クラフトビールの魅力の一つに「つながり」をあげる人も少なくないのではないでしょうか。限定コラボビールといった言葉や、メニューに2つのブルワリーが並んでいるのも、私たちを魅了するクラフトビールの世界ではお馴染みの光景です。
同業他社はライバルではなくて仲間。そんな横のつながりが深いクラフトビールの世界を肌で楽しめるビアスタンドが、2024年10月29日に川崎にオープンしました。その名も「KAWASAKI Craft Beer Stand by Tokaido Beer」。
京急川崎駅から徒歩7分のところに醸造所併設のビアバーを構える「東海道BEER川崎宿工場」の2号店です。
店舗は川崎駅東口地下にある商業施設「アゼリア」の中にあります。
川崎駅から徒歩3分。雨にも濡れることなく立ち寄れるビアスタンドと聞くだけで、今すぐに足を運びたくなる魅力が満載ではないでしょうか。
ですが、このお店の魅力はアクセスの良さだけにとどまりません。知れば知るほど行きたくなる「KAWASAKI Craft Beer Stand by Tokaido Beer」のエピソードについて、たっぷりとお話をお伺いしました!
1894年創業の老舗ガラス店が立ち上げた醸造所&ビアバーの2店舗目
多様性のまち川崎のベースである「川崎宿跡に賑わいを」コンセプトに、川崎宿に因んだ名前やデザインのビールを醸造しています。定番ビール4種を始めとして、最近では年に5.6種ほどの新作ビールを醸造。ヘッドブルワーの田中康太さんと二人三脚で、固定のレシピにとどまらず、より美味しいビールになるよう日々励んでいるそう。
ロゴマークのトンボとイチョウは、”前にしか進まない”ことから勝ち虫と呼ばれているトンボと、川崎市にある稲毛神社の御神木であるイチョウの木をイメージしていて、縁担ぎの意味が込められているとのこと。
そんな様々なこだわりを持った東海道BEERの2号店である「KAWASAKI Craft Beer Stand by Tokaido Beer」は、カウンターと丸テーブルで約16名が入る完全立ち飲みビアスタンド。
地下街ならではの立地を活かし、開店ドアのないオープンなスタイル。暖色のライトで照らされた店内は明るく優しい雰囲気に包まれています。
店内では東海道BEERを中心に様々なスタイルのビールを楽しむことができます。また、フードは持ち込みが自由(※持ち込みのゴミは各自で持ち帰り)。店舗でもナッツなどの軽食を用意していますが、基本的にはアゼリア地下街などのお惣菜やおつまみを持ち寄りながらビールを楽しむスタイルです。
今回お話を伺ったのは、東海道BEERのブルワーと「KAWASAKI Craft Beer Stand by Tokaido Beer」の店長を兼任する栁沼航太さん。
なんと、23歳という若さでブルワーと店長を兼任されています。栁沼さんは幼い頃から両親の付き添いで訪れていた酒屋でクラフトビールの存在を知り、お酒を飲めるようになってからは1人でも訪れるほど魅力に引き込まれていったそう。将来はビールに関わる仕事をしたいと考えていた就職活動中に東海道BEERに出会い、学生の頃からアルバイトとして関わりながら、2024年の4月から社員として働いています。
少しお話しするだけでビール愛がひしひしと伝わってくる栁沼さんに、「KAWASAKI Craft Beer Stand by Tokaido Beer」の誕生エピソードやお店の魅力について、詳しくお話を聞きました。
東海道BEERを、川崎のビールをもっと身近に感じてもらうために
レストランタイプの1店舗目の「東海道BEER川崎宿工場」とは大きく方針を変えて、立ち飲みのみのビアスタンドとしてオープンした「KAWASAKI Craft Beer Stand by Tokaido Beer」。オープンに至った背景には、イベントでの出店を通じて、より東海道BEERの存在を身近に感じていただきたいと考える出来事があったと栁沼さんは話します。
栁沼さん:近隣のイベントに出店する時にも訪れたお客様に「どこで飲めるの?」と質問されることが多かったため、まだまだお店のことを知ってもらう必要があると感じていました。1号店である東海道BEERは、駅から少し距離があるため、より川崎駅に近い場所にお店を構えられないかと考えていたんです。そんな時にたまたま駅からアクセスのいいアゼリア内に空きがでたと聞き、「KAWASAKI Craft Beer Stand by Tokaido Beer」のオープンが決まりました。
1号店とは違ったコンセプトのお店にしようと構想していた中で、たまたまアゼリアの中でテナントに空きが出て、導かれるようにオープンに向けて進んでいきます。お店のレイアウトを決めていく中で、スタンディングバー形式にしたのにも、大きな理由がありました。
