Bar 渋谷の洞窟「THE BEER HOUSE - Kiln」に行ってきた!現存する世界最古の醸造所のドイツビールと本格ピザが楽しめる

2023/12/02

今から約1000年も前に遡る、1040年。
ドイツ・ミュンヘン郊外“フライジング”の丘にある修道院に、「ヴァイエンステファン醸造所」が誕生しました。

一時はナポレオンの進撃によって修道院は閉鎖に追い込まれたものの、バイエルン州の公共企業となり今もビールが造られていたり、現在はミュンヘン工科大学ビール醸造学部となり世界最高のビールの学校として多くの醸造家を輩出したり。日本人初のブラウマイスターで、日本のビール醸造に大きな影響を与えた生田秀氏も、ミュンヘン工科大学の前身となるヴァイエンステファン中央農学校でビールを学んだと言います。


そして、2023年
私たちは美味しいビールを飲む。私たちがこんなに美味しいビールを飲むことができるのは、先人たちのビールを想う長い歴史があるから。その歴史の中で非常に重要な「ヴァイエンステファン醸造所」のビールを、思う存分味わえる場所が日本にあります。

今回は2023年9月にオープンしたばかりの、現存する世界最古のヴァイエンステファン醸造所を始めとする世界のビールと絶品のピザが楽しめる「THE BEER HOUSE - Kiln」にお邪魔しました。

都会の喧騒から守られる洞窟のような空間で、ビールの歴史を飲み干しましょう。



ビールが注がれるピザ釜に誘われて


日本のカルチャーの発信地、渋谷。人々の熱気に揉まれながら、渋谷駅を出て文化村通りを歩くこと5分。様々なお店が立ち並ぶ中、一際目を引く洞窟の入り口のようなお店が現れます。

ここ「THE BEER HOUSE - Kiln」は、3年前恵比寿にオープンした「THE BEER HOUSE」、そして2号店としてオープンした「THE BEER HOUSE 渋谷フクラス店」に引き続き、3店舗目としてオープンしました。

お店の名前は英語で「窯」を意味する「Kiln(キルン)」。この洞窟は、ピザ窯だったのか!と興奮気味に上を見ると、黄金に輝くビールが私たちに降ってくるように注がれています。これならお店が多く道に迷いがちな渋谷でもすぐに見つけられますし、またどんなお店か一目瞭然。

人々の熱気から離れて、ピザ窯の熱気の中へ。


都会の喧騒を忘れられる洞窟のようなピザ窯の中には、ビールと絶品のピザが堪能できる、遊び心満載でアーティスティックな空間が広がっていました。

お客様自身がどんな時間を過ごすか選択できるように、どんなシチュエーションでも利用できる様々な席が用意されていて、1階席はスタンディングやサク飲みを気軽に楽しめる創りに。


2階席には、デートや友人・家族とゆっくりした時間が過ごせるような、テーブルがずらっと並ぶ広々とした空間が広がっています。


さらに、飲み会の後しっぽりと1杯飲みたい時は2階バーカウンターで。夜になると照明が一気に落ち、音楽も変わるので、昼とは違うムーディな雰囲気になります。


ガラス張りの冷蔵庫の中からは開栓された樽ビールたちが顔を出していて、それぞれの美しいビールの色もチラ見できちゃうので、ビールを飲む前から気持ちが高まります。


レアなビールがいつでも飲める夢の空間


「Kiln」では、樽は10タップ以上ボトルは約120種類以上のビールを楽しむことができます。樽だけでも色々なビールが楽しめるように6カ国以上の様々なスタイルのビールを取り揃えていますが、その中心となるのはヴァイエンステファン醸造所のビール。ヴァイエンステファンだけでも常時6種類以上が味わえます。毎年日本で開催されるオクトーバーフェスでも大人気で、種類によってはすぐに売り切れてしまうヴァイエンステファンのビールが、ここではいつでも楽しめるなんて夢のよう。


『ケラービール1516』(税込1,480円/500ml)

ヴァイエンステファンの中でも特におすすめだという、濁りながら濃く輝くオレンジ色が美しい激レア無濾過ピルスナー

ケラー」とはドイツ語で地下室のことを指し、かつて地下室で出荷前のビールの貯蔵を行っていたことから転じて現在は無濾過のラガービールをこう呼ぶようになったと言われています。そしてビールに詳しい方ならピンとくる「1516」の数字。「ビールは、大麦、ホップ、水のみを原料とすべし」とされた法律【ビール純粋令】がドイツで制定された年です。

