わら帽子も地に足が着くと思っています。ここに住んでいる人たちの生活と産業がくっついて、色んな形で地域の物の生業が見えてくるかなっていうのが希望ですね。

ビール造りにおいて必ず出てきてしまう麦芽粕も、畑にとっては栄養そのもの。Maruko Brewingも麦芽粕は有機農業を行う畑に提供しているそうで、その畑からはまた、おいしい食物が育ちます。

広康さん

麦芽粕はお金さえ払えば産業廃棄物にできますが、それって私たちが伝えたい意味とは遠ざかっちゃうんです。

私たちはずっと発酵をやってきたので、発酵の力って捨てたもんじゃないことをよく知っているんです。畑の土も発酵する微生物によって野菜の味がガラッと変わるので、例えば「これは誰々が作ったトマトだ」ってわかるほどなんです。

ビールも「ちょっと苦いね」「こっちは甘いね」っていう話しかできないのではなく、本当の意味の食料ってそうじゃないっていうところを伝えられたらと思っています。

畑を持った人、耕す人と、作る人。またそれを消費する人。そういう人たちが同じテーブルで話ができる仲間作り、地域作りがしたい」と広康さんは話します。


私たちはビールを、そのときに感じた香りや味わいを感覚で楽しんでいます。もちろんそれもビールの楽しみ方のひとつではありますが、「このビールはなぜ柑橘の香りがするのか」「なぜこのビールはすっきりとしているのか」などの元を辿ってみると、ビールの奥深さやおもしろさをより知ることができ、ビールとの時間がもっと豊かになる気がしました。

その土地のビールを知ることは、その土地を知ること。春日部市赤沼という土地に根ざした新しいブルワリーは、この土地の魅力をより知ることができる新たな観光スポットなのです。


醸造設備の輸入を助ける「エフシースタンダードロジックス



今回の連載コラムは、エフシースタンダードロジックスの提供でお送りしております。

エフシースタンダードロジックスは、大阪府大阪市中央区に本社を置く総合物流会社。中国や東南アジアをベースに、ヨーロッパ、北米など広範囲にわたり物流サービス事業を展開しています。情報をデジタル化しサービスを提供することで、迅速かつ効率的な物流を実現しています。


なかでも、海外の製造メーカーとのやりとりから、製品・部品や原材料の出荷、コンテナ積みにおける梱包方法の手引き、輸入コスト計算、貿易書類の確認や作成方法のサポート、関連公官庁への取い合わせ方法の伝授などにも長けています。最近では、クラフトビールを造る醸造設備の初めての輸入をお手伝いしています。


「私もブルワリーを立ち上げたくて、ビールの勉強は色々してきたけれど、設備の輸入はどうしよう。そしてコストは?何から動けばいいのかわからない…」と悩んでいるブルワリーの卵の方々を助けてくれる会社なのです。

今回の主人公「Maruko Brewing」も、エフシースタンダードロジックスの協力のもと、設備を整えることができたのだとか。その際の様子も、次回以降深堀りしていきます。

ブルワリーを立ち上げたいあなたは、先輩たちの道筋を学ぶ教科書として。飲み手の皆さんは、ちょっと裏側を覗く読み物として。次回の「私がビール屋さんになるまで」も、お楽しみに!


「エフシースタンダードロジックス」HP
エフシースタンダードロジックスへのお問い合わせは、「ビール女子を見た」と一言お伝えください。

 Maruko Brewing

〇住所:〒344-0015 埼玉県春日部市赤沼704-2
〇営業時間:毎週金曜・土曜・日曜 13:00〜17:30販売所営業
(月曜・火曜・水曜は仕込み作業日)
〇公式ホームページ:https://marukobrewing.com/
〇Instagram:https://www.instagram.com/marukobrewing/



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山吹彩野 編集・ライター

好きなビアスタイルはサワー。犬が好き。

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