栁沼さん:クラフトビールを知らない人も知っている人も、どんな人でも気軽に楽しんでもらえる空間にしたかったのが大きな理由です。レストラン形式にしてしまうと何杯か頼まないといけないと感じてしまったり、フードを頼まないといけないかなと考えてしまったりすることがあると思うので、1杯だけでもさっと飲めるような形で楽しんでもらいたいと思っています。
さらに言えば、この立ち飲みスタンドをきっかけに東海道BEERを知ってもらって、今度はレストランの方でゆっくりビールを楽しんでもらえたら嬉しいなと思いますね。
東海道BEERはもちろん、クラフトビール自体をもっと身近に感じてもらいたいという思いから生まれた立ち飲みビアスタンド。その想いはお店作りにも反映されています。外観を見て印象的だったのは、その明るさ。照明も明るめに設定し、店内がよく見えるようにすることで、初めての方でも入りやすいようにしているそう。
入り口を囲むトンボとイチョウが、お店の個性をさらに引き立ててくれています。
もちろん、東海道BEERのルーツである切子ガラスも。店内の照明はこのように美しい装飾で彩られているのでぜひ直接見てもらいたいです。
そしてカウンター席をよく見ると、他のビアバーと少し違う点を感じました。それはビールサーバーの位置。ビアスタンドではカウンター内の背面にビールサーバーを設置していることが多いですが、手前のカウンター側にあるのが新しい。その理由も栁沼さんは教えてくれました。
栁沼さん:ビールを注ぐ時の臨場感を目の前で感じてもらいたいという気持ちであえてお客様側にサーバーを設置しました。冷蔵庫をDIYで手を加えながら、ホースを繋ぐ動線も確保しています。
お店の至る所にこだわりが散りばめられ、ビールを飲む前から楽しいですね。
川崎から全国のビールも。誰もが楽しめるビールラインナップ
こだわりはお店のレイアウトだけでなくもちろんビールにも。お店では東海道BEERのビールを始め、川崎、全国のブルワーから仕入れたビールを含め18種類を楽しむことができます。ラインナップも日本で馴染みの多いピルスナーやラガーを始め、ホワイトビール・IPA・スタウトなど初心者の方から通の方まで楽しめるラインナップを取り入れているそう。
取材でお伺いした時には東海道BEERのビールが7種類、ブルワーさんから仕入れたビール11種類がラインナップに。
仕入れるビールには2つの大きな特徴があります。1つは同じ川崎地域のブルワーのビールを豊富に仕入れていること。川崎市内には数多くのブルワーがあるのですが、市の面積が広く点在していることからなかなか全てのブルワーを巡るのは難しい現状があります。栁沼さんは、このお店を通して東海道BEERだけでなく川崎のビールを知ってもらえるきっかけになれたらと話します。
栁沼さん:当店がアンテナショップのような役割を担い、川崎にはたくさんのクラフトビールがあることを多くの人に知ってもらいたいと思っています。「KAWASAKI Craft Beer Stand」と名付けたのも、東海道BEERだけでなく川崎のクラフトビールを盛り上げたいという想いが由来となっています。
店名の由来を聞いていると、川崎という地域のクラフトビールの盛り上がり、そして横のつながりを強く感じます。その背景には「ビールを通じて川崎を盛り上げたい」というブルワーの共通の目標があるから。お互いがライバルでなく、仲間と認識していて、これまでも川崎駅まで共同でビアイベントを実施したりしてきたそう。
お店のオープンの時にも多くのブルワーがお祝いに駆けつけてくれるなど、まさに同じ目標に向かって切磋琢磨しあっていることが伝わります。
栁沼さん:まだ未実現ではあるのですが、川崎のブルワーが集まって共同で工場を持って、それぞれの缶ビールを作ろうだとか、共同運営でビアバーを作ろうという話も出ているほど仲が良いんですよ(笑)
栁沼さん:初めてクラフトビールを飲む方もクラフトビール好きの方も、ぜひおすすめを聞いてください!それぞれこだわりを持って醸造・仕入れたビールたちばかりなので、ぜひ1つ1つ紹介させてもらいたいです。スタッフ一同、お話するのが大好きなのでぜひ気軽に話しかけてもらえたらと思います!
店内にはモニターだけでなく、それぞれの特徴について詳しく書き記したメニューもあるのでぜひ参考に。また、フードは持ち込みが自由!アゼリア地下街の好きなお惣菜やおつまみを片手にビールを楽しむことができます。
栁沼さん:お仕事帰りにも、好きなおつまみを持ち寄って、背伸びせず気軽にビールを楽しみに来て欲しいと思っています。また、ビールも大体1日に1回は樽の交換があるため、来るたびに新しいビールに出会えます。今日はこのおつまみ、このビールといった形でぜひ何度もお立ち寄りいただけたら嬉しいです!