優しい口当たりで、麦の香ばしさとホップの爽やかさ、そして酵母の香りが舌に広がります。麦とホップのバランスが絶妙。酵母でより深みが増すのですが、ピルスナーなので重さはなくスッキリと飲み干してしまいました。ドイツビールの実直さとピルスナーの爽やかさを感じられるので、ドイツビール好きにはもちろん、ドイツビールは初めてという方にも是非飲んでいただきたい1杯です。


『5種飲み比べセット』(税込2,380円/150ml×5種)

どれを注文するか迷ってしまう…という方には、飲み比べもおすすめ!今回は、写真左からヴァイエンステファンの『ヘフェ・ヴァイス』『ヴィタス』『ピルスナー』『トラディション』、そして、Kilnを運営する日本ビール株式会社が自社で醸造する『白濁ブリュット』をチョイス。

【死ぬまでに飲みたいビール100選】にも選ばれたリピート率No.1の白ビール「ヴィタス」や、世界最古の黒ビールで干しブドウのようなコクがある「トラディション」セリ科のお花のような優しい香りや白ビールらしいしっかりボディとふんわりとした苦味を感じられる「白濁ブリュット」など、別々の個性が光るビールがたくさん提供されているので、いろんな味わいを楽しめるようバランスよくチョイスしてみてくださいね。


飲み比べセットではビールの種類と説明のカードがついてくるので、ほろ酔いになってもどのビールを飲んでいるか一目瞭然なのは有難い。様々なビールを飲み比べて、自分にぴったりな1杯を見つけてみてください。


そして驚きなのは、樽ビールのグラスのサイズ。

300mlが980円500mlが1,480円、そしてなんとその上の1,000mlが2,880円もメニューに載っています。初めからメニューに1,000mlが載っているお店は珍しいのではないでしょうか?

日本人は泡にこだわる方が多かったり、ビールが温くなってしまうのを嫌がったりする方が多いので、あまり1,000mlで飲まれる方はいないのですが、海外の方は結構1,000mlで飲まれるんです。海外の方はとにかくいっぱい飲むというのもありますが、ドイツビールの適温は、日本のビールよりもちょっと高めなんですよ。海外の常連さんには「常温のグラスでちょうだい」と言われることもあります。」と、スタッフさん。

確かに1,000mlで注文すると飲める種類は少なくなるかもしれませんが、1種類のビールの温度による味わいの変化を楽しむことができます。本場の雰囲気を堪能できる1,000mlに1度挑戦してみたいですね。


ちなみに、ハッピーアワーも行っていて、平日は13:00〜18:00入店、土日祝日は11:30〜18:00入店で、タップビールが300mlが700円500mlが1200円で味わえるのでとってもお得(どちらも通常価格の-280円)。また、飲み放題プランもあり、ヴァイエンステファンのビールやこだわりのカクテルを思う存分味わうことができます。


ずっと美味しい、生地を食べる本格ピザとヴァイエンステファンのペアリング


ビールと一緒に楽しみたい食事も、充実しています。店名にもなっているピザ釜で焼き上げる熱々のピザは、、行ったらぜひ味わってもらいたい絶品。

今回はナポリの王道「マルゲリータ」(税込1,480円)をいただきました。


酸味と甘みのバランスがとれたトマトソース、ミルキーでコクのあるモッツァレラ、爽やかなバジル。どれもしっかりとした個性のある具材ですが、香ばしい生地の香りと甘みが全く負けておらず、もちもちなピザ生地が主役になっています。ピザの耳を食べるとチーズのようなコクまで感じられ、耳だけでもずっと食べていたくなるくらい美味しい。

この生地は、以前に料理人をされていたこともあるというスタッフ 田口清崇さんが徹底的にこだわって、生地の配合のレシピから作られたそう。

食べた時に生地の香りを感じていただきたくて全粒粉を使用し、ナポリのピザに近い厚みにしました。生地が発酵する前の状態で業者さんに瞬間冷却してもらい、それをお店で解凍。その後発酵させこねてから、釜で焼き上げています。最初の一口目の時と最後の冷めた時の美味しさが変わらないようにしたいという思いがあるので、冷めても美味しくなるように作っています。」と、田口さん。


一押しは、先に紹介した「ケラービール1516」とのペアリング。モッツァレラで口の中がコッテリとしたところに香りが豊かなケラービールを流し込むと、ビールの爽やかさが引き立ち、口の中がスッキリとなります。すると、また香ばしくコクのあるマルゲリータを欲し、ケラービールで爽やかにして…。これはどちらかがなくなるまで永遠に続いてしまう最高の組み合わせ。


