JR浜松町駅から徒歩5分の位置に広がる、芝大門エリア。
東京タワーにほど近いオフィス街に、「FETISH CLUB」というなんとも気になるネーミングの醸造所 兼ビアバーがオープンしたと聞きつけ、編集部が早速取材に向かいました!
外からも分かる、怪しげに輝く店内。緊張と胸の高鳴りを押さえながら一歩お店に入ると、「東京のナイトカルチャーを反映したクラフトビアバー」と表現するのにふさわしい空間が広がっていました。
どんなビールが楽しめるの?ナイトカルチャーってなに?など、お店のあれこれをたっぷりとご紹介していきます!
“東京のナイトカルチャー”を落とし込んだ芝大門のビアバーへ
JR浜松町駅から徒歩5分ほどの場所にある落ち着いたオフィス街にて、2024年3月にオープンした「FETISH CLUB」。1階に醸造所、2階にビアバーがあります。
おしゃれな提灯がぶら下がり、その奥には醸造施設が見える特徴的な外観に、道ゆく人々の視線は釘付けになっていました。
1階の醸造所を横目にワクワクしながら階段を上り、2階のビアバーエリアに向かっていくと、さらに気分を高めてくれるイラストが出迎えてくれます。
2階のビアバーエリアに広がっていたのは、ピンクやブルーなどムーディーなネオンが輝く空間!日本の夜の要素を凝縮したデザインなのだそう。
ミラーボールが回り、LEDネオンが放つカラフルな光が店内を彩る様子は、どこか懐かしくも近未来的。近未来のディストピア世界を表現するサイバーパンクをモチーフに、ネオン街の雰囲気を感じさせる演出が散りばめられています。
席数は30席ほどで、テーブル席が多くゆったり座りながら飲めますが、混雑時はスタンディングで楽しむ人も多いようです。
今回は「FETISH CLUB」を立ち上げたオーナーのヒロさんに、お話を伺うことができました!
「FETISH CLUB」は、ヒロさんたちの「自分たちが本当に楽しめるクラフトビールを造りたい」という想いから生まれました。ヒロさんたちにとっての“本当に楽しめるお店”をつくる上で、大きな影響をもたらしたのは「新宿」の街だったそうです。

ヒロさん「新宿のデザインスタジオで働いていた20代のころ、仕事終わりにスタッフと飲みに行くのが日常で、寝ても起きても新宿にいて。新宿の街は第2のホームのような存在でした。中でもネオン街や“新宿二丁目”のバーで飲み歩いていたので、新宿の夜の独特な雰囲気が大好きなんです」
それから10年後、新宿から離れ、現在の「FETISH CLUB」がある三田・芝大門エリアで毎日のように飲んでいたヒロさんたちは、日本のIPAや本格的なアメリカンIPAが提供されているお気に入りのお店を見つけたのだそう。しかし、そこは残念ながらコロナ禍で閉店。
再び新宿に戻り、好みのIPAが飲めるお店を探したものの見つからず……その結果、自分たちでおいしいビールを入手するルートを見つけて購入し、新宿二丁目のスナックなどに持ち込んで飲むことに。
ヒロさん「普段本当に好きで通っている場所にクラフトビールの要素が入ったときに、ものすごく居心地が良くて。こういう環境でクラフトビールを飲めたら最高じゃん、と」
そうして、自分たちの手で、自分たちにとって全部100点満点のことをやろうと「FETISH CLUB」をスタート。以前通っていた新宿のゲイバーなどを参考にしつつ、「日本の夜の文化にクラフトビールを持ち込む」という発想を大きなテーマに掲げてオープンしました。
お気に入りのIPAのお店と出会えた「芝大門」の街に、ヒロさんたちが大好きな街「新宿」のナイトカルチャーと、クラフトビールや本格的なアメリカンIPAを持ち込んだビアバー「FETISH CLUB」。
お店のコンセプトはひとつに絞らず、とにかく自分たちが好きな要素を惜しみなく店内に反映しているそうで、“ジャンルに縛られないカオス感”は、まさに新宿の街のようです。
「FETISH CLUB」という店名も、新宿二丁目特有のクラブやバーでクラフトビールを楽しんでいたことから思い浮かんだそうですが、お店のグラスに描かれた遊び心のあるイラストも、そこから着想を得たとヒロさんは話します。