ビールが飲めない...という方のために、10時~15時はランチタイムにはホットコーヒーのご用意も。ハンディキャップを持つ方の支援を行うNPO法人エミフルさんのスタッフさん達と協力して、ビール醸造の過程で出る麦芽粕を使用してブラウニーなどの焼き菓子も今後は提供予定です。
お昼休憩にコーヒーを飲んで、仕事終わりにビールを飲んで...。といった楽しみ方もぜひ。
こだわり抜かれた個性豊かなビールたちを飲んでみた
お店のコンセプトからビールまで、店長の栁沼さんのこだわりやビール愛が詰まっていて、お話を聞くだけでも川崎やビールへの想いが募っていくのを感じます。
様々な想いが込められているビールの中から、今回は4種類のビールを飲み比べさせてもらいました!
『東海道BEER Nolfin Yell コールドIPA』『カギヤ醸造所 MELLOW YELLOW IPA』『HUMANS BEER チョコバニラポーター』(左から)
3種飲み比べセット:1,350円
※撮影時のメニューのため、時期によって変更する可能性があります。ご了承ください。
本当に全部ビール?と聞きたくなってしまうほど見た目から楽しい今回の3種飲み比べセット。
「東海道BEER Nolfin Yell コールドIPA(左)」は青い花「バーベナ」を浸け込み、海を思わせるような鮮やかなブルー色。実際に飲んでみると、醸造の過程でお米を使用していることで、その色にふさわしい爽快さを感じさせる香りが鼻に抜けながらも、IPAらしい深い苦味が後味に残る、飲み応え抜群の一杯。
「カギヤ醸造所 MELLOW YELLOW IPA(真ん中)」はパイナップルやパッションフルーツなど、ジューシーな果実を連想させる甘酸っぱい香りがただよい、実際に飲んでみると、香りの印象にぴったりのフルーティーな甘さ。苦味も少ないため、初めてクラフトビールを飲む方にもおすすめです。
「HUMANS BEER チョコバニラポーター(右)」は、その名の通りもはやデザート!口に近づけるとバニラの甘い香りが鼻に抜け、飲んでみると、ミルクチョコレートアイスを食べているのではないかと勘違いしてしまうほどでした。ですが、飲み進めるとしっかりビールらしい苦味も出てきて、その面白さが病みつきになるビールでした。
『東海道BEER Belgian-Maiden IPA』
(ハーフ:750円 パイント:1,200円)
「個人的にヘイジーIPAの次に人気が出るのではないかと思っているスタイルです!」と話す栁沼さんにおすすめいただいたベルジャン酵母を使用したIPA。カラメルのようなオレンジブラウンカラーが美しく、香りも非常に豊か。実際に飲んでみるととろみも感じる滑らかな口当たりでIPAながらも苦味が強くないためとても飲みやすい一杯でした。最初の1杯にも最後の1杯にもおすすめのビールです。
多くの人にビールの魅力を伝え、川崎から日本全国をつなぐビアバーへ。
オープンから約2ヶ月で既に多くのファンに愛されている「KAWASAKI Craft Beer Stand by Tokaido Beer」。その理由は、店長の栁沼さんのビールに対する情熱や思いやりに溢れる空間が、ビールをより最高の1杯に仕上げてくれているのだと体感できる時間でした。
最後に今後の展望について、栁沼さんはこう語りました。
栁沼さん:川崎を始めとした全国のブルワーさんやビール好きなゲストをお招きしながら様々なイベントを積極的に行っていきたいと思います。既に実施しているのですが、特定のブルワリーに絞ったラインナップにして、そのブルワーさんと話をしながらビールを飲めるイベントをしたり、ビール好きなインフルエンサーに1日店長をお願いしたり。東海道BEERの名前にちなんで東海道線沿いのブルワーを集めてイベントをしたりと、構想はたくさんあるので、実現してより多くの方にビールの魅力を知ってもらえたらと思います。
最近興味を持ち始めた方も、通の方も、クラフトビールのあらゆる魅力が詰まった「KAWASAKI Craft Beer Stand by Tokaido Beer」に、ぜひ一度足を運んでみてください!
KAWASAKI Craft Beer Stand by Tokaido Beer
〇住所:神奈川県川崎市川崎区駅前本町26-2 川崎アゼリア1046
〇アクセス:JR東海道線・京浜東北線・南武線川崎駅、京急川崎駅より徒歩3分
〇営業時間:10:00 - 22:00(L.O. 21:30)
◯定休日:年中無休(1月1日など、川崎アゼリアが休業の場合を除く)
〇決済方法:カード、電子マネー、QRコード決済(PayPay)
〇公式HP:https://tokaido.beer/
〇Instagram(新規開栓のビールをストーリーにて紹介しています!):https://www.instagram.com/kcbs_beer/