その他にも、イベリコ豚のサラミが乗った人気の「アメリカーノ」×「へフェ・ヴァイス」、ピリ辛でビールが止まらなくなる「メキシカーノ」×「ピルスナー」、チーズに黒胡椒と蜂蜜をかけて楽しむ「クワトロフォルマッジ」×「トラディション」のペアリングもおすすめとのことで、どれも魅力的。


「生ハム3種食べ比べ」(税込1,080円)
スペイン産のハモンセラーノ、国産生ハム、本日の生ハム
ピザ以外にも、ビールのお供がたくさんあります。ライトに食べられる生ハムは、単品で楽しむのはもちろん、お好みのピザのトッピングとして乗せても楽しめるので、ぜひピザと併せて頼みたい一品。

その他にも、オリーブやポテトフライ、海鮮アヒージョやこだわりのソーセージなど、ちょっとしたおつまみから大人数で楽しめる料理まで揃うので、どんな場面でも安心して訪れることができます。


また、ボトルビールとお食事はテイクアウトもできるので、お家でゆっくりビールとピザを楽しむこともできます。今後は宅配をする予定もあるそうなので、近くにお住まいの方や職場のある方は是非チェックしてみてください!


どんなシーンでも楽しめる、遊び心満載な店内


もう1つ、Kilnの楽しみ方として紹介したいことがあります。それは、そこかしこに潜む遊び心たっぷりのアートです。


これは、2階席カウンター付近にあるアート。「ビールは私たちのガソリン!」と言わんばかりにガソリンスタンドでビールを注ぐ男性達。


早くビールをお出ししないと!」と急ぐようにグラスをお盆に載せながら走り高跳びをする選手。


ビールのことで頭がいっぱいです」と、頭からビールが溢れ出す紳士。


そして仕事終わりのダビデ像は、音楽を聴きながら1人で1杯やっています。


1階の壁には、ヴァイエンステファンのロゴやメッセージと年表が刻まれていますが、グランドオープンの日にいらっしゃったヴァイエンステファン醸造所副社長のマーカスさんやその他にもお店に関わった方々のサインも添えられていて、このお店に様々な方の想いが込められていることを感じます。


サインの目の前にある、職人さんの手作りだという無骨でかっこいいテーブルの上には、トランプゲームやオセロができるような工夫も。スタッフさんにお願いすれば、実際にトランプやオセロも貸してくれるのでビールを飲みながらゲームも楽しめます。


さらに、席に案内されるとスタッフさんからのメッセージやイラスト付きのおしぼりがあったり…


2階の大きな壁にはプロジェクターでヴァイエンステファン醸造所の映像が映し出されていたり…


ゲーム付きの栓抜きが壁にかかっていたり!

私が見つけただけでも、たくさんのワクワクが詰まっていますが、まだまだ見つけ切れていないアートやおもてなしがありそう。実際に足を運んで探してみてください。

楽しく美味しく、世界のビールを広めるために


ビール×ピザを素敵な店内、様々なシーンで楽しめるKiln。そんなKilnはどのような想いでオープンしたのか、田口さんに詳しくお伺いしてみました。

私たちの会社ではイベントを中心に世界のビールを紹介していたのですが、まだまだ日本での認知度は低く、もっとドイツビールを始めとした本場の世界のビールを知って欲しいという想いが1番にあります。またイベントで働いていた学生さんたちが就職した後も気軽に集まれる、縁が続くような場所を作りたいという想いがありました。ここに来た方がまた違う仲間を連れて来たくなる「誰かに紹介したくなるお店」というのがコンセプトとしてあります。来てくださったお客様はもちろん、ここで働いているスタッフ自身も大切な人を連れて来たくなるような、ここで働いてると胸を張れるようなようなお店にしたいと思っています。

素敵な想いですよね。私も早速友人に紹介しようと思っていました。


そんなKilnでは、ヴァイエンステファンのビールを中心にしている理由はなんでしょうか?