ヒロさん「グラスのイラストは『クラフトビールは飲むだけでなく嗅いだり、眺めたり、いろいろな楽しみ方ができる』というクラフトビールの可能性を表現しています。飲んでいる瞬間だけでなく、体験そのものが記憶に残り、楽しい気分で開放的になれる時間を提供するのが『FETISH CLUB』の狙いですね」
オリジナルグラスは、来店客の間で瞬く間に人気に。販売予定はなかったものの、「ぜひ売ってほしい!」という声が多数寄せられ、なんと北海道から買いに来るファンも現れるほど。そのユニークなデザインも、ビールの楽しさを共有する象徴になっているようです。
そんなインパクトのあるグラスや、缶のイラストを手掛けているのは、ヒロさんが20代のころに勤めていたデザインスタジオの社長である、イラストレーター 湯村輝彦さんによるもの。湯村さんのイラストが描かれたコースターはなんと12種類も!好きなコースターを選んでビールを楽しめるのも嬉しいポイント。
湯村さんのイラスト以外にも、人物やフィギュアの写真など、目を惹かれるものばかりが自社ビールの缶に散りばめられています。これらは、新宿の街で見かけるようなポスターや、日本のかわいい文化などを表現するため、自社で製作されているのだそうです。
ヒロさん「このお店では、浮世絵のような昔の日本の歴史的なデザインじゃなく、今の日本のデザインを見せたいんです。飲んだ人によって印象は全然違うので、 デザインと味を必ず一致させようとまでは思ってないんですけど、パッケージと名前、味は全部共通したコンセプトになっています。名前はその場で決めているので統一感はないものの、一応全部意味はあって。たとえば近くにあった本、聴いていた音楽が名前のフックになっているものもあります」
飲むとき以外も楽しんでほしい という「FETISH CLUB」の想いが、節々からたっぷり伝わってきますね。
IPA愛、ここに極まる。期待を上回るひと口を
「FETISH CLUB」で提供されているビールは、自社ビール15タップ・ゲストビール5タップの計20タップ。自社ビールのほとんどのビアスタイルが「IPA」であるため、ゲストビールはIPA以外か、IPAでも自社では造らないような個性的なものをセレクトされています。
「FETISH CLUB」が造るビールには、ウエストコーストIPA、ヘイジーIPA、さらにはクリアなサワーIPAなど多彩なIPAが揃います。同じビールばかりでは飽きてしまうため、様々なパターンを試しながら新しい味わいを追求しているのだそう。
ヒロさん「うちのビールの特徴は、外れが少ないことですね。自分たちがおいしいと思うものを造りたいのであって、個性を前面に出したいわけじゃないので、こんな派手なデザインですけど、実は味は保守的なんです。好みとは違ったビールと出会えるのもクラフトビールの魅力ですが、僕らが造るものは日常で飲むビールとしてがっかりさせないように気を付けて、挑戦はしつつも『ちゃんとおいしい』のを第一に考えています」
中でも特に得意としているビアスタイルは「ライスIPA」で、常にライスIPAの商品は提供しているとのこと。
ちなみに、「FETISH CLUB」は1階にある醸造スペースと、第一号ブルワリーである山口県の醸造所の2カ所でビールを造っています。もともと山口で別の事業を展開していたことがきっかけで、新規事業としてクラフトビール醸造をスタートしました。
山口はヒロさんの生まれ故郷であり、ふるさとへの想いも強く持っている事から、山口は醸造拠点、東京は販売やコミュニケーションの場として、それぞれの特徴を活かして運営しています。
山口では量産に向いた大きなタンクを使って醸造しながら、東京では少量生産が可能な小さなタンクを活用して、実験的なビールや新しいスタイルの開発を行っているようです。
東京の醸造長であるソヲンさん(写真中央)。なんと、もともとはコスメ業界で働かれていたのだそう!
