Bar “赤い傘”が新しいトレードマークの「秋田あくらビール」。ラベルに秘めた想いとは?

2021/08/05

クラフトビールという名前が浸透してきた昨今。日々、さまざまなビールが生まれていますが、もとは“地ビール“という名で全国に広まりました。今でも“地ビール“としてビールを展開しているブルワリーも多く、その土地ならではの原料を使ったり、昔懐かしのパッケージやラベルで味わいやビールの特徴を表現したりしています。

そんななか、あえて地ビールから脱却しようとラベルを刷新したのが秋田県のブルワリー「秋田あくらビール(以下、あくら)」。どんなこだわりを持ってビールを造っているのか、なぜラベルのリニューアルに至ったのか。その背景に迫りました。



「1つの蔵」から生まれたブルワリー



あくらの始まりは、1997年。社長である高堂裕さんがドイツを旅した時に、小さい町にも必ず醸造所がある風景を見て、日本でも同じことがしたいと思ったことがきっかけで誕生しました。

ブルワリーの名前である「あくら」は「a 蔵」の意味。元は日本酒の醸造所だった蔵を改修してブルワリーを始めたことと、日本酒を仕込む“水”のラテン語「アクア」と「蔵」を掛け合わせたことで名付けられました。

そんなあくらの一番のこだわりは、秋田県横手産の「IBUKIホップ」を使用して醸造していること。


ホップの栽培は全国どこでもできる訳ではなく、冷涼な土地が必要だったりと条件が限られてきます。そんななか、国内有数の生産地としてホップを栽培する秋田県横手市。2017年には市町村別のホップ生産量で日本一になったり、次世代に継承するため官民一体となって将来のホップ生産を支える担い手を育成したりと、ホップづくりに注力していているんです。

横手市で生まれたIBUKIは、フローラルでピュアな香りをもち、ほんの少し使っただけで個性が出ることが特徴。そんな豊かな原料を使用した、あくらの定番商品5種を紹介します。

5つの定番ビール



『あきたこまちIPL』
秋田市柴田農園産あきたこまち米と横手産IBUKIホップを使用したIPL(インディアペールラガー)。ホップのドライな苦味とフルーティなアロマのバランスが特徴的で、口当たりはやわらかく爽やかな仕上がりに。さらに、麦の香りが芳醇でしっかりとした飲みごたえです。ラベルには、しっとりした雨の中に佇む人が描かれています。



『古代米アンバー』
全国的にも珍しい、古代米を使用したアメリカンアンバーベースのライスビール。一般的にこのビアスタイルはカラメル麦芽を使用してボディ感を出していますが、カラメル麦芽不使用のため、見た目に反してスッキリしているのが特徴です。アンバーのごとく少しどっしりした夕暮れ色の空のなか、相合い傘をする男女が2人描かれています。



『あきた吟醸ビール』
秋田県立大学とあくらが共同開発した「秋田吟醸酵母」を使用したウィートエール。小麦麦芽ベースにすることにより、あきた吟醸酵母が持つフルーティ感を爽やかなボディが包み込みます。ラベルには、降りしきる雪のなか秋田犬と人が同じ傘の中にいる様子が描かれています。



『秋田美人のビール』
明るい金色の「ミュンヒナーヘレス」というビアスタイル。あくらはビール醸造方法を工夫し、通常の醸造方法ではほとんど無くなるホップポリフェノールを残しているので、ビールを飲みながら美肌効果もアップ。ビールのラベルには、シックな装いの「秋田美人」が描かれています。



『なまはげIPA』
フルーティな香りと苦みが特徴のアメリカンIPA。このIPAには、横手産IBUKI、ニュージーランド産2種類、アメリカ産3種類とたくさんのホップを使用しています。柑橘系のアロマの香りと華やかなホップのアロマがかぐわしく、ゆったりと味わいたくなるようなビール。ラベルには、名前の通りなまはげが描かれています。

新しいラベルに秘めた想い



これら5つのビールは元々、秋田県のご当地ビールとして愛されてきました。主に秋田県のお土産屋さんや道の駅で販売され、ボトルのラベルも秋田県を強く打ち出したものを採用。

