シリーズで只今連載中の発泡酒の真実。
前回はビールや発泡酒の主原料となる、麦芽と麦のことを中心に発泡酒と分類分けされる理由について迫ってみました。
しかし、ビールという枠組みを決定づけるのは麦芽だけではありません。
そこで今回は発泡酒とビールという分類に関わる、副原料(麦芽・ホップ・水以外)について迫ろうと思います。
日本のビールで認められる副原料は酒税法で下記の原料と定められています。
麦・米・コーン・こうりやん・ばれいしょ・スターチ・糖類・着色料(カラメル)
麦芽と水とホップがあればビールはできるのに、これらの原料を用いるビールは日本でも多く造られてきました(もちろん海外にもあります)。
それは日本人の口や和食に合う、飲み口の軽やかさを出すためと麦芽比率を減らすことによるコスト削減を主な目的としたものだと考えられます。
また、海外のビールを見ると日本で認められるこれらの副原料以外にもそれはそれは多くの副原料がビールに使われています。
そもそも、ビールの起源はメソポタミア文明の頃まで遡りますが、風味付けや醸造の安定化などのために多くのハーブが使われ、ホップもそれらの一つでした。1516年にドイツのバイエルン地方で出されたビール純粋令(ビール醸造には麦とホップ、水のみを使う)をきっかけにホップが主流となります。その結果、ドイツでは今日もビール純粋令に基づいたビール造りが主流となっているのです。
しかし、ベルギーでのビール文化の発展はドイツとは異なりました。
ベルギーでは食前から食後まで様々なお料理に合わせるほどの多種多様なビールがあります。それらの多くにはハーブやスパイス、果実を風味付けに利用したものも多く、酵母も野生の酵母を使っているもの、シャンパンのように数年熟成させたものとブレンドして出荷しているものなど、製法も様々。
その背景には様々な原因がありますが、
①国の緯度が高く、ワイン・葡萄造りに不向きであったこと
②19世紀まで主流であった自然発酵法(ランビック)に向く好条件がそろっていたこと
③ドイツのビール純水令のような明確な規制を伴う法律がなかったこと
などが考えられています。
そのため、現在のように数えきれないほどの種類のビールを生みだしたのです。
何千年もの時を越えて広がったこの多様性が今日のベルギービールブームにも繋がっているのだと思うと感慨深いですね!!
日本のビール文化はそれに比べるとまだまだ日が浅いかもしれません。しかし、そのベルギービールの多様性にインスパイアされ、各地で地元の特産品であるフルーツや自家製のハーブを入れて造られているブルワリーもあり、そうやって見るとまた面白みが深まるのではないでしょうか?
日本では前述したようにビールに使える副原料が限定されていること、和食に合うスッキリとしたピルスナータイプのビールが広がりを持っていること、副原料(米やコーンなどの)=節税のためと思われてきたことなどから、私たちにとって驚くべき原料が入っているようなビールを見ると、混ぜ物の入った邪道なビールと考える方も少なくありません。しかし、ビールの歴史を見てみると、紀元前からそもそも混ぜ物だらけの歴史だったのですね!!(笑)
百聞は一味にしかず!!
飲まず嫌いは損のもと!!
ビールに●●??と驚くかもしれません。これまでこのシリーズでお話しした理由などから、ラベルの裏を見ると、発泡酒と書いてあるかもしれません。
それでも!!この夏、ぜひ目にとまったものに挑戦してみてください!!
あなたの新たなビアライフが待っているかも??しれません。
シリーズでお送りしてきた発泡酒の真実、残すところもあと一回。最終回はこの夏、挑戦してほしい発泡酒について書きたいと思います。お楽しみに!!
参考文献:田村功 『ベルギービールという芸術』 光文社、2002年9月20日