専門店でプロに注いでもらう樽生ビールっておいしいですよね。家で飲む缶ビールとは味が違うように感じることも。でも、缶ビールでも樽生ビールのようにおいしく注ぐ方法があり、コツさえ掴めば誰でも実践できるのだそうです。
そこで今回は、キリンラガービールの注ぎ分け専門店「麦酒大学(びーるだいがく)」の学長・山本祥三さんに「家で実践できるビールの注ぎ方」を教えていただきました。
日本初のキリンラガービールを注ぎ分ける麦酒大学とは?
JR中央線・東京メトロ東西線 中野駅南口より徒歩2分、中野レンガ坂のビルの2階にあります。ビールサーバーが描かれた看板が目印。
「麦酒大学」は、現代のビールサーバーと昭和の復刻ビールサーバーで、『キリンラガー生ビール』の注ぎ分け(そそぎわけ)を楽しめる専門店。注ぎ分けはメニューに載っているだけでも11種類!
基本の注ぎ分けメニューは「麦酒大学注ぎ」「1度注ぎ」「2度注ぎ」「3度注ぎ」の4種類、アレンジメニューは「灘コロンビア」「爽快注ぎ」「ミルコ」「メルティ」「麦酒大学 3度注ぎ」「大澤注ぎ」「重参注ぎ」の7種類あります。
ビールの味わいが濃ければ濃いほど、注ぎ分けによる味の変化の幅が広がっていくそうです。味の違いを楽しむときに、キリンラガービールが違いが分かりやすいため、主にキリンラガービールを扱っているそう。
自分が注ぐビールが一番おいしい。その理由を追及。
飲食店にレクチャーしていくうち、誰に聞いても「山本さんが注ぐビールが一番おいしい!」と言われるように。「同じビールを同じように注いでいるのに、なんで味が違うんだろう?」と気になった山本さん。「ビールって入れ方で味が変わるんだ」と気付き、「その味わいを安定させるためには、何が必要なんだろう?」と、どんどん追及していくようになったそうです。
そんな中、いろいろな種類のビールの注ぎ方を提供しているお店『ビールスタンド重富』が広島にあると知り、「おもしろそうだ」と思った山本さん。広島県の重富さんの所に出向き、いろいろと教えてもらいました。その後、世の中で実際に行われているビールの注ぎ方を集め、ひとつの場所提供するお店をやろうと決め、2016年9月に「麦酒大学」をオープンしました。
今、山本学長ができる注ぎ分けの種類は「失敗したらこんなにおいしくないんですよ」という注ぎ分けを含めると43種類にもなるそうです。
缶ビールを注ぐ前に大切なことを伝授
もう一つ大切なことは、缶を開けるときに優しく開けてあげること。勢いよく開けると、中の炭酸が暴れてしまいます。
では、注ぎ方を難易度順に紹介していきます。
クリーミーな泡が好きな方におすすめ『二度注ぎ』
「二度注ぎ」は、爽快さと泡の旨みの両方のおいしさが味わえるマイルドタイプに仕上げる注ぎ方です。
グラスをテーブルに置き、缶のフタのでっぱている部分を、グラスのふちにかけるくらいの高さから1回目を注いでいきます。
勢いよく泡を作っていきます。
大きな粒の泡がはじけ、上の方からだんだんとなめらかな泡に変わってきます。
泡と液体が半々になるくらいまでおさまってきたら、2回目を注いでいきます。泡の下に液体を入れていく感じで、泡を持ち上げるように優しく注ぎます。
液体には適度に炭酸が優しくなり、甘みが出てくるので、コクのある味わいが作れます。
泡がおさまったら完成です。
泡はふんわり。炭酸が優しく、コクがあり、味のバランスが取れていて飲みやすい。
ビールの苦みが苦手な方におすすめ『三度注ぎ』
『三度注ぎ』は、三度に分けて注ぐ方法で、注ぎ終わりまで5分ほどかかります。
グラスは置いたまま、グラスの高さの倍くらいの高さからビールを注いでいきます。
目一杯、泡を立てます。なるべく一定の量、速さでビールを注げるように、缶の注ぎ口を下げるのではなく、注ぎ口の高さはそのままで缶のお尻を上げるように注ぐのがポイント。学長によると、慣れないうちは空き缶に水を入れて、水で練習すると良いそうです。
上の方にある大きい粒の泡がはじけて、だんだんおさまってきます。泡と液体の割合が半々になるくらいまで待ちます。
山本学長
泡のもとはビールに含まれる炭酸ガスです。ビールの原材料、ホップの苦みの成分と麦のタンパク質が、シャボン玉のように炭酸ガスの周りをコーティングして泡になります。この泡が液体に戻るとき、麦の糖分の部分が下の方に沈んでいくため、液体は甘くなり、甘みが抜けた泡にホップの苦みが残ります。