きっかけは今よりもヴァイエンステファンがまだ日本で知られていなかった頃、このビールに惚れ込んだ社員がいたことでした。僕も元々ビールはゴクゴク飲みたいタイプだったのですが、初めてヴァイエンステファンの「へフェ・ヴァイス」を飲んだ時、すごくフルーティーで香り豊かで今まで飲んだことがない味に驚きました。ゴクゴク飲むのはもったいないと。それにお料理にも合わせやすい。

確かに美味しいお料理と共にゆっくりと楽しみたい味ですね。

日本では「とりあえず生」とよく言われますが、私たちの使命は「とりあえず生!」から「最初の1杯はこの生ビール!」とお客様に選んでいただくことかなと思っております。ドイツビールを飲んだことがない方に最初の1杯をお出しすると多くの方が「うま!」と言ってくださいますし、そうすると私も「よし!」と嬉しくなります。1人ずつ少しずつ、ヴァイエンステファンや世界のビールを広めていきたいなと思っています。


私たちには、ヴァイエンステファンを始めとした、世界のビールを広めていくというミッションがある」という田口さん。そこで今までに無いような「ビール×お料理」に挑戦して、新しい発見をお客様に提案し、より楽しんでいただければと思っているのだとか。

例えば、「ビール×焼肉」。焼肉って、あくまでも焼肉がメインでご飯やビールを合わせていくことが多いと思いますが、逆の発想で、“ヴァイエンステファンのビールを楽しむためにお肉を合わせて行く”。ガッツリお肉を食べるというよりも、厳選したお肉をビールに合わせるようなお店に挑戦してみたいのだとか。それと同様に、「ビール×和食」というアイデアも、田口さんの頭の中に浮かんでいるそうです。新店舗のオープンが既に待ち遠しくなってしまいました。


1000年の歴史を渋谷で繋ぐ


お店の壁に刻まれたヴァイエンステファンの年表をみると、こんな言葉が書いてありました。

The world has changed through the ages and today is a product of this change. It's nice to know that in the eventful history of Weihenstephan, with all its developments, achievements and setbacks, one thing has remained constant : our beer. Thus the Weihenstephan Monastery Brewery - after nearly a thousand years - still upon the Weihenstephan Hill, proud of its quality and its tradition and conscious of its position as the oldest existing brewery in the …

(世界は時代とともに変化し、今日もその産物である。
ヴァイエンステファンの波乱万丈の歴史で、その発展、功績、挫折のすべてにおいて、ひとつのこと「私たちのビール」が不変であったことは喜ばしいことである。こうしてヴァイエンシュテファン修道院醸造所は、ほぼ1000年経った今もヴァイエンシュテファンの丘の上にあり、その品質と伝統に誇りを持ち、現存する最古の醸造所としての地位を持っている。)


ホップの栽培はドイツから始まり、11世紀頃からそれが広く知られるようになったと言われています。さらに、ホップの添加が修道院ビールの大きな特徴となり、ヴァイエンステファン修道院でも近くでホップの栽培をしていたことが文献で残っています。

ビールといえば、様々なハーブを使用したグルート・ビールが多かった時代に、ヴァイエンステファンではビール純粋令が制定される約500年も前から、その定めと同様のビールを造っていたかもしれない。そんな誇り高き「不変」なビールを飲む私たちも、このビールの歴史を紡ぎ繋ぐ歴史の中の1人でしょう。

私たちとヴァイエンステファンを繋ぎ、出会った人々の縁を繋ぐビールをタップに繋ぐ「Kiln」。歴史を感じるビールと本格ピザを、ゆっくりと1人で、大切な人と2人で、気の合う仲間や家族とワイワイ。様々なシチュエーションであなたの癒しのビール時間を過ごしてください。

 THE BEER HOUSE - Kiln

〇住所:東京都渋谷区道玄坂2-25-7 大林ビル 1F・2F
〇交通:JR山手線・埼京線・湘南新宿ライン/渋谷駅ハチ公口徒歩5分、小急田園都市線・半蔵門線/渋谷駅A2出口徒歩3分、井の頭線・東急東横線・銀座線/渋谷駅徒歩6分、神泉駅から438m
〇TEL:050-5600-9436
〇営業時間:月〜金13:00~23:30(LO23:00)、土日祝11:30〜23:30(LO23:00)
〇定休日:不定休
〇席:テーブル・スタンディング・バーカウンター、計65席
〇支払い形式:現金、クレジットカード、電子マネー(QR決済は不可)
〇喫煙・禁煙:禁煙
〇HP:https://tabelog.com/tokyo/A1303/A130301/13288322/
〇Instagram:https://www.instagram.com/thebeerhouse.shibuya/

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中林麻依 ライター

「亀がいる、ビールがある、多分そこには私がいる」。クサガメの甲羅♂に晩酌のお相手をしていただき、ビールに浮かぶ泡沫に己を案じる。甲羅とビールと太宰治が、私を生かしてくれている。週末は赤提灯に誘われて、酒場で夜が更けていく…。

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