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お酒は二十歳になってから。

Release 夏が口に広がる。季節の色がにじむように移ろう様子を表現した「夏のあわい」を飲んでみた

2023/08/09

夏のど真ん中にいる私たち。

夏はいつから夏になったのでしょうか。


紫陽花は太陽に焦がされ、向日葵は太陽に向かって首を伸ばします。

命を叫ぶ蝉たちが仰向けになって空を見ながら尽きていくと、鈴虫たちが月夜にしっとりと音楽を奏でます。灼熱の中に、春の名残や秋の気配が潜んでいます。


少し立ち止まって自然を観察すると、分けも隔てもできない四季の中で移ろっていく夏を味わうことができるのです。

それはどんな味でしょうか?


ビールから聴こえる、くにぶるの音楽


古いは新しい、音楽のように日常にひろがる」を理念に掲げる「KUNITACHI BREWERY−くにぶる−」(以下、くにぶる)。

くにぶるのブルワーは、これまで音楽の道を歩んでいた斯波克幸さん。日本の文化を調べるうちに発酵文化に触れ、全ての興味関心が“ビール醸造”に集約されていき、2020年に国立で醸造を開始しました。

美しい素材や美しい仕事をする人を“音”のように捉え感じているというくにぶるが醸すビールは、いわば「一期一会」の音によって奏でられる“音楽”だといいます。


そんなくにぶるが大切にしているのは、イメージとストーリー。

ビール造りへのこだわりだけでなく、アーティスティックなパッケージやビールの名前、それぞれのビールに添えられる詩からも独特の世界観や醸造家の想いが表現され、1つの作品としてビールを楽しませてくれます


どのビールも気になりますが、今回ご紹介するのは、先月発売された『夏のあわい』



モノとモノ、概念と概念のあいだを意味する古語である“あわい”をテーマにした四季の「あわい」シリーズをシーズンごとに醸している、くにぶる。「夏のあわい」は、春から初夏、夏の盛りから秋にかけて、季節の色がにじむように移ろっていく様子を表現したビールです。


このプロローグだけでも「夏のあわい」の先を知りたくなり、早速「夏のあわい」をグラスに注ぎ、くにぶるの作品を堪能してみました。


赤い実はじける「夏のあわい」


グラスに注ぐと、夏の台風が去った後の夕焼けのような美しい赤。この赤はレッドプラム果汁によるもの。

飲む前から甘酸っぱくも複雑なロゼワインのような香りが優しく漂います。一口飲むと、まず口当たりは優しくふんわりとした甘さと梅の花のような香り。すると直ぐにプラムの酸味が泡と一緒に舌の上で弾けます

クランベリーのようなベリー系の味わいを感じ、酸味が和らぐとプラム由来のタンニンからくる渋みが深みとなり、ランビックに感じる乳酸のような品のよい酸味や苦味、甘みが舌の上に足跡を残しました。

優しい初夏の風が吹いたと思うと、汗ばむ夏が鮮烈にやってきて、徐々に渋みを帯びた秋へと移り行く。口に含んでから飲み干すまでは一瞬なのですが、じんわり移いながら景色を変える味は、まさに「夏のあわい」


こんなにも移ろう深い味は、2つの酵母「Philly Sour」「Hornindal Kveik」の複雑な発酵(ミックスファーメンテーション)によるものなのだとか。この2つの酵母がレッドプラムの酸と合わさり重層的な酸味を生み出し、単純に発酵させたものや、加えただけのものとは異なる、複雑で深みのあるフルーツサワーエールを楽しめるようになっているそうです。

またベリー系の味わいは、飲む人の官能度合いによって見つけやすい味わいが変わるそうで、人によってはプラムとベリーの中間にシトラスやトロピカルフルーツも感じられることも。誰かと一緒に味わい、感想を言い合いながら飲むのも楽しそうですね。

一緒に食べたいおつまみは?

西瓜とボッコンチーニのサラダ

複雑な酸味の「夏のあわい」に合わせたいのは、「西瓜とボッコンチーニのサラダ」。

「ボッコンチーニ」とはイタリア語で「ひとくちサイズ」を表し、モッツァレラをひとくちサイズにしたチーズのこと。旬のスイカやきゅうりのさっぱり感、モッツアレラのミルクの甘みと酸味、オリーブのコクのある苦味は、このビールにピッタリ。

お好みでホワイトバルサミコを白ワインビネガーに変えてみたり、ミニトマトやパプリカなど好きな夏野菜を加えてみるのもいいかも。表情豊かなビールにひとくちサイズの食材を色々と合わせ、マイベストひとくちを見つけてみてくださいね。

このレシピを見る!


一緒に聴きたい音楽は?


Norah Jones “Sunrise”


太陽の日差しで霞んでいるような美しいパッケージを見ていると、Norah Jones の「Sunrise」が聴こえてきました。


ゆったりとしたジャズのような心地良い音楽。甘酸っぱくも渋みのある美しい歌声。Norah Jonesが「♪Hoo, ooh, ooh, ooh」とハミングすると共に、ビールをひと口。複雑な移ろいの「夏のあわい」が曲と融合し、より深みを増して体に染み渡ります。音楽に揺られながら飲み進め、グラスに残るしっとりと輝く赤を見つめます。


ああ、あと一口か…。

空虚なグラスを傾けると、ゆるく漂う残り香に、5秒前を懐かしみました。


くにぶると私たちを繋ぐ季節ごとの「あわい」


くにぶるのビールを購入すると、パッケージの絵とそのビールにちなんだ詩が書いてあるコースターもついてきます。「夏のあわい」にはこんな詩が添えられていました。

根 はる
草 なつ
風 あつく
実 なる

青田風
芽ぐむ草木に心を燃やし
ガラス玉の空 夏の月
五時のチャイムが 君の中を駆け巡る

くにぶるの想いと私たちの心。その「あわい」の部分として両者を繋げてくれているのがビールなのかもしれません。

心を燃やし造られたくにぶるの想いが詰まったビールを飲むと、暑い夏に涼をもたらす、それぞれの「夏のあわい」の音が体の中を駆け抜けます。


毎年造られる「あわい」シリーズですが、年毎に違う味わいで、それは一期一会の音楽。

春夏秋冬と造られるこのシリーズを、ビールが好きなあなたの季節の楽しみに、ぜひ。

 『夏のあわい』

  • 〇ビアスタイル:フルーツサワーエール
  • 〇アルコール度数:5.0%
  • 〇原材料:レッドプラム果汁(国内製造)・麦芽・ホップ/二酸化炭素
  • 〇容量:330mlビン
  • 〇価格:900円(税込)
  • 〇URL:https://kunitachibrewery.com/
  • 〇製造者:(株)草舎
  • 〇製造所:KUNITACHI BREWERY

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中林麻依 ライター

「亀がいる、ビールがある、多分そこには私がいる」。クサガメの甲羅♂に晩酌のお相手をしていただき、ビールに浮かぶ泡沫に己を案じる。甲羅とビールと太宰治が、私を生かしてくれている。週末は赤提灯に誘われて、酒場で夜が更けていく…。

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