育児のタイミングでコスメ業界を退職し、社会復帰のタイミングで興味のあったビール業界へ。現在はコスメ業界で培った香りの合わせ方を活かし、「FETISH CLUB」のビール造りに大きく携われています。
ヒロさん「情報から期待して飲んでくれたお客さまががっかりしないように、ベースはしっかりおいしいIPAかつ、そこに合う香りを付けるようにしています。なるべく飲みたいと思ったビールから逸脱しないように常に意識しているんです。期待を上回っておいしいと感じられるビールになっていると思います」
デザインや名前からもワクワクしてしまうビールの数々ですが、その情報を上回ってくるお味と聞き、期待せずにはいられません。
今回は「FETISH CLUB」の定番かつイチオシであるライスIPAと、取材日にできたばかりのヘイジーダブルIPAの2種類をいただきました!
『Ishiharice Beer COLD IPA』(Pint:1,600円/Glass:1,100円/缶:1,450円)※税込
入手困難な幻のお米“イシハライス”を使用した、ジャパニーズライスIPA。ホップ由来の爽やかなシトラス系アロマと、日本米ならではの優しい甘みが調和し、上品かつキレのある飲み口が特徴的です。日本米の風味がビールに柔らかさを与えているので、クラフトビールを飲み始めたばかりの方から、飲み慣れた方まで楽しめる一杯。
「RIDICULOUS HAZY DOUBLE IPA w/BERGAMOT&MANDARIN」(Pint:1,600円/Glass:1,100円/缶:1,450円)※税込
天然素材のベルガモットとミカンの香りを抽出して絶妙に溶け込ませた、ヘイジーダブルIPA。フレッシュでジューシーなミカンの自然な甘みと、ベルガモットの余韻をしっかりと感じながら、重くならずにスッキリと楽しめる飲み口が特徴的です。
そんなビールたちと合わせるフードも充実。ミートピザやチーズかけポテトフライなど食べ応えのあるアメリカンなメニューや、ポップコーンやミックスナッツなどのスナックが提供されています。中でもおすすめは、見た目のインパクトも強い「厚切りベーコン」。
「厚切りベーコン」(800円/1Pintコンボ:2,000円)※税込
マヨペッパーとマスタードをお好みで付けていただく「厚切りベーコン」。厚く切られたベーコンの食感が楽しく、ビールの進む濃い味が嬉しい一品です!
飲んでいる時もいない時も。クラフトビールの余韻を感じて
これからも、クラフトビールを飲みながら何をしたら楽しいかを追求して、その方法を広げていきたいと話してくれたヒロさん。
ヒロさん「コロナ禍以降、世界中でクラフトビール缶のニーズが高まって、『日本のクラフトビールだったらどんなデザインであるべきか』『パッケージに何を印刷して飲んでもらうか』と、缶のグラフィックにも注目が集まったように思います。ビールを飲んで『おいしい』というだけなら、中身だけあればいいですよね。
でもやっぱり飲んだ後に『またあそこに行きたいな』と思うことや、Tシャツを買って帰って飲んでいないときに着たりとか、その余韻まで全部含めてクラフトビールのテリトリーだと思っているんです。日常に戻ったときもちょっと思い出して幸せになれるように、『FETISH CLUB』にいる時間ははっちゃけて過ごしてほしいですね」

取材時に購入した缶ビールを眺めながら、その名前を検索してみたり、店舗で流れていた音楽を聴いてみたり。「FETISH CLUB」の扉を開けた瞬間から、帰宅後まで、ずっと心地よい余韻に包まれていました。
今後はクラフトビールの魅力に全身で浸れるような、さらにエンタメを詰め込んだ新店舗のバーもオープン予定なのだそう!
飲んでいるときも飲んでいないときも、クラフトビールを楽しめる「FETISH CLUB」の世界。一歩踏み込めば、ナイトカルチャーの刺激とこだわりぬかれたクラフトビールが、いつもの日常に幸せな余韻を与えてくれるはずです。
FETISH CLUB(フェティッシュクラブ)
〇住所:東京都港区芝大門2丁目13-5
〇アクセス:JR浜松町駅南口から徒歩5分、都営浅草線・大江戸線大門駅から徒歩7分、都営三田線芝公園駅から徒歩5分
〇営業時間:
〇[月曜日-土曜日]16:00〜22:30
〇定休日:日曜日
〇決済方法:カード、電子マネー、QRコード決済
〇公式HP:https://fetishclubbeer.com/
〇Instagram:https://www.instagram.com/fetishclubbeer