そうして製造・販売を続けてきたなか、「あくらにしか無い味わいを、県内だけでなくもっと多くのビール好きの皆さんに届けたい」という想いを募らせてきました。

そしてついに、「秋田県のご当地ビール」から生まれ変わるため、ラベルリニューアルをすることになったそうです。


ラベルのデザインは、秋田公立美術大学コミュニケーションデザイン専攻の学生さんに公募をかけて決定。学生さんたちは、醸造所見学や製造者への取材をするなどして、あくらへの関心・理解を深め、しっかり愛情を込めてデザインをしたというエピソードも。

そうして制作が進み選ばれたデザインは、赤い傘をモチーフとしたもの。あくらの由来である「アクア×蔵」をヒントに、「水=雨=傘」と想像を展開し、完成したデザインです。

さらに、四季の変化がはっきりしている秋田の天気をイメージし、各銘柄の風味に合わせた色味でいろんな天候が描かれていています。秋田らしいキャラクターが傘の下で見え隠れする様子も、あくららしさが満載でとっても愛おしく感じます。

造っているのはどんな人?



ラベルをリニューアルし、どんどん可能性を広げているあくらの醸造長を務めるのは、長谷川信さん。あくらとの出会いは、大学進学と同時に秋田県にやってきた頃で、直営ビアレストランでアルバイトを始めたことがきっかけでした。

当時はブルワリー自体少なかったものの、クラフトビールへのポテンシャルを感じ、新しいことにチャレンジしたい!という思いから入社を決めたそう。現在は醸造長として、日々愛を込めてあくらの味を守り続けています。

そんな長谷川さんに、ビールづくりで工夫していることをお伺いしました。

ービールづくりで工夫していることとは?


長谷川さん

色々な原材料を使用しますが、作物がいつも同じ品質状態であることはまずありません。気候の変化でもかなり左右されますし、秋田は雪が多いのでその影響も受けます。

造り手も人間だから、毎日きっちり同じように作業することはできない。少しのさじ加減で全く違うクラフトビールが出来上がってしまうので、なるべくブレないように修正を行って微調整を重ねていきます。

原材料の状態は数値化されているので、その数値を見て調整します。今は情報もインターネットで沢山調べられるので全世界から情報収集できるんですよ。さらに地元産のホップを使用しているのでダイレクトに情報が入ってくることも活かして、より美味しいビールを造るために日々格闘しています。

皆様の口に入るものなのでやっぱり妥協したくないんです。

長谷川さんの細やかな気遣いの元、あくらのビールは醸造されていることがわかり、ますます魅力にのめり込んでしまいそう。さらに、今後の展望についても教えていただきました。

ーこれから、あくらが目指すこと


長谷川さん

あくらのビールを全国に届けることです。また、リニューアルしたラベルは昔のご当地感から脱却して、よりビール好きの皆様に可愛がってもらえるようなデザインに生まれ変わりました。そんなラベルを見て「ジャケ買い」してくれるファンを増やしたいですね。

ラベルの赤い傘を見ただけで「あくらだな」と思ってもらえるようになったら嬉しい。秋田県以外でも、レギュラーボトルビール5本がズラッと皆さまの前に並ぶことが目標です。

さらに最近は台湾への出荷も決まったので、日本国内に限らず世界の方にもあくらを楽しんでもらえたら良いですね。

「新しさ」と「伝統」を味わって


秋田から全国、そして世界へ」。秋田の誇りと伝統はそのままに、より多くの人たちに飲んでもらいたいという想いから大きく変わったあくらのビールを、ぜひ今日のあなたのおともに選んでみてくださいね。

 秋田あくらビール

〇公式ホームページ:https://www.aqula.co.jp/wp/
〇オンラインショップ:https://aqula.shop-pro.jp/


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爪菱リオ ライター

ビールと映画をこよなく愛する陽気な関西人。真夏の野外フェスでキンキンに冷えたビールを飲んでからすっかり虜になりました。お気に入りの本を読みながら美味しいビールを飲むのが日々の至高の時間。国産クラフトビールを中心にサワーとフルーツビールが好き。

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