2回目も同じようにグラスの倍くらいの高さから注ぎます。
泡を持ち上げてあげるような感じです。泡がグラスのから盛り上がり、こぼれない程度まで注ぎます。
盛り上がっていた泡がグラスのフチの辺りまでおさまったら、3回目を注いでいきます。より簡単に泡を持ち上げることができるので、グラスに近い高さから注いでみてください。
グラスのフチから1cmくらい、泡が持ち上がったら完成です。
泡が苦くて、液体が甘いのが特徴。炭酸が優しく、とても飲みやすいビールです。5分ほど時間をかけて注ぐので、少しビールの温度が上がり、より甘みを感じられます。
山本学長
もともとドイツで「7 minutes piles」と呼ばれている注ぎ方です。ドイツのビールは日本のビールよりも味わいがしっかりしているので、この注ぎ方で注ぐとよりコクが感じられます。
日本のビールでも、“味わいがしっかりしたビール”や“香りを感じやすいようなビール”、あとは小麦のビールなども三度注ぎで注いでみると面白いですよ。もっと香りを感じたい時は、ワイングラスみたいな広がったグラスを使うのがおすすめです。
ビール党におすすめ『一度注ぎ』
「一度注ぎ」は、ビールがグラスの中を回転しながら泡を作っていく注ぎ方で、少し練習が必要な上級編です。
ビールをグラスの真ん中辺りに当て、グラスの中を回転させるように注いでいきます。
そのまま、泡を作っていきます。
完成!
ビール党にはたまらない!泡がはじけるような元気のある飲み口。
最難関!『泡なし』
「泡なし」は、缶の味わいそのままをグラスに移す方法で、難易度の高い注ぎ方です。泡がないので炭酸が抜けているように見えますが、飲んでみるとびっくり!実は、もっとも炭酸感が感じられる注ぎ方。
缶の注ぎ口からグラスまでの距離が、なるべく離れないように近付けます。ビールがグラスの内側を沿うように、優しく注いでいきます。
泡立たないように。やさ~しく、やさ~しく。
1本を注ぎ切る最後まで、やさ~しく。
完成!炭酸感が好きな方におすすめです。
山本学長
今回、缶の注ぎ方を紹介しましたが、瓶でも同じように注ぎ分けができます。ですが、やりやすさが違います。一番簡単なのはビールサーバー。その次は缶ビール、瓶ビールの順。瓶ビールは口がすぼまっているので、注ぐ時に「ドボドボッ」てなりやすく、瓶の動かし方に慣れるまでは、瓶ビールはちょっと難しいです。
今回は麦酒大学の山本学長に「自宅でできる缶ビールの注ぎ分け方」を教えていただきました。ビールを注ぐときの無駄のない動きと丁寧で興味深い説明。その手際のよさに感激しました。
奥が深そうなビール注ぎ分け道。まずはチャレンジしてみませんか?実際にやってみて分からないことがあったら、ぜひ麦酒大学へ。学長が補習授業をしてくれるはずです。
最後に、山本学長からビール女子の皆さまへのコメントをいただきました。
山本学長
ビールを飲み始めたばかりで、まだそんなに得意じゃないよって人、ビールがすごく好きっていう人など、いろいろな人がいると思います。今回のように注ぎ方をいろいろと試してみると、もっともっとビールが好きになれます。
ビールって日常的に飲むものですけど、それが楽しかったら、日常が楽しくなると思いませんか?いろいろな楽しみ方をして、自分の好みの方法を探してほしいなと思います。そして、その方法はひとつじゃないですよ。
学長が注ぎ分けを解説する動画はこちら。
麦酒大学(ビールだいがく)
〇住所:東京都中野区中野3-34-23 辻ビル2F
〇TEL:03-4291-8571
〇営業時間
【月~土】18:00~24:00(L.O. 23:00)
【日】18:00~22:00(L.O. 21:30)
〇定休日:不定休
〇座席数:40席(2F:スタンディング、3F:テーブル20席)
〇支払い方法:カード不可
〇サービス料・チャージ:1,000円(税込)以下の会計時は、ミニマムチャージがかかるため最低支払額は1,000円(税込)
〇喫煙・禁煙:完全禁煙
〇お子様連れ:子供可、ベビーカー入店可(※入店手段は階段のみ)
〇公式ホームページ:http://beercollege.main.jp/
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