ビール王国連動記事 Column 眞鍋かをりの旅先ビール
カンボジアで実感した生命の受け渡し

2017/05/25

眞鍋かをりの旅先ビール

-カンボジアで実感した生命の受け渡し-

40℃の炎天下で飲むビールは、世界で一番美味しい飲み物かもしれない……!
先日、カンボジアのシェムリアップを旅したときのこと。汗だくの身体にキリッと冷えたビールを一気に流し込み、あまりの美味さに、そう確信した。今回は、妹と一緒のふたり旅。目的は、世界遺産のアンコールワットや、天空の城ラピュタにそっくりだというベンメリア遺跡を見ること。そして、現地の料理とお酒を堪能すること!

眞鍋かをりの旅先ビール

年間100万人をこえる旅行者が訪れるというシェムリアップには、観光客向けの宿泊施設やレストランがたくさんあり、外資系の高級ホテルも進出していて、一大観光都市として栄えている。ナイトマーケットやパブストリートにはオシャレなカフェやバーが立ち並び、欧米系の観光客が夜な夜な楽しそうにお酒を飲みつつライブやスポーツ中継で盛り上がっているので、ふと「どこか西洋のリゾートにでも来たんじゃないか?」と錯覚してしまいそうになる。しかし、お会計をするときにハッと気づくのである。ここは、
確かに東南アジアだ……! と。

カンボジアの物価は、本当に安い。東南アジアの中でも安いほうらしく、街を歩いていても現地の貧しさが伝わってくる。あるライフスタイル雑誌の調査では「ビールが安い国ランキング」でカンボジアが2位にランクインしたそうだ。平均の値段は、500mlあたり0.88ドル(約92円)。私も、シェムリアップに着いてすぐ、パブストリート近くのレストランに入って、ビールの安さに驚いた。

日本ではあまりお目にかかることはないが、カンボジアにはいくつもの国内ビールブランドがある。シェムリアップの飲食店に置いてあるのは、たいてい世界遺産をモチーフにしたロゴがかっこいい「アンコール・ビア」か、ちょっとクセのある「カンボジア・ビア」。どちらもすごくスッキリして飲みやすいのだけど、麦の旨みやコク、キレ、のどごし……、そういったものはあまり感じられない。

驚くほど、あっさり。でも、旨みなんかはこの際どうでもいい。何といってもここは熱帯モンスーン気候。とにかくゴクゴク飲みたい! 飲んで潤したい! そういうモードのときには、ピッタリなビールなのである。

暑い国で味わうビールは、この上ない幸福感をもたらす。「今がハッピーなら、何でもいい。生きているだけで幸せ!」とさえ感じてくる。しかし、カンボジアではその「生きること」の生々しさのようなものも見せつけられた。土埃とハエが舞う地元の市場には、ついさっき絶命したばかりであろう鶏が丸裸で横たわっているし、大きな包丁を持った女性が巨大な川魚を豪快にブツ切りにしていく。生きている豚が原付の荷台に縛り付けられて市場に運ばれていく姿も見た。普段、当たり前のようにスーパーでパックに入った商品を買っている私からすると、それはとてもショッキングな光景。だけど、これが生きるということだ。私たちの日常は、いつも生々しい現実の上に成り立っている。ビールだって、人が麦を育てて、工場に運ばれて、数々の工程を経て消費者が口にしているもの。そう思うと、何気なく飲んでいるビールがいっそう有難いものに感じられる気がした。

シェムリアップには、観光客向けの素晴らしいリゾート施設も数多く存在するが、すぐそばには現地のリアルな生活があり、貧困にあえぎながら暮らす人々の姿も目にする。楽しく観光しながらも、どこか切ない気持ちになってしまう。だけど、生きていく上でとても大切な感覚を味わうことができる、素晴らしい旅先だ。

最近、カンボジアではビール市場が活気づいているらしい。旅行者の増加に加え、現地の若者や女性がビールを飲むようになり、ビールで乾杯するシチュエーションがだんだん増えてきているのだとか。この国の発展とビール文化の広がりを、期待せずにはいられない。

 

撮影協力:アンコール・ワット


この記事は『ビール王国Vol.3』に掲載されたものです。

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ライターの紹介

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1980年生まれ。横浜国立大学卒。在学中よりタレント活動を始める。現在はバラエティ番組から報道番組まで幅広く活躍中。趣味は一人旅で、ビールを求め出かけることも。その他、ワイン、チーズも。2010年に「C.P.Aチーズプロフェッショナル」を取得。レギュラー番組は「たかじんのNOマネー」、「大竹まことゴールデンラジオ」

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